2ぶどうの品種(セパ−ジュ)

もし、ブラインド・テイスティングでワインを当てよう、ということになった時に一番最初に考えなければならないのは、ぶどうの品種、というのが一般的です。品種がわかると、その栽培地域などが限定されるためです。

 ただし、ワインが10年以上熟成をすると、ぶどうの品種本来のもつ香りや味わいはかなり変化してきますので、正確に的中することが難しくなります。

 実はかなり経験を積んだプロでさえも、カベルネとピノ・ノワールを間違える、なんてことは、ままあることなのです。Vinotheque誌2002年4月号に掲載されたヒュー・ジョンソン(イギリスで最も高名なワイン評論家で、世界最高峰の難関である「マスター・オブ・ワイン」の称号を持つ)のインタービューで、「私の友人で、イギリスの有名なワイン評論家がいるが、『ボルドーとブルゴーニュを間違ったことがあるか?』と聞かれて、『今日の昼食以降は、まだ間違えていない』と答えたらしい(大笑)。特に、ブラインド・テイスティングは罠だらけで、これまで何度も恥ずかしい思いをいした。」とのことなので、ご安心を。逆にプロが間違えたからって、あまりバカにしないでください・・・。
 
 ワインに使われるぶどうの品種は数多くありますが、いずれも生食用のぶどうに比べて小振りで、各実の密集度が高く、糖度もとても高いのが特徴です。(アルコール1%を得るのに18gr/Lの糖分が必要。)
CS&Kyoho2.jpg (5932 バイト)カベルネ・ソービニヨンの粒と百円玉と巨峰の粒
セパージュの分類
 ワイン醸造上の観点から、その分類は、果実の成熟の時期により整理されています。つまり、8月末くらいから10月にかけて成熟するぶどうを、早成の順に4つにグル−プ化しています。第1期から、第4期までありますが、有名なぶどうは、ほとんど全て第1期か第2期のグル−プです。そして、その各々の生育の特徴が、ビンテ−ジ(醸造年度)と密接な関係があります。
第1期 シャスラ、ピノ・ノワ−ル、シャルドネ、ガメイ、ソ−ヴィニヨン・ブラン、ミュスカデ、など
第2期 カベルネ・ソ−ブィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ−、リ−スリング、セミヨン、など
赤ワイン用のぶどう
ブルゴーニュのピノ・ノワールと土壌(ヴォーヌロマネ村)
ピノ・ノワ−ル
 第1期のグル−プ、土質にとても敏感。発芽がとても早く、春の霜害と、雨による花粉の流失(結実不良)に弱い。ボルド−のものに比べて、酸度が高く、タンニンが少ない 。皮が薄いために、色素成分は多量ではないために、色もやや明るめ。コート・ド・ニュイ地区の熟成型の物には、なめし革のような重厚な香りがする。また、ヴォルネイ等に代表されるコート・ド・ボーヌ地区の若いタイプは、とても繊細で、サクランボに似た可愛い香りがする。 有名なロマネ・コンティ社のワインからは海藻系の香りがする、というのがよく言われる。
偉大なブルゴ−ニュ(赤)、シャンパン(白とロゼ)、アルザス(ロゼ)、ロワール(赤)など
 
ガメイ
 第2期のグル−プ 収穫性がとてもよい。
軽い酒質で、フル−ティ、あまり長期の熟成には向かず、むしろ、ヌ−ボ−(新酒)に理想的。タンニン(渋み)が少なく、ジューシーな口当たりと、ラズベリーの香り。ボジョレ・ヌ−ボ−では、バナナの香りがあらわれる。
ボジョレ、ロワ−ルなど。近年話題になるロワールの自然派たちのワインは、多くにこの品種が使われている。
 
カベルネ・ソ−ヴィニヨン
 第2期のなかで遅く成熟する。一般に4月末に発芽する。 土質をあまり選ばないので、世界各地に広く植えられているが、暑い夏がある水はけのよい畑をもっとも好む。若く未成熟の時は、ピーマン香など野菜系の香がする。偉大な年には、バラの花の香り。苦みの元となるタンニンがとても多い。
長期熟成型で、香りは複雑。ボルド−特にメドック地区の真髄。
 
