ある日突然のshin.gifほよほよ日記  
 
g-mark.gif「タンゴ・冬の終わりに」ごきげんよう!清村盛風に…(2006.11.29)
 
 初日の終演後に感じた胸が踊るような高揚感は何だったんだろう?人で溢れ返るシアターコクーンのロビーで友人を探しながら、彼女に今のこの気持をどう伝えようか?待ち焦がれていた舞台が始まった歓喜とか…否、そんなもんじゃなくて、きっと私はこの芝居の世界観がたまらなく好きになったんだと思う。何度も足を運ぶことになるであろう(笑)予感がしたんだと思う。渋谷駅までの雑踏の中、信じられないくらい軽やかに他愛ない言葉を発しながら、もう既に北国シネマの暗闇にめくるめく思いを馳せていたような気がします。1984年初演、86年再演、91年イギリス公演から15年の時を経て、満を持して上演された“清水邦夫×蜷川幸雄”コンビの不朽の名作。演劇の神様に感謝したくなるような、残酷なまでに美しい、甘美な追憶に酔いしれることができました。
 
【物語】北陸の地、日本海沿いの古びた映画館、北国シネマ。有名な俳優だった清村盛(堤真一)は三年前の舞台「オセロー」を最後に突然引退。心の病を抱えながら、元女優だった妻・ぎん(秋山菜津子)と共に、弟・重夫(高橋洋)が経営する故郷の映画館でひっそりと暮らしていた。さびれた映画館は廃業寸前。叔母・はな(新橋耐子)の手筈で近々取壊される予定になっていた。そこへ、昔の俳優仲間であった名和水尾(常盤貴子)と彼女の夫・連(段田安則)が現れる。今や演劇界のホープである水尾はかつて盛と激しい恋に燃えていた過去があった。自分の前から姿を消した俳優を忘れるために結婚もしたが、ある日、盛から是非会いたいという手紙を受取り、彼を訪ねてきたという。水尾の心を知りながら、彼女を追いかけてきた連だった。しかし、手紙を書いたのは盛ではなく、夫の俳優としての再起を願うぎんが仕掛けたことだった。ぎんを罵倒する水尾。失意の水尾が見たものは、幻の“孔雀”を追いながら狂気の世界を彷徨い続ける男の姿だった…。
 
 冒頭。観客の度胆を抜く、総勢87人を配した群衆シーン。反逆の映画に熱狂する名も無き若者たちが放つ、息苦しいまでのエネルギー。たぶんそうなのでしょう?激動の安保闘争の時代に生き、夢破れていった彼らの雄叫びがスローモーションと共に静かにフェードアウトしていくと…時代に取り残された廃虚のような映画館の客席。所々無惨に壊れて歯が抜けたように並ぶ黒ずんだ赤い椅子。一人、そこで眠っていた男にスポットライトが当たり、上手上部の出入口からトレンチコートの女が入ってくる。憂いに満ちた“ぎん”のモノローグは、一瞬にしてピンと張り詰めた寒々しい空気の中へと導いてくれました。「ホ…」と意味もなく無造作に手を上げて、互いの気持を通わせる夫婦の深い愛情。やがて彼らは堪え難いほどの悲劇的な終末を迎えることになる。パッヘルベルの「カノン」やサティのピアノの旋律が印象的な舞台。詩情あふれる少々時代掛かった台詞を静かに聞き入る緊張感が私には心地良かった。“盛”の心の病は緩やかに、そして確実に、彼の魂を蝕んでいく。かつての華やかな記憶の断片では朗々と舞台の台詞を唱え、自己愛の強過ぎる俳優としての絶頂に陶酔しながら、否応無く枯れ衰えていく現実に愕然とする。愛する妻の顔も、語り明かした“水尾”との甘く切ない逢瀬も、波のように押し寄せる混乱の闇に紛れ込んでしまった。病める俳優だけに存在する妄想の中の愛すべき住人たち。親戚筋の伯父さんや制服姿の同級生。少年時代の美しくも儚い幻影たち。幻の“孔雀”を追い求める時、狂った男は心穏やかになれる。微かな光明のように病める魂を揺り動かしたタンゴの音色も束の間の夢。デズデモーナの裏切りを邪推してその手にかけたオセローのように…狂った男は狂ったまま…幻の観客を見据えながら反芻する伝説の引退宣言。輝きを取り戻したかのようにタンゴのステップを踏む俳優には壮絶な最期の舞台が待ち構えていた。お約束のようなド派手な屋台崩し。崩壊した映画館の壁の向こうに臨む狂おしいまでの満開の桜。その花びらと混在しながら降り積もる白い雪と宙に舞う“孔雀”の羽根。幻の美の象徴を実体化してしまうアングラさには?疑問を感じながら(笑)ニナガワ流の畳み掛けるようなラストへの疾走は見事でした。全身に哀しみを携えたあの日と同じトレンチコートの女が北国シネマを去っていく。と同時に、消えたはずのあの幻の観客たちが雪崩れ込んでくる。ひとつの時代の確かな終焉、震えるような滅びの美学、後から後から心に染みてくる舞台でした。
 
 清村盛の堤真一さん。俳優が劇中で演じる俳優とはどんな感覚なんだろう?小さく体を折曲げて憔悴しきった横顔を映画館の椅子の背に埋めている姿に、正気と狂気の狭間で他者の人生を演じ続けてきた盛の苦悩を見た思いがしました。いつも誰かに溺愛されていた夢見がちな少年の心のまま、老いに対する漠然とした恐怖と闘いながら、少しずつ正常な時間を見失っていくリアルで繊細な狂気を体現。丁寧にゆっくりと魂の安息を求めて壊れていく盛さん、圧巻でした。ぎんの秋山菜津子さん。手段を選ばない献身的な妻。むしろ同志。厳しい現状を冷静に受け止めながら、真綿のような地獄の中でも彼を支える覚悟を決めたのに…ぎんの絶望は盛の死によって浄化されるのでしょうか?凛と佇むクールビューティー。秋山さん大好き。水尾の常盤貴子さん。さびれた映画館に登場するには場違いなほど美しい、白い夢みたいな女。ストレートな感情のままの硬質な演技はぎんとの対比を際立たせていたと思う。実力派揃いの錚々たるキャストの中で臆することなく、盛との官能的なタンゴも含め、映像で培ってきた華のある存在感は適役だったと思う。連の段田安則さん。盛とは正反対な現実主義のリアリスト。人間臭いコミカルな言動の端々に、自分とは不釣り合いな妻・水尾へのやるせない愛情を滲ませながら、尋常でない食欲(笑)尋常でない悲劇は凡庸な彼の元にも…上手いな〜と誰をも唸らせる魅力的なキャラでした。重夫の高橋洋さん。傾きかけた実家の映画館を受継いだ弟は、弱視の従業員・信子役の毬谷友子さんに恋する純朴な青年。故郷に突然戻ってきた兄を気遣いながら、自由奔放な生き方を羨むジレンマも。シリアスな展開の中で心和ませてくれた最強の北国シネマ&親戚チーム!ノブさんをあの毬谷さんが演じるのも、かなり贅沢な配役だし、幻の上斐太の伯父・沢竜二さんが弁士のように語りだす三島の“孔雀”の一節。遠い日の少年と化している盛くんと同じ意識で、口上に耳を澄ましておりました。北斐太西斐太の「秘密は秘密…さわれば溶ける…秘密のある人間は眩しいな〜」呪文のような台詞もお気に入りでした。
 
 何度も何度も繰り返された千秋楽のカーテンコール。演出の蜷川氏も登場されて、いつまでも鳴り止まない拍手とスタンディングオベーション。1回きりだったけれど…堤さん、照れることなく自然に両手で投げKissしてましたね?(笑)頬が痩けて、顎のラインが段々シャープになっていく“清村盛”があまりに鮮烈で、肉体的にも精神的にも過酷な舞台だったのが一目瞭然。明るい満面の笑顔で客席に手を振る姿を拝見できて、いつもながら見届けたぜという達成感で一杯の幸せな時間でした。最後の最後、もう〆は堤が何か一言!みたいな、やっておしまいなさいの空気が舞台上に漂って!?ざわざわし始めて、どうするの?どうするの?と思っていたら、すかさず頼れる段田さんが舞台中央で例の“孔雀”のポーズの如く、両手をパッと広げて客席の止まない拍手を止めました。もうコクーン中の人が堤さんに注目!何?この緊張感(笑)すると右手を高らかに上げて「ごきげんよう!」清村盛風の御挨拶で全てが終わりました。最高のスタッフとキャストで甦った、夢みたいな舞台でした。
 
 
 
g-mark.gif「第20回高崎映画祭授賞式」(2006.3.26)
 
 も咲き始めたことだし、関係ないけど…野球好きには至福の感動だったWBCで王JAPANも優勝!春めいて心がウキウキしている気持のまま、遠足気分で高崎までちょっと遠出をして第20回高崎映画祭授賞式を拝見してきました。会場の高崎市文化会館は駅から少々離れているらしく、バスの発車時刻が1分でも惜しかった二人組は、慌ててタクシーに乗り込み、人懐っこそうな地元の運転手さんとの会話にしばし和みながら会場到着。恐るべし高崎映画祭っ!視界に飛び込んできた長蛇の列に驚きながら何とか無事に整理券を入手できました。午後3時からの映画『パッチギ!』上映終了後、そのまま厳かに授賞式が始まりました。高崎市長さんや運営委員会の方のご挨拶の後、今回の受賞対象作品の予告編がまとめて紹介されました。そして大きな歓声と拍手の中、受賞者が上手からお一人ずつ登壇。初々しい新人俳優の方々をはじめ…田中泯さん、井川遥さん、堤真一さん、西島秀俊さん、小泉今日子さん、井筒和幸監督、最後に登場の市川準監督まで、皆さんお揃いで左胸に黄色いチューリップのコサージュを付けて一列に並んで座られている図は壮観でした。井川さんのお隣の席だった堤さん。授賞を終えて席に戻られた井川さんが、黒いドレスの裾を押さえながら着席しようとした拍子に、彼女の椅子の上に置かれていた黄色いコサージュが落ちそうになったのを堤さんが気付いて間一髪でキャッチ!(笑)ほんの瞬間のハプニングだったのですが、客席が沸いて拍手が起こってしまいました。そんな暖まった空気の中、お待ちかね『フライ、ダディ、フライ』で最優秀主演男優賞の堤さんのお名前がコールされました。ベージュのジャケットにインナーは黒のTシャツと黒のパンツ。表彰状を静かにゆっくり読み上げるプレゼンテーターの女性の前でちょっと緊張気味だった堤さん。その方のイントネーションに微妙な部分が…“堤真一”の“し”のアクセントが強くて、明らかに違和感のある“つつみんいち”に堤さん耐え切れずもう完全に笑っているではないか〜これではいかんと深呼吸をして立て直そうにもヒクヒク状態。かなり笑わせて頂きました。受賞のご挨拶は開口一番「“つつみんいち”です!」もう絶対言うと思った。日本アカデミー賞であのオダギリジョーさんの変な髪型に突っ込みを入れた時と同じ真ちゃんがいました。「実は主演ではないんですけど…」え〜っいきなり否定ですかい?(笑)この映画自体を評価して頂いたと思って有り難く頂戴します。FDFには今でも誇りと愛情を持っていますと。DVDも出ていますので、買わなくていいですから!?まだまだ沢山の方に観て頂きたいですという堤さんらしいコメントでした。『帰郷』で最優秀主演男優賞の西島秀俊さんへの表彰状の文章が傑作で「個性の強く無い朴訥とした…」個性が無いって?あんまり誉めてないやん(笑)淡々と読み上げていらっしゃるのがまたツボでした。『空中庭園』の小泉今日子さんは17年前に『怪盗ルビイ』で主演女優賞を受賞されて以来の高崎映画祭だそうで、当時は超多忙なアイドル時代。授賞式に出席することができなかったので今回はとても嬉しいというkyon2でした。そして『パッチギ!』で最優秀監督賞の井筒和幸監督。例によってアクセントが“パ”に強く掛かっている微妙な“ッチギ!”に不思議そうな反応をされていました。以後の爆笑トークは井筒監督の独壇場。前夜の長塚京三さんとのトークショーにも参加して伊香保温泉に泊まられたことや、今朝はグリーン牧場に行って牛乳を飲みました!ついでに○○館にも行きました!堤君も行ったそうです!?と畳み掛けるようなローカルな地元ネタを披露。お陰様で色々な賞を頂きました。日本アカデミー賞…あっそれは頂いてませんでしたと少々嫌味っぽい自虐ネタまで。爆笑の渦の中でご満悦の井筒監督でした。最後の授賞は『トニー滝谷』で最優秀作品賞の市川準監督。CMの演出家としても活躍されていた市川監督。かのキリンラガーのCMでも堤さんとお仕事をされていることをふと思いました。30代まではただの映画ファンだったという市川監督。脈々と受け継がれている映画ファンの熱いハートを持った高崎映画祭の作品賞は遂にやったね!という気持です。祝20周年の授賞式の締めに相応しい感慨深いお言葉でした。最後にそれが毎年恒例らしく、受賞者全員に記念品として高崎名物の“縁起だるま”が贈呈されておりました。本当に楽しいほのぼのとした時間でした。肩の凝らない手作り感覚で、純粋な映画ファンと沢山のボランティアの方々によって支えられている幸せな映画祭だなと思いました。
 
 
 
g-mark.gif「労働者M」さらば、マングース(2006.2.28)
 
 ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏の今年唯一の書き下ろし作品だそうで、一昨年の「カメレオンズ・リップ」以来2回目のシアターコクーンプロデュース公演。当初のお触れによる“近未来の収容所を舞台に繰り広げられるSF風味の奇妙な革命喜劇(レジスタンス・コメディ)”から構成が大幅に変更→もうひとつの別世界が登場するらしい。一体どんなテイストの舞台が拝見できるのか興味津々でした。これじゃチケット取れないっすよ〜な贅沢で刺激的なキャストを揃えてしまった確信犯め。初日の困惑?から迷宮のKERAワールドをお腹一杯堪能させて頂きました。でも、満腹だ〜と思っていたらとんでもない空腹だったり…食べてる側からポロポロこぼれていたり…不思議な演劇体験をしたというのが実感です。
 
【物語】近未来の某国。父を自殺に追いやった世間に抗議するため、一家心中を計る母とゼリグ(堤真一)とその妹。一人生き残ったゼリグが長い昏睡状態から目覚めたのは8年後。21才になった彼の前にはリュカ(小泉今日子)という女医がいた。リュカの影響から市民運動に参加するようになったゼリグ。土星人との戦争によって破壊され混迷した世界の中、やがて革命戦士のリーダーとなった彼は目的不明のある収容所に“居住者”として潜入する。通称“M”という姿無き最高責任者からの通信によって管理されている謎の施設。“M”と唯一連絡を取れる幹部として権力の中枢にいたリュカと再会するが…。一方、現代の日本のある会社の事務所。自殺志願者からの悩み相談を受ける“命の電話”というのは表向きで、実在は言葉巧みに高価な布団や宝石を売り付けるネズミ講。室長は行方不明中。残されたクセのある職員達は当然ながら元自殺志願者達。同僚の不可解な自殺や客とのトラブル、複雑な人間関係と些細ないがみ合いが交差しながら、生き残ってしまったダメな人間達の日常がダラダラと続いてはいたが…。KERAが仕掛けた、異次元のふたつの物語が並行する実験的舞台。
 
 冒頭からいきなりニセ堤とニセ小泉なる二人が漫才コンビの如く登場。ご丁寧に後ろのスクリーンに彼らの台詞が映し出されていて、要はふたつの物語が規則性を持たずに上演され、大切な台詞やシーンが場合によっては丸ごと“欠損”していますというゆる〜い解説。蜷川さんごめんなさい(笑)がある種の開き直りのような気さえしました。本公演と同タイトルのテーマ曲はテクノユニット“空手バカボン”のレパートリー。パンフにはKERA×大槻ケンヂ氏の対談もあり“筋少”や“ナゴム”なんて単語が懐かしい。あの「働け〜♪働け〜♪」のフレーズがやけに耳に残ります。近未来と現代の物語にリンクする部分は無し。どちらも責任者不在のまま稼働せざるを得ない状況下だったり、現代版の職員全員のイニシャルが思わせぶりに“M”だったり…何かしら繋がりがあるのかも?という観客の思考をあっさり裏切るモザイクのような展開。POPで斬新な映像とのコラボに意表を衝かれていると…で、さっきの続きはどうなったんだっけ?というザッピング状態。無理に意味など見出さずに芝居の流れに身を委ねていよう。不毛な日常会話には無自覚でブラックな要素が満載だし、痛すぎてくだらなすぎてヘラヘラと笑ってしまう感覚に慣れてくると、あんなに長いと感じていた上演時間が気にならなくなっていました。何かが起きる時も起こらない時も全てを平均化させたいというコンセプトはKERAワールドの骨頂なのねと。終盤、近未来の収容所は何かの要因で崩壊。派手な火花や驚くほど瓦礫を大量に降らせたのは蜷川さんを意識したのかな?(笑)それはどうでも、本当のラスト。壁は崩れ落ち、机や椅子の上には瓦礫が散乱したままの現代の事務所。ある訪問者を迎えた彼らの唐突な笑い声が響き渡って…終幕。不意にブチッとチャンネルを切られたような、計算尽くの意地悪。置き去りにされてしまった浮遊感が漂う、挑戦的な舞台でした。
 
 キャストは全員二役。細かいのも入れればそれ以上。厄介な濃いめのキャラ違いをくるくる演じ分ける役者の力量に拍手。堤真一さん。革命戦士のゼリグ。颯爽としたいい感じの独白に邪魔が入ったりするのがご愛嬌。収容所内のかつての同志達には無気力が散漫し、目的は謎のまま戦意を喪失するも、ゼリグに悲愴感は無し。確固たるヒーロー像でもない軽妙な難役を好演。革命の名の元にじわじわと壊れて行く頭蓋骨の小さい男前でした。観劇後、家に帰ってつらつら思い出すのは何故か?現代の牧田君なのであった。あそこまで破綻したおバカキャラの堤さんはあまりに新鮮。ちびまる子ちゃんに出てくる山田君みたい。黛さん曰く「牧田君は躁病なの?」例のお揃いの気味の悪い色のセーターを着て、物悲しいほど弾けまくっていた牧田君でした。小泉今日子さん。近未来の謎の女・リュカよりも現代のミミちゃんの方が私には数倍魅力的に思えた。男性となら誰とでもなんて極端な設定のはすっぱな天然OL。自堕落なというよりさしたる罪悪感の無い彼女みたいなタイプは質が悪いですな…でも、鬱病の黛さんをギュッと抱きしめたミミちゃんは慈愛に満ちていました。“M”とリュカの関係は?土星人の罠?戦時下の妄想?どうとでもとれる曖昧さが一杯。だって答えは無いんだもん。松尾スズキさん。にょろにょろとした爬虫類のような質感のお芝居。黛さんのぐずぐずの病み具合も独特の変な動きも、粘着質な彼の怪演から目が離せませんでした。収容所のランプはあの朝鮮人参みたいな土星人とどんな密約を交わしていたのでしょう?公演中も更新されていた松尾さんのブログは面白いです。犬山イヌコさん。近未来のサキは取材と称して収容所の秘密を探る狂言回し。田中哲司さんのクラウスとの凸凹コンビでしつこいまでの二度見攻撃(笑)真逆に現代のミドリが抱える子供を死なせてしまった心の闇が笑いの中にも際立っていました。秋山菜津子さん。美人心療内科医ユードラから国籍不明のモリィちゃんまで。男め!とか、落ち着き!とか、ワンフレーズだけで空気の引き締まった笑いが取れるテンションが気持良かった。山崎一さん。現代では事務所に入り浸る怪しい刑事の森さん。収容所では名前が可笑しいポタージュ。どうして警察官がネズミ講のお馴染みさん?その他、明星真由美さん、池田鉄洋さん、今奈良孝行さん、篠塚祥司さん、貫地谷しほりさん。純然たるストーリー性を求めるのを諦めたからには、シュールな登場人物達を観察する作業に徹していたような気がします。そんな不親切な演劇もありなんじゃない?と思いながら。毎度のカーテンコールは1回のみ。観客も至ってクールな反応で、楽日はどうなることかと思っていたら…アップテンポのテーマ曲に合わせて手拍子が起こったり、いつもの1回+3回でKERAさんも登場に何となくほっとしたような気分でした。6月のWOWOWでの放送予定を楽しみにしております。牧田君に会いたい!
 
