昔ながらの長浜トンコツ「名島亭」

(ラーメン・ファイルNo.0031)

 

 私は基本的に小規模で,語弊があるかもしれないが,ちょっと見た目が小汚い感じのラーメン屋が好きである.そりゃあまあ家族でラーメンを食べたりする際は,それなりに綺麗な店に入ったりする時もあるが,一人で食べたりする時は場末の小さな店の薄汚れた暖簾を潜り,油で多少ギトついたカウンターで麺を啜るというシチュエーションこそが「ラーメンを食べる」という行為の本来の姿であると考えている.また全部が全部とは言わないが,そのような店に限って期待に反して実に美味しかったりするものであった.今回紹介する「名島亭」とは,店の外観,入店した時に瞬間的に感じた印象,そしてシンプルなラーメン…と正にこれらの「ラーメン美学」を大旨兼ね備えているようなラーメン屋であったと思う.実はこの「名島亭」…以前に日本テレビ系の「どっちの料理ショー」で取り上げられたこともある有名店であったりする.だが今一つメジャーな存在になりきれず,カルト的な位置に甘んじている感があるのは,博多の中心部から結構離れた場所にあるという不利な立地条件に起因している部分が大きいからではないだろうか?しかしながら,だからこそ都会の喧噪に曝されることなく,長閑でレトロチックな独特の雰囲気を醸し出しているのかもしれない.「へえ,こんな所にこんな店があったのかよ.」と嬉しい誤算に少なからず感動してしまった私であったが,さてこの「名島亭」とは如何なるラーメン屋なのか…?

 博多から国道3号線で香椎方面へと車を走らせる…箱崎の埠頭を通り過ぎてしばらく進むと,進行方向の向かって左側が福岡市東区名島である.首都高速の名島ランプがあるものの,この地域は閑静な住宅街といった赴きで,度々福岡の地を訪れる私であっても名島周辺には殆ど足を踏み入れたことがない未開のエリアであった.今回は翌日に開催される学会出席のために福岡まで出向いたわけであるが,何故またこんな繁華街とは掛け離れた住宅街に性懲りもなくやって来たかというと,この近所に私の大学時代の友人である内田氏の新居があり,当日は彼の家で宿泊する予定となっていたからであった.実は数週間前から内田氏に「うちに来た時は,近くの有名なラーメン屋に行こうや.」と「名島亭」訪問の旨を伝えられていたのであるが,私は敢えてインターネット等での事前情報を全てシャット・アウトして臨むことにした.確かに初めて訪れるラーメン屋を予めリサーチしておくことは重要なことではあるが,時としてそのような予備知識はラーメンを評価する際に変に惑わせられたり却って障害になったりする可能性をも秘めている.今回のケースのように,その店に精通した同伴者がいれば,私はニュートラルな状態でラーメンを食して評価を下すために「無心流麺喰法」を実践することにしている.雑念を取り払って心を無にし,全神経を舌に集中してラーメンを食べる…そして後から情報と照合しながら復習し,もしも自分の分析に不備な点があれば今後の反省材料とする…時にはこの「無心流麺喰法」で己のラーメンに対峙する姿勢を見つめ直すのも重要なことなのではなかろうか?

 毎度のことながら話が脱線してしまったが,内田氏の案内で連れて行ってもらった「名島亭」…如何にも「古き良き時代のラーメン屋さん」といった実に味のある様相を呈していた.店の前には数台の車が路駐していたのだが,内田氏の話に寄ると「多い時にはズラリと路駐の車で,この周辺がいっぱいになる.」とのことである.だが注文した450 円のラーメン(並)…見た目は拍子抜けするようなシンプルさで,具はチャーシューとネギのみである.このラーメンのどこに,そんなに多くの人を魅了するものがあるのか些か疑問に思ったのだが,プ〜ンと丼から漂う豊潤な香から「そんじょそこらのラーメンではない」何かを私は何気に感じ取った.箸で細麺を摘みズズズ〜ッと啜り込む…「ふむぅわぁ〜…シンプルだが,絶妙なコクがあるっ!」…このトンコツスープであるが,丸2日費やして2度の長時間炊き込みを施すなど実に手間をかけて作り上げているそうで,コッテリしているわけでもないが,かと言ってあっさりしているわけでもない.誠に程よい案配なのだが,奥深いコクが食べ進めるうちに口腔内に浸透していくような気がするのである.私は自他共に認めるコッテリ派なのであるが,物足りなさを特に感じることもなく,何時の間にかスルスルッと平らげてしまっていた.正直言って大きなインパクトはなかったが,「嗚呼,また食べてえなあ.」と仄かに印象に残るような,そんなタイプのラーメンである.以前このコーナーで紹介した「元祖 長浜屋」を長浜ラーメンの入門編とするならば,「名島亭」は中上級者編と言える店かもしれない.天神や中洲からは離れてはいるが,是非一度は足を運んでみて欲しい.


[お店のデータ] 福岡市東区名島 2-41-7
         TEL 092-662-3566
         日曜日は定休日なので要注意
         
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