第3章 ワインテイスティングを始める(実践編)

3−0 始める前に
 ワイン・テイスティングに理想的な供出温度は、白とロゼで15℃、赤で20℃です。(赤も15℃で統一することもある)これは普段飲む温度より少し高めですが、香気をより出すためです。また、ブルゴーニュであろうとボルドーであろうと、特級であろうと2級であろうと、同じ色では同じ温度にしなければいけません。条件を揃えるためです。
 つぎに、ティステイングの前に必ずグラスのチェックをして下さい。ゴミや汚れや臭いが付いていれば、テイスティングになりません。
 テイスティングの順番の基本は、レストランで飲む順番と同じです。一般には、白〜ロゼ〜赤、と順を追って渋みの多いものに移っていく方が舌のためによい結果が出ます。ただし、あくまでも一般論であり、赤から先にテイスティングする場合もあります。特に若い白ワインが多く出る場合は、酸味に舌の味覚のバランスが崩れることを理由に、赤を先にすることもあります。
 どちらが先であれ、赤ワインのテイスティングをはじめたら、赤ワインを集中して行い、白ワインをはじめたら、白ワインに集中しなければいけません。なぜなら、赤ワインと白ワインは、全く別のものであり、ワインは、常に同じ物差し(評価の基準)で判断されなければならないからです。
3−1 外観のチェック・ポイント
 
グラスの持ち方と色の見方


グラスの脚の下を親指と人差し指で摘むようにすると安定する。
色はグラスを倒して白をバックにしてみる

まず、白いテ−ブルか、テ−ブルの上に白い紙をおき、グラスにワインを3分の1ほど注ぎます。 視覚上の検査には、3つのポイントがあります。すなわち、 ディスク、 全体の色調、 脚(涙) のチェックです。

  ディスク

ディスクとは、ワインの表面の縁の部分です。この部分は、表面張力の関係で、ほかのところと、色調が違います。白ワインの場合は、透明になるはずです。赤ワインでは、若いワインでは、鮮やかな赤紫色になるでしょうし、熟成したワインでは、レンガのような色になってきます。ここでは、ワインの熟成度が一番はっきりと現れます。いずれの場合でも、ディスクは、決してくすんでいてはい けません。
また、ディスクの厚みは、ワインの粘度を表します。グリセロール分を多く含むワインは、ディスクが厚くなります。この場合、コクがあるワインになります。
 
   

  全体の色調

全体の色調を判断するのは、色合いと、色の濃さ、の2つの観点です。この2つのポイントから、ワインの性格や、成長度、品質の良否などを推測します。
この全体の色調のことを、フランスでは、“ROBE”(ドレス)と洒落た言い方をしています。

 

  脚(涙)

この“脚”や、“涙”という言葉がワイン・テイスティングに使うことを ご存じの方は、かなりのワイン通でしょう。勿論、ワインに脚が生えて駆け出したり、声を上げて泣き出したりするわけではありません。
ワインをグラスのなかで回転させて、その壁面にワインを残すようにします。その直後、ワインがグラスの側面に沿ってゆっくりと下に流れ落ちます。これが“脚”とか“涙”といわれるものです。これは、ワインのアルコ−ル分と、グリセロ−ル(粘成分)を中心としたエキス分がその発生要素です。アルコ−ル分が13度以上あるグラン・クリュ(特級)クラスのワインや、ドイツのベ−レン・アウスレ−ゼなどの貴腐ワインのようにエキス分の多いワインでは、この“脚”がはっきりと現れます。但し、これが出ることがすなわち、良いワインの証明になるわけではなく、アルコ−ル分やグリセロ−ル分が過度に含まれているときなどにも現れるので、過度に評価しすぎないようにしましょう。
白ワインの色調
白ワインの場合、“透明に近い色〜明るい黄色〜金色〜紅茶のような褐色”などがあります。この色合いにプラスして、“薄い、濃い、藁のような、みどりがかった”、等の色の濃さや、ニュアンスに関する補助の言葉を添えるのです。
 
