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お世辞を言うなら……
どうせ言うなら、いい気にさせて
- 手前みそで恐縮だが、先日、某所で拙文『鎖の王』に関するお誉めの言葉をいただいた。「文から情景が浮かびますね」といったような感じのお言葉だった。僕はもともとお世辞に弱い。おだてれば木に登るタイプである。中でも、「文から情景が目に浮かぶ」このお世辞に一番弱い。実はこれは僕にとって重要な課題の一つなのだ。
僕が文章を書くにあたって模範としているものが、3つある。1つは中学校の教科書に載っていた、美文の書き方というような内容の小文だ。竹取物語を例にとって、文章の効用が書かれていた。かぐや姫を映像化しても、万人が共感する美人は描けそうにない。しかし文章で「美しい」と書けば、万人が自分だけのかぐや姫を想像する余地がある、と。2つ目は、アンデルセンの『絵の無い絵本』である。高校生の頃、友人はこれを読んで意味が分からないと言った。とんでもない。これは、文筆家の、イラストに対する大胆なる挑戦なのだ。眼前にありありと浮かぶ情景の数々は、アンデルセンならではだと思う(他に読んだことないけど)。最後の1つは、ロード・ダンセイニである。「夢見たものを書く」という彼の幻想小説は、美しいビジョンに満ちている。
これら3つのものが僕の文章のお手本だ。目にありありと浮かぶ情景を書く。それが目標なのである。
ところで。
一方、あんまりピンと来なかったお言葉もいただいた。「文章を書く人の文章だね」と。これはつまり私が編集者であった(あるいは、現在一応ライターである)ことを示唆しているわけだが、これについてはいささか自信がない。ネットに転がっている文章やストーリー、たくさんあるけど、どれもすごく素敵で、自分のが「ライターだから」ってほどいい文章書いてるような気がしない。弱っちゃったな。
そういうわけで、お世辞を言うなら、「情景が目に浮かびますね!」。これに限る。
('99 9/1)
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