トラメへのメッセージ



海の響き
大森 黎(作家)

NHKテレビディレクターを経て、昭和47年『五月に……』で、第35回文学界新人
賞を受賞。昭和56年『大河の一滴』で、第2回読売女性ヒューマンドキュメンタリー
大賞を受賞。主な著書に『続・大河の一滴』『横浜元町物語』『かけがえのないいの
ちを支える人々』等。
 そのライブハウスは、横浜スタジアムと通り一つ隔てたビルの地下にあった。半
月が中央にかかる夜、どよめくスタジアムを背に、私はせまい階段を降りていっ
た。チケット売り場の青年が、私を呼びとめ、どのバンドを見に来たのかと聞い
た。
「初めてですから、全然わかりません。」
青年は、母親よりも年高の者が、場違いな空間に迷いこんだのをいたわる目にな
った。扉の向こうは、壁も天井も黒一色の鏡張りだった。パイプ椅子が三十ほど並
んでいた。脚を投げ出して飲み物をあおっている人も、壁に寄りかかり目を閉じて
立っている人も、孫のような若者たちだった。チケットがドリンクつきであることも、
それぞれが贔屓のバンドを応援に来ていることも、私は知らなかった。
 コンサートは唐突に始まった。目の前のスピーカーから飛び出した音響が、胸を
突き抜けた。私は、全身に音を浴び、音で満たされるためにだけ存在する一本の
円筒になった。ドラムの響きが、遠い何かを私によみがえらせようとしていた。幾
組かバンドが替わり、そのたびに私は、記憶の奥底がゆすぶられるのを感じた。
青や赤や緑のライトが交錯する音響の渦に巻かれながら、私は幼い真夏の海の
眩しさを思い出した。
「閉ざされた世界にいる君よ。僕の歌声が届いて……」
見上げると歌い手が痩せぎすの身をよじり、声をほとばしらせていた。
「Wake Up 立ち上がれ 僕がいるよ」
ああ、こんな言葉が聴きたくて、ここに来たのだ、と私は思った。そして、波間から
あやうく救い上げられたあの日のように、目を凝らし遥かに見守ってくれる誰か
が、心萎えたこんな日の私のために、何処かにいて欲しいのだと思った。
 帰りがけにそのバンドの名を聞いた私へ、青年が笑って答えた。
「"トラブル・メーカーズ"通称"トラメ"。結成18年。ローリングストーンズを愛した5
人組。サウンド、良かったでしょ。」
横浜インディーズの金字塔『トラメ』
椙江 茂起(セブンス・アベニュー・プロデューサー)
 1970年代から80年代にかけて、この横浜にも「インディーズ」の風が吹き荒
れていた。今日の「メジャーデビュー前のアマチュア時代にやっておくインディー
ズ」ではなく、商業的には売れなくても、極めて前進的で真にRockな存在。例え
ば『吉野大作』や『じゃがたら』など、今でも、彼らの存在は新鮮且つ革新的であ
る。結成20年の歴史を持つ『トラブルメーカーズ』も、そういったBandだ。彼らは
Rockを愛し、自分たちのBand『トラメ』を愛し続けいる。それぞれに仕事を持っ
て、家庭を持って、普通に生活しながら今まで続けてきた。結成当時は、ローリ
ング・ストーンズを彷彿させるR&R Bandであったが、98年に発表された
『Anyday Anytime』は、Popでありながら、Vo:能城順一の詩にも感じられるよう
に、真の円熟期を迎えた嘘偽りのないソウルから発せられるRock Bandの最高
傑作といった出来となっている。
 横浜インディーズの宝である『トラメ』は、99年5月に『Wake Up』と題する、障
害がある人もない人も一緒に楽しめるロックコンサートを、新横浜ラポールで行
った。百聞は一見にしかず、障害者も健常者も共に音楽を楽しみ、Rockすること
は同じなのだ。一緒にステージに立ったのは、あの『シーナ&ロケッツ』。その
『シーナ&ロケッツ』を脅かすような『トラメ』のライブは圧巻。会場にいる全ての
人に希望を与える彼らのステージは凄かった。「私はキミとは違うし、この人から