 
 
g-mark.gif「吉原御免状」主さんに…惚れんした(2005.10.23)
 
 劇団☆新感線が結成25年目にして初めて挑んだ伝奇時代小説の舞台化。隆慶一郎原作『吉原御免状』が新たな“いのうえ歌舞伎”として東京・青山劇場、大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演されました。コアなファンが多い原作もの。壮大且つエロティック、随所に史実や文献を引用しながら、縦横無尽、想像力豊かに展開する傑作長編が、舞台の上でどんなエンターテインメントになるのか?今までの新感線的な笑いや遊びを極力封印して、シリアスな大人芝居で魅せるという噂もちらほら。本チラシの真剣を手に瞳を閉じる誠さまの妖気漂うビジュアルも手伝って、それはそれは楽しみにしておりました。贅沢にも…ドキドキの青山初日から、何度も劇場に足を運べることが幸せでした。あの日の大阪の朝は寒かったね?お名残惜しい(笑)梅芸の千秋楽まで、見届けさせて頂きました。
 
【物語】肥後、熊本の山中。かの剣豪、宮本武蔵によって育てられ、二天一流の達人となった若武者・松永誠一郎(堤真一)。26才になった明暦三年、亡き師の遺言に従って山を下り、江戸最大の遊廓・吉原へやって来た。謎の老人・幻斎(藤村俊二)に出会い、吉原の客人として迎えられた誠一郎に次々と襲い掛かる裏柳生総師・柳生義仙(古田新太)。不穏を察し、助太刀を勝って出た旗本・水野十郎左衛門(梶原善)。将軍家剣術指南役、柳生宗冬(橋本じゅん)の兄としての苦渋の忠告を無視してまで、義仙は、裏柳生は、何故、色里吉原を執拗に狙うのか?吉原誕生にまつわる“神君御免状”に隠された最大の謎、天下を揺るがす密約とは?熊野の八百比丘尼(高田聖子)の不思議な力を借りて知ることとなる傀儡子(くぐつ)の民とは?誠一郎を慕う二人の名太夫、勝山(松雪泰子)と高尾(京野ことみ)の運命は?誠一郎のやんごとなき出生の秘密と共に、血に染まった修羅への宿命的な戦いが始まろうとしていた…。
 
 闇の中、怪しげな黒装束の集団が徒党を組んで何やら密談をしている。それを遮るように颯爽と登場する旅姿の一人の剣士。頭の編笠を取る彼を照らすスポットライト。ただならぬ殺気と共に襲い掛かる黒装束と早くも剣を交えるオープニング。蜘蛛の子を散らすように敵が消え去った後、霞のように現れる愛嬌たっぷりの好々爺。御老人に導かれるように、闇を切り裂いて目の前に広がる、明るい提灯で彩られた巨大な「吉・原・御・免・状」のタイトル。相変わらず派手ですなあ。舞台の上の盆が廻り、見る見るうちに色鮮やかな吉原の世界が出現。行き交う人々の喧騒、艶やかな花魁道中に見とれていると、何も知らずに異空間の不夜城に迷い込んでしまった主人公と同じ感覚になっている気がしました。いのうえさん曰く、堤君は準劇団員(笑)『野獣郎見参』『アテルイ』に続く三度目の客演。堤真一さん演じる松永誠一郎は、山育ちの俗世とは無縁のピュアな澄んだ心の持ち主。武蔵の愛弟子で誰よりも腕の立ついい男という…絵に描いたような魅力的なキャラクター。清廉な悩める魂を体現し、圧倒的な存在感で誠一郎と化していた立ち姿に震えました。野に水が染みていくように洗練され、吉原を守る人々の生き様を知り、女を知り、情に触れ、愛する者を失った悲しみに悶え苦しみ、己のうちなる修羅と葛藤する。サディスティックな義仙の挑発によって、殺戮だけを目的とした鬼へと変貌していく。終盤に向かう程その迫力を増した義仙との殺陣は、舞うような優雅さと息を呑む緊迫感を伴った芸術的なものでした。誠一郎が二刀流に切り替る瞬間が心憎くくて…我ながらチャンバラ好きの血が沸々と騒ぐのが自覚できました。正直、動く“虎乱の陣”を観ることができたのがひたすら嬉しかった。裏柳生相伝の必殺剣。隆氏の巧みな文章と私の頭の中だけでぐるぐる廻っていた邪悪な円陣が目っ目の前に〜(笑)DVD発売の折には是非“虎乱の陣”チャプターを作って頂きたいです。ザ・悪役!柳生義仙の古田新太さん。新感線の看板役者。ここまで徹底した邪悪な役は珍しいのでは?吉原滅亡を企んでいる男の怒りの鉾先がストレートに誠一郎に向けられていて、凄みのあるダークサイドを劇画タッチで怪演されていました。ため息の出るような“誠一郎vs義仙”の殺陣をもっとずっと観ていたかったです。勝山の松雪泰子さん。湯女上がりの妖艶な名太夫、実は裏柳生のくノ一。舞台映えする美しさは輝いていました。べらんめえも似合う粋ないい女。敵であるはずの誠一郎への変則的な愛情が彼女を滅ぼしてしまう。「主さんに…惚れんした」愛する人の胸で散った山桜は哀れだけど、誇らしげでもありました。高尾の京野ことみさん。勝山が山桜なら高尾は牡丹。山桜とは対極の大輪の花は太夫中の太夫。原作では包み込むような母性を感じさせる成熟した大人の女性として誠一郎を癒す存在なのに、舞台版の高尾は吉原の格式を象徴する人形のような硬質なイメージ。でも凛とした花魁姿、美しかった。高田聖子さんのチャーミングで弾けた八百比丘尼のおばばさまといい、女優陣の体当たりの演技も印象的でした。水野十郎左衛門の梶原善さん。テンション高めの男気溢れる好人物。武士として本懐を遂げる死場所を探しているナイーブな熱血漢。傀儡子の回想シーンで、若き日の幻斎・庄司甚内役の誠一郎と肩を並べて大暴れする十左役の善さんも◎。狭川新左衛門の粟根まことさん。姑息で嫌な感じの裏柳生の二番手。眼鏡君でない粟根さん、見事な斬られっぷりでした。柳生宗冬の橋本じゅんさん。義仙との確執に苦悩するあくまでも渋くシリアスなじゅんさん。天海役で登場の際はきっと何か…と期待したものの、全身から醸し出す雰囲気でクスクス程度。本当に新鮮でした。幻斎の藤村俊二さん。登場シーンから既に独特の味があるお茶目な御隠居。手に汗を握ってしまった!?台詞のあの微妙な間とか、何処吹く風のような飄々としたおひょいさんワールドが日々炸裂していました。幻斎君が誠一郎を“切見世”に連れて行くシーン。あの強烈な遊女のお姐さん方のテンションも段々とエスカレートして、千秋楽なんてやったもん勝ちなのだ(笑)必死で下を向いてヒクヒクと堪えている素の堤さんでした。今回の新感線は廻り舞台を駆使した舞台装置の転換がスピーディ。緩やかな傾斜の八百屋舞台から下手の花道を獣のように勢い良く駆け抜けて行く臨場感がたまらなく好きでした。青山終盤に怪我をされて松葉杖で舞台に立たれていた野村玄意役の逆木圭一郎さん。残念ながら大阪公演は降板されていました。大阪公演ではあの川原正嗣さんが右手を負傷されていたとお見受けしたのですが?生身の舞台の厳しさに身が引き締まる気持になりました。「俺は、今日まで、何をして来たのか」壮絶な戦いを終えた喪失感の中、山に帰ろうとする傷心の誠一郎が、己の運命を受け入れ、吉原の惣名主となる決心をする最期の台詞。長い旅を終えたような安堵感が胸に押し寄せてくるラストでした。原作には「かくれさと苦界行」という続編があります。惣名主となった後の誠一郎をまた新感線の舞台で拝見したいです。
 
 こんなに毎回毎回カーテンコールで笑顔がこぼれて、客席に向かって手を振ってくれる堤真一さんは珍しいと思っていました。なんちゅう感想じゃ(笑)他のカンパニーには無い心地良さや開放感が新感線にはきっとあるんだろうなと勝手に想像してみたり。オールスタンディングと拍手の嵐の中、滑り込むようなジャンガジャンガも、袖にはける真際の控えめな投げKissも、劇場中が軽い集団興奮状態に陥る?新感線恒例の千秋楽のお煎餅撒きも、舞台の上と客席とが一体化する時間を共有できて幸せでした。突如、舞台上部の装置に現れたビキニ姿の保坂エマさん。罰ゲームで彼女が熱唱する「My Revolution」これが滅茶苦茶お上手でした。思えば、青山劇場で遭遇できた村木仁さんのピーターパンならぬ“ピーター仁”緑の衣装で歌い踊るオンステージでした。なんと松雪さんの罰ゲームも大阪の地で決行されたとか…罰ゲームさえも客前の完璧なイベントにしてしまう恐るべし劇団☆新感線。不意に流れてくる「まつり」のイントロ。伝説の祭り先輩の再来か?気付いた御本人はやべえ!とばかりにどさくさで歌わされまいと逃げ回っていたのが大爆笑でした。でも袖にはける直前にちょっとだけ口パクで「まつ〜りだ♪まつ〜りだ♪」見逃しませんでした。祭りのあとの高揚は静かにフェードアウトするものですが、サントラを聴いていると今でも吉原の世界に飛んで行けるような気がします。忘れられない舞台になりました。
 
 
 
g-mark.gif「幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門」楽日(2005.2.28)
 
 “NINAGAWA VS COCOON”第一弾。美しい印象的な長いタイトル『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』は1975年に劇作家・清水邦夫氏によって書き下ろされ、30年という時代を経た様々な過去を持った伝説の戯曲です。シアターコクーンにおけるシリーズの幕開けとして、長年の盟友でもある蜷川幸雄氏が初めて演出を手掛けることでも話題の舞台でした。二月は逃げて行くと申しますが(笑)初日を迎えてからあっという間に駆け抜けていった楽日だったような気がします。
 
【物語】平安時代中期。 藤原秀郷の軍勢に追い詰められ、手勢も僅かとなった反乱軍の首領・平小次郎将門(堤真一)は頭部に受けた損傷から、自分は将門の命を狙う仇敵であるという狂気の妄想に取り憑かれてしまう。不測の事態に動揺する捨十(田山涼成)ら将門の影武者たち。参謀・豊田郷ノ三郎(段田安則)は窮地を救うために奔走する一方、今や戦地で男に体を売る“歩き巫女”に身をやつした妹・ゆき女(中嶋朋子)と再会する。将門の恋人・桔梗の前(木村佳乃)は影武者の中から新たなる将門の再来を望み、若く野心溢れる三郎の弟・豊田郷ノ五郎(高橋洋)を誘惑するが…五郎はその器では無かった。藤原の追っ手が刻一刻と迫る中、ゆき女に惹かれていく狂気の将門。無邪気に戯れる狂人を殺そうとする桔梗の前。逃げ惑いながら振りおろされた短刀で不意に額に傷を負ったその瞬間、降臨するカリスマ。まるで夢でも見ていたかのようにかつての輝きを放つ将門の前で自害する桔梗の前。その亡骸を抱きしめていた男はもう既に、狂気の世界に舞い戻っていた。三郎は将門伝説を作り上げる最期の策を実行する…。
 
 舞台には大きな“九曜紋”が印された血のように赤くどす黒い幕。最初はスモークが客席まで薄く煙っていることに気付かず、丁寧に何度も何度も自分の眼鏡を拭いてしまいました。客席に配された歩き巫女たちの叫び声の中、闇に浮かぶ鮮烈な赤。胎児のようなゆき女が艶かしくもがき苦しんでいる。白馬に跨がった三郎の勇姿。浮かび上がる振り子状の巨大な鉄球。幻想的でありながら妙に生々しくきな臭いオープニング。正面の上部から左右両側面までも覆う大階段の舞台装置。所々に鉄梯子を設えた急勾配。大量の小石や雪を降らせるザ・ニナガワな仕掛けもふんだんで、特に小石がバラバラと乾いた音を立てて板に叩き付けられる様は…全ての破壊を象徴しているようで痛々しかった。意図的に70年代闘争の生音を効果音として使用。詩的で美しい壮大な台詞の応酬。流れるパンソリの哀愁を帯びた物悲しさと共に、反逆のヒーロー・平将門を愛と羨望で育んだ特殊な集団の終焉をパワフルなエンターテインメントとして楽しめました。狂おしの堤将門は想像以上に自由奔放で軽妙にくるくると人々を煙に巻いておりました。その解放された魂を遊ぶ道化のような振舞いが滑稽であればあるほど、逃げ落ちて行き場を失った集団の悲劇を残酷に物語っていて、笑いを誘う場面でも見えない何かを見据える焦点の合わない彼の眼が尋常でなく怖かった。正気に戻る麗しの将門殿の変貌ぶりは圧巻。一瞬にして空気まで変えるゾクゾクするような見せ場でした。頼れる参謀・三郎の段田安則さん。幼なじみの将門よりも武芸に秀でていながら、身分の低い流民の生まれであるコンプレックスを忠誠心に変換させて集団を統率。たとえ身内であろうと犠牲を厭わない冷静な判断力。桔梗の前に対する密かな愛情や複雑な心の葛藤を押し殺して参謀に徹する難役を好演されていました。夢の遊眠社時代から御贔屓だった段田さんと堤真一さんの舞台初共演を楽しみにしていたので、お二人のほぼフリーであろう日替わりのシーン?唐突に相撲を取合ったり、小うるさい蝉をミーンミーンと体現してみせたり…楽日は勢い余って振り回していた将門殿の腕から白いギプスがきれいな弧を描いて下手に飛んでいってしまうという今時コントでもお目にかかれないようなハプニング。桔梗の前から「いい加減にしてください!」と戒められて、素で反省している姿に大爆笑でした。桔梗の前の木村佳乃さん。プライドの高い意固地なまでに強靱な何人にも侵せない美学を持った女性。終始トーンの変わらない硬質な演技に当初は違和感があったものの、弱音を吐く術を知らない不器用さや最愛の人に置き去りにされた愛憎を熱演されていました。影武者・五郎の高橋洋さん。若さ故の性急な危ういエネルギーと兄・三郎への強烈な劣等感。第一部における五郎の存在感は大きく、蜷川作品では欠かせない役者さんですが、蜷川色でない高橋さんも拝見してみたいと思いました。ゆき女の中嶋朋子さん。地の底を這うような“嘆き”がたまらなく息苦しくストレートに伝わってくる激情。猥雑でありながら突き抜けたピュアな生命力。狂った将門との一時の接点に癒しのようなものさえ感じました。ネットで拝見できる中嶋さんの先見日記。過酷な舞台であったことが伺える文章が綴られています。最後のカーテンコールには蜷川氏、清水氏がお揃いで舞台にご登場。堤さんと満面の笑顔で堅い握手と抱擁をされていました。スタンディングで高揚する空気の中、いつまでも晴やかな余韻に浸っていたいと思った感動的な千秋楽でした。早くもWOWOWでの放送が決定。陶酔と苦悩の整理をしながら(できないって)映像の将門殿にお会いしたいです。
 
 
 
g-mark.gif「ダム・ウェイター」初日(2004.5.10)
 
 三軒茶屋のシアタートラムは懐かしい場所です。1997年の柿落とし公演、あの石橋蓮司さんと堤真一さんの二人芝居『ライフ・イン・ザ・シアター A LIFE IN THE THEATRE』が上演されたお気に入りの劇場です。ハロルド・ピンターの初期の代表作である不条理劇『ダム・ウェイター THE DUMB WAITER』が二人の演出家による全く異なるアプローチと魅力的なWキャストで交互上演。なんて演劇ファンの心をくすぐるような実験的企画なんだ〜と楽しみにしていました。堤真一さん、村上淳さんのAバージョンは演出・鈴木裕美さん。浅野和之さん、高橋克実さんのBバージョンは演出・鈴木勝秀さん。吐息まで伝わるような二人芝居に最も適したトラムという小さな空間の中、僅かな時間差で両方の舞台を見比べられる贅沢にドキドキしながらの初日でした。上演時間、それぞれ1時間。されど1時間。以下、激しくネタバレあり!
 
