ラ−マキエン物語

 この物語はインドの大叙事詩「ラーマヤナ」のタイ版です。
 ラーマ王子と10の頭、20本の腕を持つ阿修羅の王トッサカンとの壮大な物語です。
 このたび無謀にもこれを訳そうと思っているわけですが、なにせ長い長い物語ですので、はたして訳し終わるのか、
 というか、続けられるのか全く未定です。(実際のところ1年ほど続きができていませんが・・・トホホ)
 興味のある方は少しずつ読み進めてください。

(第1話)      第8話以降はこちら

ノントゥックのダイヤの指

クライラート山(シヴァ神の住む山)のふもとで神々の洗足役の鬼ノントゥックがいた。神々がシヴァ神に拝謁に来ると、ノントゥックは神々の足を洗い、その間退屈な神々はノントゥックの頭や顔を撫でたりさすったりして遊んでいた。しだいに叩かれたり、毛を抜かれたりされるようになりノントゥックの髪は耳のあたりをのこすだけとなってしまった。ある日水に映った自分の頭を見て驚いたノントゥックは、シヴァ神のところに行き自分は1千万年もの間まじめに洗足役として仕えてきたのに何のほうびもなくこのような仕打ちをうけて情けないと泣きながら訴えた。これを見たシヴァ神はかわいそうになり望みのものを与えると約束し、ノントゥックは指された者が必ず死んでしまうダイヤでできた指を手に入れる。
 ダイヤの指をもらったノントゥックは今まで自分をひどいめにあわせた神々を次から次へと指さして殺してまわった。これをきいたシヴァ神はヴィシュヌ神を征伐にむかわせる。勅命をうけたヴィシュヌ神は美しい天女に化けてノントゥックの前にあらわれる。この女がたちまち気に入ったノントゥックはさっそく口説くが女は私の踊るとおりにいっしょに踊れる能力がなければいやだという。ノントゥックはそんなことは雑作もないことだと女の踊る型どおりに踊りだし、女が自分の足を指差したところで自分も足を指差した。そのとたんにノントゥックの足は切れてしまった。ノントゥックは倒れ女はヴィシュヌ神の姿に戻りとどめをさそうとしていた。自分の運命を悟ったノントゥックは 「他に類をみない強大な力を持つヴィシュヌ神ともあろうお方が卑怯にも女の姿で騙すとは恥ずかしいとは思わないのか。そんな卑怯な手を使ったのはこのダイヤの指が恐かったからに違いあるまい。私は2本しか腕がないのだから4本も腕のあるものに勝てようはずもない。私も4本腕があったなら負けはしなかったものを。」
それをきいたヴィシュヌ神は「私が女の姿であらわれたのはおまえの指が恐かったからではない。どちらにせよお前は死ぬ運命だったのだ。4本の腕なら勝てたといったな。では今度生まれ変わる時には10頭10の顔20本の腕をもって生まれてこい。そして空を飛び回りこん棒と弓も自在にこなせるようになるがいい。私は2本腕の人間となり再びお前を殺してやる。」
そう言うとノントゥックの首をはねた。その後ノントゥックはトッサカンという名の10の頭と20本の腕をもった夜叉として生まれ変わりヴィシュヌ神はラーマ王子に生まれ変わる。  

(第2話)

トッサカン誕生
 
ノントゥックの体を離れた魂はランカー国の王ラッティアンの妻の体内に宿り、男の子として生まれ変わる。その名をトッサカンといい、10の頭と20本の腕をもっていた。まもなくしてクムパカンという名の弟が生まれる。
 トッサカンが14の年になったとき、術を学ぶため仙人のもとをたずねることになる。