カベルネ・フラン
 第2期のグル−プ、発芽と成熟は、カベルネ・ソ−ヴィニヨンより少し早い。カベルネ・ソ−ブィニヨンよりタンニンがすくないが、より繊細で、スパイシ−な香りが高い。丁字や胡椒など。ボルド−において、ほかとブレンドされて使われる。特にサンテミリオンにおいて大変重要な役割を果たす。メルローに対してかなり多い比率でブレンドされる場合、優雅なキャラクターを持つことになります。代表は、シュヴァルブラン、フィジャック、ドームなど。
土質にとても敏感。ほかに、ロワ−ルの赤など。これも、低温下で育った未成熟な時には、ピーマン香が現れる。
メルロー
 第2期の早めの成熟を迎える。発芽が早く、霜害に敏感で、開花期の雨にも弱い。粘土質の土地に適合するために、世界に広く分布している。柔らかな飲み口で、カベルネよりも熟成期間が短くて飲めるタイプのワインである。カシスやフランボワーズ等のフルーティーな香りがよく出る。ボルドー地方サンテミリオン地区やポムロール地区など 。カベルネにくらべて酸が少ない、といわれることもあるが、酸のキャラクターが違うので酸味としては逆にフィニッシュに多く感じられることもある。カリフォルニアで完熟したメルローは、とても濃くグラマーなボディーを持ち、インクやタイヤのゴムのような強い香りを持つ。
 ボルドーやカリフォルニアに代表的な品種だが、最近のスーパー・トスカン(イタリア)の最高級のもが、メルロー100%で大成功を納めている。(マセト、レディガフィ、メッソリオ等)
シラー
 ローヌ北部の典型的な赤ワイン品種。花崗岩土壌に適性を持つ。濃い色素と、とてもスパイシーな風味が特徴。しっかりとした酸を持ち、胡椒やグリーンハーブ系のかなり個性の強い香りが特徴。急峻な段々畑から生まれる、JLシャーヴのエルミタージュや、ギガルのコート・ロティが最高作。カリフォルニアの比較的暖かい地域で最近主流になりつつある。
グルナッシュ
 ローヌ南部とラングドック、スペイン(ガルナッチャ)、イタリア(カンノナウ)まで幅広く植えられた典型的な赤ワイン品種。 濃い果実感があるが、タンニンは本来強くない。ジャムのような香りとジューシーな風味を持つ。シャトーヌフでは焼けたスパイシーな風味が特徴。 南仏のバニュルスやモーリーでは、甘口赤ワインとしても素晴らしくなる。南仏でゴビーが造る「ムンタダ」や、スペインのプリオラートが代表的だが、このグルナッシュから、ローヌ南部において安くておいしいワインを探すことが出来る。
ムールヴェドル
 ローヌ南部とプロヴァンス、ラングドック、スペインで使われる、大変個性的な赤ワイン品種。 スペインでは、フミーリャ地方でとても優れたワインが生まれ、この場所ではモナストレルと呼ばれている。
とてもしなやかな口当たりと、海藻やベーコンを連想させる野性的な風味に魅力があるが、育成が難しく成功と失敗の差が激しいといわれている。
シャトーヌフのボーカステルにおいて大変重要な役割を果たし、特に最良年に少量造られる「オマージュ・ジャック・ペラン」の主要品種となっている。バンドール等でも重要。
 
カリニャン
 ローヌ南部とラングドック、スペインの個性的な赤ワイン品種。ブレンドによって、やや硬質の田舎っぽいアクセントを与える。50年以上の古樹から単独で造られる場合、円やかさも出て、独特の風味が感じられる。個人的には、田舎っぽい皮革の香りが、カリニャンのイメージ。ラングドックのフィトゥーが代表的生産地。
 
サンジョヴェーゼ
 イタリアのトスカーナ地方を中心に広がる、イタリアを代表する赤ワイン品種。とても亜種が多く、ブルネロ、プルニョーロ・ジェンティーレなど様々なものに分かれる。性格もキャンティ・クラシコにみられるようなミディアム・ボディーのものから、ブルネロに感じられるリッチでパワフルなものまで幅広いが、共通して独特な魅力的な酸を持つエレガントなキャラクターが感じられる。最近流行のスーパートスカンもサンジョヴェーゼの幅広いキャラクターが様々に表現されていておもしろい。個人的には、ペリゴール・トルテのピノ・ノワールにも似た女性的でエレガントな味わいにとても魅力を感じます。もちろんパワフルなブルネロも良いです。
 
