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狭くても庭

私の庭は「庭」と呼ぶにはあまりにも狭いのですが、ベランダのプランターひとつでも植物が安らぎを与えてくれるなら、庭と呼んでもいいのではないかと思うので、私のお気に入りのあの場所を(わずかな植栽スペースですが)庭と呼んでいます。
漬物樽やさかなのトロ箱に植えられた花にでも私たちは感動することができます。それが、レンガ積みの花壇だったり、デッキにおかれたテラコッタの鉢だったりすると、もっと感動するでしょう。ガーデニングブームは町の景観を変えました。ママチャリでの買い物帰り、ちょっと遠回りして新興住宅地を通り抜けるのは私の楽しみのひとつです。色とりどりの花、工夫された植栽。新しい園芸品種。園芸資材。さながら見本市のような様相で飽きることがありません。
翻って、わが庭は、なんと、とりとめもなく雑多な植物が無計画に植わっているのでしょう。冬の間に計画を立てても、如何せん、どこに何が植わっているか、私自身把握できていないため、春になって「あれ、こんなところにチューリップ植えたっけ?」ということになってしまうのです。
いつのころからか、雑誌に出てくるようなおしゃれな庭は諦めました。子供のおもちゃが転がっていたり、洗った上靴が木の枝に引っ掛けてあったりする庭でいいと思うようになりました。自分のライフスタイルに合わないガーデニングはシンドイですから。幼い子供が思う存分土遊びができるようにと、可能なかぎり土を残しました。
その結果として、草むしりの大変さと引換えに私が得た様々な出来事についてかきとめておきたいと思います。

もうすぐ春

野生の水仙 以前は冬の屋外は全く花がない状態でした。さざんかや椿もなく、常緑の木も少ない私の庭は冬はほんとに何も見るべきものがありませんでした。
今はポット苗で買ってきたパンジーやユリオプスデージーなど寒さに強い花が植わっていますが、それでも、やはり寂しいことに変わなく春が待ち遠しくてしょうがありません。
待ちに待った春がもうすぐそこにきてるよ、と教えてくれる花には、やはり特別な思い入れがあります。
私の庭でその役目をしてくれるのは、可憐で清楚な水仙の花です。毎年ひな祭りにはこの花が咲いていて、桃の花と一緒に生けます。ハサミを入れてますと、水仙のいい香りがして、ああもうすぐ春だな、と感じるのです。
実は、この花は我が家に1番先に根を下ろした花です。今の家に引っ越してきた時、何もないのは寂しいだろうと母が実家で野生化していた水仙(上の画像)を蕾が付いたまま掘りあげて、持ってきて植えたのです。厳寒期の植え替えは水仙にとっては酷なことですが、立派に花を咲かせました。
私は慣れない土地で暮らしていく不安を抱えていましたが、励まされたような気がしたことを憶えています。
水仙はその後15年間で増えつづけ、毎年、その香りでもうすぐ春だよ、と知らせてくれています。

草花で遊ぶ

花冠 3月の終わりになると、雪柳が咲き始めます。この花を一枝か二枝手折り、リースにします。細い針金などがあれば簡単にできます。雪柳のリースにレンゲやパンジーなど咲いている花を摘んで挿していきます。花の冠をつくるのです。
なんでも好きな花をとっておいで、と子供に言いますと、子供はたいてい遠慮します。なんとなく咲いている花をとることにためらいがあるのですね。そこで、私は花をとる時のルールを決めています。たくさん花がある時は満開の花をとってもいい。少ししか花がない時は盛りを過ぎた花をとる。蕾はとらない。野草をとる時は自分が使うぶんをちょっとだけ。遊びおわった草花は土に戻す。などです。子どもが花をとってきた時はその名前を教えてやります。特に雑草と総称される道端の草花の名前はこんな機会に教えてやりたいと思います。
雪柳のリースができたらピンで頭に留めてやると子どもが喜びます。花冠をかぶって嬉しそうな笑顔の写真がアルバムにいくつも残っています。かわいいかわいい、と親バカぶりを発揮しますと、子どもはその花冠を頭に載せたまま、買い物について行くと言ったりして、ちょっと困ったことになるので、程々にしておきます。
植物を手折ろうとすると、かわいそう、と言われることがあります。高嶺の花や保護区での採集はもちろんいけません。また、どこであっても根っこをとることは控えたほうがいいと思います。しかし、身近にある植物はただ愛でるだけでなく、一緒に仲良く遊ぶほうが、植物を知ることになり、ひいては自然を知ることになのではないかと思います。

