Solitaire's Company/stories/RONGO/

RONGO(仮称)



 [ACT 1]
父の死まで。

[1.1]岩田秀一の死(9月5日)
 藤沢のオフィス。
藤沢モノローグ「高校後輩の、岩田秀一が死んだ。俺はその葬式で、ずっとあることを考えていた。彼が死んだのは、あの話と関係があるのだろうか? いや、そんなはずはない。死因は普通の心筋梗塞だということだった。彼は、バイクに乗って信号待ちの間に、突如心筋梗塞に襲われたのだ。だが生前に彼がしていたあの話……自分は1週間以内に死ぬ予定だと言っていたあの他愛もないジョークが、現実になるとはなんという偶然だろう。……だが、本当に偶然だったのだろうか?」
 Macintoshの前に座っている藤沢。画面に表示されているのは、顧客リスト。顔写真、住所氏名年齢のような通常のデータの他に、必要としている臓器、入院先などが書かれている。
 次に表示されるデータは、近日死亡する可能性のある患者リスト。TopSecret。
 電話が鳴る。
藤沢「はい藤沢です」「ああ、お前か。久しぶりだな。おう、一応元気だよ」「ん?」「うん、うん」「分かった。じゃあ、今日仕事が一段落したら行く。5時すぎくらいかな」
 女の助手がお茶を持って入ってくる。
藤沢「またここを出る時に連絡するよ。ああ、じゃまた」
電話を置く藤沢。
助手「(お茶を置きながら)どなただったんですか?」
藤沢「友達。今日来て欲しいというから、4時過ぎにはここを出るよ。そしたら君も今日は帰っていい」
助手「じゃ、今週の分の顧客リストは、明日集計しておきます」
藤沢「ああ、頼むよ。それから(卓上カレンダーをちらと見る)近い内に、鹿島医院とアポをとっておいて」
助手「わかりました」
 