オーラチュン(インドラ神の息子)との戦い
 仙人のもとで術が学べることになったトッサカンは喜び、怠けることなく腕をめきめきあげていった。ある日空いた時間に森に遊びに出たトッサカンはオーラチュン(インドラ神の息子)の所有する庭に出てきたとき、とてもよい匂いのする果実を見つけ夢中になってそれをむさぼり食べた。オーラチュンはチャカラワーンマー山に住んでいたが7日に一度この庭を訪れていた。この日もいつものように庭を訪れたが木の枝が折られ実が落ちているのを見て、誰かが侵入した事を悟る。急いで庭の中に入っていったところ奇妙な10頭の鬼を見つける。
 「そこの奇妙な鬼!貴様名をなんと言う。どこの族の者だ。私の庭に断わりもなく入った上に枝を折り荒らすとは貴様命が惜しくはないのか」
と言うオーラチュンに対しトッサカンは恐れるどころか怒り狂って、
「なにをこしゃくな!我が名はトッサカン、ロンカー王国の王ラッティアンの息子、コーブトーン仙人は我が師匠だ。誰のものかは知らぬが庭があったので入ったまでの事。貴様自慢げにせぬ方がよいぞ、お互いの名を知る前に死ぬことになる。」
オーラチュンはこの子供のいいように怒り狂い、
 「我が名はオーラチュン。貴様そのような小さな体で父ほど年の違う私に勝てると思っているのか。やれるものならやってみろ」
そういうとオーラチュンは矢をふりまわし、したたかにトッサカンを打ち据えた。トッサカンもひるむことなく戦ったがオーラチュンは矢を引き絞りトッサカンめがけて放ちその矢はトッサカンの体をしめあげ苦しめた。トッサカンは捕えられ天へと運ばれていった。
 そのころ師匠であるコーブット仙人はアースロムにいたが空に鳴り響く奇妙な声を聞いてトッサカンの事が心配になった。そこで急いで僧舎を出て空にとんだところオーラチュンにでくわす。竜神の矢で捕えられ雲で連れ去られるトッサカンを見て、もしや死んでしまったのではと思ったコーブットはオーラチュンに事情をたずねた。
仙人はオーラチュンに 
「こやつは鬼とはいえまだ幼い上と下の区別もつかないものです。確かにおかした罪は死に価するものですがどうか今回は見のがしてやってはいただけませぬか」
オーラチュンはは仙人の必死の懇願に怒りを押えトッサカンを放してやった。
仙人はトッサカンをつれてアースロムへと帰っていった。    


(第3話)

ピペーク誕生 

ノントゥックが10頭20腕の鬼トッサカンとして生まれかわり数々の悪事をはたらいていると知ったシヴァ神はこのままではまた大変な事がおこると予感する。しかしトッサカンの魔力は強く再びヴィシュヌ神を征伐にむかわせるとしてもスパイを侵入させておいた方がよいと考えウェースナーンという男の神にトッサカンの母の胎内に宿り生まれ変わるよう命じる。そして呪術や占星術を学びヴィシュヌ神を待つように告げる。ラッティアンはこの子をピペークと名付けた。ピペークは非常に頭がよく聡明であったが神通力はトッサカンや他の兄弟達よりも弱かった。 

