Solitaire's Company/stories/Ring Of Light/
とある乞食が、ヒカリの指輪を持っている。その指輪は「罪が許された者のために」と彫られており、大変貴重なものだということだった。彼はこんなふうにして、その指輪を手にいれた。
ひとりの男が、教会に押し入って指輪を盗み出そうと考えた。それは「ヒカリの指輪」と呼ばれるものだった。その指輪は「罪が許された者のために」と彫られており、大変貴重なものだということだった。男は、その指輪を手に入れ、売りさばいて大金を儲けようと考えていた。
彼は夜中に教会に忍び込み、展示室に侵入した。思った通り、教会の警備は手薄でほとんど無いに等しかった。お人よしどもだからな、と男は低くあざ笑った。
指輪が展示されているガラスケースをたたき割り、指輪をつかむと、外へ走り出る。誰かが起きてきて、展示室で騒ぎ始めている。男はせせら笑った。俺様はここさ。もう追いつけないよ。
教会の門の外に走り出て、明るく街灯に照らされた広場に出た。こんな時間に普通の人はなく、行く場所もない乞食どもだけがたむろしていた。明るい場所に出たので、男は指輪を取り出してあらためた。
あっ。男は低く叫びをあげた。ニセモノだ。確かにそうだ。間違いない。ちくしょう、お人よしどもめ。何が「人を疑うな」だ。警備が手薄なのも当然だ。ニセモノ。ニセモノか。ちくしょう。
男はそばに物ごいに来た乞食にその指輪を放ると、追っ手を警戒して走り出した。
男には追っ手がつき、素性もすべてバレてしまった。あちこちに手配がまわり、男の心が休まることはなかった。定職につくこともできず、部屋を借りることもできなかった。誰を信用することもできず、手持ちの金も底をつき、いつしか男は身をやつし、乞食同然の生活をするようになった。10年もの間逃げ回り、男はもう自分がどこを歩いているのか、今がいつなのかさえ分からなくなっていた。
ある街で、男は広場の隅でうとうとしていた。ふと目を覚まし、男は立ち上がって伸びをした。もうすっかり乞食の生活にも慣れてしまった。ひげをぼうぼうに生やし、すっかり乞食らしくなった男はあくびをしながら、ふと一人の若い男が広場に駆け込んできたのを見た。男は物乞いをしようと、若者に近づいていった。
若者は、街灯の灯かりで手に持った何かを調べていた。そして、低く毒づいた。ニセモノ! ニセモノか! ちくしょう! そして腹立たしくて仕方ないというように、その手に持った何かを、乞食に向かって放った。乞食は自分の足下に転がったそれを、拾い上げた。
それは、ヒカリの指輪だった。乞食は、それをじっと見つめて、そしてハッと気がついた。ホンモノだ。確かにそうだ。間違いない。乞食はびっくりして若者に声をかけようとして、言葉を失った。
血走ってぎょろぎょろと辺りを見渡す目。ふてぶてしい口もと。血の気の無い顔……ホンモノとニセモノの区別もつかない、哀れな若者。あれは……。
気付くと若者はすでにどこにもおらず、乞食の手には小さなヒカリの指輪が残されていた。乞食は考え考え、それを持ったまま広場を出た。足は自然に道をたどり、いつのまにか、あの教会の前に立っていた。乞食は、ヒカリの指輪をそっと教会の郵便受けに入れると、その場を離れて歩き始めた。彼は、何か嬉しくて、鼻歌を歌い始めた。
乞食の指には、誰にも見えないけれども、ヒカリの指輪がはまっていた。その指輪は「罪が許された者のために」と彫られており、大変貴重なものだということだった。これが、乞食が指輪を手に入れたいきさつであった。