【物語】バーミンガム某所の地下室。二人の男がある組織からの指令を待っていた。どうやら二人は殺し屋らしい。ベッドの上で新聞を読んでいる兄貴分のベンとやたら落ち着きのない弟分のガス。奥にある水洗トイレの流れが悪く、忘れた頃に間が抜けた水の音が響く。取り留めのない会話の中、不意にドアの下から白い封筒が差し込まれる。封筒の中には意味不明のマッチ。困惑する二人。突然地下室に鈍い重低音が鳴り、上階からダム・ウェイター(料理昇降機)が整然と降りてくる。リフトの中には料理の注文を書いたメモ。慌てふためく二人に別の注文のメモが次々と降りてくる。とりあえずありったけの食料をリフトに乗せて上に上げる二人。やがて上階と通じる通話管に気付き、もう何も無い事を丁寧に伝えるベン。うんざりしながらも然るべき指令に備えて、身支度を整え、仕事の手順を復習する二人。そこにまたリフトが無情に降りてくる。上には誰がいるのか?何を試されているのか?我慢の限界を越えてしまったガスが上階に向かって激しく怒号する。それを制止するベン。二人を見透かすように上に戻っていくリフト。気落ちしたガスが水を飲みに行っている間に通話管のベルが鳴り、ベンが指令を受ける。大声でガスを呼ぶベン。水の流れる音。拳銃を構えるベン。ドアが開き、よろよろと部屋の中に入って来たのは…。
 
 久しぶりのシアタートラム。石の壁の感触?や長時間だと少々評判の悪いベンチシートまでも帰ってきたぞという感じ。舞台の上には横格子の黒い大きな壁が二面。舞台中央を接点に斜めにセッティングされていました。それが上部に移動すると斜めに張り出したAバージョンのリアルな地下室の舞台装置が出現。天井の排気管や壁が崩れて一部の煉瓦が剥き出しになっている薄汚れた部屋。柱を挟んで粗末なベッドが二つ。向かって右がガス、左がベン。ベンのベッドの横にはスタンドと丸い時計が置かれたサイドテーブル。上手のドアの奥がキッチン?洗面所。ドアの脇に小さな机。下手側に外部へのドア。脇に椅子。上手側の装置の際にも椅子が一脚。長い沈黙の中、ベンに構って欲しくて子供のように彼の気を引こうとするガス。髭面で髪はボサボサ、だらしの無いくたくたの白いシャツというビジュアル。ガスを無視するように新聞を読みふけるベン。ガスとは対極のバリバリ几帳面な神経質男(笑)組織からの指令をもう長く待ち続けている様子の二人。何かと愚痴るガスが気に触るのか、威圧的に対話するベン。堤・村淳コンビは動きのあるおバカな“ぼやき漫才”の如く、激しいリアクションや誇張されたコミカルな表情がちょっと狙い過ぎじゃない?とも思える程に炸裂。こんなに笑える芝居でしたっけ?演出の鈴木裕美さん曰く「地下室という小さな箱に閉じ込められてジタバタしている実験用の二匹の小動物」コレ見事な表現。冷酷に仕事を遂行する、してきたであろう“殺し屋”のイメージとは程遠い、ジタバタしまくりの男たちの姿はどうしようもなく滑稽なんだけど…懐疑心を膨らませていくガスを意図的にはぐらかそうとするベンの苦痛を強く感じたり、特殊な組織と二人の関係性や無意味に思えた会話の中にもピンターが仕掛けた罠が随所に潜んでいるような…不条理劇だからという逃げ道のある漠然とした括りを忘れて現実味を帯びた恐怖を感じました。
 
 Bバージョンの舞台装置は全く対照的。闇の中から轟音と共に迫り上がってくる地下室は極めて無機質でメタリック。舞台中央に思わず見上げたくなる圧倒的な存在感を持った“塔”のようなダム・ウェイター。Aのそれは装置の柱に組み込まれたごく自然な物だったのに。上手と下手にベッド。それもやや離れた位置にある、こちらは右がベン。左がガス。斬新な小道具にもぶっ飛びました。ベッドの上の枕や毛布やベンが執拗に読んでいたあの新聞までが全てビニール。シャリシャリ音がするビニール。ガンベルトもビニール。プラスチックの蛍光色の水鉄砲には脱力でした。鈴勝組においてそれらはリアルな形を必要としない記号なんだなと。同じ戯曲でありながら、冒頭の時点で全く違う雰囲気を持った別の芝居を観ているようでした。静かに佇むベンは厳格で冷静な上司のようでもあり、傍らで大きな体をもてあまし気味にもさもさと動き回るガスは仕事に対して自信を失いつつある部下のような…浅野・高橋の両氏が醸し出す自然体の演技を味わっている感覚。居心地の悪い見知らぬ地下室に閉じ込められている閉塞感や二人にも否応無しにやってくるパニックも滑稽というより悲哀なんです。巨大なダム・ウェイターは彼らを支配する組織の象徴のようにも思えました。あくまでクールに淡々と。最後にやってくる衝撃もガスの処刑という意味合いがより濃かったような、その執行人としてベンが存在していた…そんな解釈は本当は嫌なんだけど。AとBを観劇する順番や回数によっても受ける印象が変化する作品だと思いました。各バージョンの開演前の諸注意のアナウンス。どこかで聞いたことのあるいい声が流れてきます。Aは浅野さんと高橋さん、Bは堤さんと村上さんがそれぞれお茶目に担当されているのが楽しい。五感を研ぎ澄まして集中できる長さ。らしくない殺し屋たちのシニカルな物語を堪能しました。
 
 
 
g-mark.gif「カメレオンズ・リップ」初日(2004.2.6)
 
 願望を含んだ戯言でも、舞台をやらない年なんて有り得ないよね…と妙な自信に裏打ちされて?高を括っていたら、もう見事に2003年の堤真一さんは舞台に立たれませんでした。大河に映画に連ドラが2本と映像の世界はお腹一杯堪能させて頂きました。でもやっぱり約1年半振りの舞台出演決定のNEWSの嬉しかったこと。私をとてもHAPPYにしてくれました。シアターコクーン・オンレパートリー2004『カメレオンズ・リップ』初日を拝見して参りました。演出はナイロン100℃のケラリーノ・サンドロヴィッチ氏。お約束ネタみたいですが、彼は日本人です。ちなみにKERAさんて有頂天時代は痩せてたんだけどなあ。話題のキャストは堤真一さん、深津絵里さん、生瀬勝久さん、山崎一さん、犬山イヌコさん、余貴美子さんって…そのまんまNODA・MAPやるよと言われても何の違和感も無い(笑)少数精鋭の豪華メンバーというのが第一印象でした。激しくネタバレあり!(赤くしときました)でも、何が真実で何が虚構なのか?“文系クライム・コメディ”って何?予測不可能なぐっだぐだの台詞の応酬とドタバタに笑っていたら、いつの間にやら奈落の底に突き落とされたような…上演時間たっぷりの3時間15分でした。
 
【物語】何処の国とも知れぬ外国。稀代の詐欺師・ルーファス(堤真一)は奥深い森の中の瀟洒な古い屋敷の主人。使用人・エレンデイラ(深津絵里)は彼の亡くなった姉・ドナ(深津二役)と生き写しの謎の女。ドナは幼い頃からの大嘘つきで、ルーファスはドナから影響を受け、弟はそんな姉が大好きだった。ドナの元夫、義兄・ナイフ(生瀬勝久)が元使用人で今は愛人?ガラ(犬山イヌコ)と共にドナの命日に屋敷にやって来た。墓も無いドナを弔うのが目的らしいが、ナイフには別の企みがあった。企みの重要な登場人物である化粧品会社の女社長・ビビ(余貴美子)がルーファスの前に現れると、通りすがりの元軍人・ルドルフ大佐(山崎一)をはじめ、眼科医・モーガン(木村悟)、ドナの友人・シャンプー(林田麻里)ら、奇妙な訪問者たちを巻き込んだ、嘘が嘘を呼び込む連鎖のようなとんでもない結末が彼らを待ち構えていた…。
 
 奥行きのある舞台装置は、2階にバルコニーのある木造の白い屋敷の外観。広々とした緑の芝生が眩しい裏庭。庭の正面奥にベンチとブランコ。水道の蛇口。上手端の手前に白いガーデンテーブルと椅子が2脚。木々の繁る森の谷間にある別荘らしく、舞台奥の上部に屋敷に続くなだらかな山道。屋敷を訪れる者が必ずそこを通り裏庭を見下ろせる設定。ちょっと昔のドリフのセットみたい(笑)屋敷の外観が廻り舞台となり、下手側から裏庭をぐるりと覆うように現われた装置は屋敷の居間。ソファにオットマンとテーブル。上手壁側に手前から赤い熱帯魚の泳ぐ水槽。暖炉。蓄音機。正面にカーテンのある鏡のような窓。壁に飾られた数点の絵。下手端に手摺のある階段。趣きのあるクラシックな洋間が表現されておりました。意表を衝くようなオープニングのルーファスの独白。姉のドナがいかに生まれながらのウソツキかを切々と語る彼の言葉の端々を聞き逃すまいと息を潜めている感じ。“稀代の詐欺師”という表面的な設定から漠然と描いていたのは、非の打ち所が無い切れ者で次々と人を煙に巻く…そんなイメージを抱いていたのに、ルーファスはどうしようもなく姉への愛情に依存している悩める弟でした。冒頭のドナとの回想シーンからただならぬ雰囲気を醸し出していたし、エレンデイラに妖しく接する彼の態度も変な表現だけど、悪気の無い甘美なエロチシズム?ルーファスとドナとの関係については義兄のナイフがさり気なく彼を問い詰める台詞もあったり、幼少期からのドロドロの過去を背負った運命共同体みたいな二人の世界には誰も入り込めなかった。そして全てを拒絶した。Fin…ってまとめてどうするの(笑)姉の死についても最初から彼は絶対的な真実としては言及していなかったなとか、後から後からパズルのピースは出てくるのにそれをうまく組合せられないイライラ感。誰もが胡散臭い訪問者たちの互いの腹を探り合うような不毛な会話が笑いを誘うのに(差別用語が炸裂するのはインパクトはあるけれど鼻についちゃったが)妙にリアルで痛々しいのがKERAワールドの骨頂なのかなと。堤さん&深津さん。お馴染みのゴールデンコンビ。姉と弟の図が自然に成立してしまうのがあて書きの良さかな?降りしきる雨の中、無邪気に戯れる二人を見つめていたらたまらなく虚無感に襲われました。ナイフの生瀬勝久さん。弁護士なのに策略家。彼もドナを心から愛していたというのを信じてあげたい。感情に任せて切れる暴力的な描写も。連れのガラの病を気遣って真実の愛に目覚めた人。彼女との父ちゃん母ちゃんコンビも深い味わいあり。ガラの犬山イヌコさん。キュートな毒のある紛れもなくKERAワールドの住人。願わくばぬいぐるみのチッチモンド君のグッズをコクーンのロビーで販売希望(笑)ビビの余貴美子さん。偽女社長。本当は小劇場の女優で極めて霊感強し。かのチェーホフを小馬鹿にするビビ先輩最高っす!ルドルフ大佐の山崎一さん。猟銃を手に猛犬を追っていた通りすがりの人。結果的トラブルメイカー。やたら自己主張が強くて胡散臭さ度はNo.1。魅力のある個性派の俳優陣に支えられたPOPで残酷な謎だらけの舞台。初見の後味は決していいものでは無かったけれど…きちんと戯曲を読んでみたいと思いました。腑に落ちない部分を検証するなんて野暮なこともしてみたくなる。そうでもしないともやもやした霧は私の中では晴れないような気がしました。
 
 
 
g-mark.gif「着信アリ」東京国際映画祭特別招待作品上映(2003.11.3)
 
 冬の角川ホラー第6弾、三池崇史監督作品『着信アリ』が第16回東京国際映画祭の特別招待作品として上映されました。その日は朝から霧が煙る小雨模様。肌寒いかと思うとそうでもなく、私はバックの中から赤い折畳み傘を出すのがおっくうで、少々濡れてもいいやの気分で渋谷のBunkamura オーチャードホールへと急いでいました。これはデジャブ?ではなくて(笑)偶然とは言え昨年に続いての東京国際映画祭。それも今年は全席指定ですから…心穏やかにすんげえ怖いと噂の映画を楽しみにしておりました。上映前、三池崇史監督、企画・原作の秋元康さん、主演の柴咲コウさん、堤真一さん、吹石一恵さんによる舞台挨拶が行われました。司会はお馴染みの襟川クロさん。舞台下手から秋元さん、吹石さん、柴咲さん、堤さん、三池監督の順番で厳かに登場。盛大な拍手と歓声と共にサングラスの三池監督の異彩を放つ雰囲気と光るスーツの着こなしに目眩がするような感動を覚えていました。まずは初主演の柴咲さんのご挨拶から「『着信アリ』はとても素晴らしい作品で三池監督の愛が沢山詰まった映画になったと自負しておりますので皆さん楽しんでください。」秋元氏作詞でこの映画の主題歌も彼女が歌っていらっしゃるとか。実際この手のジャンルの映画はご覧になるの?という質問に「一人では観ません。友達とキャーキャー言いながら」というお答でした。次は堤真一さん。彼が舞台中央に立った途端、客席から「又八〜!又八〜!」という男性の声援。面喰らったように堤さん「えっ?なんで又八やねん(笑)…ちょっと聞いてくれって」会場爆笑でした。大河の又やんは新規男性ファンを開拓したのかな?「すごくホラーですが、コウちゃんが言ったように監督の愛が詰まっている映画」だそうです。堤さんはご自分が出演されている映画は試写会などではなく、大体お家でビデオを観たりしているそうですが、今回は初めて試写会でご覧になって本当に怖かったと…でも怖かったけれど、怖いだけでは終わらない素敵な映画になっているので楽しんでくださいと。“国際映画祭男”と呼ばれるくらい?昨年から続けて登場の堤さんに、今回の映画はかなり監督と色々話し合って掘り下げて役作りをされたのですか?に「もう随分前のことなので忘れたんですけど(笑)現場で監督とすごく話をして、役作りというよりは監督と遊んでいたというか…楽しく物を作っている感じ」堤さんは何かあった時に女性を守るタイプですか?守られたいタイプですか?に「それは個人的に?(笑)ま〜守ったり、守られたりですかね(笑)」何を言うとるんじゃいという感じでちょっと照れながらのお答でした。吹石さんのご挨拶「この映画はジャンルでいうとホラーになるらしいのですが、現場はとても楽しかったです。皆さん一杯鳥肌を立てて帰ってください。」映画の中の役が実生活に役立っていますか?に「非通知の電話の着信は拒否にしました!」今から思うとフッキーの役は壮絶でした。そして秋元康さん「企画とか原作とかアイデアは製作者からどんどん離れて一人歩きをする子供みたいなもので、その子供はどんな風に育つのか分からないのですが、今回の子供に関しては出演者や三池監督はじめスタッフの方々の手によって素晴らしい大人に育ったと思います。単なるホラーではなく、三池監督が“ホラーラブストーリー”というジャンルを確立されたので、本当の愛を観て頂きたいと思います。」そして最後は俳優、監督として世界の映画人からオファーが絶えないという三池崇史監督。「え〜私事で恐縮ですが、夕べ遠藤憲一と朝まで飲んでいてちょっと元気がないですが(笑)その分映画はすごいパワフルなんで思いっきり怖がってください。それと私事でありますが、そろそろヒット作ないとヤバイので(笑)そこのところ皆さんよろしくお願いします!」その後フォトセッションが行われ、約15分程の舞台挨拶でありました。
 
 一般の観客に対して初お披露目となった『着信アリ』以下ネタバレちょっとあり?【物語】主人公の女子大生・中村由美(柴咲コウ)が参加した合コンの席で、友人の岡崎陽子(永田杏奈)の携帯に見知らぬ着信音が響いた。残されたメッセージを再生してみると明らかに陽子本人の声と断末魔の悲鳴が録音されていた。不思議なことに発信時刻は三日後の日付、発信元は陽子本人の携帯番号だった。誰かの悪戯だと軽く受け止めていた陽子は、三日後の同じ時刻に録音メッセージと同じ悲鳴を上げて鉄橋から落ちて死んでしまう。陽子の葬儀の帰りに彼女の後輩から携帯に伝わる無気味な噂を聞いてしまう。数日後、同様のメッセージが友人の河合ケンジ(井田篤)の携帯にも届いていた。着信された三日後の同時刻、ケンジは由美の目の前で悪夢のような絶叫を上げて死んでしまう。刑事・本宮(石橋蓮司)に一連の出来事を話しても相手にはされなかった。親友の小西なつみ(吹石一恵)の携帯にも陽子の時と同じ着信音のメッセージが届いた。死の恐怖に怯えるなつみは予告された三日後の時刻にテレビ局の生番組に出演する誘いを受け入れてしまう。事件の真相を探ろうとする由美の前に葬儀屋・山下弘(堤真一)が現れる。彼も妹を同じように亡くしていた。山下の死んだ妹の携帯の着信記録から二人はある母子家庭の存在を追い求めるが、なつみを興味本意で騒ぎ立てる生番組の放送時間が迫っていた…。
 
 面白かったです。いや…怖かったけれど面白かった。笑えるホラーは言い過ぎかもしれないけれど、来る。来る?来た〜!と予想外のビジュアルが展開すると何故か可笑しくなってククッと笑いが込み上げてしまいました。人間必要以上に驚いた後は冷静さを取り戻したい意味でも笑ってしまうものだと思いました。お化け屋敷が怖いのはフェイクのお化けが怖いんじゃなくて、不意に何かに驚かされるのにスリルを感じる訳で。でも音でドスンとやらかすのは心臓に悪いので勘弁してください。衝撃告白!?堤さんがまじで五体くらいの霊に取り憑かれたという場所、廃病院のシーン。もう次から次へとお約束のように…三池監督、最初で最後の渾身のホラー映画だそうなのでありとあらゆる恐怖の要素を大サービス状態で取り入れているのかなと?ちいとも斬新でない分だけ、やや落ち着いてもまた何かあるの?的な肩に力が入りっぱなしの緊張感でした。幼児虐待のトラウマとか重たい感覚はあれど、岸谷五朗さんの病的な死体マニアや声だけご出演の遠憲さんなど…マニアック心をくすぐる演出もお見逃しなく。おっともうこの辺で。上映時間112分。2004年1月17日(土) 全国東宝系公開。
 