[1.2]友人の部屋
東京24区内。中央区。夕暮れ時の、街の風景がゆっくりと流れる。風景が、あるマンションの1室に近づいていく。
 
藤沢、テーブルの前のソファに座っている。深刻な顔をして友人がビデオを手に居間に入って来て、テーブルの上にビデオを置きながら、座る。ビデオを一瞬見る藤沢。すぐに友人に目を転ずる。
藤沢「久しぶりだなぁ、この部屋に来るのも」
友人「まあな。お互い、忙しいわけだし。」
藤沢「なあ、急に、いったい何の用で俺を呼んだんだ?」
友人「こいつを見てもらいたかったんだ」
友人、黒いビデオテープを藤沢の方に押しやる。藤沢、手にとってラベルを見ようとする。ラベルなし。
藤沢「何が入っているんだ?」
困惑した表情の友人。
友人「それが……笑わないでくれよ」
藤沢「(促すように)何だ?」
友人「単純に言って、ホラー映像だ。だけど、そこらの安っぽい代物じゃないんだ」
藤沢、岩田秀一の話を思い出してピクッとする。
藤沢「ホラー映像? 火山の噴火シーンとかある奴か??」
友人「(あっけにとられて)知ってるのか?」
藤沢「高校の後輩が、見たと言っていた。婆さんが何かべらべらとしゃべったり、生まれたての赤ん坊とかが出てくる奴じゃないのか?」
友人「そう、そうなんだ。(ホッとしたように)じゃあ、その後輩はなんともなかったんだな」
藤沢「いや、それが、先週、亡くなったんだ。」
友人、青ざめる。
友人「……どうして死んだんだ? つまり、その、原因は?」
藤沢「心筋梗塞だった。偶然とはいえ……」
友人「(青ざめたまま)偶然じゃない」
藤沢「……まさか。そのテープは関係ないだろ。偶然だよ偶然」
友人「お前は見ていないからそんなことが言えるんだよ。こいつは……」
藤沢「関係あるっていうのか?」
友人「……こいつの呪いだ」
藤沢「呪いなんて」
友人「見れば分かる。こいつは、ただのビデオじゃないんだ。赤ん坊を抱くシーンでは、俺は自分の手がぬれているのかと思った。男が襲って来たところでは、強烈な悪意を確かに感じた。このテープは、本当に呪われてるんだ。しかも、どうすれば死なずにすむのかも分からない」
藤沢「え?」
友人「このテープの最後に、『死にたくなければ……』と文字が出るんだ。でもその後が消されてしまっていて、どうすれば死なないですむのか分からない。だから、お前の後輩も死ぬしかなかったんだ」
藤沢「(驚いて)消されているって? そんな馬鹿な!」
友人「どうしたんだ? お前の後輩の見たのと違うのか?」
藤沢「(手元のテープを見ながら)そこを消したのはその後輩だ。蚊取り線香のCMで消したと言っていた」
友人「そうだ、そのCMだ」
藤沢「まさか……その同じテープがこんな所まで出回っているはずはない! そいつは箱根の別荘地でそれを見たんだ。東京のど真ん中にそのテープがあるなんて」
友人「(沈黙の後、ポツリと)呪われているんだからな」
藤沢、テーブルの真ん中ににそっとビデオテープを置き、手を引っ込める。
友人「じゃ、その後輩はどうすれば死なないですむか知っていたんだな? どうして実行しなかったんだ?」
藤沢「そのテープを箱根の宿に置いてきてしまったんだ……だから、ダビングすることができなかった」
友人「ダビングしなければいけないのか?」
藤沢「『複製して人に見せること』。そう書かれていたのを、面白半分に消したらしい」
友人、黙り込む。
友人「チェインメイルの要領か……」
藤沢「そうだ。ダビングを繰り返したら、このテープが無数に増えることになる。後輩がテープの最後を削ったのは単純なイタズラだが、チェインメイルは悪質なイタズラだ」
友人「お前は分かってないんだ。このビデオはイタズラだの、冗談だのじゃない。これは、脅しなんだ。従わなければ、俺は殺されるんだ。お前の後輩のようにな」
藤沢「お前も心臓麻痺になるっていうのか」
友人「心臓麻痺でも、交通事故でも、なんだってありうる。どうやって死のうが、死ぬんだったら大差ない。」
藤沢「誰かにダビングして見せればいいじゃないか」
友人「そいつは死ぬかもしれないんだぞ」
藤沢「死なないかもしれない」
友人「死ぬ」
藤沢「そいつがまたダビングすれば……」
友人「少なくとも、死ぬ危険を冒させるなんてことは、できない」
藤沢「俺は、別に見てもかまわないぜ。ダビングすれば……」
友人「だめだ」
藤沢、考え込む。
藤沢「それほどまで言うんだったら、手がなくもない」

[1.3]藤沢の葛藤
 藤沢のオフィス。藤沢、Macintoshをいじっている。画面が映し出される。
条件をかけて検索。『条件:植物状態』 該当120件。『条件:都内』 該当24件。表示された中から、1件を選ぶ。
『藤沢 章二
男 68歳 子供2人
原因:交通事故による頭蓋骨損傷
家族の希望:安楽死
健康状態:高齢である以外は比較的良好……』
藤沢「やっぱり、これしかないか」
ノックの音。藤沢が顔を上げると、助手が書類を持って入ってくる
助手「先日、依頼に見えた方の書類をファイルしておきましたが……」
藤沢「ああ、子供の腎臓を探していた一家だね」
助手「ええ、早く見つかるといいですね」
藤沢「そう思うかい?」
助手「え? ええ」
藤沢「そのためには、誰かが死ぬかもしれない。医療業界からは、ハゲタカのように嫌われて、それでも早く見つかるといいと思うかい?」
助手「(考えながら)人間の中で、生きていられる命の数は限られていると思うんです。言い方は悪いかもしれませんけど、消えていく命を再利用するのは決して悪いことじゃないと、思います。先生は優秀な移植コーディネーターじゃありませんか。業界からは嫌われても、たくさんの患者さんから感謝されていますよ」
藤沢「そう……そうだな……(考え込む)」
助手「(にこにこと)最近、先生は考え過ぎですよ。コーヒーでもお持ちしましょうか」
藤沢「ああ……頼む。」
ドアに戻りかける助手。
藤沢「(決心したように)垣内さん」

