極悪秋子さん






私の名前は水瀬秋子…。
ジャムの材料を探しに出かけた夫の帰りを待っています。
いつか戻ってくる夫のために、私はこの家と、愛娘の名雪を守り続けなければいけません。
そのためには手段を選びません。
それが私の役目なのですから…。



我が家の平穏を乱す、イタズラ娘。
祐一さんが余計なものを拾ってきたみたい。
名雪が「おでん種」と言ったので、私も名雪に合わせておきました。
本当は、「そんなもの捨ててこいや!」って思ってました。
うふふ。
私ったら…。



名雪と祐一さんが学校に行っている間、真琴と私だけの時間が過ぎていきます。
真琴はワガママです。
私が折角作ってあげた『ジャムトースト』を食べてくれません…。
そういえば以前同じように、名雪と祐一さんも変な顔をしていましたしねぇ。
何故でしょうか?
さて、真琴があまりにも『ジャムトースト』を嫌がるので、昼ご飯抜きにしてあげました。
昼ご飯抜きが名雪や祐一さんにバレないように、真琴には口止めしてあります。
2、3発ひっぱたいてから、こう告げておきました…。
「名雪や祐一さんに言ったら、もっと酷いわよ…。」



そんな昼ご飯抜きの生活がしばらく続いたある日…。
名雪と祐一さんは学校です。
いつものように『ジャムトースト』をお皿に盛っても、やはり真琴は食べてくれません。
「どうしたの、真琴?このままだと栄養不足になるわよ?」
「………。」
いつものように真琴は黙ったまま。
しかし、私も鬼ではありません。
「『ジャムトースト』さえ食べてくれれば、他の料理も出してあげるわよ。」
「………。」
それでも真琴は口を開いてはくれませんでした。
そんな真琴に私は意地悪をしてしまいます。
「そう、祐一さんに『肉まん』を買ってもらえるからね。私の料理よりそっちの方が良いのね…。」
「………。」
ふふふ、所詮はガキンチョ。
黙っていても微妙な表情の変化を見逃す私ではありません。
さらに追い討ちをかけてあげます。
「祐一さんには、真琴に肉まんを与えないように注意しておきましたから。」
「えっ!」
真琴が驚きの表情で私を見つめています。
そう、この表情を見たかったのよ…。
「もう、あなたには食べるものがないのよ。働きもせずダラダラしているあなたにはね…。」
「あうーっ。」
「そうね、あのネコだったら食べてもいいわよ。でも、料理は自分でして頂戴。」



その日の夕方、真琴は姿を消してしまいました。
これで我が家も静かになるわね…。
しかし祐一さんも意外と淡白な人間で、真琴の行方をあまり気にしていないようでした…。
所詮、祐一さんの本命は真琴じゃなかったようですね。
やはり名雪のことが好きなんですね。
うふふ。
祐一さんったら…。




しかし、そんな祐一さんも若い男のコ。
名雪以外にも手を出してそうな雰囲気。
そこで私は、祐一さんの行動を随時チェックすろことにしました。
私自身が動くとバレるので、別の人物に代わりを頼みました。
「じゃぁ、お願いね。」
「うん!」
その人物は、快く承諾してくれました…。



数日後のある日。
名雪と祐一さんが帰ってくる前に、私は早めに晩ご飯の支度をしていました。
すると、小さな探偵さんが祐一さんの行動報告に来てくれました。
「おつかれさま、どうだった?」
「うん、えっと。ごにょごにょごにょ…。」
「そう、やっぱりね…。」
その報告は私が危惧していた通りでした。
所詮はその程度の男だったんですね…。
私がため息をつくと同時に、玄関が開く音がしました。
「あら、帰ってきたみたい。ちょっと隠れていてね、あとで呼ぶから。」
「うん、わかったよ。隠れておくよ。」
小さな探偵さんは素直に頷くと、とてとて走って押し入れに隠れに行きました。
うふふ。
可愛いわね…。
そのまま私は玄関に向かいました。