 
 
g-mark.gif「卒業」東京国際映画祭コンペティション部門上映(2002.10.27)
 
 まさかこんなに早くこの映画を拝見できるなんて夢にも思っていませんでした。来年春、東宝洋画系公開予定の長澤雅彦監督作品『卒業』が第15回東京国際映画祭コンペティション部門参加作品として上映されました。上映後に長澤監督、主演の内山理名さん、堤真一さんによるティーチ・イン(質疑応答)が行われることもあり、東京・渋谷のBunkamura オーチャードホール前に早朝から沢山の人が集まっていました。前日はあいにくの雨だったので、天気予報の“晴れ”を信じて(笑)じわじわと染みてくる寒さに震えながら…季節の変り目を身をもって体験しておりました。待ちわびた開場と共にオーチャードホールへ。座席を確保した瞬間の嬉しさと言ったら〜頂いたプレスシートを大切に扱いながら、映画を待っている時の安堵感は何事にも変え難い幸せな時間のような気がしました。大ネタバレありです。『卒業』は登場人物たちが多くを語らない寡黙な映画でした。饒舌でストレートな説明台詞はほとんど無く、スクリーンの中の彼らの繊細な表情から内面を読み取って行く作業を必要とする極めて情緒的な作品だなと思いました。主人公の杉田麻美(内山理名)は卒業を目前に控えた短大生。彼女は心理学講師・真山悟(堤真一)を遠くからいつもそっと見つめていた。亡くなった母親が愛した男性として。決して触れ合うことの無かった父親として。真山は大学から解雇宣告を受けており、恋人の宮本泉(夏川結衣)との結婚にも積極的になれない中途半端な状態にいた。ある雨の日、麻美は真山に赤い傘を差し出す。まるで雨が二人を引き合わせたように。無邪気に振舞う彼女の存在に最初は戸惑いながらも次第に心を開いて行く真山。娘であることを伝えぬまま、母親の思い出の場所を訪ねる二人。確かめ合う術も無く共有している大切な人の思い出。やがて真山が過去に縛られ続け、自責の念に思い悩んでいることに気付く麻美。過去から踏み出すことを躊躇している真山の心をもう解き放してやりたいと彼女は思った…。東京の街の様々な風景の中、静かに呼吸をするようなごく自然な映像美を感じました。麻美の慈しむような視線の先には、どこか冴えないボサボサ頭の無口な心理学講師。突然目の前に現れた女生徒のアプローチにどう対処していいのか困惑するばかり。麻美が仕掛けた真山への悪戯っぽい対応は、気付いて欲しいけれど打ち明けられない…でも側にいたい。まるで一人の男性に対する恋愛感情のような歯がゆさでした。真山は自分の思いを言葉にできない人。内に秘めた感情を抱え込んでしまう人。どんな辛い過去の恋愛が彼を苦しめているんだろう?「大丈夫だよ」と優しく微笑んでくれた恋人まで彼の前から去ろうとしている現実。失ってから初めて自分の一番大切なものを知るなんて哀しい。真山の背中を押してあげたのは、同時に麻美の背中もそっと押したのは、娘に真山との思い出を告げて、深い愛情を残した母親の意識そのもののような気が漠然としました。きっと彼女は雨女だったんじゃないかな…なんてね。敢えてファジーな設定の元に、ゆるい浮遊感のような感覚がいつまでも胸に残る映画でした。長澤監督曰く、麻美と真山の関係を敢えて曖昧に表現することによって、ある確信や想像の元にもう一度観てくれた時、二人の細かく計算された演技をより楽しめてまた表情が違って見えるのでは?と。後日、シネフロントで再度『卒業』を拝見して私も長澤監督のお言葉に深く頷けるのでありました。
 
 上映後のティーチ・イン。司会は襟川クロさん。ゲストの三人が登場した会場は異様な熱気に包まれていました。上映時の字幕スーパーは勿論、通訳の女性の英訳がコメントの度に入るのですが、最初の内山さんのご挨拶→通訳の方の後、流れでクロさんではなくそのまま通訳の方が堤さんを紹介すると「…英語で言われてもね?」(笑)すごく大変な撮影だったにも関わらず、その大変さが映画に出ていなくて良かったそうです。各マスコミの写真撮影の後、皆さん椅子に座られてさあ始めましょうという時、客席から「理名ちゃ〜ん!大河ドラマ頑張って!」という声援に、堤さんがすっと立ち上がって「大河ドラマ頑張りま〜す!」(爆)そんなあなたの又八が楽しみ。今回が映画初主演の内山さん。嬉しさの反面、プロの方々に囲まれた責任感とプレッシャーは相当なもので、ドラマと違って?1秒1秒を大切に撮影する大変さを感じたそうです。堤さんも、朝まで粘ってこだわる職人気質なスタッフに「早くしろよ〜」とか「早く帰りてえ」とか思いながら(笑)現場は非常に心地良くて、撮影終了後にはまた映画がやりたいと思われたとか。台詞の少ない映画について長澤監督は、言葉にしてしまうとその言葉の意味だけで終ってしまうので、何も喋らないでいる人に対して一体何を考えているのか?観客のそれぞれの想像力を加えてくれればいいという意図があったそうです。内山さん演じる麻美の真山への感情は微妙で、父親なんだけど男性としての恋愛感情も…頭で考えるよりも現場で真山さんに感じたままを表現されたそうです。堤さんは、とにかく言葉にしない役なので、こんな感情という演技よりもライブ的な感覚で、生徒だから意識的に女として見ないように演じていたつもりが、絵的にはそれがエロティックになっていたり…自分が思ってやったことと映像が逆なのが不思議だったと。真山のボサボサの髪型について、家からの寝癖の状態のままヘアメイクさんにつながりを考えてやってもらって…でも毎日同じ寝癖が付く訳ではないので、メイクさんが大変だったそうです。あれは特殊メイク?シリアスな質問が続いていたので「どうもありがとう!こういう質問が一番嬉しい!」(笑)雨のシーンが多い映画なので、撮影中の雨に関するエピソードなども。雨が嫌いだったという内山さん。でも撮影が春だったので、花粉症の彼女には雨が降ると撮影がし易くなったり、スタッフがすごく芸術的な雨を降らせてくれるのでそれにも感動したそうです。堤さんのお話が傑作!クライマックスの台詞が全く無い重要なシーンで、本編では音楽を入れてしまうので要はどんな音を出していてもOKの中、現場では指揮を出すスタッフの親方の怒声が飛び交っていて「上手〜!雪足んねえぞ〜!」(爆)当然そのまま英訳する通訳の方に「こんなの英語に訳さなくても…」通訳の方に突っ込みを入れる人。雨の映画だと思って頂けると嬉しいとおっしゃる長澤監督。撮影期間はほとんど晴天続きだったので、黒幕で覆ってサーカスのテント状態を作って雨を降らせたという逸話も。最後に、野田秀樹さんとSABU監督の演出を受けている堤さんにお二人と長澤監督の演出の違いは?「SABU監督は現場ではとてもおとなしい人なので、SABUが感覚的だとしたら、長澤監督は事前にセッションをして緻密に計算をされる方。でも現場での感覚的なものはフリーで動かしてもらえたり、そういう意味ではSABUと長澤監督は似ているのかもしれない。野田秀樹さんは舞台の方なのであの人のことはいいでしょう!?」以上、約30分に及んだとても興味深くて楽しいティーチ・インでした。 http://sotsugyo.toho-movie.com/
 
 
 
g-mark.gif「DRIVE」SABU監督と舞台挨拶(2002.9.1)
 
 テアトル新宿と渋谷シネ・アミューズで行われたSABU監督と主演の堤真一さんによる『DRIVE』の舞台挨拶。東京での公開日8/24はまだ舞台の公演中だったので、必然と今回の堤さんによるものは無いと思いきや…翌週にSABU監督と大阪・東京と連日の舞台挨拶が行われるというNEWS!やってくださるのなら頑張って拝見しなくてはと、前日の渋谷の整理券確保から(T-T) 普段は眠らせている?驚異的なエネルギーで参加させて頂きました。ネタバレ満載。断片的な記憶を全部リポートしちゃいますのでご注意を!早朝のテアトル新宿に続々と集まる人々。休日だしな〜ちょっと出遅れたかな〜と不安が過る中、AM8:30頃に初回を希望した入場者に早々と開場してくださったテアトル新宿さんに感謝。座り心地のいい座席に沈み込むように上演までの快適な時間を過ごせました。お目当てのお二人の舞台挨拶は初回上映終了後。ゆったりとSABU映画の世界を堪能しながら、でもエンドロールの頃にはもうドキドキ脈打ち始めていて(笑)司会はTOKYO FMのアナウンサー、上田万由子さん。盛大な拍手と共にSABU監督と堤真一さんが登場されました。今日はありがとうございます!という和やかなご挨拶の後、作品が完成した今のご感想は?という質問にSABU監督「毎回当然名作なんで、今回はちょっとサービスし過ぎたかな」相変わらずです。堤さんはSABU監督とのお仕事について「…緊張感はあるんですけど、仕事をしてるって感じがあんまりしない。一緒に遊んでものを作っているという感じ?」横からSABU監督が「俺がちゃんと導いているから」「うるさい!」と返す堤さん(笑)SABU監督は彼の舞台の魅力に触れて、他の俳優さんに無い立ち姿であったり、それを皆に見せたいなとずっと思っていたので、今回“武士”という形で映画に登場するのを楽しみにしていたそうです。真面目なトーンでご自身が誉められている時の堤さんはちょっと視線を下に落として照れ臭そうでした。例によって?SABU監督はあまり細かい演技指導はせず、初めて現場に来た人にも“擬音”で説明していて訳わからん!というお話に「俺、海外生活が長かったので日本語が喋れないんで〜」とボケまくっていたSABU監督。今回のテーマである“縁”についてのコメントを求められると…インターネットなどで簡単に情報を手に入れることができて人と関わることが気薄になっている世の中で、監督ご自身は堤さんと出会ったりしたことがすごく転機になってドンドン変わってきているので、それは人との出会いを大事にしている結果だと思っているので、こんなハイテクの中で敢えて“縁”という古いテーマを持ってきたそうです。まるで説法みたいな内容に「俺、ちゃんと喋ってるな〜」「すごいね〜」と堤さん(笑)お二人は終始こんな感じ。堤さんが一人二役を演じたシーンについてSABU監督曰く、本当はタイ人の中でオーディションをして堤さんにそっくりな人を探すつもりだった!?もう誰も付いていけないボケでした。堤さんの顔型をとった“デスマスク”を作って、それをアクションのできる別の方にかぶってもらってそっくりという、CGを使わないアナログな手法を考えていたら…その方がちょっと太っていたので、太った堤真一?堤真二になってしまってやばかったという爆笑エピソードも。結局、ちょっと小柄でもやや顔の形の近い方がいて、その方にマスクをかぶってもらったりしたそうですが、ほとんど堤さんがお一人でやられたとのこと。撮影中、彼にはある疑問がっ!!「自分が侍のカッコをしているにも関わらず、デスマスクを付けていて??俺がやるのに何でデスマスク?みたいな…あれは何だったの?」意味がわからんとまじでSABU監督に尋ねている堤さん。デスマスクは表情が全く無くて、瞬きひとつしない怖さがあったので敢えて登場シーンで付けてもらったそうなのですが「無表情くらいできるっちゅうねん!」(笑)でも確かに瞬きが多いですからね…と妙に納得している堤さんでした。映画では車の中のシーンも多く、撮影中は音の関係で冷房が入れれないし、男臭いし、スタッフは汗臭いし(笑)大変だったそうです。時速40キロという設定でも実際の40キロはかなり速いので、10キロ程度で走らせていたらしい。ロケ地があまり人のいない?とても静かな街で、撮影が少なかった安藤君は近所にあった健康ランドにずっと通っていたとか。堤さんは?という質問に「僕も2回くらい」また横からSABU監督が「行ってんじゃん」(笑)その後、映画に関する質問が募られたのですが、静寂に思わず堤さんから「昨日、大阪に行ってきたんですけど、大阪の人は何でも喋るんですけどね」…主人公の朝倉が叔母役の根岸さんに妄想の中で実行するショッキングなシーンについての質問をされた方に、あれは一発OKしないとNGになったら壁から何から全部掃除をしてまた帰りが遅くなるっていうんで皆で緊張しました!と答えられていました。花束贈呈の準備によるしばしの沈黙に「この間が嫌なんですよね」(笑)最後にSABU監督「これからも面白い映画を作って行こうと思っていますし、堤さんとも一緒にやって行こうと思っているのでよろしくお願いします!」堤さん「SABU監督は海外の映画祭でも非常に注目されています。皆でこれからも応援してあげてください!」約15分間ほとんど笑っていた記憶の楽しい舞台挨拶でした。
 
 渋谷シネ・アミューズの座席数はテアトル新宿の約半分で小さいライブハウスのような空間。新宿から移動してまたあの素敵なおっちゃんお二人を待ち構えているのが不思議でした。司会は同じく上田アナだし(笑)登場されたお二人のご挨拶が傑作でした。静かだった客席にSABU監督が「キャ〜って言え!」(爆)空気が一気に柔らいだ感じで、ご希望ならばとわざとらしいキャ〜!が飛び交っていました。それを受けた堤さんが控えめに「キャ〜って言うな!」絶妙でした。いつも強気でクールな発言の多いSABU監督ですが、沢山のお客さんに来て頂けるとお家へ帰ってやった!やった!と喜んでいるそうです。堤さんの感想も面白かったな〜「やってる時は楽しいばっかりで、何となくできちゃった映画」だそうです。新宿と比べると渋谷はお客さんを目の前にして、よりトークがラフというか?シネ・アミューズは舞台挨拶後に映画の上映だったので、詳しいストーリーに触れることが×という状況だったのをいいことにSABU監督「(堤さんは)こおろぎとキリギリスの二役だったんで」(笑)本当ですか?に堤さんまで「緑の衣裳と茶色の衣裳で〜」皆さん!あまり信じないでと上田アナ。テーマの“縁”に関してはおふざけ無しの真面目モードで、新宿と同じニュアンスの人との出会いを大事にしましょうというお話をされていました。堤さんにとっての縁とは?という質問に「まあ色々あるんでしょうが“腐れ縁”というのもあるし…」SABU監督も「“縁”を大切にしないといかん人もいるし、そうでない人もいるので」深いな〜(笑)改めて“縁”なんて突き詰めて考えてみるのもいいことだなと思いました。こちらのお時間はあっという間の10分ちょっと。最後にSABU監督から「え〜そんな才能が溢れている俺なんですけど(笑)これからもドンドン溢れてこぼれているくらいなんで、面白い映画を作って堤さんとも一緒に頑張って行こうと思っています!」堤さん「あの…本当にSABUちゃんはですね(ちゃん付けだ〜)海外の映画祭に行ってもすごく評価が高いのにあまり日本の中ではちゃんと評価されていないと思います。まだまだこれからなので、そういうSABUちゃんを皆で応援しよう!」最後に盛上がったのは言うまでもありませんが(笑)確かに嵐のような一日でした。SABU監督と堤真一さんの関係は友人であると同時に監督と俳優としても理想的なんだろうなと思いました。
 
 
 
g-mark.gif「アテルイ」楽日(2002.8.28)
 
 無事に千秋楽を迎えられたInouekabuki Shochiku-mix『アテルイ』平日マチネにも関わらず賑わう新橋演舞場とも今日でお別れかと思うと一抹の淋しさが…宴の後、正に気分はそんな感じでしょうか?前日の楽前の終演後、既に楽日の当日券を求める徹夜組が劇場前に陣取っていたのに驚かされました。カーテンコールの時に、染五郎さんからも徹夜組の方々に労いのお言葉がありました。舞台はちょっとずつ進化していたように思います。日ネタのバリエーションは勿論、冒頭で阿弖流為の“北の狼”、田村麻呂の“都の虎”に続いて、鈴鹿が私も〜と通り名を上げるシーン…落ち着いていた緑のたぬきがワインレッドのたぬきって!?もう訳わからん。最後には業を煮やした阿弖流為がエスタックイブがいいと思うで参戦して(爆)さ〜気を引き締めて行こうか!という染様のアドリブの一喝も場内大爆笑でした。他にも、え〜その演出いつから?みたいな(笑)その違いに気付けるのが最大の贅沢でもあったのですが…例えば、ちょっと音が小さかった地味な鈴鹿の笛が明らかに変わっていたり、御霊御前の元に忍び込んでいた立烏帽子が田村麻呂に暴かれるシーンで、彼女が投げた黒い烏帽子を田村麻呂が拾って楽しげにかぶったりとか(笑)田村麻呂の剣に倒れた阿弖流為が帝の玉座の前に自らの剣を突き刺して消えて行く劇的なクライマックス。吹き出すスモークと共にせりが下がって“北の戦神”が視界から消えても、残された彼の剣にはいつまでもスポットライトが当たっているという感動的な場面なんですけど、いつからあのシーンで剣を突き刺すようになったのかな?なんて…気が早いですが、DVD化されたらゆっくり検証してみたいにゃ。田村麻呂にラブラブ光線を送り続けていた紀布留部の怪演も突き抜けていました。お気に入りだったボーリングのシーン?楽日では激流のような轟音が響き渡って、予期せぬSEに御霊御前までが素で驚かれていたのが傑作。高笑いを上げながら花道をはけて行く布留部様が「これで解放されるわ〜」と叫んでいたり、蛮甲の台詞をさり気なく真似ていっけいさんを笑わせたり、植本潤さんナイスでした。もうお一人の濃い〜じゅんさんにも触れない訳には…恐るべし佐渡馬黒縄。素の堤さんがゲラなのが露見してしまったような?いい男を痛ぶるように(笑)毎回、田村麻呂をしょうもないギャグで撃沈させていた苦味走った黒縄が大しゅきでした。二本刀の飛連通と翔連通も好きだった…あ〜何もかもが皆懐かしい。立ち回りが始まると血が騒ぐような感覚?チャンバラやりたい症候群に陥りながら(笑)殺陣が上手いって素敵だなといつもいつも思っていました。
 
