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 Tea or Coffee
紅茶とコーヒー
 まあ、1杯いかがですか?


<Tea or Coffee?>
「紅茶とコーヒー、どちらを好きか?」という質問は、僕にとっては正に難問と言うほかない。僕はどちらも大好きだからだ。
 私の中で、コーヒーと紅茶とどう違うのか。缶飲料に関してはまた少し別なのだが、基本的には、食事とか、雰囲気とかとの関係である。食後の1杯はほとんどの場合コーヒー。仕事の合間に飲むのもコーヒーが多い。もちろん眠気を払うときにはコーヒーとなる。対して、休日に飲むなら紅茶だ。友達と喫茶店でゆっくり飲むのも紅茶だ。つまり僕にとってコーヒーは半実用品なのだ。紅茶は完全にレジャーのもの、すなわち贅沢品に属している。
<Tea>
 いろいろ異論もあるかもしれないが、紅茶の喜び、ということになればこれはまず香りではないかと思う。紅茶を飲んで「おいしい」と言う場合、90パーセントは香りがおいしいのだ。紅茶の缶を開いた時点でぱっと香りが広がるようなら、それだけでその紅茶に対する期待は倍になる、と言ってもいい。個人的には渋味が少なく、ミルクによく合うセイロン、アッサムあたりの産が好みだ。もっともこれらの葉っぱもさらに細分化できるらしい。ニルギリス、ヌワラエリヤといった区分までいくと、とても僕には区別がつかない。
 香りと言えば、フレーバリーティーとかハーブティーとか呼ばれるものもまた異なる趣がある。紅茶の落ち着いた雰囲気に対して、こちらは実に華やかで種類も多い。ミントやカモマイルといったオーソドックスなものが僕の好みである。
 名のある紅茶屋ともなると、いろいろな葉っぱやハーブを使ったオリジナルのブレンドを持っていることもある。そういう店に行って、壁一面並んだ紅茶缶を眺めるというのもなかなか趣があるものだ。いつもそういう店では、まだ飲んだことのないブレンドを頼もう、と思うのだが、あまりに種類が多くて前回何を頼んだのか思い出せないことがほとんど。ブレンドの名前もいろいろで、"Magical"とか"crescent"などの単語を使った詩的なものがたくさんある。もっとも、名前の印象とはガラリと違うお茶が来る場合もあって、それはそれで楽しい。
<Coffee in Restaurants>
 僕は、コーヒーのブレンドについてはほとんど分からない。ネスカフェに言わせれば「違いが分からない男」というわけだ。だから、好みといっても紅茶のように銘柄を指定するわけにはいかず、どうしても抽象的な表現になる。酸味が少なくて、しっかりした香りのするものが僕の好みだ。これは入れ方も大きく関係あって、同じファミリーレストランでも日によって好みの味になっていたり、好みでなかったりする。
 喫茶店やレストランでは、いいコーヒーを出すかどうかは重要なポイントだ。おいしいコーヒーを出すレストランは、それだけでも価値ある存在となる。紅茶は、ハズレといってもそれほどひどいものはない。せいぜい、味や香りが薄いだけだ。だがコーヒーのハズレの中には耐え難いものもある(缶コーヒーの半分以上は僕には飲めない代物である。とはいえその缶コーヒーを好んで飲む人もいるのだから、これは純粋に個人的な意見だ)。そういうわけだから、レストランでコーヒーを頼む時には常に「のるかそるか」というスリルが漂う。イタリアンレストランではたいていの場合それほどハズレはない。エスプレッソの影響をひきずってか、イタリアンレストランではおおむね濃くて強い、僕好みのコーヒーにありつける。
<Hot or Ice?>
 紅茶、コーヒーは基本的にホットで飲む。ことにコーヒーは夏でもホットだ。アイスでは、たまに香りの強いアールグレイかミントティーがおいしいくらいだと思う。
