Solitaire's Company/essays/Green Requiem/

Green Requiem
小さな庭

自然が少なくなったなぁ。


 私の家の最寄り駅は小田急線の東林間駅である。毎朝、東林間から下り電車に乗って、中央林間で乗り換え、渋谷の職場へと向かう。その東林間駅の下りホームの窓のすぐ外に、小さな「庭」がある。
 「庭」と書いたが、それをどう表現していいのか分からない。空き地、という言葉から出てくるイメージでは広すぎる。幅は1メートルほど、駅舎に沿って数メートルのびている土地だ。鉄道の敷地なのだろうが、ちょっと余った部分だ。東林間に限らず、駅にはこうした余った小さな土地がよく見かけられる。

 カレル・チャペックはこうした土地について、「鉄道の敷地には独特の植生が見られるようだ」と冗談めかして書いている。駅にお決まりのように生えている植物があるじゃないか、というのである(『園芸家の12ヶ月』ちくま文庫)。日本でそうした植物といったらなんだろうか。植物の名前には疎いので、よく分からない。

 去年の春先に、ふとその空き地を見て、タンポポが咲いているのに気づいた。ああ、春だなぁ、と思った。何の気なしに、毎日そこを眺めていたら、いつのまにかタンポポがどんどん花開き、ついにはタンポポでいっぱいになってしまった。小さな空き地とはいえ、「いちめんたんぽぽ」と言いたくなるくらいの数で、元気いっぱい咲いている。見ていて嬉しくなった。
 タンポポはまもなく終わってしまったが、それ以来電車を待つ間にちょっと空き地をのぞきこむようになった。驚いたことに、猫の額ほどの小さな空き地でも、それなりの季節感がある。春には丈の短い穏やかな印象の草が生えている。、夏になると、目を射るような鮮やかな緑色をした草がぐんぐんと伸びて、空き地は草ぼうぼうになる。秋になるとまた丈は低くなり、秋の花が控えめに花をつける。季節がめぐるのをカレンダー以外で確認するのは嬉しい。

 タンポポのために、小さな曲を作った。そのうちに、MIDIデータにしてホームページに載せようと思う。

('98.10/14)


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