 カーテンコール。鳴り止まない拍手と歓声のオールスタンディングの中、座長の風格が漂う染五郎さんから千秋楽を迎えられた感謝のお言葉の後「本日、本番前の柔軟体操に遅刻した人がいます!」という申告あり。キャストの皆さん勢揃いの舞台上が更に盛上がる中、やや後方にいらした蛮甲の渡辺いっけいさんに視線が注がれ、みるみる彼の目が泳ぎ始めて、こっこれが噂の罰ゲーム!?それは舞台人として決して許されることでは無いらしく(笑)いっけいさん20年来の十八番である“哀愁でいと”を御披露という怒濤のオンステージに流れ込みました。いっけいさんお一人を舞台中央に残し、本花道と仮花道の二手にさ〜っと素早く別れて観客と化すキャストの皆さん。阿弖流為のあの衣裳とメイクのまんまの染五郎さんが仮花道に並んで座り込んでいるし、本花道の一番奥に視線を移すともうギリギリ揚幕の前に立った田村麻呂の堤さんがステージを眺めて微笑んでいるという…なんて楽しいカンパニーなんざんしょ!完璧な振付けと共に見事ないっけいさんの“哀愁でいと”が歌い上げられて、演舞場のボルテージは最高潮に達していました。大阪芸大時代、いっけいさんがキャンパスで披露していたこの歌が当時のいのうえさんとの出会いだったというエピソードがあるそうです。既に罰ゲームの域を越えていたいっけいさんの芸に苦笑する染五郎さんというオチが付いていたりして。その後、舞台上のねぶたの山車をバックに出演者全員で記念撮影。同じく今度は向きを変えて客席側をバックにパチリ。そして熱かった2002年夏の舞台が幕を閉じました。本当にお疲れ様でした!やっぱり舞台はいいよね〜がもう口癖になっていますが、次回の堤真一さんの舞台はいつ頃になるんだろう…やっぱり舞台はいいよね〜を噛み締めながら、スキップでもしたくなるようなふわふわした気持でおりました。るん♪
 
 
 
g-mark.gif「DRIVE」完成披露スペシャル・スクリーニング(2002.8.11)
 
 東京・赤坂のTBSホールにてSABU監督最新作『DRIVE』の完成披露スペシャル・スクリーニングが行われました。TOKYO FMの招待枠に無事当選!公開より一足先に話題の新作を拝見して参りました。一連のSABU監督作品の要素がちりばめられている快作でした。それはまた後で。上映前にSABU監督と出演者の方々の舞台挨拶がありまして、司会はTBSアナウンサーの木村郁美さん。木村アナはこの映画に銀行員役で友情出演されています。期待の大拍手と共に皆さんご登場!と紹介されたにも関わらず、何故か大杉漣さんだけが一人袖からお出ましになって?なかなか他の方がいらっしゃらない妙な間。ちょっと困って照れながら手招きをしている漣さんの後からビデオカメラを構えた安藤政信さん、堤真一さん、SABU監督、柴咲コウさん、筧利夫さんが続々ご登場。安藤さんが自前のビデオで漣さんを撮影していたようです。一言ずつご挨拶をに、強気だけどシャイなSABU監督「(この映画は)シルベスター・スタローンがF1に乗って…」軽めのジャブでスタート。堤さんは「実はまだ映画を観てないんで面白いのかよくわかんないですけど、撮影中はすごく楽しかったのでSABUワールドを堪能してください!」SABU映画初参加の柴咲さんは淡々と「SABU監督は変な人で…」安藤さんはボソボソと「僕も堤さんと同じでまだ観てなくて…」脱力系の静かなお二人の後で筧さんが「本日はご当選おめでとうごさいます!」まるで演説のようなハイテンションでご自身も初参加のSABU映画を絶賛しながら場を盛り上げてウケまくっておられました。漣さんは渋めに「僕はもう観ました。ゆっくり楽しんでください!」木村アナもSABU監督に促されて、緊張の中にも現場が楽しくて驚いたお話をされていました。既に各地で行われた試写会も好評だったそうで「ま、当然ですけどね」出たぞ。監督とはプライベートでもお付合いをされているとか?という質問に堤さん「プライベートのお付合いって言われても…交際宣言?」(笑)友達でも仕事とは別なので、現場ではちゃんと“監督”と呼んでいるそうです。前作『MONDAY』では印象的な死体役だった安藤さん。質問にボソボソと答える彼に思わず堤さんから「何言ってんのかわかんない!」(爆)撮影途中なのに安藤さんは髪を切ってしまったそうで、バレないなと思っていたら直に堤さんから「お前、切ってきただろ?」と指摘されて…「オチは無いんで」と再び堤さんから突っ込まれているお茶目な安藤さんでした。CGで髪は伸ばしてあるんで大丈夫とSABU監督。この辺のエピソードはキネ旬の特集に載っていましたね?筧さんからはSABU監督は細かい演技指導はほとんどされないのでそれが余計に恐かったとか、漣さんからは富山ロケの時は毎晩飲んで、温泉好きの安藤さんと一緒に健康ランドに行きましたなんてお話も。最後にそれぞれこの映画の見どころは?SABU監督「俳優さんたちが生き生きと輝いているSABUマジック(笑)」堤さん「チームワークが良かったのでその辺が良く出ている」柴咲さん「筧さんのミッキーと三人の銀行強盗のそれぞれのストーリー」安藤さん「SABU映画で初めて人が死なないこと」筧さん「大杉漣さんのダミ声(笑)」漣さん「ワンシーンやワンカットに色々な俳優さんが出演されていること」等々。この後に花束贈呈とマスコミ各社の写真撮影が行われた約25分に渡る楽しい舞台挨拶でした。その他にも細かいことをお話されていたとは思いますが…ご容赦を。
 
 主人公は頭痛持ちの真面目な薬品会社の営業マン・朝倉。名前も知らない彼女を遠くから眺める午後1時の交差点。信号待ちのその時、彼の車は三人組の強盗にいきなりカージャックされてしまう。銀行強盗で盗んだ大金を仲間の一人に持ち逃げされてそれを追跡する途中だったのだ。言われるままに発進する朝倉。しかし彼はその几帳面な性格上、制限速度40キロをキッチリ守るトロトロ運転。裏切者はまんまと逃げ去り、大金を逃した訳ありな強盗たちと朝倉のとんでもない一日が始まってしまった…。『DRIVE』のキーワードは“縁”だそうで、相変わらずの巻込まれ型エンターテインメント(笑)でも確実に洗練されている偶然が偶然を呼ぶ連鎖。予想外の展開が一気に加速して、あれこれ考える間も無くクスクス笑っている自分に気付くという感じ。銀行強盗、逃げて走る男たち、何かが起る埋め立て地、ヒロインとの淡い恋…あえて過去の作品を彷佛とさせるシーンが盛り沢山なのが堤真一主演の集大成みたいな気がしたのは私だけでしょうか?SABU組常連の俳優さんが大挙出演。特に田口トモロヲさんの出演シーンはあまりにそれらしくて…感動すらありました。個人的に反応してしまったのが車中のラジオから何気なく流れていた懐かしい曲。太田裕美さんの「袋小路」という曲です。たまたま好きな曲だったもので (*^-^*) これも何かの縁かもしれない。上演時間1時間42分。テアトル新宿、渋谷シネ・アミューズ他で8月24日(土)より全国超快速縦断ロードショー公開。必見です!
 
 
 
g-mark.gif「アテルイ」初日(2002.8.5)
 
 新橋演舞場での観劇は何年振りでしょう?過去にあの!田村正和様の華やかな舞台を何度か拝見したのが私の数少ない演舞場体験。長〜い幕間にお席でお弁当を食べてもいいのがとても新鮮で(笑)普段、足を運んでいるようなお芝居とのギャップに驚きながらも楽しんでいた記憶があります。そんな商業演劇のメッカでInouekabuki Shochiku-mix『アテルイ』の初日を拝見しました。客席から舞台を望むと思いの他、劇場が小さいなという感覚。これが噂の“両花道”なのね?今回、通常の“本花道”の他に客席上手側に少々幅狭めの“仮花道”が造られている関係上、余計にそう感じたのかもしれません。主演はWヒーロー、古代蝦夷(えみし)の長・阿弖流為(アテルイ)に歌舞伎の市川染五郎さん。蝦夷討伐の命を受けた征夷大将軍・坂上田村麻呂に堤真一さん。二人の英雄対決と敵味方を排して芽生えた友情を描いた大スペクタクルなんて〜もう観たいに決まってるじゃないっすか(笑)キャストが発表された時に、かの古田新太氏のお名前が無かったことが非常に淋しかったのも事実ですが…ちなみに古田氏は豪華パンフレットの中で堤田村麻呂に愛情溢れる推薦文をくださっております。染五郎&堤の両氏ともに客演での見事な立ち回りは立証済。そこに初舞台となる謎の踊り女・鈴鹿役の水野美紀さんも加わって、否応無しに私の心拍数はヤバイゾ状態に陥っていました。以下ネタバレあり!【物語】舞台は古き日の国。国家統一を謀る帝を中心とする大和の軍勢・帝人軍が、北の民の蝦夷の国に攻め入っていた。同じ頃、都では“立烏帽子党”を名乗る盗賊の一団が暴徒の限りを尽くしていた。人々は蝦夷の仕業と噂し、北の民に恐怖を募らせていた。都の守護役の武士・坂上田村麻呂(堤真一)は噂に疑問を抱き、彼を慕う踊り女・鈴鹿(水野美紀)と共に盗賊の正体を探る。彼らの前に“北の狼”と名乗る謎の男(市川染五郎)が現れる。暴徒は真っ赤な偽者。本物の“立烏帽子党”とは蝦夷の民・立烏帽子(西牟田恵)が率いる誇り高き者たちだった。この謎の男こそ、蝦夷の長の息子・阿弖流為。北の神の化身を手に掛けて国を追放された身ながら、大和の攻撃による一族存亡の危機を知り、立烏帽子と共に北へ帰る。立場は違えど阿弖流為と田村麻呂には奇妙な武人同志の友情が芽生えていた。皮肉にも帝より田村麻呂に蝦夷討伐と征夷大将軍の命が下る。帝の寵愛を受け権力を誇る田村麻呂の姉・御霊御前(金久美子)と右大臣・紀布留部(植本潤)は鈴鹿の秘められた力を利用しようと策略する。やがて大和による侵略の戦火は増し、阿弖流為と田村麻呂の宿命の対決が迫っていた…。
 
 邪(あ)しき神、姦(かだま)しき鬼と恐れたり。冒頭から古代東北の英雄アテルイ伝説を元に描かれた壮大な歴史大河ロマンという風情。でもいのうえ歌舞伎ですから…シリアスな部分とそうでない部分の落差を楽しみながら大変見応えのある3時間半でした。ミュージカル風に激しく歌って踊る劇団☆新感線テイストは極めて少なめ。売りの両花道、廻り舞台(盆)、せり、すっぽんなど劇場の機能を自在に使った演出とスピード感溢れるチャンバラの応酬。そんなトラディショナルな空間の中にガンガンのロックと誇張された効果音が相まって、麗しき英雄たちの世界に浸っておりました。阿弖流為の染五郎さんは御主何者?というくらいエキゾチック。身のこなしが軽い軽い。クルクル宙を舞うような華麗な殺陣は中国武術的な動きを取り入れているとか?ここぞとばかりに見得を切ったり、パロディのように六法を踏むお姿は正に「高麗屋っ!」でした。鼻にかかった独特の発声。舞台映えする“華”は彼の血の中に組み込まれているDNAのような…ちょっと褒め過ぎかな?(笑)今回の舞台は染五郎丈が長年温めていた題材だそうで、役に対する思い入れも人知れず、同胞を守らんが為に命を捧げた、鬼に非ずな魂の込もった刹那的アテルイ像を魅せてくれたのでは?田村麻呂の堤真一さん。ビジュアルはため息の出るようなひたすら凛々しいエリート武将なのに、印象は豪放磊落。堤さんが演じるとどこか愛嬌のある憎めないプチ野獣郎的な雰囲気も。まるでスイッチが入ったように、不適な笑みを浮かべながらの雄々しい大胆な殺陣は魅力的でございました。どうして堤さんの殺陣はあんなに楽しそうなんだろう?体力的にはめっちゃキツイんだろうけど(笑)両花道にすっくと佇む阿弖流為と田村麻呂。向かい合せの仮花道と本花道。名乗りを上げながらスポットライトと共に立ち去る“決め”のシーンは震えました。鈴鹿の水野美紀さん。希有な透明感のある方。初舞台故にキャリアのある方々と比べられてしまうのは少々酷かなと。アクション女優初見参という感じ。第二の志穂美悦子さん説を支持します。一途に田村麻呂を慕う健気な女心。鈴鹿の秘められた過去が物語の鍵で、この辺がちょっと難解なんですけど…。勇壮な田村麻呂と寄り添う美しい鈴鹿のツーショットは“雅”な絵のようでした。立烏帽子の西牟田恵さん。ハスキーな声が個性的。凛とした強さのある男前でかなり重要な役でした。蛮甲の渡辺いっけいさん。同胞でありながら阿弖流為に反目して敵に取り入る卑怯者。いっけいさんの出番を今か今かと待ちわびていた感も。上昇思考が強くて権力に寄り添うしか自分を生かせない哀しい男…それにしても“各蔵金(カックラキン)大将軍”はギャグ的にどうなのかな?(笑)インパクトでなら忘れてならない帝人軍・佐渡馬黒縄の橋本じゅんさん。蛮甲の濃さが中和されてしまうような、もう存在自体が反則だと思う。田村麻呂とのシーンは素の堤さんが黒縄の餌食になっているのが傑作。kumako.gif 熊子と添い遂げさせてあげたかった!?時の帝の描き方が実体の無い意識の中に存在している支配者のような設定だったのが印象的でした。そして“悪路王”と呼ばれた北の英雄の魂が“ねぶた”の形を借りて人々の心を潤しているのに胸が熱くなるようなラストでした。日ネタに反応できるくらいリピーターになりたい!偶然にも今年はアテルイ没後1200年。気が遠くなるような年月を越えて英雄たちはこの夏、演舞場で闘っています。
 
 
 
g-mark.gif「欲望という名の電車」楽日(2002.5.30)
 
 渋谷の街の喧騒はもうとっくに肌に合わなくなっていますが(笑)時間に遅れてなるものかと人込みを足早に歩きながら『欲望という名の電車』楽日へ。劇場入口前で当日券に並ぶ人々の行列をすり抜けていました。少々異様な熱気の中、客席の中段から後部の通路に座布団が敷かれ始めていて、立見のお客さんの多さをぐる〜っと見回しながら…あ〜今日で東京公演が本当に最後なんだなと改めて思っていました。特別に奇を衒ったような表現も無く、蜷川幸雄氏の演出はごくごくシンプル。それだけこの戯曲が人を引き付けて止まない完成された作品である証のような気がしました。いや〜初日のスタンリーの印象は正直に言うと力が入り過ぎていてまじ恐かったし(笑)ブランチの瞳で彼を見つめていたら、スタンリー・コワルスキーは正に野獣でした。おらおら状態で駕なり立てる声がピリピリ神経を苛立たせてくれました。堤さんがお腹の底から声を張るあの感じが、舞台を観に来ているのだ〜と実感できる快感でもあったのですが…どっちなのさ(笑)贅沢にも何度が拝見しているうちに「悪くねえな…」に至るまでの悪魔のスタン!?の印象がもっと複雑で細やかに思えるようになっていました。スタンは下品で粗雑な男だけれど、ステラにとっては子供みたいな部分のある優しい旦那なんですよね?ステラとのシーンは愛情溢れる夫として存在しているのに…彼にとってブランチは平穏で幸せな生活の中に突然現れた厄介な異端だもの。鋭い視線が絡み合ってバチバチ火花を散らしているようなブランチvsスタンリーにゾクゾクしました。お嬢様だったか何だか知らないけれど、プライドを振りかざしては心の底でいつも義弟の自分を差別しているような、母親思いの純粋な仲間のミッチを手練手管で夢中にさせて手に入れようとしているようなブランチを黙って見ていられるような度量も気質も彼は持ち合わせていなかった。深く刻まれた心の傷に怯えながら、無意識に都合のいい虚構の世界へ逃げ込もうとするブランチ。やがて神経のバランスは完全に崩壊してしまう。ステラの悲痛な叫びに振り返ることもなく、誰かにすがりたいと願う魂だけが浮遊するように、見知らぬ紳士に身を任せながら恍惚の表情で去って行く彼女に胸が痛みました。暗闇を引き裂くように、欲望という名の電車が通り過ぎて行く空しい音が響き渡っていました。
 
 楽日ですから…カーテンコールへの思い入れも一際熱く、お疲れ様でしたの気持を込めて心から拍手をしていました。満面の笑みで手を振りながらぴょんぴょん飛び跳ねている?大竹しのぶさんが可愛いかった。演出の蜷川幸雄氏も出演者の皆さんと会場中の温かい視線と拍手に迎えられて舞台に登場!やっぱり内緒の仕掛けがありましたね?(笑)和やかに一列に並んだ舞台上の皆さんの頭上から沢山のキラキラ光るメタリックブルーのテープがカーテンのようにダ〜ッと一斉に勢い良く降りてきたもんだから、うわ〜っ!と会場中が驚きとその美しさにどよめいていました。堤さんや六平さんの頭や肩にも落ちてきたテープがもろに当たっていて(笑)顔を見合わせて驚きながら微笑んでいるのが可笑しいやら楽しいやら。本当にお疲れ様でした。小細工無しの直球勝負の舞台を堪能させて頂きました。大阪公演も充実した舞台でありますように。
 
 
 
g-mark.gif「欲望という名の電車」初日(2002.5.4)
 