「そう、名雪は部活で遅くなるのね。」
「ええ。」
帰ってきたのは祐一さん1人でした。
現在家の中は「私」「祐一さん」「小さな探偵さん」の3人だけ…。
名雪のいない今しかないわね…。
私は決心しました。



「秋子さん、何か手伝いましょうか?」
ちっ、偽善ヅラしやがって。
爽やかに白い歯を見せてんじゃねーぞ。
あら、私ったら…。
気を取り直してと。
「祐一さん、ちょっと話しがあるんですけど、時間いいかしら?」
「え、構いませんよ。」
これからあなたに絶望を味あわせてあげるというのにね…。
「じゃ、ちょっとここに座ってくださいね。」
にこやかに語りかける私。
それに素直に従う祐一さん。
さぁ、楽しい時間の始まりです!



「祐一さん、『川澄舞』っていうコを知ってますね?」
「え?」
鳩豆な顔で驚く祐一さん。
ちょっとブサイク。
ま、いきなりの質問ですからね…。
「知ってますね???」
「え、どうしたんですか急に。」
「そんなことはどうでもいいのよ。知ってますね?ね?」
「はぁ、知ってますけど…。」
何やら都合が悪いような素振り。
やっぱりね…。
「どういう関係なの?お二人は。」
「ちょっと待ってくださいよ、突然そんなこと…。」
あぁ、イライラします。
男だったら潔く答えんかい!
細かい事言うな!
あら、私ったら、まぁまぁ…。
「答えないと、晩ご飯は『ジャムトースト』にしますよ?」
「わ、わかりました。答えますっ!」
どうしてそんなに慌てるのかしら?
未だにわかりません。
あんなに美味しいのに…。
「で、どうなの?」
話を本題に戻して、と。
「は、はい。同じ学校の先輩と後輩の仲ですっ。」
「それだけ?」
「それだけです。」
「本当に?」
「本当ですよっ、やだなぁ秋子さん…。」
「夜の校舎で、『ピー(自主規制)』なこととかやってないかしら?」
「うっ。」
明らかに動揺してます。
うふふ。
あと一押しね。
「やだなぁ、何を証拠にそんなこと…。」
それでもシラを切る祐一さん…。
「そう、証拠が欲しいのね?」
「え?」
「もういいわよ、出てらっしゃい♪」



私の呼びかけに応じて、押し入れから人影が出てきました。
それを見た祐一さんの表情は未だに忘れられません…。
あぁ…。



「ごめんね、祐一くんっ!」
そう言って出てきたのは、『あゆちゃん』です。
手には数枚の写真を握り締めて…。
「あゆちゃん、それ並べて見せてあげて。」
「うん、わかったよ。」
呆然とする祐一さんを尻目に、あゆちゃんは写真を並べていきます。
「できたよ、秋子さん!」
「そう、ありがとうね、あゆちゃん。」
「うん、ボク頑張ったよっ。」
「じゃぁ、ご褒美に『たい焼き』をプレゼントするわね。焼きたてが良いだろうから、このお金で買ってきてね。」
ポケットから封筒入りのお金を手渡す。
「ちゃんとお金を払うのよ。盗って逃げちゃだめよ。」
「うぐぅ。お金がある時はちゃんと払うもん…。」
「うふふ、じゃぁまたね。」
「うん、バイバイ秋子さん。バイバイ、祐一くん!!!」
そう言ってあゆちゃんは帰っていきました…。
あのコは私と同じように、裏の顔を持っている匂いがします…。
また、何かお願いしようかしら。