庭に何を植えるか

15年程前、私の庭は、何も植わっていなくて、駐車スペースには舗装しやすいようにぎっしり小石が敷かれていました。今ならこんなふうにしたい、あんなふうにしたいと、具体的にデザインを思い描くことができますが、当時は「子どもと一緒に遊べる庭がいいな」という漠然とした理想しかありませんでした。株を分けてもらったり、植木市で苗木を買う時に いつも思ったことは、「この植物で遊べるかな?」でした。 その結果、実のなる木や小さな花がたくさん咲く木、などが選ばれました
苗木は大きくなって子どもが5歳くらいになると花を咲かせ、実をつけ、ままごと遊びの材料になりました。祖母の庭からわけてもらったハランをお皿にして、花の汁で色水を作ってジュースの代わりにしました。部屋の中でカラフルなままごとセットで遊ぶより、子どもは庭で遊ぶほうが好きでした。理想の庭に近くなったといえます。
田舎育ちの私は草花でよく遊びました。シロツメクサの花輪。笹飴。すずめのてっぽう、タンポポ、からすのえんどうの笛。笹舟。タンポポの水車。ソテツの手裏剣、虫かご。ススキの矢、ミミズク。オシロイバナの白粉。ホウセンカのマニキュア。どんぐりの笛、コマ。下校時に歩きながらそんな遊びをしたものです。子どもにもそんなふうに遊んで欲しいと思いますが、草花遊びの材料となると、簡単に手に入りません。まだ水田が少し残るこの地でも、野草の種類は限られ、年々減るばかりです。今高校生の娘が小学生の頃は数珠玉やアカマンマの生えてる秘密の場所、というのを知っていて、時々持って帰っていましたが、もうその場所は舗装されて駐車場になっているそうです。子どもと一緒に遊べる庭にしたいという理想を持ちつづけるなら、これからは、雑草と呼ばれ嫌われている植物を保護しなければならない、そんなことになってきました。

ヒヨドリの訪問

ひよどり子供の為に実のなる木を植えました。やがて子供が大きくなって ままごと遊びなどしなくなると、待ってました、とやってきたのは ヒヨドリでした。ご近所には大きなピラカンサやカナメモチの木が あるというのに、庭の南天を捕りに来るのです。
ヒヨドリはなかなかにぎやかなお客さまです。 庭に来る鳥の中ではいちばん大きいのに、エラソウに「どけどけ」と 言って、すずめを追い払って、私の中では印象が悪い鳥です。そんな ヒヨドリを窓のレースのカーテンの越しに1m足らずの距離から こっそり見てやりました。南天に止まってせっせと実をついばんでいます。 小首を傾げるしぐさの可愛らしいこと。「なんだ結構かわいいじゃないの」 と見直しました。
また、このお客さまは、お土産をたくさん持ってきてくれるのです。
フンに混じって運ばれてきた植物が、芽を出し、自然に庭の緑を増や してくれるのです。その数は、数え切れないくらいで、場所によってはある 程度まで大きくして何の木か見当がついたら、引き抜いてしまいます。その まま育てているものでは、山椒があります。筍の木の芽あえをするたびに、 「これはね〜鳥がね」と春の食卓の話題になります。他には、ピラサンサや 柘榴らしき木も残しています。花が咲いたり実がなるのはずっと先のことな ので、実際、何の木かよくわからないのですが育てているのです。タネを運 んできたヒヨドリのずっと先の子孫が食べることになるのでしょうか。

ムクドリの間借り

このお客さまは、にわうめの実を食べに来るだけでなく、我が家に間借り をするのです。庭のマユミの木に巣箱をかけてあるのですが、こちらは気 に入らないらしく、開けた雨戸の内側と外壁との隙間に巣を作るのです。
ある日のこと。家のまわりを掃いていると長いワラが落ちています。我が 家の目の前は水田ですが、稲刈り機は刻んだわらを排出していたハズ。こ んな長い藁、どこから来たのだろう・・・と不思議に思いましたが、風か なと、あまり気に留めませんでした。ところが翌日もやはり同じところに 藁が落ちています。これはおかしい。私はしばらく考えこみました。ふと、 上を見たら、開けた雨戸の内側から藁が見えています。鳥だ、とすぐにわ かりました。田舎の家で昔、雨戸の戸袋にすずめが巣を作ったことがある のです。
見張っていると、ムクドリが枯草や藁をせっせと運んで巣作りをしています。部屋の中の家具が窓を半分ふさいでいるため、その雨戸には手が出せません。以来、ここはムクドリに貸しているのです。
巣立ちまで全部のヒナが育つことはなく、毎年、何羽かのヒナが落ちて死にます。巣立つ直前のヒナと違って、ほんとうに小さいので落ちたヒナを世話しても、数日で死なせてしまいます。ムクドリが巣作りを始めると喜びもありますが、覚悟もしなきゃなりません。こういう時、どこまで人が手を貸していいのか、ヒナが死ぬたびに考えこんでしまいます。