[ACT 2]
少女との出会い
[2.](藤沢のオフィス。岩田秀一の死に関する詳細なデータ(ビデオの持ち主に送るためのもの)。藤沢の手元にビデオが届く(郵送または友人経由)。さまざまなデータを調べて、植物人間のリストを割り出す。少女Aの名前。)

[2.](夜の病院。少女の病室。ハンディビデオ。消去し終わっても少女は生きている。軽い驚き。本当にこのビデオは消えているのか?)
リストを手に病室にはいる藤沢。父親と同様、植物状態の患者にリモコンをもたせる。かぶさるように何人もの患者と藤沢のシーンが流れる。(ビデオの廻る音、事切れる患者の顔のアップ、家で真っ黒になったテープを確認する友人の姿など。ランダムに)

それに続く形で、患者である少女にリモコンを握らせる藤沢。ベットには”東美也乃”という名札、まだ若い少女の顔。首を振ると、藤沢は”仕事”を始める。
 真夜中の病院。ある病室の前で立ち止まり呆然とする藤沢の姿。
藤沢「そんな……まさかっ……」
病室に入る彼の前には東が前と同じままで横たわっている。手を取る。
藤沢「あたた……かい。……なぜ生きているんだ?まさか……あのビデオは消されてなかったのか?」
友人に電話をかける藤沢。
藤沢「一番最後に渡したテープは見るな!あれは消えてない!」
友人「えっ……ああ、あのテープ、違うのだったぞ?」
藤沢「え?」
友人「や、だから、あれ、なんかずーっと青空が映ってるだけだぜ?ま、真っ暗な画面見続けるよりいいけどな。」
東の病室に戻る藤沢。
藤沢「あれは……あのテープだ。間違うはずなんかない。どうして…….」
新たにリモコンを握らせる。見つめ続ける藤沢、テープの止まる音。リモコンを取ろうとして、少女の手に触れ、そのまま握る。
藤沢「…………..脈が…….ある…….?」

[2.](とりあえず、ビデオを持ち主に返却し、消えていることを確認させる。持ち主は、確かに消えて、「ひろびろとした青空」の画面が映っていたと話す。撮ったのは病室のはずだが? 藤沢は、少女の「念写能力」がリングに対抗できることに気づく。)

[2.](少女の知り合いの振りをして近づく。定期的に顔を出し、ビデオを見せる。そのうちに、彼女に回復の兆しが見えてくる。)
 藤沢の部屋。友人が青空のビデオを見ている。
友人「これで何本目だっけ?」
藤沢「たしか……16……かな。」
友人「そっか……女の子のほうは変化なし?」
藤沢「いや……それが…….。」

[2.]
ある夜の東の病室。突然ビデオが止まる。驚いて顔を上げ、様子を伺う藤沢。リモコンからはずれている手に気付く。
藤沢「ずれたのか…….。」
手をリモコンに戻す。
別の夜、東の顔を見つめる藤沢。突然、まつげがふるえたのに気付く。見つめ続けるうちに、唇にかすかな動きがみられる。