パーリーとスクリープ


 ここで一人の修業者コドム仙人を紹介しよう。彼はサケート国の君主であったが子供がいなかったため王位にずっとついていることに飽き、ある日出家して王位を捨て修業者となった。かれは森に入り2000年もの間瞑想しひたすら修業にはげんでいた。毎年、すずめが仙人のひげが草のようにぼうぼうなのを見て巣作りに最適だと巣を作っていた。ある日すずめのつがいが夫婦げんかをしているのを聞き、すずめに家族もいないのに気持ちはわからないと言われた仙人は家族をつくろうと考える。
 仙人はひげを洗いあごひげを束ね、頭の毛もたばねて新しい冠をつけ、かがり火をたき祈祷を行い千回詩をとなえた。すると火の中から麗しい美女があらわれる。その美しさはあまたの神々とならぶほとであった。仙人は喜びアッチャナーと名付ける。まもなくアッチャナーは美しい女の子を生みその子はサワーハと名付けられる。
 ある日仙人はビンロウジの木を探しに、女房に子供をちゃんとみておくようにいいつけて森に入っていく。
この日、ヴィシュヌ神がトッサカンの征伐に向かう時に彼の参謀に誰かつけられないかと考えていたインドラ神はコドム仙人が森に入りアッチャナーが一人きりなのを見つける。インドラ神は彼女の美しさに惹かれ、もし子供ができればヴィシュヌ神の片腕になることができるだろうと考え魔法の力でたちまち彼女のもとにおりたった。花環をつくっていてアッチャナーにインドラ神はいいよりアッチャナーはインドラ神の子を身籠る。10ヶ月の後エメラルド色の男の子が生まれコドム仙人はインドラ神の子とは知らずにサワーハよりもかわいがった。
 またある日仙人が森にでかけた時太陽神が西の空を照り付けていた。太陽神を見たアッチャナーは彼に恋をし2人は結ばれてしまう。
10ヶ月後太陽神のように赤い男の子がうまれる。この子も仙人は非常にかわいがった。
ある日事件はおこる。その日暑さに絶えかねた仙人は水浴びをしようと思い立ち太陽神の子を抱きかかえインドラ神の子をおんぶして自分の子サワーハは歩かせて水辺に行った。
サワーハは父が他の男の子を大事にしているのを見てがまんならなくなり父に
「自分の子供は歩かせて、他人の子をだっこしたりおんぶしたりするなんてどうかしている。」と言う。
これを聞いた仙人は
「なんだって?今なんと言った?説明してみなさい」
とたずねる。
サワーハは父にいきさつを語りこれをきいた仙人は気絶するほど驚き、すぐに烈火のごとく怒りだし
「あの女!私のしらない間に他の男と密通していたとは。他の男の子供を養っていると思われては恥さらしもいいところだ。もし本当に3人とも私の子供なら今、川につきおとされてもきっと泳いでもどってこられるだろう。しかしもし違ったならサルになってしまうようにのろいをかけてやる。」
そういうやいなや仙人は3人の子を川につきおとした。
サワーハは泳いでもどってきたが2人の男の子はサルになり森の中に逃げ込んでいった。
これを見た仙人はサワーハを抱き小屋へもどりアッチャナーをよびどなりつけた。
「アッチャナー。もうおまえの事は信用できない。亭主が留守の間に他の男と密通するとはとんでもないやつだ。おまえを放っておけば私の恥だ。おまえはヴィシュヌ神が鬼を倒しにおりてくるまで石になってしまえ。海の底にうまっているどこにでもある石にだ。もう2度出てくるな。」
 アッチャナーはたちまち石に変えられサワーハ以外は自分の事をみつけだせないだろうと思いしばらくの間嘆き悲しんでいた。
「なんてこと子供を身籠って実の子に裏切られるなんて。私がのろわれた分あの子ものろってやる。口をあけたまま片足で森の中でずっと立っているがいい。もしおまえにサルの子ができてその子が他のサルよりも強く、強い魔力を持っていたらこの呪縛からのがれられるようにしてやろう。」
 こうしてアッチャナーは石にサワーハは片足で森の中に立ち続ける呪をかけられてしまった。
 インドラ神と太陽神は自分の子が仙人ののろいによってサルに変えられ川をさまよっているのを見て2人をふびんに思い新たらしい国キートキン国を2人につくってやる。ヴシュヌ神が鬼を退治するその日までその国を治めるようにインドラ神の子にパーリー、太陽神の子にはスックリープとなづけた。パーリーには国王にスックリープには副王になるよう告げる。



(第4話)