種蒔きのコツ

種まきはうまくいかない場合もあります。私は単にそれを「相性」で片付けています。いろいろ蒔いて相性のいいものだけを毎年種まきして育てます。あとはポット苗を買ってもいいじゃないですか。ガーデニングは楽しくなくては。私は、春はマリーゴールド、ホウセンカ、マツバボタン、ひまわりなど。少し遅れてアサガオ。。秋はスイトピー、パンジー、フクロナデシコ、菜の花。ニゲラやネモフィラを蒔くこともあります。
種まきの時期はタネ袋に書いてあるのでそれを参考に。私は、春は5月の連休後で5月中に、秋はお彼岸後、9月中に、と決めています。種を蒔き忘れたら花がなくて寂しいですからね、簡単に覚えられるようにしているのです。
タネは地面でもプランターでも、咲かせたい場所に直接蒔くのがいちばん。移植を嫌う植物も多いのです。それに直播きした方が株が大きく元気に育つように思います。
大量にタネが採れる花があります。それを全部直播きするわけにもいかないので、浅いトレイ(穴開き)に土を入れて蒔きます。本葉が2、3枚出たら竹のスプーンでポット苗にそっと移植します。このままで根がしっかり張るまで置き、定植します。 私のところではフクロナデシコという花の種がよく採れます。発芽もよく、蒔いたら蒔いただけポット苗ができます。100ポット以上!どうぞあいた場所に植えてくださいと、最後はご近所にお願いしてまわります。画像は、真冬のパンジーと、春先に苗をプランターに移植したところです。

シクラメンの種がたくさん取れたので蒔いてみました。赤ちゃんシクラメン、花が咲くのはいつのことだろう?

種蒔く人

「タネを蒔いたら、芽が出て花が咲く」という事実と「リンゴを切ったら中にタネが入っている」という事実を、頭の中で、くっつけて考えることができるようになった日。
その日から子どもは、タネと名のつくものはなんでも埋めなければ、という観念にとりつかれてしまったようです。リンゴ、ミカン、モモ、ビワ、スイカ、カキ、かぼちゃ、くり、ぶどう、イチゴ、キーウイ、梅干、缶詰のチェリー・・・それはちょっと無理だろうというものもせっせと埋めていました。
さて、それで実際、芽が出たのか、と言いますと、これが、ちゃんと発芽したのです。確認できたのはかぼちゃとビワだけですが。かぼちゃは花が咲きましたが実はなりませんでした。しかし、子どもにとってはかぼちゃは実は興味の対象外、美味しい果物こそが彼女の望みなのです。
発芽したビワは大事に鉢に移され(というより地植えで大きくなられても困るので)、もう、3年以上。一向に花も咲かず実がなるふうでもありませんが、枯れもせず元気です。次の初冬くらいには花が咲いて、喜ばせてほしいものです。

種蒔く人2

どんぐり 私もひそかに蒔いているタネがあります。それは、どんぐり。意味はあまりないのです、何となくおもしろいから。大きくなった樫の木で机を作ろう、なんて思ってるわけでは決してありません。こっそりどこかに植えたいな、と思っていますが、これはヘタをすると犯罪になるでしょうからやりません。たまにポット苗を学校に持って行かせるくらいです。(先生にとっては迷惑きわまりないことでしょう)
秋になると、どんぐり拾いに行くのがなんとなく行事のようになっています。ままごとに使ったり、どんぐりの笛、お人形、コマ、など作って遊びます。余ったどんぐりをそのままにしておいたら、ある時、どんぐりが発芽していました。以来、余ったどんぐりは半分土に埋めて、花と一緒に水遣りしています。全部が発芽するわけではありませんが、1割くらいは芽が出て葉っぱが出て、そして秋には一人前に紅葉もするのです。楽しいですよ。この木が、ずーっと大きくなってそしたらカブトムシ来るかな・・・なんて、そんな夢をみるのもいいものです。

真冬のグリーン

真冬、室内で園芸を楽しんでいる方は多いと思います。観葉植物、多肉植物、蘭、など、外は冷たい風が吹いていても、室内は亜熱帯、う〜〜ん憧れます。
ですが、私はあまり観葉植物を育てるのが上手ではありません。過去に枯らした鉢は・・・アレカヤシにガジュマル、ベンジャミンゴムなど大きいものから、ブライダルベール、アジアンタム・ドラセナ・・・。これもまた相性が悪いのだ、無理しても犠牲になる植物が増えるだけだ、と思い、いつかしら室内でグリーンを育てるのを諦め、内も外も緑のない寂しい冬を過ごしていました。
ところが、今、1ヶ所だけ、我が家で、元気よく植物が生い茂っているところが、あるのです。それは玄関に置いた60センチメートルの水槽の中。水槽にはアスパラガス、スパシフィラム、ポトス、ヘデラ、など6種類の観葉植物が青々と茂っています。岩と砂利で陸地を部分をつくり、そこに植物を植えています。水深は常時6センチくらい。アクアテラリウム(和製英語)と呼ばれるものです。気をつけたことは根が水に浸かった状態でも根腐れせず育つ植物を植えること、です。水槽の蓋をしていないので、少々植物が伸び放題になっても良いのですが、ここにはミドリガメが住んでいますので、カメのためにも、時々剪定します。ヘデラやポトスは剪定した小枝をビンに挿しておくと発根します。これも枯れずに元気よく育つので、少しづつ家の中に緑が増えた今日この頃なのです。
そして、私は、また密かにジャングルの夢をみています。    →エッセイ2につづく

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