色の濃くなる要素 ワインの色の要素は、様々な情報を持っています。
 
  • 気候や土壌的要因
     気候が暖かくなり、果実の成熟がよいと色合いは濃くなります。また、優良な土壌は多くの要素を含むため、一般に色合いが濃くなります。
  • ヴィンテージ的要因
     良いビンテージのものは、果実の成熟度が良く、色合いが濃くなります。
  • 醸造法的要因
     スキンコンタクトをさせた場合(フランスでは、マセラシオン・ペリキュエールという)や、樽熟成をさせた場合は、色が濃くなります。
  • 樹齢的要因
     ぶどう樹の樹齢が高くなると、根が深くはれるようになることと、1本の樹に出来る果実量が少なくなって凝縮されるために、色が濃くなります。同様に、ぶどう果実の剪定を6月頃にしっかりと行っているところは養分が凝縮されて、色が濃くなります。
  • 品種・種類別的要因
     ぶどう品種によってその本来の持つ色合いが若干変わります。また、甘口の貴腐ワインワイン、天然甘口ワインなどは若くても比較的濃い色をしています。
  • 熟成的要因
     最も一般的な要因です。瓶詰め前の樽熟成においても、瓶詰め語も年を取って熟成が進むにつれて色が濃くなります。特に、貴腐ワインなどは顕著で熟成によってより色が濃く紅茶のようになります。
 
透明に近い色 透明に近い色の場合は、若いワインであることが連想されます。また、あまり色素を持っていないことから、気候の涼しい地域(例えばアルザスなど)にある傾向です。醸造法としては、シンプルなもの、スキンコンタクトなどをほとんどせずに、ステンレス発酵槽などでスッキリと仕上げたあまり貯蔵していないものでしょう。複雑な成分も持ち合わせていないことから、若のみタイプできっちり冷やして飲むのがよい場合がほとんどです。
 
明るい黄色 ほとんどの辛口白ワインがこの範疇に入ります。ですから、ただ「明るい黄色」だけでなく、そのニュアンスがとても重要になります。
まず濃いか、薄いか、色調の濃淡です。そのためには、標準的な濃さを知らなければなりません。プロの場合は、この基準が統一されていなければいけません。上の写真の一番左のものは、おそらく標準的な色合いでしょう。(ディスプレイによる誤差もあるので難しいが)また、反射光によく現れる色調にも注意しなければいけません。よくあるのは、緑がかった色調です。この場合、フランスですと、ブルゴーニュのシャブリ地区や、ロワール地方のミュスカデなどによく出てきます。この緑がかった色は、生産地が比較的涼しいこと、ワインが若いこと、あまり樽熟成をさせていないこと、等が要因になっていますし、柑橘系の香りや、ミネラル質の香り、酸味などが含まれていることを予想させます。面白いことに、同じシャルドネ種でも、ブルゴーニュのより南の地区、例えばムルソーやマコネーではこの緑がかった色合いはほとんどみられなくなります。
フランスで使われる色の表現参照
 
ロゼワインの色調
ロゼワインの場合は、ぶどうの品種による違いが色の違いの最も大きな根拠です。ピンクのような色から、薄いオレンジ色そして薄紫色などです。熟成が進むと、黄色がかったりオレンジがかってきたりします。古くなって死んでしまったワインでは、“玉ネギの皮のような”と表現されたりします。いずれにせよ、ロゼは、3年くらいのうちに飲まれるべきものです。

 

赤ワインの色調
赤ワインの場合は、色合いは、ぶどうの果皮によってその多くが決定されます。果皮に含まれるアントシアニンという物質がワインの色素の素になっています。
このアントシアニンが、最近注目されているポリフェノールという物質ですが、その説明は、この部分の目的ではないので省略します。
 
