ゲーリー・カー講演会

「音楽を学ぶすべてに人のために」

 
2001年5月12日(土)
泉佐野市泉の森ホール

(Part2)

【4.Q&A part-1】
Q.アーティキュレーションとはどういうことを意味するのですか。

A.アーティキュレーションというのを一番わかりやすく説明しますと長い音符や短い音符の長さをどの程度の長さにするかということだと思います。ホールで演奏する際にはその長さを自分で決めなければいけません。
このホールはとても音響がいいので音を長く弾くよりは少し短めに弾いた方が音響の効果があってクリアに聞こえます。

(ここでバッハ無伴奏チェロ組曲第3番クーラントの冒頭演奏)
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 もうひとつ例をあげたいと思いますが、バッハの曲でリピートを演奏するとき、2回演奏するというのは満足感の得られるすごく楽しいことなのです。2回目はアーティキュレーションを音響効果のために変えてみる、そういうことをすると2回弾くことがとても楽しくなる、

同じことを2回繰り返すのではなくて少しアーティキュレーションを変えてみるというのが必要だと思います。
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【5.リラクゼーション】
 最初にお話するのを忘れたのですけれども、今日私がお話するすべてのポイントは、大きな一つのカテゴリーにはいります。それはリラクゼーションということです。

例えば、皆さんが信じてくださるかはわからないのですが、耳を自分の楽器の方ではなくて会場の方、ホールの方へ向けて自分の演奏を演奏をお聴きになると、とても体がリラックスして、とても気持ちよくなります。常に私どもは一番効率の良い演奏をしなくてはいけない、ということは体を一番効率の良い形で動かなければいけないわけです。

 例えばあなたがコントラバスやチェロを抱えて練習室に行ったとしましょう。そして一時間練習をした後に、汗をびっしょりかいて、息をはずませながら「いやぁ大変な練習だった」というようなことがあったとすれば、それはみなさんの体に一番悪いことをしているわけです。一時間必死に練習をした後でも、どうしてこんなに大変だったのだろうと思うのではなくて、みなさんの脳に対してはそんな大した練習はしてない、と思わせるようにするのです。

例えばドボルザークのチェロ協奏曲を一時間練習した後でも、からだは全然疲れていない、と自分に言い聞かせると、気持ちを休めるのに、ほんの少しの時間で済むでしょうし、これはすばらしいことだと思います。

【6.メトロノーム】
 私が練習するときにはいつもそばにいてくれる親友がいます。それが誰かお知りになりたい方にお教えしようと思います。彼は私を本当にリラックスさせてくれます。その私の友達の名前はメトロノームといいます。
ではここで皆さんに質問です。

メトロノームでリラックスできるのでしょうか。答えはありませんか?誰も手を挙げなかったのはうれしいです。とういことは皆さんが練習中にメトロノームを使っているときに、正しくない使い方をしているとういういことだと思います。

皆さんをそれで責めているわけではなくて、メトロノームの使い方というマニュアルがおかしいわけで、音楽的に使うようなマニュアルではないということです。

 メトロノームを使うもっとも良い理由は、メトロノームがみなさんをゆっくり演奏させてくれるということです。皆さんがもしも、テンポを速く演奏をしなくてはいけない、と考えてらっしゃるのであれば、正しく演奏をしていないことになります。聴衆が速いと感じてくれればいいわけで、演奏者は常にスローモーションで演奏していると思えばいいのです。

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私が思うにとても重要なのはメトロノームを使って練習するときの方法なのですけれども練習を録音してください。そして一番リラックスして演奏できたときに日付を書いておいてください。次の日それよりもゆっくりから練習を始めて前の日よりも2つくらいクリックをあげて早くします。
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【7.時間の長さ(duration)】
 ここで個人的なお話をしたいと思います。私の使っておりますメトロノームは「40」が最低ではなくて「1」まで下げることができます。「40」というのは電気が発明される前のことで、電気のあとにクオーツで動くようになっても、メトロノームを「40」よりさげられないままにしておくというのはあまりにもばかげた話だと思います。

私はメトロノームを「17」から「19」で練習するのが大好きです。ほんとうに好きです。これは時間の長さに対するセンス(sense of duration)を磨くためにとても重要だと思います。
ほんとにメトロノームをゆっくりにしていると、皆さん自身で、次の拍がだいたいどのあたりにやってくるかということを考えるようになると思います。そしてそういった感覚が増してくると、今までよりも時間がゆっくりと進んでいくように感じることができます。

テンポの速い曲ではほんとに驚くのですが、そういう風に演奏を始めると30から40個の音符すべてをクリアにとらえることができ、全体をとても長い拍としてとらえることができるようになります。

 皆さんはこの話を信じないかもしれないですが、過去にも、そして現在にも、何人かのアーティストが、私が説明しようとしている時間の長さの概念にとりつかれていました。録音されたものでの最大の良い例ですが、残念なことに彼女が70才になるまでレコーディングをしなかったのですが、彼女の録音は時間の長さについて説明するのに一番よい例であることは間違いありません。

その人の名前はバンダ・ランダフスカといいます。バンダ・ランダフスカはハープシコード奏者なのですが、時間の長さがどのように作用しているかということをさらに深く理解していただくために、10種類ほどある彼女の録音をよく聞いていただければと思います。

 パブロ・カザルスやフリッツ・クライスラーは、あまりにもロマンティックすぎるとか、あまりにも自由奔放すぎるとか、あまりにもリズムに対して自由であるという風な批評をよくうけておりますけれども、私は彼らの録音を私の遅いテンポで使えるメトロノームで確認をしてみて驚くべき発見をしました。

時間の長さが正確にメトロノームの「9」を保っていました。たとえばカザルスのバッハを、メトロノームを「9」にセットして聞くと、メトロノームが1回うつ度に、あるフレーズが始まってそのフレーズの終わりにきます。

大川宏明記




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