経 世 済 民

・原理編
 
 まず、5人のみで構成されている社会を想定します。この社会の生産物は、Aというものが一個あるだけです。
 ここに生産効率の向上が起こりました。
 この生産物Aがたった一人だけでも充分な量を生産できるようになってしまったのです。すると、生産するのは一人だけで良く、後の4人は失業者になってしまいます。
 このままでは、困ってしまいますね。不景気になってしまいます。
 では、この残りの4人が再び働けるようになる為にはどうしたら良いでしょうか?
 簡単です。新たな生産物Bが誕生すれば良いのです。生産物Bを生産する為に4人が働けば、4人の失業者は就職が可能なのです。
 生産効率の向上が起これば、これ以降も同じ事を繰り返します。効率が上がり、人手が余る。その余った人手で新たな生産物を生産し、どんどんと生産物の種類はC.D.E…… と、増えていく。
 通貨の存在を考えませんでしたが、ここに通貨を存在させたなら、この現象を、通貨の循環場所が増える、と表現する事が可能です。
 因みに、こうして通貨の循環場所を増やせば、それだけ巡る通貨の量も増える為、経済は発展をします。
 はじめ、Aという生産物に関して巡る通貨のみがあり、Bを増やせば、Bに関して巡る通貨が存在できるようになる。こんな感じですね。もちろん、その後の生産物についてもこれは同様です。
 実際に、歴史を振返ると、生産物が、昔何もなかった時代から、自転車、冷蔵庫、自動車、TV、携帯電話、パソコン…… と、増加すると共に経済は発展をして来ているので、これはほぼ疑う余地がなさそうです。

 この新たな生産物は、人が需要し、労働によって生産できるものならば、なんでも構いません。という事は、それが例えば、環境問題を解決できるような生産物であったとしても、または福祉や教育に関するサービス、幼児虐待問題対策、といった生産物であったとしても、なんでも大丈夫なんです。ならば、それらを人に(無理矢理にでも)需要させ、通貨を支払ってもらう。そこに新たな通貨の循環場所をつくったとしたならば、失業者、という経済問題を解決する事で、他の社会問題も解決できるのだ、という事になるのです。
 ……と、原理はこれだけです。これだけが、理解できればそれで大丈夫。
 簡単でしょう?

 後の問題は、これが実現可能なのかって事だけですが、実はこれは簡単なんです。
 何故ならば、これと同じ原理を、社会は既に活用しているからです。国民から税金を取り、そのお金を利用して、警察や消防署などの運営を行う。これは、僕が説明した事と原理だけを見れば同じです。また、水道料金や、電気料金、保険料だって、これに準じます。
 ただ、国を通してこれらが行われる場合、様々な問題が生じるのです。
 まず一つ、税金が何に遣われるのか分からない、といった点。
 無駄な事に税金が遣われてしまっては、国民は強制的に無駄な買い物させられているのと同じ事になります(それどころか、悪影響を被る場合も)。また、章を変えて後で詳しく説明をしますが、この原理を上手く活用する為には、集めた通貨をできるだけ平等に分配し、所得格差をある程度に抑える事が必須事項です。ですが、国に任せておくと、様々な不正や法の抜け道によって、一部の人間に大金が集中してしまいます。
 住んでいるのは何億円単位のマンションなのに、家賃はたったのニ万円といった官僚の高待遇や、家賃が安く専用の車での送迎があるにも拘らず、交通費や家賃代として、月に高額の支給が国会政治家に行われていたり……。もちろん、こんなのは氷山の一角です。無駄な公共事業を自分関連の会社に発注して稼いだり、研修といって、税金で海外旅行に出かけたり… 不自然に高い退職金。天下り。他にも数え上げれば、キリがありません。
 こういった事々によって、環境破壊などが更に悪化してしまう場合もあり、そうなるともう目も当てられない。
 ……と、話が逸れましたが、このように一部の人間に通貨が集中し過ぎると、この原理は上手く活用できなくなります。
 次に、国の無能さです。
 国の制度の場合、実績のあるなしに拘らず賃金が支払われる為、仕事の質が低下をします。これは、何処の国でも見られる現象です。
 よく、お役所仕事、などと呼ばれていますが、その事です。因みに、社会主義国が滅びた大きな原因の一つでもありますね。社会主義国家は、国全体がこれと同じ体制だった。
 最後に、膨大な財政赤字。
 これは、現在(2004年)限定の問題ですが、前述したような税金の無駄遣いを繰り返す内、国の借金は膨大なものになってしまいました。
 これを返済する為には、これ以上の支出の増加を抑えなくてはなりません。つまり、国を通し、税金で僕の言う方法を行う事は、極力避けた方が無難なのです……(もちろん、できない訳じゃありませんが……)。
 因みに、介護保険はこれと同じ理由で始まったものです。老人介護の為に、国が支出していた予算を、介護保険というものを作って財源を別にした(障害者福祉の財源も、こちらに移譲する可能性が濃厚です)。
 実は、介護保険についていえば、僕の言っている方法とほぼ同じ事をやっているので、介護保険が(少なくとも、サービスは)成功をしているらしい事は、僕の方法が実現可能である根拠になります。

 さて、述べて来たように僕の言っている方法は、全てまったく新しい事、といった訳ではありません。これまでにも、社会はそれを行ってきている。しかし、そこには『通貨の循環場所を増やす』という意図・概念が抜け落ちていました。通貨を循環させるモデルを想定しないで、経済社会を考えてきた為に、生活者の負担を増加させる方法を執って来てしまったんです。
 環境問題などを解決する為に、人々の需要をつくって、そこに仕事を作る。そこに新たに生じた通貨の循環、その分だけならば、通貨を増刷する事が可能です。すると、支出が増加した分、収入も増加する。負担は増えないはずです。通貨需要に合わせて通貨供給を行うので、インフレーションは起こりません。
 後は、スムーズに通貨循環が行われるように工夫をしてやる… (これも、それほど難しくないと予想できます)
 これまで行って来た方法に、一工夫するだけなのだから、実践できないはずはありません。

 さて、次はちょっと難しく、通貨を存在させたモデルを説明します。

・次へドン♪      ・難しい童話の表紙へ