色の濃淡の要素 ワインの色の要素は、様々な情報を持っています。
 
  • 気候や土壌的要因
     夏が暑く、太陽の光をたくさん浴びる地域では、ワインは色の濃い、ものになります。その結果色合いは濃くなります。ただし、あまり暑すぎると複雑味に欠けたものになります。また、優良な土壌は多くの要素を含むため、一般に色合いが濃くなります。石の多い土壌は、太陽の光をよく反射させて、ぶどうの果皮の色が濃くなります。
  • ヴィンテージ的要因
     夏が暑く、太陽の光をたくさん浴びた良いビンテージのものは、ワインの複雑な成分の基になる果皮が厚くなり、ワインは色の濃い、複雑な香りをもつ長命なものになります。
  • 醸造法的要因
     醸しを長くした場合させた場合(フランスでは、マセラシオンという)や、樽熟成をさせた場合は、色が濃くなります。
  • 樹齢的要因
     ぶどう樹の樹齢が高くなると、根が深くはれるようになることと、1本の樹に出来る果実量が少なくなって凝縮されるために、色が濃くなります。同様に、ぶどう果実の剪定を6月頃にしっかりと行っているところは養分が凝縮されて、色が濃くなります。(白ワインと同じ)
  • 品種・種類別的要因
     ぶどうの品種は、その色合いの大きな根拠のひとつです。ブルゴ−ニュで栽培されているピノ・ノワ−ルは、ボルド−のカベルネなどよりも薄い色をしていますしボジョレ−のガメイ種は、鮮やかな赤紫色をしています。
  • 熟成的要因
     赤ワインでは、熟成が進むと白ワインとは逆に色が薄く、そしてオレンジがかってレンガ色のようになってきます。色が薄くなるのは、熟成によってワインの色素を構成している一部であるタンニンが小さく固まって澱となってしまうからです。タンニンが澱になるので、味はまろやかになり、またこのときに新たな香りが生成されます。また、この澱は無害なもので、ワインの変質とはなんら関係がありません。むしろ、澱のあるワインは、熟成をしている良質なワインの証になります。
フランスで使われる色の表現参照
 

 スパークリング・ワインの外観チェック 

    最高の泡粒のシャンパーニュ(SOPHEXA提供)

 シャンパーニュをはじめとするスパークリング・ワインは、炭酸ガスの出方がとても重要なポイントになります。

 1 泡のきめが細かいこと。
 2 泡がいつまでも持続していること。

 この2点が基本です。瓶内二次発酵をして長期熟成させるシャンパンなどは、その熟成法によって初めてこの2つのポイントを達成できるのです。(プレミアム型のビンテージシャンパンは、その深みを増すために、スタンダード品の2倍以上の熟成期間が法律によって要求される。)なおシャンパーニュの場合、この長期熟成によって、炭酸ガスが溶け込むだけでなく、酵母などが造り出すアミノ酸の成分とワインが長い間接しているために独特の香り(パンの焼けたような香りなど)や風味がでてきます。
 最高の状態で炭酸ガスが溶け込んだ場合は、写真のようにグラスの底の中心からきめの細かい一筋の泡粒がで続けて、液体の表面に達した後、ディスクの周りに環を描くように泡粒が連なる状態になります。このことを、細かい泡粒が、「小さな真珠のネックレスのようにディスクを取り囲む」と表現されます。
 この泡粒や香りを楽しむためにも、シャンパーニュには、先の細いトール型のグラスが適しています。
 
トピックス(よりマニアックな内容)

フランスで使われる色の表現(アクセント記号省略)

白ワイン

無色透明 incolore アンコロレ
 文字通り色のない状態。ミュスカデなどに見られる。ただし、反射して見える色合いなどで少し黄色がかったり、緑色がかったり、青味がかったり(時として)、していることが多い。
 良い品質の場合は、透明、というより、「クリスタルのような」というべき。
例、薄く淡い色調でほとんど無色透明、反射は緑がかっている。   tres pale, presque incolore, reflets nuance vert