[2.]
再び藤沢の部屋。
藤沢「どうも..彼女は回復しているように見えるんだが……。」
友人「それってさあ、彼女はもう、植物状態じゃないって事だろ?や、脳死状態じゃないってことはさ、ビデオ消させちゃまずいってことじゃないの?」
藤沢「……やっぱり.……そうだろうか……。でも……むしろ僕には逆に思えるんだ……。」
友人「逆?」
藤沢「彼女は、ビデオを消せば消すほど回復している気がする。それに、彼女は消すだけじゃなくてビデオに青空を映すんだ。…………もともとの呪いのテープそのものがどうやって写されたのかは知らない。でも、呪いの力をそそぐ奴がいるのなら、浄化の力をもつ奴がいたっておかしくないんじゃないだろうか……。」
友人「それがおまえの出した答えか?」
藤沢「……はっきりとは言えないけどな。」
友人「ま、いいや。患者にしろ、これを見た奴にしろ、誰かが死ぬよりはこれを続けるほうがましだろう。答えがどうあれ、俺たちは彼女に頼るしかなさそうだしな。」
藤沢「…………。」

[3.]
昼間の東の病室に紙袋をもった藤沢が入ってくる。ベットで本を読んでいる東。
東「藤沢さん!」
藤沢「起きてたんだね。」
東「もう、ほとんど普通みたい。でも”普通”になったせいで異常扱いだけど。」
藤沢「またいろいろ検査されてるの?」
東「もう実験動物みたい。」
藤沢「……。」
東「何たって、”奇蹟の脳死患者”ですもの。……あっ、やだ、藤沢さん、違うの違うの。なにか難しいこと考えてるでしょう。駄目ですよー、考えすぎちゃ。」
藤沢「”普通に”治ってれば、こんなふうに病院の研究対象になって閉じ込められなくてすんだのに……。」
東「またー、すぐそうやって暗いほうに考えるー。藤沢さんの”お仕事”がなかったら、私ずうっと……たぶん……。ね?」
藤沢「そのうえ……このうえまだ……」
東「だーかーらっ、それは何度もお話したでしょう?私しか、それをできないんですから、私が、するの。むしろそんな名誉ある仕事を頂けるなんて……なんてね。あーもうっ、少しは笑ってくださいよぉ。さっ、今週は何本集まりました?」
紙袋をとり、開ける東。ビデオテープが二本と、小さな紙袋が入っている。
東「これ、なんですか?」
藤沢「……君に。」
東「え?私に?わあっ、開けますね?」
リボンをするすると引き出す東、出しきると5mはある。
藤沢「……病院にはお洒落なものが売ってない、って言ってたから……。」
東「だからリボン? でもこの長さ。」
藤沢「え、あ、いや、結んだり通したり切ったり、いろいろ難しいみたいだから、普通よりも長く……、女の子のその、髪の毛の……ええと、よく……わからなかったんだよね。」
東、噴き出しながら
東「これだけあれば当分遊べそう、なあんて。ありがとうございます。」