ネッビオーロ
 ピエモンテから世界に発信された、大変に魅力的な赤ワイン品種。もちろん、バローロやバルバレスコが代表的ワイン。とてもしっかりとしたタンニンをもち、長期熟成型の高貴なワインが生まれる。極上の皮革を連想させる魅力的な香りと、タンニンに支えられた強靱なストラクチャーが特徴。バルバレスコのガヤ、バローロのジャコモ・コンテルノや、アルターレ、スカヴィーノなどは、決して忘れてはいけない存在です。
アリアニコ
カンパーニャ州など、南部イタリアを代表する次ブドウ敵性格の濃い品種。ジューシーで焼けた干しぶどうを感じさせるキャラクターが特徴。南部イタリアの日常ワインに幅広く使われているが、ナポリ近郊で生まれる力強いタウラジが代表的ワイン。
テンプラニーリョ
スペインのリオハに代表される典型的な赤ワイン品種。 高貴品種としては、早く成長するのが特徴で、テンプラとは、早生の意味がある。生まれてくるワインは、逆に大変な長期熟成のポテンシャルを持ち、20〜30年熟成させることも稀ではない。きれいな酸が特徴で、この酸によって長期熟成が可能になる。皇室御用達のマルケス・デ・リスカルが有名だが、マルケス・デ・カサレスも柔らかい風味で魅力的。最近では、リベルタ・デル・ドゥエロのペスケラが、この品種から大変に凝縮したモダンスタイルのワインを生み出し成功している。
白ワイン用のぶどう

ピュリニーモンラッシェ村のシャルドネ(ピノ・ノワールの畑より土が白い)

シャルドネ
 第1期のグル−プ 土質に敏感、花崗岩の岩石質で、貧しい土壌を好む。
とても繊細で、気品がある。ブルゴ−ニュで植えられ、若いときにパイナップルやグレープ・フルーツ系、樽熟成させたときにはバタ ー、アカシアの花等、複雑な香りがする。シャブリ地区においてはミネラル質の香りに特徴がある。 カリフォルニアなど温暖な地方では、ナッツ系の香が強くなる。
 
ソ−ヴィニヨン・ブラン
 第1期のグル−プ スモーキー、スパイシーでつよいアローム 砂利と石灰分の多い土を好む。グレープ・フルーツ、青っぽいハーブ、青葱、そしてフランスでは、「カシスの芽」や、「猫のオシッコ」と表現される。ボルド ーと、ロワールで主に辛口白用にブレンドして使われる。 一般には、ステンレスタンクでフレッシュな造りを目指すが、ボルドーの一部で、樽発酵・熟成をすることにより、コクがある長期熟成型の高級ワインを造り出す。カリフォルニアで 以前フュメ・ブランと呼ばれてた。1990年代から、ニュージーランドが理想的生産地として注目されている。
ミュスカデ
 第1期のとても早い熟成をする(8月末頃)タイプ。発芽も早いが、霜に比較的強い。
フル−ティで若飲みタイプ。酸味が多くレモンや白い花の香りがして、生や、酢の物の魚介類にあう。
ロワ−ルのミュスカデ地区
 
リ−スリング
 第2期のグル−プ 発芽が遅いため、霜害を逃れている。フランスのアルザス地方と、ドイツワインにおいて、もっとも高品質のワインを造る。豊かでキレのよい酸味と長い後味、複雑で豊かな香りが特徴。長命な貴腐ワインによく適合する。最も特徴的なのは石油系のオイリーな香り。これは涼しく、素晴らしい土壌で育成された時に特に顕著。若いときは、マンゴの香り、熟成して、アカシアや、ハ−ブティのような香り
セミヨン
 第2期のグル−プ貴腐菌に敏感で、ボルド−の貴腐ワインのもっとも重要なぶどう。スパイシ−で、ハチミツに似た香りがする。皮が薄いので貴腐がつきやすいが、完熟前に貴腐菌がつくと、腐ってしまう。
 
ヴィオニエ
 ローヌ地方、特に北部のコンドリューで、すばらしい個性的な魅力を発揮する特別な品種。大変にアロマティックで、カリンやオレンジを連想させる強い芳香を放つ。コンドリューが傑出しているが、最近は南部ローヌや、カリフォルニアでも成功しつつある。ギガルやサンコムのコンドリューには他の地区のものでは味わえない魅力があります。
 