 今年のGWのお楽しみは?陽気もいいことだし、関係ないけど大好き原巨人も好調だし、打倒!星野阪神(笑)カレンダーの日付が赤く続いたその後半、ほぼ1年振りの堤真一氏出演の舞台『欲望という名の電車』を東京・渋谷のBunkamura シアターコクーンで拝見しました。幸せな初日です。遠足前の小学生になっていました。どうして今まで機会が無かったんだろう?堤さんが世界のニナガワ、蜷川幸雄氏の初演出を受ける今回の舞台。ブランチは大竹しのぶさん。ステラは寺島しのぶさんのWしのぶ。ミッチは個性派の六平直政さん。そしてスタンリーは堤真一さんときたら…演劇ファンならずともそそられまくりのキャスティング。テネシー・ウィリアムズのアメリカ演劇不朽の名作がどんな表現で目の前に飛び込んでくるのか楽しみにしていました。中越司さんの細部まで造り込んである舞台装置は、白ペンキ塗りの外壁が古びて黒ずんだ木造アパート。細い電柱や電線などしばし見上げていました。下手側に2階へ続く細い支柱のバルコニーと1階のステラ夫婦の部屋の扉。天井まで届きそうな高い窓。生活感の滲む狭い乱雑なリビングとカーテンで仕切られただけの上手側のベッドルーム。その正面の扉の奥がバスルーム。客席との距離感の全く無い、圧迫されるような独特の雰囲気を醸し出していました。開演前に係の方が最前列の観客に「何か飛んでくるかもしれませんがご注意ください…」って何?(笑)開演ベルも無く唐突にトランペットとピアノの演奏で始まる舞台。以下、劇的にネタバレしています!【物語】「欲望」という名の電車に乗り、「墓場」という電車に乗り換えて、「極楽」駅に降り立ったブランチ。妹のステラの住むニューオリンズの下町、フレンチ・クォーター。南部の上流階級の令嬢から身を崩して全ての財産を失い、教師の職も追われて妹を頼りに訪れた傷心の姉は、あまりに生活環境の違う妹夫婦の暮らしに驚嘆する。粗暴なステラの夫、スタンリーはそんなブランチの行動に尽く反目し、二人は激しく衝突する。ブランチはスタンリーの友人、ミッチの優しさに心を開き最後の望みを賭けるが…。
 
 決して裕福ではない労働者階級の人々の熱いエネルギーが溢れる町。そこに場違いな品のいい帽子に白いスーツの女性が不安そうに佇んでいる。噎せ返るような空気と強い日差しの中、彼女は案内された誰もいない妹夫婦の部屋で、目ざとく見つけたウイスキーを呷る。ブランチの象徴的な登場シーン。ステラとの再会を心から喜び、自分の安息の場を求めようとします。姉とは対象的な芯の強さを持ち、夫スタンリーとの生活に逞しく生きる幸せを見い出している気丈で優しいステラ。姉と夫の激しい対立に心を乱し、誰よりも悲しみに暮れたのは彼女かもしれない。上品な気位の高いブランチに対してあからさまに嫌悪感を示すスタンリー。彼の言い知れぬコンプレックスは…育ちの違いと、ステラの夫としての威厳や征服欲が彼を見下すブランチには通用しないもどかしさみたいなもの。スタンリーは動物的な直情型ではあっても決して悪意に満ちた非道なだけの人間ではないと感じていました。仲間とボーリングを楽しんだり、夜中にポーカーと酒に酔いつぶれて身重の女房に暴力をふるって大暴れをした挙句、酔いが冷めると途端に後悔の念に苛まれて、失意の底からステラを求めて許しを乞う小市民じゃないっすか?でも、ブランチの存在が彼の燻っていたマイナスのエネルギーに完全に火を付けてしまった。ブランチという女性は限り無く繊細で神経を病んで壊れて行くガラス細工のようなイメージを漠然と持っていたのですが、彼女は繊細なだけじゃない、女の性を剥き出しにしながら、幻想と現実の狭間を漂うしたたかさを無邪気に体現していると思いました。天性の女優・大竹ブランチが放つ個性は時にユーモラスでもあり、新聞の集金人の少年を誘惑する有名なシーンや、居場所の無い疎外感からの現実逃避を託したミッチとの会話など、シリアスな心理劇にも笑いの要素はありますね?ブランチの長台詞は小鳥のさえずりのように叙情的で何の違和感も無く、彼女の精神世界に入り込んで行けるような感覚に陥りました。…過去からの悪夢のような幻聴に悩まされながら、ブランチが少女の頃に唯一愛していた詩人の少年の死の光景が私の頭の中にも広がっていました。スタンリーはブランチの悪い噂を聞き付け、荒々しく牙を剥く獣のように声を張り上げて彼女を侮辱し挑発する。ミッチも彼女に罵声を浴びせ去って行く。途方の無い絶望だけがブランチを覆い尽くす。スタンリーの劣等感はやがて欲望と化し、彼女を二度と這い上がれない地獄の底に突き落としてしまう。傷口を抉って血を滴らせるような憎悪でしか成立しない真逆の愛情のように。
 
 3時間という長さを全く感じなかったです。張り詰めた緊張感が程良く疲れさせてくれる舞台でした。暗転の度に生演奏のトランペットの音が響き渡り、スモークの白いもやが渦巻く中に、窓越しから分断された強烈な光りが差し込むビジュアルが美しかった。客席の出入口と通路を舞台の一部として使う演出に最初は驚きながら、まるで花道でもあるかのような広がりのある空間を楽しんでいました。どれだけ集中してその世界観に入り込めるのかが勝負だとは思うのですが、生身の役者さんが全身全霊で挑んでいる同じ時間を共有できるのはやっぱり贅沢で気持がいいやというのが本音です。カーテンコールでの安堵した出演者の皆さんの笑顔がとても爽やかでした。全出演者の登場の後、下手から寺島さん、大竹さん、堤さん、六平さんのメインの4人が舞台上に残る予定だったらしいのですが、六平さんが何気に引っ込もうとしているのを慌てて横の堤さんがこそっと制止しているのが可笑しかったです。
 
 初日ならではの?ハプニングが起きて(@_@)とにかく今回の舞台。野性の堤スタンリーは恐いくらいヒステリック気味で力任せに物に当たるの…身の回りの小道具なんて投げるというか叩き付ける感じ。あ〜嫌な男(笑)あれはブランチとステラと3人のシーンで、スタンリーが部屋の扉をものすごい勢いで閉めたかと思うと、何故か?バンバン音を立ててその扉を外側から叩き始めて???嫌な予感的中!木製の扉が壊れて開かなくなってしまったのでした。ステラもアクシデントに気付いて何とかしようするんだけど「どいてろっ!」「このボロ屋っ!」と心の叫びのようなアドリブ。もう体当たりはするわ蹴破るわであっと言う間に開けるのに成功。どうだと言わんばかりに扉の一部が破損した細長い木片を両手に取って膝を上げてバリバリと折っていました。でもすごく複雑な表情で(笑)会場に拍手が起ったのは言うまでもありませんが。翌々日の舞台を拝見した時、心無しか〜扉の扱いがソフトになっているような気がしたのは単なる気のせいでしょうか?きっと彼は楽日までに電話も壊すんじゃないかな…嘘ですけどね。最後まで怪我などのアクシデントが無いようにお祈りしております。
 
 
 
g-mark.gif「大竹しのぶコンサート〜BuBu〜」ゲスト(2001.11.27)
 
 嘘でしょう?と誰もが思ったんじゃないかなと(笑)あの堤真一氏が大竹しのぶさんのコンサートの初日にゲスト出演されました。行かない訳にはいかんぜよとシアターコクーンへ。かなり大人の方々が集う落ち着いた雰囲気の中、しのぶさんのコンサート“BuBu”は静かに幕を開けました。伸びやかな歌声は耳に心地よくて…しのぶさんて本当に歌うことがお好きなんだなと思いました。二人のお子様の笑えるエピソードや、大女優らしからぬ?ポワ〜ンとした優しい空気がそこはかとなく漂っていました。そして中盤、ゲストの登場は「堤くんっ!」の掛声と共に舞台中央の奥からバンドの軽快なリズムに乗って楽しげにステップを踏みながら堤真一さん登場。いきなり何?と思っているとしのぶさんから「もっとかっこよく登場してくれないと〜ちゃらけちゃダメだよ〜」でやり直し。今度はかなり気取って颯爽と歩いては来たけれど…もうええ!と照れながら、最初から頑張っちゃったぞという感じ。視力が2.0なので客席が見え過ぎて緊張しますねという堤さんに「よく来てくれました。本当は嫌だったんでしょう?」「本当に嫌やった」ってオイオイ。しのぶさん曰く、今日はかっこよくて普段と全然違う(笑)前はすごく貧乏だったのにいつの間に…ちなみに彼はグレーのタイトなスーツで決めてました。「金やね!」と堤さん。かっこいいと思っている人が多いんだからそんなこと言っちゃダメだよのお言葉。お二人の初共演はドラマ『明日』('88 NTV系)富田靖子さんのお婿さん役で義理のお姉さん役のしのぶさんとの共演シーンは少なかったものの、緊張して廊下で正座をしていた堤さんにしのぶさんが「足を崩したら〜」と声を掛けてくれたんだけど余計に緊張してしまったお話とか、あれは気を使って言ってあげたのに〜とまるで漫才のようなお二人のバトルが始まっていました。
 
 元々JACにいたんだからバック転とかしてみてよに期待の大拍手。堤さんスッと立ち上がったかと思うと「できへん!12、3年やってないですから…腕立ても5回位しかできへん」フェイントにガッカリ〜「だってJACだったんでしょう?じゃあ何ができるの?何しに来たの?」バック転できない人を攻めること。初日のゲストが決まらなくて、同じ事務所やから来ただけに大ウケ。新番組の撮影所からいらしたという堤さん。来年から深津絵里さんと出演されるドラマのタイトルは今日決まったばかりの『恋ノチカラ』(1月10日22時〜CX系)面白そうですか?に素っ気なく「やってみないとわからない」堤真一だ〜(笑)私を見習ってバラエティとか出た方がいいよとしのぶさん。SMAPの中居くんとの番組『金スマ』(TBS系)に触れて、若い女の子100人と他の共演者がいるのに何故か?しのぶさんの所にだけ専用のライトがあるそうですぅ「BuBuって何?」「しのだから…」会話にちょっと間があるとすかさず「帰っていい?」(笑)やれることは何もないと開き直るゲストに、じゃあ人生について語ろうよとしのぶさん「あのさ…どうなの?」鋭い突っ込みに歓声と拍手が起こる中「そっちはどう?」と切り返す堤さん。37歳独身に結婚観を尋ねるしのぶさん。結婚したくないの?ちょっとはしたい?淋しいって思う時ありません?洗濯してほしいとか?…堤さんも子供みたいにちょっとムキになって「別に!全然!洗濯大好き!」などと答えていました。貧乏暮らしが長かったから洗濯、掃除、料理も全然大丈夫って…またうわ言のように「早く帰りたい」(笑)「ちゃんと皆の心に残る言葉とか残していってよ〜これからどんな恋愛をしたいとか…ひとつ終った所でみたいな」(爆)流石の堤さんも苦笑い。でもいい恋愛はした方がいいよとしのぶさん「もっと記念になるようなこと言ってよ!」「帰る!」このトーク何なんでしょう?
 
 来年、蜷川幸雄さん演出の舞台『欲望という名の電車』に出演されるお二人。面白そうですよね?とリアクションを求められても、どうだろう…これ堤さん流の照れなんですよね?でもしのぶさんは呆れて「じゃあどうして受けたの?面白いって思うものがあるからやるんでしょう?もっと人生前向きに生きないとダメだよ」と言われておりました。歌は小さい時からお好きだったというしのぶさん。何気に「今もちっちゃい…」と堤さんの茶々「歌とか歌わないの?」堤さんすごい音痴でダメなんだそうです。昔、よく仕事でスナックとかに行って(“スナック”という死語に会場爆笑)そういう所に連れて行かれて、酔っ払ったオッサンとかに歌え〜とか言われてブチ切れて殴りましたもんて。堤さんが嫌〜な気持になるというトラウマなエピソードが語られました。カラオケでもあんまりヒドイと笑えるんだけど僕が歌うと…今のは無かったことにしようという空気になってしまう云々。子供の頃、ヘッドホンをしたまま気持よく歌っていたらお姉ちゃんにうるさい!と言われて???ある時、彼はお父様が同じようにヘッドホンをしてカラオケの練習をしているのを聞いて愕然…すごいへったくそでこれやったんやと(笑)それからもうダメなんだそうです。それでも何かを歌わそうと唱歌とか♪み〜かん〜のは〜なが〜とかしのぶさんが次々口ずさんでみせるんだけど、ちっとも食い付いてくれなくて「つまんないじゃん!でも舞台の時は本当に生き生きしてますよね?」「テレビとかダメなんだよね…」またまたしのぶさん曰く、堤真一を知らない人だってまだいる訳だし、テレビだって瞬間を一生懸命作っている訳だから、テレビのお仕事もドンドンした方がいいと思うよって。昔は週刊誌とかで若手俳優Aだったのに、今はちゃんと堤真一になったんだからって(笑)坼〜 (T-T)「俺、説教されに来たんかな?…ハイ、頑張ります!」堤さんのお母さんがすごくいい人で、彼は愛されて育っているからちょっと甘い所があるのとか、お姉さんが甲子園でウグイス嬢をされていたお話とか、立派になって頑張るんだよなんて(笑)終始、懇々と諭されている弟みたいな感じでした。最後に来年の5月の舞台に是非来てください!さよなら!なんてとっとと帰ろうとしている根性の堤さんに早いよね〜とブーイング。きちっとやりなよと言われて上手下手にキチンと向かってお辞儀をしてから「この後も頑張ってください!」と客席に降りて上手側の出口から退場。もう怒濤の15分ちょっとでした。堤さんが帰られた後のしのぶさんが傑作で「子供叱っているみたいだった…」でも本当に彼はいいお母さんとお姉さんと愛されて育って、素朴で、ずっと変わらないキレイな目をしていて…これからも頑張ってほしいなと。来てもらったから褒めている訳じゃないんですけど…暖かいコメントをしてくださったしのぶさん。本当に堤真一さんは何をしに来たんだろう?という印象も否めませんでしたが(爆)すごく楽しませて頂きました。下心見え見えで伺ったコンサートでしたが、しのぶさんの歌われた中で私が最も印象に残ったのが「ヨイトマケの唄」で、涙がジワ〜ッと浮かんでくるようなやばっの世界に入り込んでしまったり、歌詞を間違えたことを自分から申告しちゃうし…お人柄が滲み出るような、とても穏やかな気持になれる素敵なコンサートでした。
 
 
 
g-mark.gif「贋作・桜の森の満開の下」楽日(2001.6.30)
 
 いやあ、終わった…気持のいい虚脱感と共に、最前列上手の私の上にも桜の花びらが舞い降りてきました。こ〜んな夢に耳男が出てきそうなお席を譲ってくださった優しいH.Kさんに心から感謝します。ありがとうございました。長かった公演にも必ずやってくる千秋楽。どうしても俯瞰で桜を拝見したくて、始発に乗って当日券Z席Get!なんて久々の荒技まで体験させてくれた『贋作・桜の森の満開の下』名作故に、前作と比べられる過去からの呪縛は再演ものの宿命でも、それはある意味とてもつまらないことなのかもしれない。私の中では完全にリセット。このカンパニーでしか表現できなかった新しい桜の森を堪能させて頂きました。突出したキャラクターではないけれど、とてもストレートな等身大の耳男でした。楽日の幸せ者状態。舞台の役者が動くとその微妙な振動が重くずっしりと全身に伝わってくるのです。比喩じゃなくて(笑)近い近いこんなに近い。ベニサン・ピットな心で、遮るものが何もない視線→直、舞台な贅沢を味わっていました。例えば、ヒダの王の野田氏がリンボー♪リンボー♪なんてやっている姿を目で追うと…あ〜もうオジイちゃんたら〜と野田氏を慈しむような(笑)満面の笑みを浮かべている反対の下手側最前列の人々が自然と視界の中に入ってきたりなんかして、私もきっとあんな幸せそうな顔で舞台を眺めているんだろうなとしみじみ。心地良く見慣れて親しみさえ感じる数々の場面。でも不思議と今日でラストの淋しさは感じなかったのでした。無意識のうちにエンドレスの感覚で、涯てがない壮大なスケール感の中にいつまでも酔いしれていたかったのだと思います。
 
 ヒダの王があれほど欲しい!と宣っていた(笑)最後のカーテンコールの嵐も本当に何回あったのか覚えていないくらい?それだけ夢中で拍手をする人化していました。殆どの人がスタンディングで彼らの最後の舞台を讃えていた感動的な空間でした。見渡す一面のピンク、まるで桜の花びらの絨毯の上を、遥か後方から駆け抜けてくる、最初の人は誰?誰?…たまらなく無邪気な子供の鬼ごっこのようでもあり、長い舞台を終えた達成感と光る汗でキラキラしている出演者の皆さんの笑顔がとても素敵でした。出演者、スタッフの皆様、本当にお疲れ様でした。もっと何度も観たいな…自然とそうつぶやいてしまった舞台でした。暫くは私もゲル状になって、鬼の道行きを眺めながら、美しい桜の森の中でじいっとしていたい気分です。 Review
 
 
 
g-mark.gif「贋作・桜の森の満開の下」初日(2001.6.1)
 
