仕事・暮らし

 職業人として、市民として、生活者として、充実して一日一日をすごしたい。納得のいく仕事がしたい。誰かの役に立ちたい。関わりある人の笑顔がみたい。助け合って、分かち合って暮らしたい。与えられた生に感謝して、それぞれの可能性を応援し合って、喜びも悲しみも、分かち合いたい。多くの人が、そう思って生きています。そうできたら、どんなに、すばらしいことでしょう。

..むしろ重要なことは、自分の持ち場、自分の活動領域においてどれほど最善を尽くしているかだけだということです。活動範囲の大きさは大切ではありません。大切なのは、その活動範囲において最善をつくしているか、生活がどれだけ「まっとうされているか」だけなのです。各人の具体的な活動範囲内では、ひとりひとりの人間がかけがえなく代理不可能なのです。だれでもそうです。各人の人生が与えた仕事は、その人だけが果たすべきものであり、その人だけに求められているのです。...(参考3「それでも人生にイエスと言う」.p32)
..ちまたでは、食糧を買い求めたり、食事の支度をすることは、女性が担当する仕事であり、大した意義のある仕事ではないように思われているが、とんでもないことである。食事の仕度が実に骨の折れることであることは言うに及ばず、この仕事は、老若男女を問うことなく行われるべき大切な修行である。いや、修行のできた者こそ行うことが許される重要な仕事である。
 世に「雑事」「雑用」という言葉がある。「雑」とは、種々雑多な、事細かなという意であるが、「つまらない」という意味合いも含まれている、”行い”そのものにつまらない行いというものはない。その行いをつまらなくしているものは、私たちの心の貧しさである。...(参考5、「老典座との出会」いより)
...茶道は日常生活の中に存する美しきものを崇拝することに基づく..。..単純のうちに慰安を教える...。(参考12「茶の本」,p21)...すべての行動を単純に自然に行う...。(同上p39)...美しいものの真の理解はただある中心点に注意を集中することによってのみできる...。(同上p59)

 日本における仕事は、禅の心をもっておこなわれてきたように思います。美しい仕事、美しい生き方が、大切でした。しかし、最近は、効率(利益とスピード)が優先され、禅の心は、失われつつあるように思います。
 アメリカの主流である「大量生産・大量消費・使い捨て」文化は、私たちの生活を根底からむしばんでいます。ヨーロッパの人々の文化や暮らしに学びながら、文化のありよう、生活のありようを、見直し、変えていく必要があるように思います。
 日本の伝統的な禅や茶の文化と、英国の生活文化に共通のものを感じます。

..今日に全力投球して生きる..。...「その日の仕事を精一杯やり、明日について思い煩わない」..。過去の災いを振り返り、将来を思い煩うといった愚かな習慣から脱却して今日に生きる..。..「われらの大いなる仕事は、遠方にかすかに存在するものをみるのでなく、目の前に明瞭にあることを行うことである」...。(文献17、「医のアート、看護のアート」、p73−88)

 仕事には、職業人としての仕事、市民としての仕事、生活者としての仕事の3つがあるように思う。それぞれの仕事を、バランスよく、行うことが、大切なように思う。仕事は、本来、楽しく、喜びに満ちたものだと思う。どうしたら、そうできるかな?

 こういう現実があるという。現場の仕事。材料は、これ、時間は、これと見積もりが、コンピューターに入力すると打ち出されてくる。しかし、現場に行ってみると、材料が足りない。請求しても、できるはずだ、という返事。身銭をきって、材料を買って、仕事をしている。その上、「時間が、見積もりより長い」と、文句を言われる。
 現場で働く人間の、「いい仕事、納得のいく仕事がしたい」という善意で、かろうじて質の良い仕事が成立していいるようだ。職人魂で現場は、今のところ維持されている。
 危ないな、と思う。

(参考)
1,「『良い仕事』の思想新しい仕事倫理のために」杉村芳美、中公新書、1997
2.「風姿花伝」世阿弥、ワイド版 岩波文庫、1991
3,「それでも人生にイエスと言う」V・E・フランクル、春秋社、1993
4,「正法眼蔵随聞記入門道元『禅』とはなにか第3巻」遠藤誠、現代書館、1999
5,「老典座との出会い」(「道元入門」p27−37)、角田泰隆、大蔵出版、1999
6,「座禅<今・ここ・自分>を生きる」對本宗訓、春秋社、1999
7,「ターシャ・テューダ−手作りの世界暖炉の火のそばで」
    リチャード・W・ブラウン写真、トーバー・マーテイン文、メデイアファクトリー、1996
8,「庭仕事の愉しみ」ヘルマン・ヘッセ、草思社、1996
9,「居心地のいい簡単生活」デボラ・デフォード、文香社、1999
10,「英国スタイルのおしゃれに家事すっきり生活整理術」佐藤よし子、PHP、1999
11,「少ないものでゆたかに暮らすゆったりシンプルライフのすすめ」大原照子、大和書房、1999
12,「茶の本」岡倉覚三、ワイド版岩波文庫、1991
13,「日本の名著17葉隠れ」奈良本辰也、中央公論、1984


14,「学校では教えない職人の仕事」エデイト編、竹村出版、1999
15,「職人という生き方」日本職人研究会編、双葉社、1999
16,「『好き』がかなう仕事選び」中山庸子、筑摩書房、1999
17,「日野原重明著作選集(上)医のアート、看護のアート」日野原重明、中央法規、1999
18,「仕事術」森 清、岩波新書、1999