ボルドーにおけるぶどうのブレンド比率について
 ボルドーにおいては一般に2種類から4種類程度のブドウがブレンドされます。専門書やカタログなどに、カベルネソーヴィニヨン60%、メルロー40%などと書かれています。それでは、あるシャトーの全ての年のワインがその比率でブレンドされているのでしょうか。 実は、この比率はそのシャトーの作付け栽培面積比率です。だから、たとえばある年の春先に霜が降りて、メルローの生産量が減った、というようなことになると、その年のメルローのブレンド比率は下がります。(例84年)また、高級シャトーではファーストラベルとセカンドラベルに分けて瓶詰めされます。たとえばシャトー・ラトゥールでは、基本的に、収穫の次の年の1月頃に、各々の樽を試飲し、1級品とセカンドラベル、それ以外のもの、との区別をします。そして、その区別に従い、一度樽から、発酵槽に入れ替えられて、ぶどうの品種の違うワインがブレンドされて、均質化されます。(この過程をアッサンブラ−ジュといいます。)つまり、ぶどうのブレンド比率はこの時に最終決定されます。ラトゥールの醸造責任者の話だと、その時にカベルネを何パーセントにしよう、などとは基本的に考えていないそうです。単純にカベルネの良い樽が何本残って、メルローの良い樽が何本残ったから、今年のラトゥールのブレンド比率は、結果としてこうなった、という具合です。
カタログのセパージュの比率はそんなわけである程度の目安です。
 
 
ぶどう樹の高さと味の変化
 
 一般に日本でぶどう畑を見ると、「棚づくり」といわれる、背の高さよりも高めの位置に棚を作ってそこにぶどうの実を育てています。
 それに対して、ヨーロッパを始めとする海外の多くは、「垣根づくり」や、「株つくり」といった、比較的低めに樹を育てて、実を熟成させるようにします。また、これらの中でも、フランスのように樹の高さが50cm程度にして、実が、地面すれすれになるような位置に育てる方法と、イタリアや、カリフォルニアなどのように、1m位の高さに育てて、その方法があります。
 なぜ樹の高さを変えているか、というと、基本的には、フランスのように比較的涼しいところでは、地面の反射する熱もぶどうの実に与えて熟成を助けるのに対して、イタリアやカリフォルニアなどのように比較的気温の高いところは、地面に近づけすぎると、暑すぎてぶどうの実が割れたりする危険があるために、少し遠ざけているのです。ちなみに、フランスの場合は、畑にある石が昼間暖められて、夜間にも熱が保たれて、ぶどうの実が冷えないように保護する役目も果たしています。
さて、そこでこの樹の高さが、味わいにどの様に影響してくるのでしょうか。
 
 ぶどうの樹を低く育てるフランス
 ぶどうの香りを生成する一番の要素は、特に赤ワインの場合、その果皮にあります。果皮が、数ヶ月間の成熟期間中に常に地面に近い位置にあるフランスワインのぶどうが、土の成分や、石の熱の影響によって独特の芳香が形成される、といわれています。例えば、ボルドーのグラーブ地区、特にシャトーオーブリオンにおいて特徴的なコーヒー系の少し焦げた感じの香りや、サンテミリオンの丘の斜面、コート地区のシャトーに見られる焼けたような香りは、この土や石の影響を受けた香り、といわれています。フランスの生産家たちが、「土壌」を最大の要素と主張する根拠のひとつもこの育て方によるものなのでしょう。
latouretmoi.jpg (20725 バイト)フランス・シャトーラトウゥール
 
 ぶどうの樹を高く育てるカリフォルニア
 カリフォルニアでは、前に述べたように、地面に近づけすぎると、暑すぎてぶどうの実が割れたりする危険があります。また、歴史が浅いこともあり、比較的土壌に対する世界的な評価も確立していません。そこで、彼らは出来るだけぶどうの実本来が持っているフルーティーな要素を純粋にワインに引き出そうと、努力をしています。実を1m程度のところに熟成させる方法は、ここでのワイン造りの目的に適合しています。フランスワインを味わった後にカリフォルニアワインを味わうと感じる「ぶどうの実を囓ったようなフレッシュな香り」は、この造り方の違いによるものから来る、と思われます。そして、カリフォルニアワインの高級品は、ぶどう品種名をつけたバラエタル・ワインになっているのです。(この部分は、97年10月訪問ナパバレー・スターリングビンヤード Robert Crane氏の話を参考)