りとぱ続編(中)
〜お約束?〜
「徳永君、目をつぶってくれますか?」
「へ?」
「いいから…。」
目の前には冬川さんが立っている。
俺はこの状況がまったく理解できずにいた。
しかし、この雰囲気からしてかなり青春真っ只中な気配を感じずにはいられない。
(これってアレだよな?)
甘い期待に胸を膨らませる俺。
ドキドキ…。
俺は覚悟を決めて目を閉じた。
顔のすぐ近くに冬川さんの気配を感じる。
シャンプーのいい匂いがした。
ドキドキドキ…。
心臓の鼓動が早くなるのがわかる。
「私だって恥ずかしいのですから…。」
そんな囁きが聞こえる。
・
・
・
(まだか?)
あまりに沈黙が長かったので、そっと眼を開いてみる。
「うおぉ!」
俺の目の前にはネコがいる。
「んにゃぁ〜。」
しかも予想通りのリアクションをしている。
「ふ、ふふ冬川さんはどこ行った?」
「んにゃ?」
知らないとばかりに返事をするネコ。
「そうか、そうだったんだな…。」
俺はその瞬間、全てを理解した。
「また、夢オチか…。」
気が付けば自分の部屋にいた。
やはり、さっきのは夢だったようだ…。
「あぁ、もったいなかったな…。」
正直な本音が漏れる。
「 ? 」
その時俺は右手に違和感を覚えたんだ。
「…………。」
飽きれて物も言えなかった。
違和感を感じた場所に奴は居た。
「もう、お腹いっぱいにゃ〜。」
夢の世界を満喫しているようだ。
自分の右手をよく見ると歯型が綺麗についていた…。
誰の歯型かは言うまでもない。
無性に腹が立ったので、とりあえず秘孔を突いてやった。
「何か、あたまが痛いにゃん。」
そう言って俺より後にリビングに入ってきたのはマグロだった。
寝起きでぼけーっとしていた。
「あのさ、マグロ。」
真剣な顔で切り出す俺。
「何にゃ?」
「俺の手をかじるのは止めてくれ。昨日は足だったし。」
「記憶にないにゃ。えへん。」
威張るような事か…。
「それと夜中に俺の布団に忍び込むのも止めてくれよ。精神衛生上、良くないんだ。」
「 ? 」
どうやらわからないらしい。
どうもマグロはそういう事には鈍いみたいだ。
「別にかまわないにゃ、きょ…」
途中まで言いかけてハッと口を閉じるマグロ。
「何だ?気になるじゃないか。」
「にゃ、ぽ○もんが始まる時間にゃ。にょほほ…。」
そう言ってテレビの電源を付ける。
(何を言おうとしたのだろう?)
気にはなったがテレビに夢中になっているマグロを見ていると、そんな疑問は忘れていた。
30分後
「ぴかちゅ〜」
テレビに影響されたのか、部屋の中で遊んでいる。
朝っぱらから元気な奴だ…。
「赤と青の、点滅光線にゃ、眼がチカチカするにゃ。」
それって社会問題になったアレか?
まだ放送していたのか?
「おい、大丈夫かマグロ!」
慌てて駆け寄る俺。
「うそにゃ。にょほほのほ。」
してやったりってな顔で喜んでいた。
「でやぁ、天翔百裂拳!!!」
俺は北斗神拳の奥義を放ってやった。
「き、効かぬのだぁ、トキぃ〜。」
なんてノリのいい奴だ。素直に俺は感動した。
でも、そんなネタを何故マグロは知っているのだろう?
つくづくワケのわからない奴である。
ひととおりネタの応酬合戦を繰り広げた後、マグロがこんな事を言い出した。
「ゆーすけぇ〜、マグロは外に出たいにゃぁ。どこか連れて行くにゃ。」
涙まじりに訴えてくるマグロ。
実はマグロが家に住み着くようになってから数日が経っていたが、一度も外に連れて行ったことは無いのである。
当然、学校の連中にも内緒なのだ。
あの性格だ。トラブルが起こるのは目に見えていたからだ。
「つれてくにゃ!にゃ?にゃ?」
可愛らしさ30%アップの笑顔でお願いしてくるマグロ。
「え〜、どうしよっかなぁ(笑)。」
そんな笑顔に騙される俺ではない(多少、ドキドキしたが)。
「つれてってくれたら、サービスするにゃ。おにいちゃん。」
「お兄ちゃんって呼ぶな!それにサービスって何だ?」
「それは内緒にゃ。ちっちっ。」
目の前で人指し指を振るマグロ。
「ダメなものはダーメ。」
俺ははっきりと言ってやった。
「…………。」
「…………。」
お互い睨み合うこと数秒。
延長戦突入かと思われた均衡はあっさりと崩れた。
「ぐす、ぐすん…。」
嫌な予感がする。
「ひっく、ひっく…。」
あぁ、助けて神様。
「にゃぁあぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!(泣)。」
溢れる涙はナイアガラの滝の如し。
轟く叫びは窓ガラスを割らんばかりの振動であった。
このままでは家が潰れてしまう。
泣き止ませねば。
「わ、わかったから。連れて行ってやるから泣かないでくれよぉ。」
俺の方が泣きたいぐらいだ…。
「ほんとうにゃ?」
ピタっと泣き止んでこっちを見上げるマグロ。
微妙にほくそ笑んでいるような気がするのだが…。
「ほんとう?」
「あぁ、わかったよ。俺の負けだ。」
「にょほほ。」
あっという間にいつもの笑顔に戻る。
精神年齢はいくつだ?
そんな疑問が頭の中を駆け回っていたんだ…。
あぁ、トラブルが起きませんように…。
俺はそう願わずにはいられなかった。