No.034
ドライブシュートではなくイーグルショットを!
2002.09.16
text by RB(あーるびー)

 

 

嵐のように過ぎ去っていった6月のワールドカップ。開催国として本大会に出場した日本代表には常に「決定力の無さ」という言葉が付いて回った。「日本代表」の付属品であるかの如く使われるこの言葉は、何も今回のW杯に出場したトルシエジャパンに対してのみ使われてきた訳ではない。前回大会のフランスの地で奮闘した代表チームなど、決定力のなさと言えば日本代表という程に、各メディアから批判の雨を浴びていた。

では、なぜ日本代表にはいわゆる「決定力」がないのだろうか?分かり易く言い換えると、なぜ日本人選手はシュートが下手なのかということになる。その「下手なシュート」の典型が、目指すべきゴールの枠の遥か上を行く、H2Aロケット並みに高く舞い上がるミドルシュート。大空翼の放つドライブシュートのように、その後急激に落ちてきてゴールネットを揺らすことができれば良いのだが、残念ながら天を目指したボールは二度と戻ってくることはない。

翻って、先のW杯決勝。ブラジルの先取点を呼び込んだリバウドの左足からのミドルシュートや、勝利を決定付ける2点目となり、かつ本人にとっても大会8得点目となったロナウドの右足からのシュート。リバウドのシュートこそドイツ代表GKカーンの真正面ではあったが、どちらのシュートとも、地を這うような低く鋭い弾道を描き、確実にゴールの枠を捉えていた。

この差が世界のトップとの差と言ってしまえばそれまでであるが、どうもこの違いは技術的な差だけではないような気がしてならない。それは、「シュート」というものに対する意識の持ち方の違いである。

海外のトップレベルの選手達にとって、「シュート」はショートパスの延長であり、決定的な場面に関してなかなか世界との距離が縮まらない日本人選手にとって、「シュート」はロングパスの一歩手前なのではないかということである。パスもシュートもボールを蹴るということに変わりはないのだから、シュートもパスの一種として考えれば、前者にとってのシュートはショートパスの部類に属し、後者にとってのシュートはロングパスの部類に属しているのではないかということである。私にはこの意識の違いが、シュートの質に大きな影響を及ぼしていると思えてならない。

ここで、なぜこのような意識の違いが生まれるのだろうかという疑問に辿り着く。この疑問を解く鍵は、ズバリ「環境」にあると思う。

日本のサッカー少年達のほとんどは土のグラウンドでサッカーをやっている。緑の芝生の上でサッカーをしたことのある人ならば分かると思うが、芝と土の上では、同じサッカーというスポーツを行っても全く違う感覚となる。まず、自分がキックしたボールの飛ぶ距離や質が違う。また、トラップした時のボールの弾み具合も違う。

サッカーを始めたばかりの少年にとって、何よりの喜びは、自分が蹴ったボールがゴールネットを揺らす瞬間である。しかも、コロコロと転がるボールよりも、強烈にゴールネットに突き刺さるシュートを夢見ている。しかし、非力な少年にとって強いシュートはなかなか打てるものではない。ましてや土の上。そう簡単にはいかない。そこで、ロングパスとシュートの区別をなくし、「ボールを遠くに飛ばすこと」=「シュート」という感覚が無意識の内に刷り込まれてしまう。

一方、ヨーロッパではそこかしこに緑の芝生が広がり、小さな時から芝生の上でサッカーをすることが当たり前の環境が整っているという。また、世界の頂点に立ったブラジルに代表される南米では、芝生どころか日本よりも劣悪な環境でサッカーをしているかもしれないが、ストリートサッカーにはゴールネットがない。自分たちのシャツをゴールポスト代わりに左右2枚ずつ置き、日本でいうミニゲームのようなサッカーを楽しんでいる子供達の姿をテレビではよく目にする。ゴールのバーがなくポストしかないミニゲームではシュートは浮いてしまってはゴールにならない。

現在、日本でも子供に限らずどんな人でも芝生の上でサッカーができる環境作りが叫ばれているが、良い環境作りは、日本人選手の「シュート」をロングパスから切り離し、ショートパスと結び付ける役割を成し、日本人選手の決定力向上にも大きな影響を及ぼすのではないだろうか。私はそう思っている。

近年多くの日本人選手が海外のクラブチームへ移籍していくようになっている。しかし、定位置を獲得し、チームの中心選手として活躍しているのはまだまだ数人。ただ、この数人の共通点は、正確なキック力と低く鋭いシュートを打てること。彼らにとっての「シュート」はおそらくショートパスの延長線上にあるはずである。今後、そんな選手がたくさん現れることを期待したい。

大空翼がドライブシュートではなくイーグルショットを放つ主人公だったら、日本代表には決定力がないなどとは言われていなかったかもしれないね。(笑)

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