[3.]
ナースセンター、花束をもった少年。
「あの……東美也乃さんの病室はどこですか?」

[3.]
東の病室、少年(川崎)がきょろきょろと誰もいない部屋を見回している。売店で髪ゴムを買い、はしゃぎ戻ってくる東と藤沢、少年を見て。
藤沢「お?」
少年「あっ」
藤沢「あ……もしかして……あの、僕、お邪魔かな?」
東「えっ? あ、そうじゃないですよ。ええと……」
川崎「あの、東さんですか?」
東「私? あ、はいそうです。あの……。」
川崎が無言で花束を握り締めるが、様子が何かおかしい。花束に触れようとする藤沢、と、いきなり川崎は花束にしのばせておいたナイフを引き出し、東に襲いかかろうとする。それを止めようとする藤沢との乱闘。戦いながら川崎は時にぼそぼそと、時に大声で”東を殺さないと自分が死んでしまう”という意味のようなことを言う。 少年を取り押さえて 
藤沢「なぜだ、どういうことなんだ!」
川崎「誰も……信じやしないよ。」
藤沢「言って見ろ!」
川崎「殺されちまうんだよ! その女を殺さないと……。」
藤沢「ど……どうして。誰がそんな……。」
川崎「ビデ……」
藤沢「ビデオか? あのビデオが関係しているのか?」
川崎「あのビデオって……あんた、知ってるのか? あのビデオの事、知ってるんだな? 助けてくれ、助けてくれよぉ……。」
泣き出す川崎、遅まきながら騒ぎを聞いたナースが駆けつけてくる。
ナース「あの……何か……?」
びくっとする川崎。 
藤沢「ああ……見舞の客が……ちょっと興奮しましてね……。何せ……。」
東「何せ、私ってば、三年も眠ってたでしょう?もう実際に動いてる私を見て感極まってこの騒ぎですよー。すみませーん。」
 立ち去るナース。泣きやむ川崎に、藤沢が向き直る。
藤沢「……話を、聞かせてくれ。」
川崎「ビデオ、見ちまったんだよ。わかるよな。」
藤沢「ああ。」
川崎「死にたくないんだよ、俺だって。」
藤沢「それと彼女を殺すこととどういう関係があるんだ?」
川崎「知ってんだろ? 死にたくなければ……ってラストにでてくんじゃねーか。」
藤沢「知ってるよ。ダビングしてほかの人にも見せろって言うんだろ?」
川崎「なに言ってんだ?」
藤沢「何っ……て。」
川崎「違うだろ! ”この女を殺せ”だよ!」
東「まさか…….それが、私?」
藤沢「そんな! そんなことって!」
川崎「俺だって、ぎりぎりまで迷って……」
突然悶え苦しみ出す川崎、(ビデオの画像などランダムに飛び交う)二人の前で死ぬ。
藤沢「……すぐに支度を。」
東「え?」
藤沢「そのビデオが一本だけだとは限らない.……とりあえず逃げるんだ。……すぐに。」

[4.]
藤沢の部屋。チャイムがなる。東は怯えた風に隣の部屋へ隠れる。
藤沢(インターフォンに)「はい。」
友人「藤沢? 俺だ。」
ドアをあける藤沢。
友人「彼女は?」
藤沢が目で隣の部屋をみる。友人、呼びにいこうとする藤沢を押しとどめて
友人「あのテープ、やっぱりあれ一本じゃなかった。」
動きの止まる藤沢。
友人「これは、通常のタイプだ。そしてこれが、あの例の少年の奴。そして……これが、新たに出てきたテープだ。この子のリミットは今日の十時。あまり時間がない。こいつを一番先にやってみてくれ。」
藤沢「……わかった。」
隣の部屋に入っていく藤沢。と、チャイムが鳴る。
友人がドアをあけると少年が二人。
友人「おまえ……。」
少年1「僕の……僕のビデオ……どうなりました?」
友人「あ、ちゃんと、大丈夫だよ。少なくともできる限りのことはしてる。」
少年1「できる限りって、それじゃ駄目なんですよ!」
友人「それ以上何ができるっていうんだよ!」
少年「……すみません……。」
友人「大体どうしておまえがここにいるんだ?」
少年1「本当に何かしてくれてるのか不安になって……ビデオはここに送れってもらった住所をみて、あなたを見つけて……。」
友人「そうして俺をつけてきたってわけか。」
少年1「僕のタイムリミットはもうすぐなんだ! ねえ、ここに何かあるんですか?ほんとに僕は助かるんですか?」
少年2「やっぱりあの女を探して殺すほうがよかったんだよ。こうしてる間にも時間はなくなってるんだ。」
友人「おまえも、あのビデオをみたのか?」
少年2「ああそうだよ。だからこんなところにいるんだよ。あーっ! 無駄足っ! 畜生っ! どうしたらいいんだよ!」
友人につかみ掛かる少年2。藤沢が部屋から出てくる。
藤沢「少し落ち着いたらどうだ……無駄足も何も、この男にビデオを渡せば助かるって噂が君たちの間では流れているんだろう? だから君だってビデオを渡したんじゃないのか?」
少年1「…………。」
藤沢「そっちの君も、だからわざわざ彼について来たんだろう?」
少年2「……。」
藤沢「そんなことをするために……ここまで……きたわけじゃないだろう。」
少年1「時間が! もうないんだ!」
友人「だから! ちゃんとやってるっていってるだろう!」
少年1「ちゃんとやってる? 僕達としゃべってるだけじゃないか! 何してるっていうんです!」
少年2「(藤沢に)あんたが何かできるのか? あの部屋で何かしてたのか?」
土足のまま上がり込もうとする少年2。それを押しとどめようとする藤沢と友人。その隙をみて少年1が部屋にはいる。驚愕の表情の東。
少年1「あ……うわぁぁあ!」
あとを追う残りの三人。少年1は狂ったように壁にへばりついて叫んでいる。少年2と東の目があう。
東「いやぁっ!」
少年2「ここにっ! ここに! いる! いる!」
襲いかかろうとする少年2と、藤沢達との乱闘。突然、デジタル時計のベル。10時を告げる音。はっとして少年1に目をやる藤沢。狂い続け、壁に身体をうちつけ続けている少年1の姿。
藤沢「まてっ! 待てっ! 見ろっ! 自分の目で確かめろっ!」
少年2の首を無理やり少年1のほうに向ける。
藤沢「彼のタイムリミットは10時だった、彼は助かったよ!」
時計に目をやる少年2、友人が彼を取り押さえる。力なくなり、
少年2「あれで……助かったって言うんならな。」
叫び続ける少年1。