ハヌマーン誕生
サワーハが母アッチャナーに呪をかけられ丘に一本足で風に吹かれているときいたシヴァ神は非常に驚き悲しんだ。そこでシヴァ神はサワーハにヴィシュヌ神の片腕となる猿を産ませようと考える。さっそく風神を呼び武器と力を授け、これらをサワーハの口に入れ猿の子を作るよう命じる。
 命をうけた風神はシヴァ神の力と武器を持ちサワーハが呪をかけられ立っている場所に飛んでいき命令どおりサーワーハの口の中にこれらを入れ、
「シヴァ神はおまえに子を授けられた。もう心配ない。」と告げた。
それから30ヶ月後の太陽が雲間から離れてその光線を長くふりそそぐトラ年の3月の火曜日、赤ん坊は母の口の中から飛び出してきた。その子は全身真っ白で16才の子供と同じ大きさであった。産まれてすぐ母の回りを飛び回った。その子は光を放ち、耳飾りをし、白い毛を持ちダイヤの牙を生やし星や月のような欠伸をし、8本の腕と4つの顔を持っていた。ひとしきり自分の力を見せた後猿の子は父と母にあいさつをした。この姿に非常によろこんだ風神は彼を「ハヌンマーン」と名付け力を分け与えた。
 母はすぐわが子と離ればなれになる事をひとしきり悲しんだ後、もしおまえのその姿に気付いて声をかけた人がいればそれは鬼を退治するためにおりてきたヴィシュヌ神の権化であると教えた。そしてその方に忠実に仕えなさいと申し渡した。
 父と母に別れを告げたハヌマーンは子供らしくトンボがえりをうったりそこらじゅういたずらしながらうろうろしていた。この様子を見ていた風神はシヴァ神の所へハヌマーンを連れて行った。ハヌマーンの丈夫そうな体とその能力を見たシヴァ神はこれならヴィシュヌ神の片腕になりそうだと大変喜んだ。またその体を透明にする呪文と敵に命を奪われても風が吹けば蘇生する力を授けた。
 ハヌマーンは四六時中シヴァ神につき知識を得ていった。充分熟達したと思われる頃シヴァ神はハヌマーンの母の兄弟であるパーリーとスックリープに会わせようと考える。
シヴァ神は彼等を呼びつけ
「ごらんこれがハヌマーン。お前達の兄弟サワーハの産んだ子だよ。父は風神だ。とても勇敢な子供だよ。お前達は子がまだない。自分の子と思って世話しておくれ。そしてヴィシュヌ神が鬼退治に行くときには手をかしておくれ。」
パーリーもスクリープも非常に喜びハヌマーンをキートキン国へ連れ帰った。国へ着くとさっそく王宮と侍女、妾を与えた。


(第5話)

メーカラーとラーマスーン

ここで天の雨期の話をひとつ。雨期になると天上の神々達はいつも楽しく雨と戯れていた。あるお祭りの日大きな会合が開かれ盛大に舞踊が執り行われ、その席にオーラチュン(インドラ神の子)も出席していた。
 海を守る女神であるメーカラーも毎年この祭りには顔を出していたので光り輝く珠を持って美しく踊りながら空を飛んで祭りに向かっていた。
 一方夜叉のラーマスーンはダイアの斧を武器として持ち、雲間に住んでいた。彼は非常に乱暴で冷酷な鬼で、どの世界にも彼と戦おうとする者はいなかった。今日は神々が集う日だと知ったラーマスーンは斧を持って飛んでいったが、他の人がなんだあれはと思うようなまるでツバメが飛ぶようにジグザグに飛んでいた。ちょうどその時メーカラーが美しい珠をキラキラさせながら自分の前を飛んでいるのを見てどうしてもそれがほしくなったラーマスーンはメーカラーに力の限り襲い掛かった。
 ラーマスーンの力を見たことがある神々は彼が斧を振り上げているのを見たとたんに慌てふためいて逃げ出した。神々がみんな逃げてしまったあとメーカラー一人が雲間に珠を光らせながらいるのがわかるとラーマスーンはメーカラーを追っていった。メーカラーはラーマスーンを恐れるどころかラーマスーンが近くにくるとこれみよがしに珠を差し出してあっちこっちとからかいながら逃げ回った。これにラーマスーンは怒り狂うが珠の光が目にはいるとたちまち目がくらんでしまう。彼は斧をふりまわしながら
「おのれメーカラーこの斧でたたき殺してくれるわ」と言うと斧を投げ付けた。
しかし斧はかすりもしなかったのでラーマスーンは益々怒ってメーカラーが構える暇もないほどすばやく彼女の近くに迫ってきた。しかしメーカラーはみるみるうちに上に飛んで雲間に隠れてしまった。探しても彼女の姿をみつけられないラーマスーンはたまたま目の前をよぎった神の一人を踏み付けてどなった
「ヤイヤイお前の目の前にいるのはラーマスーン様だ。必ず殺してやるからな。」
この時たまたま通りかかったオーラチュンがこれを聞いて怒り狂い、
「我が名はオーラチュン。何ゆえわが道をふさぐ。きさまうぬぼれるなよ。10頭20の腕を持つトッサカンさえしばりあげた私だ。おまえなどものの数ではないわ。」
これを聞いたラーマスーンは躍り出て2人は激しく斧と剣をうちならした。オーラチュンがつまづいた時ラーマスーンは彼の両足を持ちスメール山の角にしたたたかに打ちつけた。そのものすごい音は世界中に響き渡るほどでラーマスーンは山が傾いてへこんでしまうまでやめなかった。とうとうオーラチュンは死んでしまう。
戦いが終わるとラーマスーンはメーカラーの事などすっかり忘れてしまった。


