保健・医療・福祉における分業と協力 高齢者実態調査からみえるもの 介護保険 生活ケア・生活リハビリ

看護に学ぶ医の心、介護保険と市民参画
(参考)益田市老人保健福祉計画


保健・医療・福祉における分業と協力

          −医療は医療保険で、介護は介護保険で
(共通の目標)当事者のQOL(生存の質)を高める
(共通の手法)情報の共有と当事者参画、ピアカウンセリング(仲間相談)、当事者のエンパワ−メント
(分業と協力の基本理念)誰もが対等な一人の市民として助け合う

保健 医療 福祉
健康領域をはじめすべての領域を対象 病期および境界領域を対象   病期または「障害」           
予防 治療、リハビリおよび再発予防
介護の必要な場合は、福祉につなぐ
介護
生活期 急性期治療を中心に生活期も支える 生活期
環境、生活習慣の改善 手術、薬物、生活療法(食事、運動など)
生活療法を基本とする
身体と心の痛みのケア
自立生活支援

健康領域、境界領域、病期の3つに健康状態を区分。

         急性期                      生活期(慢性期)          
医療モデル
(元の健康な状態に戻す、悪化を防ぐ)
救命と痛みの緩和
生活モデル
(どのような状態であれ普通の生活の実現)
生活を支える

従来の急性期・医療モデルだけでは、慢性期(生活期)の当事者のニ−ドに対応できない。QOL実現のためには、生活モデルの考え方の導入が必要である。医療における看護の自立性の確立が大切。

医療主体の高齢者ケア
   (これまでのケア)         
福祉主体の高齢者ケア 
   (これからのケア?)   
医療と福祉の分業と協力による高齢者ケア
老化を病気とみなして治療しようとする、治療が優先されて生活が制限される 過剰治療の害を防ぐため、できるだけ医療の誘導を避け、質の高い生活ケアで最期まで対応する 介護(自立生活支援)は福祉が行うが、急性期の治療および痛みのケアは医療が担う
病院で介護が行われることの弊害は?
介護ケアの質の低さと高いコスト
医療抜きの高齢者ケアの問題は?
当事者の意思を無視した「安楽死」の推進にならないか?

(1)医療施設における介護目的の入院の解消と十分な急性期治療を提供できる体制つくり、(2)マイホ−ム的な介護施設つくりが並行してすすめられる必要がある。
なお、在宅ケアの場合、あらゆる職種の市民が、保健・医療・福祉の基礎的な行動については、一人の市民として参加することが大切である。


(参考文献)
1,「老人への医療は無意味か」石井暎禧、社会保険旬報 NO1973、98年2月1日
2,「タ−ミナルケア議論における視点」広井良典、社会保険旬報 NO1975、2月21日
3,「高齢者の終末期とその周辺」横内正利、社会保険旬報 NO1976、3月1日
4,「みなし末期という現実」石井暎禧、社会保険旬報 NO1983、5月1日
5,「高齢者の自己決定とみなし末期」横内正利、社会保険旬報 NO1991、7月21日


介護保険
1,介護保険はなぜ必要か?
(1)高齢者虐待、(2)欧米では見られない「寝たきり」高齢者の増加
2,介護保険「構想」はなにをめざすか?
(1)高齢者の「居場所」づくり、(2)供給者本位から利用者本位へ
3,産みの苦しみはあるか?


1)介護保険は、なぜ必要か?
1,高齢者虐待
「高齢者の人権と権利擁護」を参考にしてください。社会から隔絶された家庭内介護が虐待を生み出しています。高齢当事者にとっても、介護者にとっても、つらいことです。虐待していなくても、へばりそうになりながら一生懸命介護している方もおられます。へばって心中する方もおられます。
2,欧米ではみられない「寝たきり」高齢者の増加
 「いす」の文化ではない日本では、「寝たきり」が生み出されやすい。医療者側も、坐ることの重要性に対する認識がこれまで不十分だった。坐るだけで、褥瘡、肺炎、便秘のかなりの部分が解消される。ギャジベッド、エアーマットは「坐る」ことを困難にし、「寝たきり」をつくる場合もあるという認識が必要。「痴呆」の高齢者を抑制することも行われてきました。「虐待」と「寝たきり」は一つのメダルの裏表ではないでしょうか?
2)「介護保険」構想は、なにを目指すか?
1,高齢者の「居場所」づくり
暖かい食べ物のある居心地よいねぐら、遊び場所、仕事づくり・役割づくり
「介護保険」と「老人保健福祉計画」はセットである
高齢者のニーズに対して、介護保険では答えきれない。横だし、上乗せサービスは、市民、民間の力も借りて、高齢者保健福祉計画で対応するという構想になっている。

 高齢者は、「他人に迷惑をかけるな」という考えでこれまで生きてきました。今、「少子高齢化社会で大変だ」ということだけが強調されると、「自分は迷惑をかけるだけの存在になった」と思いこむ高齢当事者の方も出てきます。社会の中に「居場所」を見いだせなくなっています。
 生きる意欲をなくすと、「閉じこもり」、「寝たきり」になります。
 どうすれば、よいでしょうか?