[4.]
都市でビデオを回収する少年達の姿。山奥のコンドミニアムでビデオを消し続ける東の姿、それを見守る藤沢。自宅で青空画面を確認する友人の姿など。

[4.]
コンドミニアム。
藤沢「美也乃……ちゃん?」
巻きもどしに入っているビデオの前で眠りこける東。その髪に手をやって
藤沢「……結局……閉じ込められて……。君は……。」
かちん、とビデオが止まる。テレビをつける藤沢、何かお笑いの番組をやっている。
「これだけが楽しみじゃ……病院と変わらない……。」
チャンネルを変える藤沢。音もなくビデオデッキが再生を始める。きれいな青空が映る。魅入る藤沢。と、突然、あの呪のビデオが始まる。目をそらせずに恐怖の中見続ける。
藤沢「あ……あっ……。」
藤沢の声に東目を覚ます。テレビはザーッという音と黒い画面。
東「藤沢さん?どうしたの?」
藤沢「見……見た…….みたんだ……。あんな……あんな.……。」
東「見た……ってビデオを?」
東「君を知らなかったら……僕だってビデオをダビングしたかもしれない……君を手にかけかねない…………すざまじ..かった……。」
東「それを最初に消しましょう。いれてください。」
藤沢「もう入ってるよ。最初に青空が映ってた。君が消しかかっていた奴だよ。」
東「消しかかってた?」
藤沢「うん」
東「それは……」
藤沢「うん?」
東「それは、すでに消したもののはずです。今ここに入っていたものですよね?」
藤沢「……うん。」
東「それ……それって……。」
テレビを消し、ビデオを巻きもどし、消去ボタンを押し始める東。
藤沢「あのさ……。」
東「ご免なさい。黙ってて下さい。」
沈黙の数十分。
東「消えた……はずです……。」
藤沢「……見てみる。」
東「藤沢さん!」
藤沢「一度も二度も同じだよ。」
テレビをつけ、ビデオをつける。青空の画面、二人ほっとした顔を見合わせた瞬間、突然画像が切り替わり、呪のビデオになる。
東「うそっ!」
藤沢「見るなっ!」
東の視界を抱きしめて奪う藤沢。その下から腕だけ延ばし、テレビを止める東。二人の沈黙の中、ビデオの回る音がかたかたとひびく。