 僕が冬を好むのはいくつかの理由があるが、その理由のひとつにこういったはホットドリンクを挙げてもいいかもしれない。冬、寒い夜、食卓にぼへぼへとさまよい出て、床の冷たさに震えながらお気に入りのコップを用意し、いい香りのお茶の葉を用意し、粉末クリームをテーブルにドンとすえる。これほど穏やかで、のんびりし、またほのかな期待に心躍らせる時というのは、他にはあまりない。そしてまた、そうやって凍えながらポットに近づき、当然そこにたっぷりあると信じていたお湯がまったく残っておらず、寒い中ほこほことお湯が沸くのを足踏みしながら待たねばならない現状に気づいて愕然とする、という喜劇的な瞬間に立ち会うということも、また、なかなか貴重なことだ。それに、お湯は沸かしたての方がおいしいことでもあるし......。
<Milk or Cream?>
 最初に断っておくのだが、ミルクとクリーム、私はあまり区別していない。だから、この節でも、このエッセイ全体でも、その2つは対して違いがないものとして扱っている。
 私は、紅茶とコーヒー、どちらに関してもミルクを入れるのが好きだ。対して砂糖はほとんど入れない。たまにはミルクを入れなかったり、砂糖を入れたりもするのだが、たいていはwith milk, without sugarである。
「紅茶にレモンかミルクをお付けしますが」という選択肢ではまず議論の余地なく「ミルク」になる。特に紅茶に関してはイギリスへの関心とも関係があるので、アメリカ式のレモンティーではなくイギリス式のミルクティーがいい。当然、家で飲む時でもかなりたっぷりと明治のクリープを使うことになる。本当は液体のちゃんとしたクリームを使いたいところだが、家族でクリームを使うのは僕だけ。しかも遊びまわっていてなかなか家で紅茶を飲むことも少ないので、液体では使い切る前にどうかなってしまいそうだ。値段も高いし。
 「コーヒーにレモンかミルクをお付けしますが」と言われたことは今だかつてないが、コーヒーにも基本的にミルクないしクリームを入れる。時々は、エスプレッソにさえ入れたくなる。ただ、薄くて酸味の強いブレンドに入れるといっそう酸味が気になってまずくなることがある。だがたいていの場合、そんなまずいコーヒーにもミルクを入れてしまう。それは、もしかしたら、ミルクによって味が急変し、突然おいしくなるという可能性に最後の望みを託すからだ。残念ながら、あまりそうなった例はないのだが。まずいコーヒーにあたった人間ができる事はたった2つ。最後の望みをミルクに託すか、ウェイトレスが間違ってテーブルをひっくり返すよう祈るか、どちらかだ。
<espresso>
 エスプレッソの流儀という奴を、友人に教わった。エスプレッソは、英語で言えばexpressだから「手早いやつ」という意味になろうか。もともと時間をかけずに飲むものなのだ。
 小さなカップにぎゅっと詰まったエスプレッソはそのままで飲むと本当に苦い。そこで、砂糖のかたまりをザンブとほうり込む。そうしてかき混ぜないでふた口か三口で飲み干す。そうすると、底に溜まった砂糖の固まりとあいまって、後味はそれほど苦くない。
 これがエスプレッソの飲み方らしい。本当に時間はかからない「手早い」やつだ。これを聞いてからというもの、これを試したいがために、エスプレッソを頼む機会が増えた。
 出社前に、3分だけ寄り道してエスプレッソで眠気ざまし、ということも、たまに、ある。会社には、内緒だけどね。
<the Best Cafe>
 もっとも僕が好む喫茶店は、東急東横線の学芸大学にある。「ラヴィニア」という名前の喫茶店だ。ここの応対はすごく気持ちがいい。内部の雰囲気もすごくいい。明るく、花が飾られており、毎日来ても飽きない風情がある。紅茶もおいしいし、ポットでたっぷり来る。基本的にイギリス式ミルクティーだ。
 この店のケーキは絶品である。世にこれ以上のケーキはそうそうない。一体どこでこの技を学んだのかと不思議に思うほどのおいしさ。と書くとややおおげさか? しかし本当においしいのだ。
 おみせの人も本当にすごく親切で、くつろげる。素晴らしいお店だ。僕の大のお気に入りである。

'98 2/11


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もがみたかふみ
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