番外編 ワイン・テイスティングのマナー
タバコとコーヒー
 ワイン・テイスティングには独特のマナーがあります。たとえば、音を立ててワインを吸い込んでも構わない、香水はなるべく控える、などです。
 ところで、よく言われていることに、タバコは厳禁、コーヒー等の刺激物は控える、歯磨き粉や、ガムなども、舌の味蕾をマヒさせるので直前には控える、などといわれています。
 その中で、タバコとコーヒーについて一つ。
 
1 タバコ編
 タバコについては、もちろんテイスティング中は、厳禁です。
 それでは、本場フランスのソムリエ達や、醸造家達は、みんな禁煙者ばかりでしょうか。ご存知の方も多いと思いますが、フランスを始めとするラテン系の人々は、一般に日本人よりもヘビースモーカーです。
 僕がパリで師事していた、アラン・セジェル氏は、元トゥール・ダルジャンのソムリエで、現在は、クルチェ(仲買人)、ワイン塾の経営、執筆業などをしている人です。彼も実はスモーカーで、ジタンのフィルターなし、というそれはヘビーなやつを吸っていました。
 ある日、僕は意を決して彼に質問しました。「ムッシュー、タバコを吸うことは、ワイン・テイスティングにとって良くないのではないですか?」すると彼はこともなげに「別にテイスティングの最中でなければ問題ないよ。まあ僕も一応30分前にはやめるようにしているけどね。それよりコーヒーは良くないね、あれこそ30分前には絶対飲んではだめだよ、舌に対する刺激が強いからね。」彼はフランス人にしては珍しくコーヒーが嫌いでした。

 

2コーヒー編
 
 また ある時、僕はドイツのジャーマン・ワイン・アカデミーの講習会に参加しました。そこでは1週間に約150種類のワインをテイスティングします。
 ラインガウ国立醸造所での授業とテイスティングの時、テイスティングの休み時間に何とコーヒーが配られました。そこで、僕は恐る恐るドイツワイン界の大家であるハンス・アンブロジー博士に尋ねました。「先生、コーヒーは舌に対して刺激が強すぎませんか?」教授は、コーヒーをおいしそうに飲みながら答えました。「 気にするなら、飲まなくてもいいけど...まあ、ドイツのコーヒーはフランスのように強くないからね。どっちにしても、あんまり気にしすぎることはないよ。それに、おいしいよ、これ。それより、タバコはいけないね。あれをやると、舌も鼻もマヒしてしまう。テイスティング中はもとより、30分前には控えなきゃだめだ。」どうも彼はタバコが大嫌いの様子でした。

 

 この結論をどうしたらよいか、僕にもよくわかりません。ただ、好きなものを無理することは、精神衛生上良くないので、自分にとってベストなコンディションを整えることの方が大事。刺激物は、折角のおいしいワインが正確に味わえなくなる可能性があるのでワイン・テイスティングの30分前くらいには控えた方がベター、といったところでしょう。

  次は第4章です。