見ればあの人もまた違う」偏見こそ害毒ということを教えられた。真のインディー
ズバンド『トラメ』だからこそできるこのイベント。これからもどんどん続けていって
欲しい。
 さて、結成20周年を記念して2001年に発表を予定しているフルアルバムの
準備に『トラメ』は、まさに取り掛かっている。20年の節目に発表されるのだか
ら、今までの集大成になるような全魂が注がれた最高の出来にしたいいう。そし
て、発表と同時に、「20周年記念ライブ」を、大規模に展開していく。さらには、
前回を上回る規模で『Wake Up Vo.2』を、開催するとのことだ。
 自分たちの足元を見つめ、自分たちにしかできないR&Rを、『トラメ』は、21世
紀も続けていくのだ。
演奏会『Wake Up』の記事に感銘
斎藤 由貴(女優)
 ロックボーカリストの能城順一さんは、横浜国大時代の仲間とともに『トラメ』というバンドを結成しており、横浜を中心に活動を続けているという。メンバーは、会社勤めのため、練習は週末の夜などに行い、ライブハウスでの演奏を行ってきた。そんな彼らが「障害者も安心して楽しめるロックコンサート」を5月9日に催すのだが、ロックファンにとっては、カリスマ的な人気を誇る『シーナ&ロケッツ』も出演するという。今回のコンサートの趣旨に賛同しての参加というが、そういう考え方、そして実行するところがシーナ&ロケッツの素晴らしいところだな、と思ってしまった。
 先天性にせよ後天性にせよ、何らかの障害を持つ人々が、「そんなのたまたま不自由なだけ。音楽を共有するのに、何の障害があるものか」と、笑い飛ばしてくれるミュージシャンたちの、心の通った時間を共有することは、どんなに素晴らしいことだろう。
 能城さんではないが、確かに音楽を楽しむのに、垣根などないと思う。世界中どこの国、どんな小さな島に行ったって、必ずそこには音楽があるのだから…。
 『Wake Up』(目覚めよ)というタイトルのこのコンサートが、大成功のうちに終わることを、心から祈る。
照明灯
神奈川新聞論説より
 先週の日曜日。横浜国際総合競技場近くの障害者スポーツセンター「横浜ラポール」で、ロックコンサートが開かれた。いつもは、クラッシックコンサートなどに使われるシアター。何となく不似合いに思われたが、380席が、ほぼ満員という大盛況だった。
 『トラメ』というロックバンド。横浜在住の能城順一さんが、横浜国大の学生だった頃、同級生4人と結成した。激しいパンクロックが流行っていたころだ。おじさんたちが、白い目で見ていたこともある。『トラブルメーカーズ』をつづめて『トラメ』としゃれた。メンバーは、週末の夜に練習、月1回のライブをこなしてきた。
 「不自由な人たちにもロックを聴いてもらいたい。交流を深めたい。」室内で、車イスの人たちが参加できる会場は少ない。「横浜ラポール」が、受け入れてくれた。受付は、障害者の人たちも手伝った。8ビートの強烈なリズム、ダイナミックな躍動感。足元から壁から天井から反響する振動。十数人の障害者たちも、手を振り、体を揺すって、浸っていた。
 会場を一歩外に出ると、抜けるような五月晴れだった。体全体には、まだ、ロックのリズムが波打っている。障害者との「共同演奏会」。休日の静かな時間が流れている街頭で、いいもんだ、とふと思った。
結成20周年で記念アルバム
横浜インディーズの金字塔『トラメ』
神奈川新聞芸能欄より
 横浜のベテランインディーズバンド『トラメ』が、結成20周年を迎え、記念アルバム『イン・ザ・メロディー』をリリースした。
 「記念とは銘打ったものの、これまでの集大成というより、じぶんたちの"今"を打ち出した自信作」とリーダーでボーカルの能城順一さん。1960年代〜70年代のロックやブルースの洗礼を受けて育った彼らならではの素朴で力強いサウンドが、全編にみなぎっている。
