Solitaire's Company/stories/a man who became the atomic plant//bottom/

a man who became the atomic plant
原子炉になった男
(2001年特別SF風味掌編)


02「なぜ僕は僕に」

 その日、僕が彼女にフられたのは、朝のことがあったからだとは思わない。僕が原子炉になったから、というのも違うと思う。それどころか、僕がフられたのが、正確にその日だったのかどうかもわからない。原因もわからないままだ。僕が、僕でなかったら、もう少しマシだったのかもしれない。
 だけど彼女は僕をフったし、僕は彼女にフられた。あの電話を最後に、彼女は僕に連絡をしなくなった。僕が連絡をしたのが2日後だったか、3日後だったか、ともかくその時に彼女は僕にキチンとした説明をして、それで僕らは終わった。でも、なぜかはっきりとは言えないが、実質的にはその日に僕はフられたのだと思っている。僕が原子炉になったその日に。
 なぜ、僕は原子炉になってしまったんだろう? いや……なぜ、僕は僕になってしまったんだろう? 僕には何もわからない。僕がもし、まったく違う僕だったら……そんな仮定に何の意味があるかわからないが……もし、まったく違う僕だったら、彼女は僕をフらなかっただろうか? それとも、それはただのタイミングの問題だったのだろうか。彼女の人生に「男をフるタイミング」が決まっているのなら、僕はそこに割り込んでしまったのか。僕が彼女の人生に関わってしまったタイミング。彼女が僕の人生に関わったタイミング。わからない。僕には何もわからない。
 でもとにかく僕は僕で、彼女は僕をフった。僕は彼女にフられた。原子炉としての僕。それが彼女の代償に得たものだとすれば、これほど理不尽な人生も無いだろう。僕がいつ原子炉になることを望んだ? 一度でも? もちろん僕は一度も望まなかった。僕が望んだのは彼女だった。でもそれはもう戻らない、彼女が望んだのは、僕じゃなかった。彼女はもしかしたら、僕を失った代償に原子炉を得ただろうか? ふとそんなことが頭に浮かんだ。でも彼女は失ったんじゃない。捨てたんだ。だから彼女はもう代償を受け取ったはずだ。「僕からの自由」という代償を。
 僕は、原子炉になったその日に、彼女にフられた。それが僕の原子炉としての第一日目だったのだということを、僕は疑わない。その後も僕は、放射能漏れを起こすこともなく、平穏な毎日を送っている。今日も3食すべてを、規則正しくエネルギーに変えた。


Solitaire's Company/stories/a man who became the atomic plant//top/
Solitaire's Company
もがみたかふみ
solitair@wa2.so-net.ne.jp