 「女、子ども、年寄り」は、近代になって、一段低く見られるようになりました。「障害者」は、さらに低い存在とみなさられるようになりました。
 「社会的弱者」とされてきました。そういう、「たて型」の価値観の中で、高齢者は「老い」「障害」を受容できなくなっています。高齢者を「社会的弱者」とみる価値観は、善意であれ、いや善意であればこそ、相手を深く傷つける場合もあるのではないでしょうか?
 「老い」「障害」を否定的にしかみない「貧しい」文化が、「閉じこもり」「寝たきり」を生み出しています。
 しかし、日本は、伝統的には、仏教文化があり、「生老病死」を受容する「豊かな」「よこ型」の文化がありました。「無常」を楽しむ文化がありました。そういう日本の伝統的な文化を再生させることが、一つの鍵ではないかと思います。
 誰もが対等な一人の人間として支え合う社会をつくっていきたいと思います。「障害」や「呆け」のある高齢者の「居場所」づくりは、誰にとっても心地よい「居場所」を生み出すのではないでしょうか?

2,「供給者本位」から「利用者本位」へ
医療・行政主導から、利用者本位・市民参画へ
自立した個人が連帯して支え合う地域づくり(99年度厚生白書を参考にしてください)

どうすれば利用者本位は、実現できるか?
高齢当事者の意思が反映するケアにするにはどうすればよいか?
1)高齢当事者の仲間相談、グループ活動の推進
2)高齢者の権利擁護制度(成年後見制度・福祉オンブズマン)の創造
3)高齢当事者本位の姿勢に行政(市町村)が姿勢を転換する
 行政は当事者や家族の声に直接学ぶ場をつくる。生活の場、介護の場に足を運びながら、話し合い、実態を自分の目で見て、その声を施策に反映させる。当事者の会、家族の会と交流し、その活動を支援する。
 制度本位(あなたはこのサービスなら利用できますという、制度紹介)から、ニーズ本位(どんなことで困りですか?なんとかしましょう)へ福祉サービスの窓口担当者を含む行政の意識改革が求められている。ニーズに合わせてサービスを創造する行政を高齢当事者市民は必要としている。
4)サービス提供の形態として利用者である当事者がサービスを供給する形や、市民グループ、生活協同組合、農協が提供するやり方を創造する。ケアを提供する側に当事者が参画する形を工夫する。
5)基本的なケアは市民の誰もができるような学校教育、市民生涯学習をつくる。そして、市民の誰もが困っている高齢当事者に、「どうされましたか?何か、お手伝いしましょうか?」と気軽に声をかけて行動できるようなまちづくりをする。


3)産みの苦しみはあるか?

現在福祉サービスを利用している市民 介護保険になってから福祉サービスを初めて利用する市民
8〜9割は無料で受けている。これが有料になる。
認定によっては、今まで受けていたサービスを受けることができなくなる。
サービスの量が減って、お金がかかるようになるわけで、介護保険が始まると、相当な不満が出ると予想される。
お金を出しても、いいサービスを受けたいと思っている。ところがサービスは質量ともに不十分である。もっとちゃんとやれ、と言いたくなる。

 介護保険についての市民参画の不十分さもあって、介護保険についての市民の理解は、余りすすんでいません。「介護保険になったら、いくらお金がもらえるようになるんかいな?」という高齢者もおられます。広報にかいてあっても、高齢になると、なかなか目が通せません。きめこまかな情報提供が必要です。情報提供一つとってみても、市民本位・市民参画へ行政も発想の大転換を求められています。
 市民もこれまでのように受け身でサービスを期待するのでなく、「よこ型」の組織や人脈をつくって責任を引き受けて行動することが求められそうです。
 厚生省は、新ゴールドプランの終了年度である2005年をサービス整備の目標にしているようです。産みの苦しみは、最低5年はあるのだと考えたほうがよさそうです。
 医療の一部を介護保険から支払うという、ドイツとは違う変則的な形の介護保険として出発します。高齢者虐待・「寝たきり」対策は、果たしてできるでしょうか?介護保険に参加する医療機関の発想の大転換も、求められています。
 高齢当事者も市民も、行政も、、福祉も、医療も、誰もが産みの苦しみを経験しなければならないようです。陣痛の痛みを共有することで、高齢当事者の居心地よい「居場所」を社会の中に創り出していきたい、そう心から思います。

「介護は血縁より結縁」を大切にしたいと思います。

(参考になる本)
仕事づくり
「良い仕事の思想」杉村芳美、中公新書、1997