(第6話)

モントー(トッサカンの妻)

 ヒムパーン山には4人の仙人住んでおり、三万年の間修行に励んでいた。500頭の牛を飼い朝になると牛の乳をタライに集めて飲むのが日課であった。仙人が乳を飲む石にはメスのカエルが住んでおり、いつも仙人から乳をもらっていた。ある日仙人達はいつものように乳を飲み終えるとビンロウジュの根を集めるために森に入っていった。
 一方竜王界には年頃をむかえたアノンという名のメスの竜がいた。彼女は年頃だというのに連れ合いがいないのに悩んでいた。ある日人間界で男をさがすべくおりていったが、待てど暮らせど人間も天使もいっこうに通らなかった。そこへ偶然オスの蛇が通りかかった。
見境をなくしたアノンはこの蛇に抱きついた。
 森から帰ってきてこの竜と蛇の痴態を見た仙人達は非常に驚いた。竜王一族と言えば天界では高貴な身分である上に下々のものに対して威厳を保たなければいけない立場であるにもかかわらず欲情にかられて一族の名を汚すような行為に及ぶとは嘆かわしいと、彼女のしっぽを杖でつついた。しかし行為に夢中になっている竜は気づかない。そこで仙人は今度は竜の体のまんなかを突いた。これに驚いた竜は飛び跳ねて我にかえり自分のした事を非常に恥じた。しかしこの醜態を見られ、もし父王の耳にこの事がはいったらただではすまないと思った竜は密かに仙人達を殺してしまおうと考えた。そこで天界に帰る前に仙人達がいつも乳を入れているタライに毒をたらした。
 これを一部始終見ていたメスのカエルはこのまま知らぬ顔をしていたら、忘恩の輩であると言われるであろう、いつも慈悲をかけてくださる仙人達の恩にむくいるためにも自分が代わりに死んで仙人達を救おうと考えた。そして次に生まれてくる時には人間に生まれてきますようにと願をかけて毒のはいった乳の中に身を投じ息絶えた。
 朝になってタライの中でカエルが死んでいるのを見て仙人は、
「おやまあ、このカエルは毎日乳を与えているのにそれでは飽き足らずにタライの中で乳に溺れて死んでいるよ。なんて卑しいやつだろうねえ。でもここで見捨ててはかわいそうだ。もう一度蘇らせてやろう。」
 そう言うと4人の仙人は呪文をとなえカエルを蘇らせた。
「カエルや、毎日乳を分け与えてやっていたのにそれでも足りなくてたらいで溺れ死んだのかい?」と仙人が聞くと
「違います。竜のアノンが仙人のたらいに毒をもったので私はそれをお知らせしようと自らの命を犠牲にしたのです。」
 これをきいた仙人達はこのカエルの忠誠心に感動し、そのお礼に人間にしてやることにした。この世の中の美しいものをかきあつめそこに呪文をかけるとカエルはたちまち美しい人間に変わった。彼女にはモントーという名が与えられた。
 人間になったモントーを仙人はシヴァ神のところへ連れていき、何でもする使用人として使ってほしいと願い出た。シヴァ神は妻のウマーにモントーを与え、モントーは彼女によくつくした。モントーの事が気に入ったウマーはいろいろな呪術を彼女に教えた。