 自閉症で一歩も外に出ることのできない実在の少女の苦しみを代弁した「ガール」、宗教への痛烈な皮肉をこめた「僕の天使」、節目を迎え、あらためて感じるロックへの思いをつづった「自分だけの歌を歌い続けたい」など、テーマ性の強い歌詞も特徴。ギターの吉野大作やサクソホンの時岡秀雄ら、横浜で活躍するプロミュージシャンもゲスト参加している。
 『トラメ』は、能城さんら横浜国大の同級生5人が在学中の80年に結成。ローリングストーンズのコピーからスタートしたものの、ほどなくオリジナルに転じ、グッピーやセブンスアベニューなど、市内のライブハウスを拠点に、活動を続けてきた。
 平均年齢39歳。メンバーのほとんどが、仕事と家庭、そして子どもを持つ"働きざかりのお父さん"、スタジオに集まるのは、家族サービスを終えた週末の夜に限られるが、ギリギリの時間をぬって、曲作りやレコーディングに奮闘する。これまでに、シングルやオムニバスを含めると計8枚をインディーズレーベルより発表。中でも、98年のセカンド『Anyday Anytime』は、新聞や音楽誌にも取り上げられ、地元ライブハウスのオーナーからは、"横浜インディーズの金字塔"との声も上がったほどだ。
 記念アルバムの問い合わせは、ウォーターカラーエンタープライズ 
Tel 045-786-4570
Timeless Lineによせて
大森 黎(作家)
悲しみと切なさと烈しさといとおしさと、そして、人それぞれの過ぎてきた日々、今、この瞬間、過ぎていく時をこんなにも切実に感じさせてくれるなんて……。
ああ、「トラメ」は、凄いよ。

@Hey Mr.J
ああ、能城さんの声だ……能城さんの声だ……と、嬉しくなりました。Mr.Jとは、解説にあったジミ・ヘンドリクスではなく、能城順一氏への呼びかけのJですか?と思われるようでした。いずれにせよ、聴く者の心に届く、胸をゆるがす問いかけです。「やりたいことをやりつくしたかい?」やりたいことをやりつくせずに、七十路を辿っているこの身が切なく、何だか泣き叫びたくなりました。夫は、静かに眠っていました。ボリュームを上げても、目覚めることなく……。
A風に乗って奔り続けろ
「何ができる?じっとそこに留まるだけか?」
「目をそらして、過去の思いにひたっているだけか?」
「まだ終われない」
……そうです。まだ、終われないんです。終わらないんです。こんなところで、終わるわけにはいかない!激しく揺り動かされました。
B僕は無関心
「もう塀を固めてしまった」という言葉に、ぎくりとしました。
「歌いたくない奴」なんているだろうか?
「立ちたくない奴」なんているだろうか?
違う、違う!無関心でなんか、どうしていられますか?だからこそ「無関心」と歌ってみせてるんですよね。
C夢の欠片
ふっと「ホテル・カリフォルニア」を、初めて聴いた時のことを憶いだしました。「僕の絵日記」……。そうだ。誰でも、自分の絵日記を持っている……。
何だか切なくて、また、泣きたくなりました。
D俺はまだまだ虜さ……
「何度でもやり直すぜ」「何度でもぶち壊すぜ」でしょ。無関心なんかじゃ、ぶち壊せやしないよ。ぶざまにリタイヤした奴だって、ギターを置いた奴だって、72歳のこの私だって……。また、やり直す気だもん!!
Eまるで天使とダンスをしていた……
「何度も眠りを忘れた」ばかりの私も、胸をかきむしられる思い。Oh!! Come On Guitar!!午前二時 三時、星を見上げることがよくあります。
FBoy
Boyと呼びかける声を耳にして、義弟の出征を見送るために行った鳥取で、地震のために逝った三十七歳の父を激しく想い出していました。
GMove On The Beat
「このまま終わるのか、それともやるのか」
「生きている自分は未来じゃなく、今いるのさ」
本当にそうですね、今、息している、今、視てる、今、聴いている、今………。

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