R&Rエモーションに寄せられた声

「リアルな音」 トラメ結成30周年記念アルバムに寄せて
    

                                 吉野大作


 トラメが、なんと結成30周年を迎えるという。私は、プ
ロスティチュートやソロで、幾度となくライヴで共演させ
てもらったので、心より賛辞を送りたい。

 メンバーも、平均年齢がほぼ50歳だが、今なお自ら曲を
作り、アルバムを発表しライヴ活動を持続している。50歳
を過ぎてもなおオリジナル曲を完成させ、表現のエネルギ
ーを枯渇させずに走り続けるのは並大抵のことではない
が、それはまさに敬服に値するといえよう。……今回の30
周年記念アルバムも、彼らの基本的なスタンスは変わって
いない。そして一聴して気づくのは、極めてリアルで生な
音がCDに収録されていることだ。ギター、ヴォーカル、ベ
ース、ドラムのサウンドに、彼らの呼吸、血液の流れが、
鮮やかに彩られ逞しく息づいているように思える。そこに
は、今を生きる彼らの哀切さ、憤り、飛翔への想いが、ピ
ュアに塗り込められている。まさしく50歳の「現在進行
形」の彼ら自身が刻まれたアルバムである。……そして30
周年が、単なる通過点であり、さらなる新しい旅への出発
を感じさせる作品集なのだ。



横浜インディーズの金字塔!!

                      横浜セブンスアベニュー

         椙江 茂起



 横浜は日ノ出町の今はないグッピー。そしてこのセブン
スアベニューで彼らのライブが行われていた。横浜インデ
ィーズの最初で最後のロックロールバンド、メンバーチェ
ンジはあるが決して彼らは死なない。活動が中断する時も
あるにはあるが、70年代から続いているYOKOHAMAは今でこ
そシンプル過ぎて新鮮だ。彼らがついに30周年!記念する
CDを発表する。「R&R emotion」そのものズバリだ。さて
最新機器で聴くか、安物のCDラジカセで聴くか、まあ多分
どっちで聴いても変わりはないぜ、トラメよ!

横浜インディーズの金字塔!!



ミュージックマガジン 2012年2月号

                  行川 和彦



 80年に横浜で結成されたツイン・ギターを擁する5人組のトラメは
5作目の「R&Rエモーション」をリリース。CDタイトルそのままの雰
囲気に包まれた、さわやかな声と音の親しみやすい日本語のロック
である。歌いっぷりのいいボーカルを前面に出した作りだが、ブルー
ス・テイストもピリリと利いた演奏もなかなかダイナミックだ。メンバー
全員が個々に作詞作曲した10曲を集めているからバラエティに富
むが、統一感があるのはバンド全体にブレがないからで、ハードなロ
ックやフォークロックとも接点を持っている。幾度となく共演してきた
吉野大作のライナーも載った8ページのブックレット封入の10曲入
り。(ロコスミュージック ROCOSU1102)





CDジャーナル 2012年2月号



 横浜を根城に長年にわたって活動してきた5人組の結成30周年
記念アルバムで、通算5作目。かつての70年代のバンドのほとんど
がそうだったような、けれん味のない骨太のロックンロールは今や希
少。J−POPではなく、洋楽チックな日本語ロック。こういうバンドが
まだ存在していて、今なお活動しているだけでも嬉しい。

(★イチ押しマークついています!)



神奈川新聞 2012年2月26日(日)



 「ザ・ローリング・ストーンズ」のコピーバンドだった。初めてのオリジナルレコードは
EP盤だった。周りのみんなはみんな辞めていった。横浜のインディーズロックの象徴的
バンド「トラメ」が結成30周年の記念アルバム「R&Rエモーション」を発売した。横浜
国立大学の結成時のメンバーは全員、50歳を超えた。「おやじバンド」なんて言わせ
ない。家族を持ち、実社会の中で転がり続け、戦ってるからこそ歌えるロックがある。

 やめない。「これが生きている証だから」。絶対やめない。「やり続けることがロックだ
から」。バンド名「トラメ」は、トラブルメーカーの略。ロックは人を困らせることだから。

 5人編成。ベースを除き、4人は横浜国大の「ロック研究会」で出会った当時のま
ま。全員が社会人として働き、子どもを持つ。「だから俺たちの歌はリアルだし、メッセ
ージも重い。本来は、本当の社会の中にいないと歌なんてできないはず。だって、実社
会の方がはるかにきつくてつらいんだから」ボーカルの能城順一さんは、知的障害の
息子を持つ。「手術、手術の連続で何度も死にかけた子です」。その苦しみも歌で
叫んだ。親の介護、死。友や恩人との離別。子育ての悩みは尽きず、職場では愛想
笑いだってつくる。ギターの田中荘一郎さんが作った曲「ヒーロー」は歌う。

♪がんじがらめのロックンローラー 現実にしばられて もがいて だからもう一度

 さめたハートに火をつけて 魂の叫びを歌うんだ

 とがっているだけでは生きていけない。家族を守れない。だから、もがく。曲は各自が
作詞作曲をする。昔の恋人に未練を歌う曲もあれば、お気軽な「今風ロック」を攻撃
する歌もある。ラブソング担当の能城さんは、「男はみっともないし、それをさらけ出すの
もロック」。経験や思いは微妙に違っても、「ロックする意思」は共通だ。

 30年。横浜市中区の「セブンスアベニュー」を中心にライブを続けてきたが、現実
は厳しい。昨年から1人が海外勤務になった。練習は週末の夜が精一杯だ。それす
ら、全員集まらない。

 それでも。いや、それだからこそ、タイトル曲「R&Rエモーション」は歌う。

♪吹きとばせ 淀んだその気持ち ぶち壊せ 凍てつくその前に

 数えきれない孤独の叫びを踏みしめて 体の芯から沸きあがる

 R&Rなエモーション

 何かを叫びたいと自分を突き動かした初期衝動を、裏切りはしない。能城さんはこ
う、たんかを切る。

 「同世代に伝えたいこと?何か『思い』や『やりたいこと』があるなら、それを持ち続け
て、やり続けてほしい。若い世代に?まだまだ負ける気がしないね。俺らの方が、よっぽ
どパンクしているしね」

 60歳になったら60歳のロックをやる。困ったじいさんたちになってやる。