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 PEANUTS
スヌーピーとチャーリーブラウンと仲間たち


 私は、ピーナッツコミックスのファンである。
 ピーナッツコミックスと言われて、何のことだか分かる人は少ないのかもしれない。だが、スヌーピーとチャーリーブラウンのコミックス、と言えば、誰もがああ、あれか、と思うに違いない。
 よく知られているものでも名前を知らない、というのはよくある話。だから、『ピーナッツ』というタイトルを知らないのもそれほど不思議とするには当たらないのだが、スヌーピーの場合さらに妙な事態が生じている。多くの人はタイトルを知らないだけでなく、内容もまったく知らないのだ。1度もコミックスを読んだことがない。ただ、キャラクターグッズとして知っているだけ、なのである。だから、ピーナッツの話をする時にはちゃんとした説明をしておかないと、とんだ誤解を生むことになる。
 わたしは、ピーナッツコミックスのファンである。こう言うと相手は「ピーナッツって何?」とくる。当然私はスヌーピーとチャーリーブラウンの、と答える。相手は、ああ、あれか、と納得したような顔をして、それから何とまあ、子供っぽいものを、と言いたげな顔で、ニヤニヤし始める。あるいは、ちょっとどぎまぎして「へえ、そうなんですか」と愛想笑いを浮かべる。どちらの場合も、考えているのは同じことだ。私がスヌーピーのパジャマだの、マグカップだの、枕だの、とにかくスヌーピーグッズをを身辺にずらりとならべ、至福の笑みを浮かべているシーンが、彼らの脳裏に浮かんでいるのだ。とんでもない話である。
 私が好んで集めているのは、コミックスただそれのみ、である。子供っぽいなどとはとんでもない。新聞に掲載されていた漫画であるから、大人が読んでも十分面白い。むしろ、子供には理解できないだろう。私も、内容がちゃんと分かるようになったのは高校の頃からだった。これを読んでおられる方々も、ぜひぜひ1冊手に取って、その魅力を理解していただきたいものである。

 古くはツルブックスという名前の薄くて廉価なシリーズが、50巻だか60巻だか出版されていた。今は、もっと新しい全集もの(1冊1000円程度)が10巻、それにテーマごとに集められた文庫がやはり10巻ほど出ていて、これらの新しいシリーズ本が比較的手に入りやすい。個人的には、全集をそろえたいと思っている。
 ツルブックスから出ていたものは、おそらく今新刊としては手に入るまい。古本屋で今でもたまに見かけることがある。初期のものは谷川俊太郎氏と誰だったかの共同訳、後半になると谷川俊太郎氏1人の訳となる(私が谷川俊太郎氏を知ったのは、この翻訳による。現代詩人の頂点の1人、として知ったのは、ずっと後のことだ)。各巻につけられたタイトルがなかなか秀逸で「負けるな! チャーリーブラウン」「おうちが火事だ! スヌーピー」など妙にテンポのよいタイトルが心に残っている。
 この本は英和対訳になっており、欄外に原文のセリフが書いてあった。現在手に入る他の本もおおむねこれと同様に、日本語訳と原文を両方載せている(ただし、最近では欄外が日本語である場合も多い)。翻訳がしにくい文章の場合には英語で読んだ方がニュアンスが伝わるから、という配慮のようだ。どうやら海外のコミックスを日本に移す際の一般的な形式らしい。英語の勉強にも、という売り込み方もあるらしいが、個人的にはあまり感心しない。勉強のために読むというのは、どうも楽しみを損なうような気がするからである。勉強というより、読んでいるうちにちょっと興味の湧いたフレーズを覚えるかな、という程度に考えておくのがよいのではないか。ピーナツブックスは純粋に楽しむもの、と思っている。
 話がそれてしまった。別に英語コミックスを読む心得を論じていたわけではない。

 とにかく、この際はっきりさせておきたいのが『スヌーピーがかわいい』という、大きな誤解についてである。これはとんでもない誤解だと思う。彼はピーナッツコミックス中で唯一のプレイボーイであり、突然戦争ごっこをしかけてくる容赦ない乱入者であり、飼い主の名前を覚えない不遜なペットであり、地下に何層にも広がる犬小屋を持ったぜいたく者である。これらの事実をふまえたうえで「やはり、かわいい」と主張するならともかく、イメージだけでそういう評判がたつのは苦々しく感じる(これにはもちろん、誤ったイメージで彼を売り出したキャラクター商品に責任がある)。彼に比べればチャーリーブラウンの丸頭の方がよほどかわいらしい。彼はあらゆる迫害を一身に背負った不幸な隣人であり、妹に尊敬されない憂うつな兄であり、心優しく優柔不断な少年なのである。スヌーピーグッズなどにうつつをぬかすくらいなら、せめてチャーリーブラウンを愛していただきたい。あるいはライナス、シュレーダーあたりでも。
 そしてぜひ、コミックスを読んでみていただきたいものだ。


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