[4.]
コンドミニアムの台所。テーブルを挟み向かい合う二人。コーヒーがのっている。
東「とにかく、やるしかないです。」
藤沢「……。」
東「私、藤沢さんに殺されてあげるわけにいかないですもん。(藤沢の顔を見て)あ、やだ、また難しいこと考えちゃ駄目ですよ。」
藤沢「……油断……してた……。」
東「あのビデオ、最初のほうは私の絵でした。つまり、少しは消せてるってことですよ!大丈夫、何度かけても、私が消します。」
藤沢「……美也子ちゃん。」
東「それにね…………。」
藤沢「ん?」
東「藤沢さんがいなくなったら、私どうしたらいいんです?」
藤沢、幾分照れた表情。
藤沢「え?」
東「あーっ、いま勘違いしたでしょう?そんな意味じゃないですもーん。」
藤沢、困惑笑い。
東「やっと笑った。」
藤沢「……からかったの?」
東「でも本心ですよ。私、藤沢さんがいなくなったら、戦う自信はないです。だから、これは私のためでもあるんです。いえ、私の戦いです。」
藤沢「…………」
東「私とビデオと、どちらが藤沢さんを手にいれるか、ですね。」
藤沢「……ごめん……本当は僕が君をまもらなきゃいけないのに……。」
東「なら、生きてください。私に、やらせてください。」
藤沢「…………」
東「生きて?そして私を守ってください!……怖い、怖いんです、本当は! だって、どんどん世界が私の敵になっていく気がする。藤沢さん、藤沢さんまでこんなことになって! 藤沢さん、お願い、どんなことがあっても味方でいてください! 私できる限りのことをするから! 藤沢さんは狂わないでね? 死なないでね? お願い、私にはもうここしかないんだから。助けて、藤沢さん! 藤沢さん……怖い……
怖い……嫌だ……助けて……。」
泣きじゃくる東。
藤沢「守る……守るから……ごめん……ごめん……..ごめん……。」

[4.]
ビデオを消し始める東。日を重ねるごとに着実に青空が増えていくのを藤沢が確認し
、二人の顔に笑みが戻る。しかし消す度に体調を崩してゆく東。タイムリミット前日
の晩、東は高熱を出し、倒れる。東は呪のビデオに出てくる台詞をうわごとのように
つぶやいている。刻々と過ぎる時間、必死に看病する藤沢の様子。

[5.]
翌朝、眠りこんでいる藤沢。ぱち、と目をあける東、ゆうるりと身体を動かす。藤沢
も目覚め。
藤沢「あっ……美也乃ちゃん。よかった……目が覚めて……気分は? ああ、でも、悪いけどあまり時間がないんだ。もし……」
東、藤沢の首に手を回し、抱きしめる、と思いきやいきなりみぞおちを蹴る。せき込む藤沢。東飛びかかり、首を絞め始める。
東「よくも……私の可愛い子供たちを…………」
せき込む藤沢。東と目があった瞬間、呪の画像が直接脳裏によぎり始める。
東「ふふっ……ふふふ……。」
目を見開く藤沢、東の目と呪のビデオの画像がシンクロする。自分の老化してゆく姿が遠くから見え始め、近づく。恐怖に叫びを上げる藤沢。叫び声と重なり、老化した自分も口をあける。東、突然震え出す。身体のコントロールを失ったかのような動き。
東「いやあっ!」
突然、東が自らの目を両手で塞ぐ。
東「目をみないで、見ちゃ駄目!逃げて藤沢さん!」
東、目を抑えたまま部屋のなか叫びつつ暴れ回る。
東「邪魔だ!」
の声とともに、自らの腕をテレビにうちつける。腕の折れる音、
東「きゃああああ!」
気絶するかのようにぐったり倒れた東の目がまた開こうとする刹那、そこから必死で目をそらす藤沢。腕をぶらぶらとさせながら藤沢に向かい来る東、目を見ずに必死に応戦し、逃げる藤沢。
東「死ねばいいのよ!みんな……おまえも、この女も、食らい尽くしてやる!」
もみあう二人、ビデオのリモコンが飛び、スイッチが入る。テレビに写る青空。重なる東の声。”生きたい…….生きたい……”
(以下、未完のまま)


Solitaire's Company/stories/RONGO/

Teruyuki Shimbo
solitair@wa2.so-net.or.jp