熊本ラーメンの王道「黒亭」

(ラーメン・ファイルNo.0043)

 

 私のように長年に渡ってラーメン探訪をし,このように自分のホームページのコンテンツの中にラーメン・コーナーを設けてレポを綴っていたりすると誠に不思議な体験をすることがある…自ら意識して店を探しているわけでもないのに,何か得体の知れない力が作用して吸い寄せられるようにそのラーメン屋に偶発的に辿り着いていた…というようなケースである.それはまるでそのラーメン屋の方から私に歩み寄って来たのではないだろうか?と思われてならない…こうして書くと読者には実に意味不明の表現かもしれないが,昨年(2004年)の10月に熊本に行った際に遭遇したシチュエーションが,正にそれであった!JR 熊本駅近くの「白金ホテル」に宿泊した私は,夕暮れ時に一人でホテル周辺をプラプラと散歩していた…二本木と呼ばれるこの界隈は真っ昼間にも関わらず人通りは少なく,レトロチックな街並と言えば聞こえは良いが,どこか時代から取り残されたような閑散としたエリアである.なんか如何わしい風俗店もどきの店が住宅街の中にポツンとあったりして(昔この界隈には遊廓が立ち並んでいたそうだ),怪し気かつファンキーな雰囲気も漂ってはいるのだが,散歩するのも時間の無駄だと判断した私はコンビニでビールを買ってホテルに引き返すことにした…と,その時である.私の臭覚が何処からか仄かに漂うトンコツスープとニンニクの香りをキャッチしたのであった…まだ帰っちゃいけないよ,美味しいから食べて行きな…その匂いは,まるで「おいでおいで」をするかのように私を誘っているような気がした.香りの源を辿って振り返ると一軒のラーメン屋が目に止まったのだが,暖簾(のれん)を見て私は驚愕してしまった…そこは私が以前から訪問して食したいと希求していたものの,場所がよく分からないために断念していた熊本ラーメンの超有名店「黒亭」であったからである!

 「黒亭」…ラーメニストには,もはや説明不要であろう.昭和32年創業以来,人気・実力共に熊本ラーメンの横綱的存在で,九州内はおろか全国的にもその名を知られたメジャー中のメジャー・ヌードルであるわけだが…私,恥ずかしながら食べたことなかったんです.「あんた,それでもラーメン野郎かよっ!」と批難する方もおるかもしれんが,熊本にまで出向く機会がなかなか無いので仕方がないではないか!…と逆ギレしたところで話が一向に前に進まないので,レポに移らさせていただこう.店内に入ると,さすがに満席状態で中で少しばかり待たされたが,それほどの有名店にも関わらず規模的にはそんなに大きな店ではなく,30人座れるか座れないか程度のものであった.もやしラーメン(590円),玉子入りラーメン(820円)等のメニューがあったが,私は定番のラーメン(560円)を注文する.数分後に「お待ちどうさま〜っ.」と,おばちゃんから私の元へと届けられたブツは「黒亭」の名前通り黒色のスープが実に印象的なラーメンであった.海苔とチャーシュー,キクラゲ,ネギといった具で満たされた丼からは,熊本ラーメン独特の揚げニンニクの香ばしい匂いがプォ〜ンと漂っている.割り箸をパチンと割って,ラーメンの全体像を観察しながら箸を二〜三回とゆっくりと擦り合わせ,具の隙間から僅かに覗く麺を摘まみ上げ,黒色のスープに十分に浸りきったタイミングを逃さず,ここで一気に啜り込む!ズズズォ〜ッ!「…たぼぁあっ!噂通りの逸品だっ!」…瞬間的に私はこのラーメンに潜む50年近くの歴史の重みを感じ取った気がした.コクがあって濃い目だが決してクドくなく,やや中太の麺とスープのバランスが絶妙なのである.おそらく長い間に試行錯誤した上で現在の完成形となったのであろうが,本当に奥深い味わいがするラーメンだったのである.秘伝の醤油タレで作ったというチャーシューもなかなか旨い!2枚あるうちの一つにカブりついてスープを啜り,口腔内で混濁させながらじっくりとその風味を堪能すると…う〜ん,デリ〜シャス!あの演歌の大御所である石川さゆりも魅せられた王道熊本ラーメンは,最後の最後まで私を飽きさせることなくスープを飲み干させてくれたのであった.

 ちなみに「黒亭」には熊本市内に「黒亭力合店」という暖簾分けした唯一の支店があるそうだが,そこは本店に比べて味がコッテリしているそうである.食べてみたいのは山々なのであるが,本店のこの味を濃厚にしたところで上手く全体のバランスが保たれているのか甚だ疑問を抱かずにはいられない.食べもしないうちにそんなことを述べるのはアンフェアであることは十分承知しているが,これ以上この味を変える必要があるとは私には思えないし,それが「黒亭」のラーメンと言えるのかちょっと想像出来ないからである.まあこの件に関しては機会があったら調査させていただくことにする.また今回の「黒亭」訪問でもう一つ驚いたことがある…なんと偶然にも店内で私の臼杵の知り合いであるOさんとバッタリと遭遇してしまったのだ!まさかこんな場所で出会うとは…本当にお互いにびっくりした次第である.まあとにかく,熊本ラーメンを語る上では絶対に押さえておかねばならない店なのでチェックしておくこと!


[お店のデータ] 熊本県熊本市二本木 1-2-29
         TEL 096-352-1648
         
⇒ 華麗なるラーメン野郎!のHomeへ