 かつて野田秀樹氏が主催していた劇団夢の遊眠社。好きで好きでよく足を運んだものです。遊眠社の“眠”を“民”なんて間違えているのを見つけると小姑みたいに腹が立つのは何故だろう?(笑)今回、再々演される『贋作・桜の森の満開の下』は初演も再演も拝見しているので、懐かしいな〜というノスタルジーも含み、野田氏本人が演じた“耳男”を堤さん、毬谷友子さんの強烈過ぎる残像がある“夜長姫”を深津さんで再構築という…もう恥ずかしいくらい“不朽の名作”とか“野田秀樹の代表作”なんて賛辞を浴びまくっている作品なだけに期待度は大。当時、野田氏は著作の略歴の中で自ら敬愛する坂口安吾の生まれ変わりであると宣っていたくらいで…満開の桜の舞う圧倒的なビジュアルと主軸にNODA・MAP常連組を揃えた、あまりに安全パイだろうと突っ込みを入れたくなってしまった卑怯なキャスティングを楽しみにしていました。東京・初台の新国立劇場中劇場は座席数の割にはとても奥行きのある(何と36m!)広い舞台空間という印象。今回は傾斜のある八百屋舞台ではなく、広さを生かしたフラットなまま。客席の壁まで覆われた布に描かれている桃色な桜の木々のPOPなこと。たまらなく懐かしいのに得体の知れない場所に迷い込んでしまったかのような、9年振りの桜の森が静かに幕を開けました。(ネタバレあり要注意!)【物語】ヒダの匠の弟子、耳男(堤真一)は過って師匠を殺害してしまうが、ヒダの王家の使いに仏像彫りの名人と間違えられ連れ去られてしまう。同じく旅人の匠を襲って殺害した山賊のマナコ(古田新太)、素性を明かさず、後の天武天皇となるオオアマ(入江雅人)の3人を集めたヒダの王(野田秀樹)は彼らを前にある命令を下す。王家の2人の姫、夜長姫(深津絵里)と早寝姫(京野ことみ)の身を護るためのミホトケの仏像を3年の後に彫り上げること。それぞれの部屋で仕事を始めようとする彼らだったが、三人三様の思惑が交差して創作は一向に進まない様子。やがて約束の年月が過ぎ、出来上がった仏像を披露することとなるのだが…。
 
 めくるめく野田ワールドの中で描かれているのは遥か古代国家のク二作りにまつわる権力闘争と人間と鬼が共存する不思議な世界。○○の鬼と呼ばれるように“鬼”とその道を極めた名人は=であることにふと気付く。例)巨人の川相選手はバントの鬼。屈託のないあどけなさと残酷な魔性を合せ持った夜長姫に翻弄される耳男。ファム・ファタール(運命の女)にキリキリ舞いさせられる構図がここにも。人は美しくて空恐ろしいものに惹かれるものです。舞台では声に魅力のある役者が際立つようで、深津さんの夜長姫の発する高音と鬼女と化した時の低音のギャップ、毬谷さんを彷佛とさせる鬼気迫る熱演はちょっと引いてしまったくらい恐いものがありました。単なるおやじギャグじゃんと言われつつある?言葉遊びも野田芝居を楽しむ要素のひとつ。相変わらず野田氏は台詞ともアドリブとも判断しかねる怪演を炸裂させています。見ているだけでオモチャなオジイちゃん化している。初日の段階では知る術もありませんでしたが、数ある日替わりネタに至っては何が飛び出してくるのか?古田新太氏激似の小学校1年生の女の子に買ってやって欲しいものシリーズとか(爆)流石に俗物マナコ、入江オオアマの台詞にはツボ多し。アンサンブル組にも曲者が!大倉孝二さんと荒川良々さんは反則でしょ?(笑)芸達者な犬山犬子さんはじめ、鬼さんチームのおとぼけキャラはいい味出しています。衣裳はひびのこづえさん。鮮やかな色の使い方と奇抜なデザインは独特の世界です。どうしても気になっていたのは耳男のビジュアル。堤には華があるからと野田氏の御墨付きを頂いても、どんな耳男に会えるのかドキドキしながら…大きなお耳〜はちょっとリアルでお似合いでした。オレンジ色の三角リュックを背負った後姿がめちゃめちゃ可愛くて(笑)クルクル変わるシャープでコミカルな動き。おどおどしながら流れのままに身を任せている耳男は不死身のヒーローでもなければ、権力者でもない。成す術もなく耳を切り落とされても…満開の桜の下で永遠の別れがやってきても…人間の弱さを全身に携えて、安堵している至福の表情が、彼の涙よりも私には哀しかった。あれから「いやあ、まいった、まいった」が頭から離れなくなりました。完成度の高い、何度でも観たいと純粋に思える舞台でした。カーテンコールは体力勝負のダッシュの嵐!舞台後方から全力疾走で何度も何度も走ってくる出演者の皆さんに惜しみない拍手が送られるのは言うまでもありません。流石に何本も続くと、ずるして袖からひょっこり登場してくるのは…誰でしょう?
 
 
 
g-mark.gif「野獣郎見参〜Beast is Red」楽日(2001.3.31)
 
 都心では桜の花が満開なのに雨まじりの雪が降った寒い日。渋谷から宮益坂を抜けて青山劇場まで、のんびり歩くのが好きでした。名残り惜しいような少々淋しい気持も半分、INOUE KABUKI『野獣郎見参〜Beast is Red』東京公演楽日を拝見しました。戯曲は迷わず自分のものにしたくせに…当初、サントラ盤CD購入の予定はなかったのですが(失礼!)ある日突然、鼻歌で♪我が名はせいめい、あべのせいめ〜い♪とごく自然に口ずさんでしまった時…やばっ完全に染まっている。清明くんの霊力に吸い寄せられるかのように(笑)購入させて頂きました。コアなリピーターの方々も多くいらっしゃるであろう新感線の世界に馴染んだ馴染んだ。虎継さんの大嘘とか(爆)日替わりネタにしっかり反応できるようになっている自分にある種の感動を覚えていました。日毎におバカ度が増して?パワーアップしている野獣郎を堪能できて大満足でした。明らかに台詞の間とか微妙に溜めて客席の反応を楽しんでいるような余裕が感じられて…こちらも微妙に安心して?笑えるのが可笑しかった。おまえもか〜っというように不死身の輩が次から次へと登場してエンドレスのようなチャンバラの嵐。冷静に考えると何でもあり?のものすごい御都合主義なんだけど(笑)ちょっと長いなと感じていた上演時間の感覚もほとんど気にならなくなっていたし、よりダークな展開に雪崩れ込んで行く後半はあっという間でした。奥行きのある舞台が効果的に使われた終幕。野獣郎と美泥が溢れ出した魑魅魍魎(ちみもうりょうっていったい何画?)に立ち向かって行くスローモーション。その連鎖がどうしようもなく切なくて…でも勇気を与えてくれているみたいに凛として晴れ晴れしくて…私の中の野獣郎がこれで終わったんだな〜と呆然と舞台を見つめておりました。噂のカーテンコール!楽日のそれはやはり特別のものがあるようで、3回にも及んだ出演者の皆さんの登場は本当に感動的でした。最高のカンパニーで作り上げた最高の舞台を楽しませて頂きました。何度も何度も鳴り止まない拍手の中…3回目、舞台上にポツンと堤真一さんが一人。あれ?皆はどうした?とほんの一瞬戸惑いながら照れている素の野獣郎が傑作でした。オフィシャルサイトのQT MOVIEで東京千秋楽のカーテンコールの完全版がupされているのに驚き!(T-T) 夜中にじわじわと涙ぐんでいる怪しい人になっていました。あの至福の時間がそのまんま凝縮されているんだもの。画期的です。思い出をありがとう状態でした。…大阪公演で燃え尽きるまで、まだまだ『野獣郎見参〜Beast is Red』は進化し続けるのでしょうね? Review
 
 
 
g-mark.gif「野獣郎見参〜Beast is Red」不死身の男、物怪野獣郎(2001.3.12)
 
 共演の新感線の看板役者、古田新太さん曰く「堤の野獣郎はかっこいいです!」…激しい立ち回り、こんなに殺陣の連続する舞台を観たことはなかったし、もうこれでもかのカキ〜ン、バサッバサッの効果音の気持いいこと。たまにずれちゃったりするのも初日だから許そう(笑)東京・青山劇場で無事に幕を開けたINOUE KABUKI『野獣郎見参〜Beast is Red』生の劇団☆新感線の洗礼を受けた記念すべき日、お初の舞台を拝見する緊張感はたまらなく私を幸せにしてくれました。やっぱり舞台はいいですね?流石にキャパ1200は広いな〜と感じる。こんな大きさで芝居を観るのも久しぶりなので。一際目立つ舞台上の緞帳に大きく描かれた睨みを利かす“堤野獣郎”(チラシにも使われているあのすごい画像処理してあるやつ)うわっお金掛けてる〜東宝芸能他提携〜としみじみ眺めながら妙な感動をしておりました。アレは公演が終わったらどうするんだろうなんてかなり余計なことを考えていました。2幕構成で20分休憩を挟んだ3時間にも及ぶ怒濤の上演時間(以下注意!ネタばれってるし〜宣言しときますので)物語はこう…魔界の闇から京の都を救ったスーパースター☆!奇跡の陰陽師、安倍清明。彼の死後からおよそ250年、時は応仁。壮大な清明の霊力を封じた“清明塚”が何者かによって破壊された時、魔物たちが甦り、京の町は妖怪の蔓延る怨念に満ちた戦乱の世と化していた。清明の末裔である安倍家総師、安倍西門(松井誠)は物怪野獣郎(堤真一)と謎の魔事師、芥蛮嶽(古田新太)に魔界の首領、道満王の討伐を命じる。野獣郎の印象的な決め台詞にもなっている…男は殺す。女は犯す。金に汚く、己に甘く、傍若無人の物怪野獣郎ここに見参!命のいらねえやつはかかってきやがれぃ!(←ちょっと巻舌)“両刃刀”を自在に操るめっぽう強い剣の達人。しっか〜し、異常に短気で単純おバカ系(笑)再会した最愛の人、美泥(高橋由美子)には見向きもされず、彼女は渋いサングラスの似合うお方?!蛮嶽の妻となっていた。夫の蛮嶽は安倍清明が遺した永遠の命を得るという秘宝“清明蟲”を手にこの世を牛耳る野心を持っていたが…。黄金の甲冑に身を包んだ道満王の正体は?“清明蟲”にまつわる血の真実とは?半妖(妖怪と人間のハーフ)の美泥が背負った哀しい運命、野獣郎に斬られて死んだ筈の母親との関係が次第に明らかになって…。噂の大音響のロックのビート。ミュージカル劇団じゃないですよね?あまりの音量に音が割れているような気がして、せっかくの歌詞が聴き取り難い部分があったのが少々残念でした。お笑いネタ何気に満載。特殊効果の手動マトリックス?も♪昆布昆布昆布つゆの雁之助はんの白ムチ呼ばわりも…しょうもないネタなんだけど、これも新感線のお約束?おポンチなノリに慣れるまでそんなに時間はかからなかったし(笑)照明の美しさといい、派手派手が気持のいい視覚的効果。衣装の豪華さも(特に妖かしの皆様方)目を見張りました。妖怪、婆娑羅鬼(手塚とおる)の本当に人間を食ってそうなハンニバルな妖しい悪玉ぶり…でもちょっと垣間見えるトホホな情けなさも好き好き手塚さん。妖艶な女妖怪、荊鬼(前田美波里)天下のミュージカル女優登場!に舞台上の空気が引き締まる小気味良さがありました。美波里さんは男前。美泥の歌唱力も特筆すべき美しい伸びのあるお声。もっと小悪魔的な謎めいた美泥を想像していたのですが…小柄な高橋さん。惚れた蛮嶽を一途に慕い、キャラ揃いの手下どもを従える気丈な姉御、半妖として生まれた業に苦悩する美泥を精一杯好演されていたと思います。芥蛮嶽、風格さえも感じさせる古田新太大先生(笑)豹変する蛮嶽の二面性を見事に演じ分ける怪演。新感線初見参ごときがやいのやいの語る次元ではないような気がしました。そして、堤真一さんが挑んだ物怪野獣郎!野卑でおバカな無頼派キャラは不思議なほど板に着いていて、かのJAC出身にとって本格的アクションは水を得た魚の如く?不死身の男がニタ〜ッと不適な笑みを浮かべながら楽しそうに敵を叩っ斬る!オープニングから展開する幻想的且つ想像を超えたスピーディーなキレのある立ち回りは圧巻。何だか嬉しくて自然とにやけている自分に気付く。のっけから思う存分やってくれちゃって…血が騒ぐってこんな感じでしょうか?ん〜確かにJACの血が流れている(笑)tptでもNODA・MAPでもお目にかかれないワイルドな愛すべきキャラクターに釘付けでした。正直、ちょっと長いけれど…エンターテインメントに撤している最高に楽しめる舞台だと思います。カーテンコールでの笑顔と沢山の拍手に答えて高〜く掲げた腕に、またまた新しい堤真一さんに出会えてしまったと…達成感のあるいい感じの疲労に酔いしれていました。
 
 脇をどどっと固めている最強の劇団☆新感線の方々、鍛え抜かれた運動能力に感激。舞台は日々進化しているようで、初日から過ぎること約1週間後の2度目の観劇。あれ?野獣郎の御髪が…確か黒い地肌に明るい金髪のカツラだったのに〜くっ黒髪になっている…更正したのかな?(笑)芝居の流れが落ち着いてとてもスムーズ。立ち回りのスピードはより速さを増しているような…初見では気付かなかったような細部まで目が行くようになる贅沢さを味わっていました。限界まで針を振り切っているような体力勝負の舞台。これ1日2回公演の日はキツイだろうな〜とか、勢い余って刀が折れてしまうアクシデントにドキドキしたり、出演者の皆さんが最後の最後まで怪我のないように祈るばかりです。
 
 
 
g-mark.gif「やまとなでしこ」恋する魚屋さん(2000.10.9)
 
 体育の日、祝日、早朝から雨。お目当てがあり早起きしてCX「めざましテレビ」を観ている私…出た!朝っぱらから生ゲストで松嶋菜々子さんと並んで堤真一さんが番宣している。こっこんな時代がやってくるなんて(笑)何を言い出してくれるのやら?連ドラの主演は大変なんだな〜と思いながら、続けて放送された「とくダネ!」の中の“週刊人物学習帳”なるコーナーにちょっとドキドキ。懐かしのキリンラガーのCMがほんの少し流れたりしてもう、うわ〜の世界でした。堤さんのインタビュー映像、「ピュア」の栗原プロデューサーやSABU監督のコメントまで登場、これって本格的な堤真一特集なのだ!と歓喜していました。何気なく離れた場所で観ていた母が「…真田さんの付き人だったの?」なんてつぶやく。すかさず「そうだよ」とちょっと自慢気に答える私。広之さんの前だと今だに付き人根性が抜けないというお話に大ウケ。そんな弱点があったんだ。いつか、お二人の夢の共演を密かに願っているのですが、無理かな?(笑)お約束のようにお昼の「笑っていいとも!」のエンディングにも松嶋さんと出演されて…役柄が貧乏なことを説明しているのが可笑しかった。タモリさんたちと最後のコール「いいともっ!」もちゃんとされていましたね?K-1の延長もなく、PM9:00に始まった新ドラマ。気楽に観られそうなラブコメの王道でまずはひと安心。電飾をキラキラさせちゃうところなんて往年の月9(笑)脇を固める筧利夫さん、西村雅彦さんの濃さもご愛敬で楽しかったです。お金持ちGet!にパワーみなぎる桜子と恋愛に臆病で不器用な欧介。やっぱり愛はお金じゃない!というかなり使い古された真実のテーマに向かって、久々に月9にハマってみたいと思いました。恋する魚屋さんに明るい未来があることを祈って。
 
 
 
g-mark.gif「Naked-裸」楽日(2000.7.16)
 
 梅雨明け目前のうだるような暑さの中、『Naked-裸』(tpt Vol.31)の楽日へ。大阪エイトスタジオ公演を経て、ベニサン・ピットに戻ってきてくれた七夕の夜は台風接近で大雨でした。早いものでもう千秋楽。ヒロイン、エルシリアを囲むこの翻訳劇が確実に変化したのを実感。ひたすら緊迫感だけが目立っていた頃に比べると流れのスムーズさといい、あれほど笑いのない硬質な芝居と思い込んでいたのに…舞台は生物。同じ舞台なんて一つとして在り得ないんですね?新聞記者アルフレードの山本亨さんと元海軍大尉フランコの岡本健一さんとの何気ないやり取りや、シリアス極まるグロッティ領事の堤真一さんのふとした台詞や仕草に思いがけず笑いが起こっていたのに、胸が痛くなるような心の葛藤を描いた芝居がちょっと和めたような?…気持が張り詰めるだけ張り詰めた中で何となく救いを求めてホッとできたような気がしました。クライマックスで登場した幾つもの連なる白い人型がエルシリアのように裸で死んでいった名もなき人々の墓標に見えました。とにかく繊細で怖いくらい無防備なガラスの女性を演じ切った中嶋朋子さんが圧巻。あのこれでもかと哀愁を秘めた音楽と共に心に残りそうな気がします。カーテンコール。毎回、彼女を挟んで岡本健一さんと目を合わせるとニッコリ微笑む堤真一さんが印象的でした。皆様、本当にお疲れ様でした。おっと…tpt次回作は『地獄のオルフェ−Orpheus Descending−』になっている事実。またこれも楽しみにしたいと思います。折りから飛び込んできた堤さんの所属事務所移籍のNEWS。俳優・堤真一氏は常に前進あるのみなんだろうなと思い知らされるような気持のいい衝撃。次の新たなる活動、期待しています。
 
 
 
g-mark.gif「Naked-裸」初日(2000.6.1)
 
 『Naked-裸』(tpt Vol.31)の初日を拝見してきました。今シーズン初のtpt作品はイタリアの劇作家、ルイジ・ピランデッロの戯曲。大好きなフランスの女優、ジュリエット・ビノシュ主演で1998年にロンドンで上演された舞台というのでとても興味がありました。デヴィッド・ルヴォー氏による演出で日本初演の主役、エルシリアを演じるのは中嶋朋子さん。もうすっかりtptの常連組になられましたね?堤真一さん、山本亨さん、岡本健一さん…tptではお馴染みの出演者の顔触れに心踊りながら、同時に難しい戯曲だろうなと少々覚悟もしながらベニサン・ピットへ。舞台装置は至ってシンプル。黒い壁に白いドアと白い窓枠の小説家の部屋。白いオットマン、机や椅子、束ねられた新聞や本が無造作に積まれています。物語は…スミルナ駐在のグロッティ領事(堤真一)の赤ん坊が転落事故で死亡。領事の妻は事件当日、外出中だったベビーシッターのエルシリア(中嶋朋子)に責任を問い、彼女を解雇してしまう。職を失ったエルシリアは恋人の元海軍大尉、フランコ(岡本健一)に婚約者がいた事実をも知る。失意の中、公園で服毒自殺を計ったが一命をとりとめる。不当解雇、恋人の裏切り…同情的に報じられた新聞記事で彼女に興味を持った小説家、ルドヴィコ(三木敏彦)は身寄りのない彼女を自分の家に招き入れる。時の人となった悲劇の女性に興味津々の大家、オノリア(大森暁美)とメイドのエマ(植野葉子)によって手厚く介抱されるエルシリア。彼女の告白のままに記事を書いた新聞記者、アルフレード(山本亨)。自分の裏切りが彼女を自殺未遂に追い遣ったと許しを乞うフランコ。記事の訂正を新聞社に激しく求め、娘の事故死の真実を唯一彼女と共有しているグロッティ領事。彼女に関わり、彼女に翻弄される男たちの赤裸々な言い分。対峙するエルシリアの言葉は虚偽なのか?真実なのか?美しいドレスを着飾るようにしがらみをまといながら、一人の女性が自己の存在理由を失い、裸の欲望に打ちのめされていく過程が濃密に描かれています。…相変わらずルヴォー氏演出、重いです。ちょっと気軽に観に行きましょうなんて次元だと痛い目に(そこまで言うか!?)彼女の精神的苦痛を訴える台詞、息詰まるそれぞれの会話を緊迫感の中で聞き耳を立てるように集中する15分の休憩を挟んだ約2時間。パンフレットの中のルヴォー氏による…少なくとも彼女を欲望の対象とした三人の男たちということから、ある種、彼らにとってエルシリアはファム・ファタール(運命の女)として存在し…まだ記憶に新しい過去の演出作品『ルル』(tpt Vol.25)と通じるものがあるのか無いのか?演出上で使用された見覚えのある映像から(笑)そんなことも考え込んでいました。
 