(第7話)

トッサカン須弥山を動かす

ウィルーンホッグという名の鬼が地上とトリクット山の間にバーダーンという国を持っていた。豪華な神殿を持ち、多くの兵士をかかえていた。彼はシバ神に拝謁する事を常としていた。その日も身支度を整えてシバ神のところへ飛んでいったがあいにくシバ神は休んでおられた。そこでウィルーンホッグはシバ神が目覚められた時に頭を下げていないのは失礼だと思い、頭を下げたまま階段をのそのそと這い上がっていった。
これを見ていたトゥッケー(ヤモリ)は鬼が頭を上げたり下げたりしながらのたくたと這い上がっていく様がおかしくて、一段のぼるごとに「トゥッケー」と鳴いてからかった。
トゥッケーの声に激怒したウィルーンホッグはシバ神がまだ出てこられないのを確認すると持っていた首飾りをやにわにトゥッケーめがけて投げ付けた。すごい力で投げられた首飾りはごう音とともにトゥッケーを粉々につぶしただけでなく、須弥山をも陥没させた上傾かせてしまった。トゥッケーを殺したウィルーンホッグはそのままシヴァ神に拝謁せず、バーダーンへ帰ってしまった。
 天が崩壊するほどの物音に驚いたシヴァ神が何が起きたのかと外に出てみるとへこんで傾いた須弥山があった。全てをさとった神はこの山をもとの通りまっすぐにできた者には望み通りの褒美をとらすと神々におふれをだした。しかし誰がやっても山はピクリとも動かなかった。この様子を見ていたシヴァ神はトッサカンという10の頭と20の腕を持つ鬼がいた事を思い出しさっそくトッサカンをよびつけた。
 「トッサカンよ。ウィルーンホッグがあのように須弥山を陥没させ傾かせてしまった。誰がやっても山は元通りにならぬ。様々な力と術をもつおまえならきっと山をもどせるだろう。やってはくれぬか。」
勅命をうけたトッサカンはもてるかぎりの力をふりしほって須弥山をつかみ足をふんばった。するとごう音をたてながら山はもとの通りまっすぐになった。これを見ていた天人達は「えらいことになった。これからあの鬼が我が物顔で我々を奴隷にしてしまうぞ。誰一人できなかった事をやってしまった。これからどうすればいいんだろう。」とささやきあった。
 須弥山を元通りにしたトッサカンはすぐさまシヴァ神のところへおもむき身分もわきまえずシヴァ神の妻のウマーが欲しいと訴えた。トッサカンのこの申し出にシヴァ神は驚いたが、一度なんでも望みのものを与えるといった以上、それをひるがえすわけにもいかず、またきっとトッサカンはウマーに何もできずに返しにくるであろうという予測のもとウマーを与えることにした。
 喜んだトッサカンはシヴァ神の所までひざをついて進み、ウマーを抱きかかえようとした。しかし近くによるとウマーはまるで火の中にいるように熱い。抱きかかえることができないなら頭の上にのせて飛んで行こうとした。しかし少しもいかないうちにその熱さに絶えきれなくなり、ウマーをおろしてしまった。トッサカンがウマーを連れ去る所を見ていた天人達はあわててヴィシュヌ神に報告した。しかしヴィシュヌ神は
「ほっておきなさい。やつはじきに自分からウマー様を手放すから」と言った。



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