ヘルシーとんこつ「こむらさき」

(ラーメン・ファイルNo.0004)

 

 今から7年程前,私がまだ大学院生だった頃に鹿児島で学会があり市内の中心地である天文館近くのホテルに2泊3日程宿泊したことがあった.学会で地方に行った時の一番の楽しみは何と言ってもそこでしか食べることが出来ない郷土料理に舌鼓を打つことであるが,もちろんラーメンも例外ではない.教室の若手数人と「鹿児島の美味しいラーメンを食べに行こう.」と初日の学会が終わった後に天文館へ繰り出していった.全く予備知識がなかったため確かホテルの従業員に尋ねたのではないかと思うのだが,紹介されたのはホテルから歩いて5分程歩いたところにある「ラーメン専門 こむらさき」であった.早速皆で探して行ってみた.店内はかなり広い.調理場を長方形に囲んだカウンターが中央にあり,調理場の中では白衣姿のおじさんとおばさんが手際良くラーメンを作っていた.雰囲気的には大衆食堂といった感じで,店内の客が皆静かに黙々とラーメンを啜っているのが印象的であった.注文して待つこと数分,私達の目の前にキャベツの千切りと薄切りチャーシューがたっぷり入った上品な感じがするラーメンが出てきた.ズズッと麺をスープに絡めて口に運んでみる…すると隣に座っている教室員達が他の客と同様黙り込んでしまった.後で私の後輩に尋ねると「あまりにも美味しくて言葉が出なかった.」とのことである.翌日に私はもう一度この後輩と「こむらさき」に行ったのであるが,ある先輩なんか完全に味を占めてしまい鹿児島滞在中に3回も足を運んだそうである.

 一昨年の1997年の秋,「九州歯科医学大会」に出席するために鹿児島へ行く機会があった.幸いなことに会場が天文館から近かったので,昼食時に私は一人で数年ぶりに「こむらさき」へ向かった.あの大学院時代に食べたラーメンの味をもう一度冷静な目で,いや舌で確認しておきたかったのだ.改めて驚かされたのは強気とも言える価格設定である.今時ラーメン一杯が900 円(大盛りは1,200 円)なんて尋常ではないと思うのだが,店内はほぼ満席状態である.メニューも餃子等は置いてなくてラーメンのみ.店長の自信の程が感じられる.普通ラーメンを注文してしばらくすると,あの懐かしいラーメンが目の前に出されてきた.すっかり忘れていたのであるがチャーシュー,キャベツの他に椎茸が具として入っていることに気が付く.極細の麺を箸でつまんでズズッと啜ってみる.意外とあっさりしている….私はどちらかと言うと「こってり派」だということは前に本連載で述べた通りだが,「こむらさき」のラーメンはあっさり系であるにも関わらず味に何とも言えない深みがあるのである.ちなみにスープは,豚骨6,丸鶏ガラ3,干し椎茸1の割り合いでじっくりと煮込んで拵えたそうである.干し椎茸がこの味を作る上でのミソとなっているのかもしれない.麺もどちらかと言うとそうめんのような感じで(この店独自の"無カンスイ細麺"というそうだ)全体的にヘルシーな印象を受ける.一般にイメージされている鹿児島ラーメンとはちょっと異なる感じがする独特なラーメンである.

 ちなみに「こむらさき」は昭和25年に創業したという老舗で,以来48年間に渡り鹿児島県内で客数,売り上げ共にトップの座に君臨し続けているという地元では知らぬ人はいないという超有名店だという.その独特さ故に好き嫌いに意見が分かれるようで,平成10年4月に発行された「麺食いランキング九州」(九州タウン情報ネットワーク刊)では鹿児島のラーメン部門で第3位に甘んじている.だが鹿児島を訪れた時は一度は足を運んでみる価値があるのではないだろうか?


[お店のデータ]住所 鹿児島市東千石町 11-19
          TEL 099-222-5707

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