「さぁ〜て、祐一さん?」
家の中には私達2人きり。
そろそろクライマックスね…。
「いつまでもボケてんじゃないわよっ!」
ほっぺを引っ叩いてあげました。
「ぐはっ!」
真琴とは違ったリアクションです。
癖になりそうです。
「あ、秋子さん…。この写真って…。」
「そう、あなたと先輩の『ピー(自主規制)』な現場写真よっ!それも教育現場でっ!」
「なんでこんな写真が…。」
「私があゆちゃんにカメラを渡しておいたのよ、盗撮専用カメラをねっ!」
「そ、そんな…。」
「正直、私も驚いたわ。あゆちゃんがここまで働いてくれるなんてね。たい焼きパワーってすごいわね…。」
「たい焼き?」
「そう、あなたは『たい焼き10個』で売られたのよ!」
「う、嘘だっ!」
「あゆちゃんにとって、あなたは『たい焼き10個』以下なのよ♪」
「そんな、これは夢か???」
「いいえ、これは現実。」
「ごめんなさい、ごめんなさいっ、秋子さんっ!!!」
土下座で謝る祐一さん。
「祐一さん、私は別に、先輩と『ピー(自主規制)』なことしたから怒ってるんじゃないの。」
「え?」
「男のコですものね。まだまだ若いですし。」
「じゃぁ、怒ってないんですか?」
ちょっぴり嬉しそうな顔で私を見上げる祐一さん。
うふふ。
もうすぐ、希望が絶望に変わるのにね…。
「ええ、怒ってないわよ。」
「じゃぁ、許してもらえるんですね?」
そんな祐一さんに、私はこう告げてあげました…。




『ええ、許してあげますよ。あなたが、名雪を慰み者にしていなかったらね…。』







「あれぇ〜、お母さん、祐一は?」
「実家に帰るんですって、本当に急なことで止める間もなかったの。」
「え〜。そんなの聞いてないよ〜。」
「仕方ない事よ、名雪。また会いに来てくれますよ…。」
「うん、そうだよね。」
「そうよ…。」



私の名前は水瀬秋子…。
ジャムの材料を探しに出かけた夫の帰りを待っています。
いつか戻ってくる夫のために、私はこの家と、愛娘の名雪を守り続けなければいけません。
そのためには手段を選びません。
それが私の役目なのですから…。






<P.S>

☆水瀬秋子、大ショック☆

「やっぱり名雪を慰み者にして、無愛想な先輩が本命だったのね…。」
「う。」
「それとも、お嬢様風の別の先輩も狙っているのかしら?名雪を慰み者にしておいて…。」
「うっ。」
「でもね、私もそこまで鬼じゃないわ、祐一さん。」
「うぅ…。」
「そうね、これから出すクイズに正解できたら、全ては見なかったことにしてあげます。」
「え?」
「その代わり、間違えたら実家に帰ってもらいますよ?」
「………。」
「どうします???ん〜?ま、選択の余地は無いでしょうけど…。」
「わ、わかりました。俺も男です。勝負します!」
「そう、じゃぁ問題です…。」





『私、水瀬秋子は何歳でしょうか!ちなみに白々しいお世辞を言うと、もれなく死刑よっ…。』











(ふぅ、いくらお世辞抜きの真剣勝負だからって、あそこまで外されるとは思わなかったわ…。もっと若いのに…。)






                         おわり…。






―あとがき―

「一体、何歳って答えたんだ、祐一?」
これは想像にお任せします・・・。

こーゆーのが書きたかったんだよもん(笑)♪
秋子さんが好きなんですよ、本当。
いつもは祐一視点ですが、今回は秋子さん視点ですし♪
これも愛の表現の形の一つということで(逃)。

製作時間は1時間30分ぐらいです。
何となくの構想は先に練っておいたんですが、実際は色々増えてしまいました〜。
もっと外道にしてもよかったかも?

"秋子さんはムチを取り出した!"
"それを祐一に叩きつけるっ。"
"ぴし、ぴし、ぴし。"
"悶える祐一…。"

あとは想像にお任せします♪
フォォォォ−!!!



こういうSS書いていて、ふと思ったこと。
「女性や小さいお子様が読んだらどう思われるだろう?」
結構ヤバイよね、このHPのSSの内容って…。
男のロマン炸裂ですし(謎)。
これからは幅広い読者層獲得に向けて、宣言!


 『や○いSSも書くぞっ!(女性向)』
 『ヒーローSSも書くぞっ!(お子様向け)』
 『変○仮面SSも書くぞっ!(↑の2つを合体?)』


↑の宣言はフィクションです。
実在の団体、個人、あんど慶周とは関係ありません(笑)。
では、ごきげんよう〜。
クロス・アウっ!


2000.10. 13(金)