淡い金色、淡い黄色 or pale, jaune pale オル・パール、ジョヌ・パール
 若いシャルドネやソーヴィニヨン・ブランなどで一番多く見られる色調。
 白ワインの色調を正確に表現する日本語の感覚は難しい。 「透明度の高い輝いた淡い黄色 」が一番正確。フランス語では、or pale 。金色でも2種類あり、若いワイン向けの淡い金色が"or pale "で、いわゆる黄金色は、" dore " である。黄色" jaune "は、金色に比べてもう少し濃い表現、たとえば貴腐ワインのとても若い頃の色調として使われる。

麦藁色  paille パイユ
 少し熟成して枯れた色。
(濃い色ではない)単独で使うよりも、金色や、黄色と併せて使われる。例  藁色がかった金色。藁色がかった黄色。 or paille , jaune paille

黄金色 dore ドレ
 熟成した貴腐ワインなどに使われる表現。とても上品な意味合いを持つ。時として「深い黄金色」と、色がより強いときに表現する。
dore fonce ドレ・フォンセ もちろん「軽い黄金色」も、若い貴腐ワインの表現 legerement dore レジェルモン・ドレ

トパーズ色 topaze トパーズ
 白ワインがとても古くなった状態の色。通常の辛口白ワインでは、もはや死んだ状態であるが、貴腐ワインなどは、紅茶のようなトパーズ色になってからが独特の熟成香があって素晴らしくなるものもある。同じような状態で「マホガニー色」と表現されたりもする。" acajou " アカジュ
より濃い状態を「焼けたトパーズ色」 " topaze brulee " トパーズ・ブリュレ,「マデラ酒色の」 " maderise "マデリゼ, 「琥珀色の」 " ambre " アムブレ  白ワインは基本的に熟成、もしくは老化の課程で色が濃くなっていく。ロゼや赤ワインの場合は、逆に色彩が薄くなっていく。従って死んだ状態になったときには、もとが何色だったのかの判断が難しくなる場合もある。

赤ワインの色の表現

サクランボ色 cerise スリーズ
ボジョレワインの鮮やかな赤い色は、とても印象的。その色を表現するのが、このサクランボ色である。ただし、これは日本のサクランボではなく、西洋のサクランボの色である。すなわち、少し赤紫がかった鮮やかで少し濃いめの赤い色。ガメイ種の若いときの色。

ルビー色 rubis リュビ
ピノ・ノワールの若いときの色合い。薄めの(雨の多かった年の)ボルドーなど。このルビー色で表現されるワインは、とても守備範囲が広いので、「明るいルビー色」 " rubis clair "、「濃いルビー色」、" rubis fonce "、 「奥深いルビー色」" rubis profond "、「黒っぽいルビー色」" noir " 、など補助用語を混ぜて使うべき。若いコート・ド・ニュイ地区の赤では、「青黒いルビー色」" rubis bleu-noir "と表現されることが多いので要注意。


ガーネット色 grenat グレナ
熟成したピノ・ノワール、特にコート・ド・ニュイ地区のピノ・ノワールがよく熟成した深い色合いによく表現される。ボルドーにおいても熟成の進んできたものは、「奥深いガーネット色」" grenat profond " と、表現される。
ガーネット色は、ポピュラーなルビー色に比較すると、少し茶色の混ざった色のこと。だから、とても濃いガーネット色になると、内側を焦がした樽に長期間熟成されて、その後の瓶熟成もしているボルドーの格付けワインも、この色の表現で表される状態になる。

補助用語

淡い、薄い pale パール
軽く legerement レジェルモン
濃い fonce フォンセ
深い profond プロフォン
枯れた、藁色 paille パイユ
緑色に反射 reflets vert ロフレ・ヴェール
明るい claire クレール
際だった soutenu ストゥニュ

注意 スペルには、発音記号が入ります。(日本語JIS表記では文字が化けてしまうので省きました)発音のカタカナは、ある程度近い音、と思って下さい。

 

 
次は香りの検査です。