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※註:僕はもともと法律家嫌いである。エセ法律家はもっと嫌いだ。そういった偏見に満ちていることをご了承の上、お読みください。しかもまた長い……。人が楽しんでいる時に、ふと水を差す輩がいる。エセ法律家どもである。彼らは法律について何か聞いたことがある。しかし、多くは法律について学んだとは言えない程度の連中である。法律を理解していないし、TPOというものもまったく分かっていない。まあ僕自身もそういう傾向があるのだが。
彼らは自分が知っている法律違反に遭遇すると、したり顔で「それは法律違反ですよ」という。それがどんな軽微な、どんな些細な、世間で誰もが黙認しているようなものであっても、指摘するのである(その指摘する法律の分野によって、エセ交通法律家や、エセ著作権法律家などに細分される)。単なる豆知識として「実は、ホントは法律違反なんですよ、知らなかったでしょ」と言うだけならいい。彼らは「法律違反なんですから、止めましょう」と言う。こちらが難色を示すと、法律を盾に強硬に主張を繰り返す。
たとえば、彼らにうっかり「未成年飲酒は違法行為です」なんてことを喋ったが最後である。その途端、彼らは禁酒法時代のFBA捜査官となり、法を執行する。盛りあがっている19歳の大学生のコンパに乗りこんでいって「さあ、諸君、お酒は20歳を過ぎてから」とビール会社の宣伝みたいな台詞を吐く。ビール会社の社員でさえ信じていないようなスローガンを、吐くのである。彼らの行為の適法性は疑うべくもない。他人の法律違反を指摘するのは、明らかに適法行為である。しかし僕は彼らを憎む。なぜかと言って、僕は犯罪者であるからだ。銀行強盗がポリ公を忌避するように、僕は彼らエセ法律家どもを忌避する。いや、それよりももっとひどい。銀行強盗だって、ポリ公と戦って銃撃戦をやらかすことは可能である。しかしエセ法律家には、さすがの強盗も開いた口がふさがらない。奴らは銃撃戦のさなかに飛び込んできて「みなさん、騒乱罪は立派な罪ですよ」とやるに違いないのだ。彼らは何か重大なことを見落としている。だから人をイライラさせる。
しかも彼らはその専門分野以外にはまったく無頓着である。エセ騒乱罪取締官は、著作権法の違反についてはまったく何も言わない。エセ著作権法律家は、キセル乗車にはまったく関与しない。エセキセル乗車取締官は、違法駐車くらいなんとも思っていないし、エセ交通法律家は「騒乱罪なんぞ、目くじらを立てるようなことじゃない」と思っているのだ。彼らは法律を遵守しているというよりは、むしろ自分が気になる違反を取り締まっているだけなのである。そもそも違法であることと取り締まることとの間には雲泥の差がある。もしも制限速度オーバーをいちいち取り締まっていたら、渋滞は今の3倍になるに違いない。法律はちょいと厳しいくらいに作っておいて、取り締まらない余裕がある、というのが普通なのではないか。それをいちいちうるさく言うのは、社会の慣習というものを理解していない人間のやることである。人間関係がイマイチなのだ。
人間関係とは柔軟であるべきだ。法律はその柔軟さに欠けている。本当の法律家は、そのことを十分に分かっていて、だからこそ取り締まらない余裕があるのである。エセ法律家はそこが分かっていない。僕だって法律になんか詳しくないが、「萎縮効果」について聞いたこともないような人間に、法律を取り締まってもらいたくない。もうひとつは「相手が百も承知である」という単純な事実である。19歳の大学生だって、未成年飲酒が禁じられていることくらい知っている。知っていてあえて飲んでいるのである。それをまるで知らないかのように啓蒙しにやってくるから、イライラする。しかも、「未成年飲酒はやめた方がいいんじゃない?」という提案のかたちではない。「やめるべきだ」というステートメントなのだ。相手の判断というものを尊重していない。彼らはまるで裁判官のように宣告を発し、そしてそれが実行されなければ法廷侮辱罪を適用しかねない。
何より彼らは「目の前にいる友人を尊重する」という気持ちに欠けている。友人の過ちを指摘するに、礼節を以ってしないというのはいったいどういうことか。
ジョークに、こういうものがある。ある男が、庭の境界線について隣人といさかいになり、弁護士に相談した。「あんたなら、こんな時どうするかね」。弁護士は言った。「私なら、隣人に酒の一杯もおごってやって、一緒に酒を飲んでうまくやりますよ。しかし弁護士として言わせていただけるなら、ぜひ相手を訴えるべきです。さてそこで料金の相談ですが……」
これは「弁護士が他人の争いから利益を得る」という前提のもとのジョークである。しかし「賢い人間は法律に頼らない」という真理をも含んでいる。法律とは、「最後の最後、他にどうしようもない、という時まで頼らぬもの」なのではなかろうか。エセ法律家を根絶するたった一つの冴えたやり方は「資格無しに他人の違法性を指摘した者は死刑」という法律を制定することだ。するとあるエセ法律家がうっかり「他人の違法性を指摘」した途端、もう一人のエセ法律家が「君、それは違法だよ」と違法性を指摘する。それを別の一人が指摘して……と芋づる式に死刑が確定する。根絶するまでに、3日とかかるまい。
(2000.4.1)
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