 思わせぶりな登場の仕方のグロッティ領事(笑)少なくとも開演から1時間以上、彼の台詞を聞くことはありません。冒頭、影のように登場した彼の髪型が気になって気になって?黒髪!をキッチリとシチサンに分けてディップで固めてスーツをまとった若きエグゼクティブという感じ。上着を脱いだ白いYシャツ姿にサスペンダーだと、堤氏の見事な撫で肩がより強調されて?あの髪型だし…お顔の小さい方なので、暗闇だと矢印みたいだなとか思ったりして(笑)…コレ爆弾発言だったらお許しください。タイトルロールとして主役を演じる時とも違う、ヒロインを支えるクセのある役の堤真一さんを堪能できる贅沢な時間を過ごせました。岡本健一さんとは1995年の『チェンジリング』(tpt Vol.9)以来の共演。tpt次回作の予定になっているボブ・アッカーマン氏演出の『蜘蛛女のキス』1991年松竹製作の初演版は村井国夫さんと岡本健一さんの二人芝居でした。残念ながら拝見できなかった悔しさもあってよ〜く覚えております。tptの配役はどうなるのか?今から楽しみです。
 
 終演後のカーテンコール、堤さんに呼ばれてルヴォー氏も舞台に登場。華奢な中嶋さんをギュッと抱擁して初日の演技を賛えている姿が微笑ましかったです。復活したお楽しみの初日パーティー。ロビーで友人に「野田地図の『カノン』はどうだった?」と何気なく聞かれて、ナンダカンダと答えながらふと横を見ると…先日の『カノン』に出演されていた大森博さんと春海四方さんが、松浦佐知子さんといらしたりするシチュエーション(笑)いつも舞台で拝見している役者さんたちと真近に接することができる魅惑の初日パーティーです。沢山の人で溢れるベニサン・ピットの狭いロビー。暫くすると私服に着替えた出演者の方々も続々とお目見えしていました。缶ビールが配られ、恒例のルヴォー氏の初日のご挨拶のあと皆でプシュっと乾杯っ!!tptはもうこれがあるから…至福の感動に浸っておりました。また新しい舞台が始まりました。初日に来られた満足感で満たされたビールの美味しい夜でした。 Review
 
 
 
g-mark.gif「MONDAY」SABU監督、FM番組に御出演!(2000.5.10)
 
 TOKYO-FMの恵俊影さんの番組にSABU監督がゲスト出演されました。まず最初に先日、堤真一さんと出演された恵さんもレギュラーのTBS「王様のブランチ」のことに触れられていました。各雑誌にも数多くプロモーションで御登場のSABU監督。思いがけず、聴き慣れたFM局でとても楽しいお話が伺えました。
 
め「恵俊影のDear Friends、今日はSABU監督をゲストにお迎えしております。“サブ”っていう響きが(笑)非常に男っぽいものを想像してしまう訳ですけれど、あの元々役者をやられてたんですか?」
さ「あっそうです。あの元々俺も音楽がしたかったんですけど、バンドはずっと田舎でやってたんです。で、自主製作でレコードを作ったりとか…で、東京に行くぞ!と言ったら皆、俺達は行かないって言われてそれで一人で上京してきたんです。それでまずそういう仲間を見つけなきゃいけないとそのレコードを持って事務所を探しに行ったんですよ。最初に尋ねて行った事務所が俳優の事務所だったのを俺分かってなくて歌わせろって行ったんですよ、勢いよく…まだ若かったし、ガキなんで、うちは俳優の事務所ですと言われて、あっそうかって、まっ何か電話が掛かってきて、俳優にならないですかって言われて、まっ何でもいいやって(笑)」
め「自主製作は置いて、まっ何でもいいからやってみるかと?」
さ「そうですね、一人だったんで、どうしようもなかったんで。」
め「で、映画とかにも出られたんですよね。」
さ「ハイ、そうですね、最初は『そろばんずく』っていう森田芳光さんの…」
め「ハイ!とんねるずさんが主役の…」
さ「そうです。あっその前にCM は2本ほどちょこっと…」
め「やってるじゃないですか?監督!」
さ「(笑)それは全部オーディションで。」
め「調子いいっすね?僕らTV出るまでとか、CM出るまで大変ですもん。」
さ「あ〜でも本来やりたいと思っているものではなかったです。」
め「それで転身して?」
さ「そうですね。」
め「最初っから、監督をやろうと思ったんですか?」
さ「いや…まず、あの〜結構ねその当時も日本映画はどうだとか皆、プロデューサーも監督さん達も皆で一緒になって愚痴っているんですね、で〜ねえ?あのじゃあ何とかしろよって思うんですけど誰もしないんでじゃあ俺も1回書いてみようと思って、それを家でま〜嫁さんにかますと書け!っと言われてあくる日になったら、何か紙と鉛筆をド〜ン置かれたんでしょうがなしに始めたんです。」
め「全部絵コンテ、脚本を書いて…」
さ「ハイ。そうです。」
め「で、それを持っていったんですか?どこに持って行くんですか?」
さ「それはたまたまその頃やってたVシネマのプロデューサーに話してたら、是非っと言われて、読みたいっと言われたんで、読んでもらったら面白いからやろやろって話に…」
め「じゃあこれ映画にしようよって?」
さ「え〜結構、トントン拍子で。」
め「監督もう、全部トントン拍子じゃないですか?」
さ「でもそこまで俺、11年掛かってますよ。」
め「あっ今、かい摘んで話たんですね(笑)」
さ「そうです。(笑)」
め「別に今日決まって、明日やろうって話じゃない訳ですね?」
さ「そうですね。」
め「なるほど。まっそういう役者さん…音楽を目指し、役者になり、そして監督へと…そして監督になって今回が4作目なんですけれども、『MONDAY』という、僕も観さして頂きまして本当に面白いと思うんですよ、あのいわゆる日本の映画のタッチと全然違って、何て言うんですかね…すごくかっこいいなっていう…かっこよかったし〜ストーリーっていうのは簡単に言うと、月曜日の朝にホテルの一室で目覚める一人の男がいったいどうしてここにいるんだろう?ということをこう懸命に思い出そうとして少しずつ記憶の糸をたどっていくんですよね?すると自分がやってしまったこととかあっそうなのかなと思いながらどんどんたどっていって最後にある結末がやってくるとか…そういうお話なんですけれども、監督はこう、この話っていうのをどういう時に考え付いたんですか?」
さ「あ〜まず、え〜っとね最初、俺『弾丸ランナー』っていうのがまず走る映画なんですけど、段々走ってるんですけど最初から最後まで。で、『ポストマン・ブルース』っていうのがそこから思い付いた今度は自転車で走ってるんです、段々。結構そういうあの単館ものというか、低予算ものはその切り口が大事なんですね?そこがポイントになる訳で、なんで今回はとにかくすごく迷ってて、思い出すっていうのがまずあまり日本映画じゃないですしね、記憶をたどっていくっていうのが何か面白そうな気がして…で〜それってよくあの事故に合って記憶喪失なんていうのがよくドラマチックで映画チックなんですけど、それはもうあり過ぎますからね、すごく単純なこととしてそういう酔っ払いっていうのが、酔っ払いって記憶ないって周り一杯いますしね、結構、あの俺映画ヨーロッパとかで公開することが多いんですけど、いずれも世界中どこでも酔っ払いはいましたからね、これは行けるなと。何かねそんな大作じゃないですし、低予算っていう所でやっぱりそういうチープな話の方が、身近な話の方があの転がり方が大きくなると面白いですからね、酔っ払いが本当は日本を変えてしまうというぐらいの最初は話を考えていたんですけど…」
め「あっそうなんですか…え〜じゃあこの辺で曲を1曲挟んでまだまだお話を伺っていきたいと思うんですが、え〜オリジナルサウンドトラックの中から1曲紹介して頂きたいんですけれど監督、何にしましょうかね?」
さ「じゃあ“Twist & shout”を」(〜♪曲が流れる)
め「さあ、今日のゲスト、SABU監督の最新作『MONDAY』の主題歌“Twist & shout”をお送りしておりますけれども、僕はねでもね、あの〜監督の細かい所がすごい好きなんですよね、これは大丈夫かな言っても?あのオープニングの例えばお葬式のくだりとか、それから転換の早さとかすごい好きで、そのBARに入って中での出来事の転換の早さだとか…個人的にすごく好きだったのが松重さんという役者さんの笑顔がすごく僕は(SABU監督の笑い声)撃たれる前の笑顔がすごく好きだったり、それからこう野田秀樹さんとのシーンとか、色んな人がね〜結構、隠れキャラみたいに出てるんですよね?」
さ「あ〜そうですね…」
め「よ〜く見るとオ〜っとか…小島聖ちゃんなんかもそうですし、すごいな〜と思ったりなんかするんですけれど、何と言っても監督の作品と言えばこの堤真一さんがず〜っとこう登場してくる訳なんですけれども…やっぱり堤さんていう役者さんが素晴しいと思ってしまうんですけども…その何て言うんだろうな…すごく普通の役を導入とか見ていて、全く最後を予期させない普通感があるじゃないですか?普通、日本の役者さんてね…僕、お笑いだから言っちゃいますけど!?松方さんが出てくると、あっこの人は怖い人とか、顔に書いてあるじゃないですか?ある程度…(SABU監督、笑ってる)皆、分かるんですよね?でも…堤さんて、普通じゃないですか?」
さ「うん、そうですね…あんまり、あの何て言うか…妙な“我”がないというか…結構、俳優さんてその役より自分が表に出てくる人が多いでしょう?それで気持よくなっちゃってる人が、それが全くないですね。」
め「ですよね〜」
さ「だから逆にもうちょっとやってくれって思うぐらいの時もある。何か一般的に言われる…分かりやすい芝居っていうか、あのうまいって言われる芝居?とかは敢えて絶対しないですから。」
め「堤さん?は〜」
さ「それがね…うまいって言われることをすれば、ね?すごく評価ももっと高くなるのにとは思うんですけど、それをやらない所がまたいいんですけどね。」
め「あ〜分かっててやらないんですか?」
さ「ええ。」
め「あの、堤さんは酒飲まれるんですか?」
さ「飲みますね、大好きです。」
め「堤さんて酒飲むとどうなる?」
さ「いやあの…ま〜普通に明るくなってますけど、まっいる人間にもよるんでしょうけど…」
め「怒ったりとか、そういうのはないんですか?」
さ「あっ俺のことに関して怒ったりしますね、あの…すごく優しいんで、俺が報われてないとか色んな部門に対してはものすごく怒りますね。もう眼が潤んでますね。挙句に俺が守ってやる!って言ってますね。」
め「付き合ってるんですか!?(爆)本当にもう気持悪い!(爆)あの〜この映画公開を記念して、洒落のきいた特典がいくつかありまして、え〜現在公開中の渋谷シネ・アミューズのみなんですが、まず酔っ払いの姿をして来た人に一般料金から200円引いてくれるという…これあるんですよね?例えば頭にネクタイを巻いて来た人とか…女性ってどうすればいいんでしょうかね?」
さ「んとね…???(笑)」
め「監督う?考えましょうよ監督。やっぱりだからどうなんでしょうね、ちょっとやっぱ何かね?あっ(パンッと手を打つ音)ハイヒールを手に引っ掛けてくる。あれ何か酔ってるイメージありません?」
さ「この間いました。びっくりしました。」
め「いたんじゃないですか!」
さ「いやいや、あの〜街で。」
め「あっそうですか?酔って…」
さ「その気になってましたよ、何か裸足で歩いてましたよ。」
め「いますよねそういう酔っ払い。じゃあその方も200円引いて頂きましょう(笑)お願いします。それから憂鬱な月曜日にも嬉しい特典がありまして、毎週月曜日に窓口で“飲んだら無敵”の合言葉で一般料金から200円引くと…“飲んだら無敵”って言えばいいんですか?」
さ「あっそうです。」
め「じゃあ月曜日に窓口行って『すいません大人2枚、飲んだら無敵』って言えばいいんですね?」
さ「あっそうですね。」
め「これラジオ聴いている方、是非、こういう風に言って映画を観に行って頂きたいと…これはあの渋谷のシネ・アミューズのみでございますので、皆さん気を付けてください。こういうのって監督が考えるんですか?」
さ「いや、あの〜宣伝部の方が…」
め「面白いですよね〜さあではCMを挟んで今度はSABU監督のプライベートな部分について迫ってみたいと思います!」(CM)
め「恵俊影のDear Friends、今日は映画監督のSABUさんをゲストにお迎えしております!それじゃここでもう1曲、最新作『MONDAY』のサウンドトラックからお送りしたいと思いますが、何にしましょう監督?」
さ「え〜CAPTAIN FUNKの“Home Sweet Home”」(〜♪曲が流れる)
め「…監督の作品ていうのはこう海外ですごく評価が高いんですけれども、監督自身は海外で自分の作品を観たことはあるんですか?その映画祭みたいなものに足を運んでっていうのは?」
さ「それはもうずっとなんだかんだ…」
め「どうなんですか?実際に向こうに行ってみてご自分で評価っていうか?」
さ「あ〜もうすごいですね、え〜もう3年も行ってきたんですが…もうものすごい…」
め「大絶賛ていうか?は〜」
さ「あの〜何て言うかな?エキゾチックなJAPAN!ていうようなものが過去に多かったと思うんですけど、結構俺のは娯楽作品ですから、それで何かやっぱりお客さんて映画を楽しもうと来ますから、そういう意味では口コミでどんどん広がったんですね、最初は。それでSABUっていうのは覚えやすいんで、また来たっていう、1年に1本というペースで撮れてたんで、結構それでまた来やがったっていう感じで、皆、劇場に足を運んでくれたんで、今回とかはもう全部SOLD OUTですごい気持よかったです。」
め「むしろ皆、評価は自由にしてくれるんですかね?」
さ「そうですね…あのシチュエーションが面白いっていうことをできるだけ作ろうと今までそうなんですけど、まっ走ることとかそれが馬鹿馬鹿しかったりっていう、あんまり字幕にそんなに頼らなくても絵で面白いっていう風に今まで作ってきたんで…」
め「例えば最初のオープニングシーンのお葬式のくだりとかあるじゃないですか?…あそこら辺何かはちゃんと伝わってるんですか?」
さ「あっ伝わってますね。」
め「は〜あれはものすごい日本的な文化のような気がするんですけどね。」
さ「そうですね、でも…」
め「若干、その北枕とか…」
さ「そういう意味までは別に俺伝えようとは思わないけれど、やっぱりお葬式っていう悲しい場所っていう空気はどこでも一緒ですし、ちゃんと真面目に観るんですね、皆。で、話が転がりだすと皆クスクス笑いだすし。」
め「あ〜なるほどね。あすこら辺がクスクスくるのはもう最高ですもんね、え〜監督36歳同じ年今年辰年なんですけども、監督はこう今後やっていきたいものとか…ひょっとしたらもう次の作品ももう考えていらっしゃるんですか?」
さ「あっ脚本(ほん)はもう…書き始めてます。」
め「早いですね〜」
さ「え〜一応やることないですからね…」
め「そうですけども…その次から次に…勿論、今書いているものがすぐ(映画に)なるとは限らないですものね、色んなものを書きながら、いいと思ったり引っ掛かってきたりしたものを…普段、何してるんですか?休みの日とかは?」
さ「(笑)魚釣りとか…」〜〜〜>°)))彡!!!
め「あっ釣り?釣り趣味なんですか?釣り趣味の方多いですね?」
さ「あ〜でも俺、海ですからね。」
め「海釣りなんですか?船に乗って出るんですか?磯釣り?」
さ「…磯とかで汚〜くなってますね。」
め「1本釣り?」
さ「1本釣りというか…そうですね。」
め「は〜豪快ですね。」
さ「そうですね、和歌山出身ですから…ルアーでどうだとか、バスフィッシングだとか、そんなお洒落じゃないですね。“漁”ですから(笑)」
め「もう“漁”なんですね?“漁師”なんですね(笑)は〜釣りやってると何か気分転換?」
さ「いや〜釣りも結構、本気でやりますからね、逆に疲れますね。」
め「戦いなんですね〜(笑)じゃあ休まる所ないじゃないですか?」
さ「ないですね〜」
め「え〜じゃあですね、このコーナーではゲストの方からリクエストの曲を伺ってるんですよ。」
さ「は、ずっとね俺前からストーンズとかピストルズっていう風に答えてきてるんで、今回はクラッシュで。」
め「クラッシュっていう?」
さ「ハイ。ザ・クラッシュって…」
め「曲名は?」
さ「曲名はロック・ザ・カスバ」(〜♪曲が流れる)
め「…お送りしたのはSABU監督のリクエスト、クラッシュでロック・ザ・カスバでした。」
(CM)
め「恵俊影のDear Friends、今日は映画監督のSABUさんをゲストにお迎えしてお送りしました。最新作『MONDAY』は第50回ベルリン国際映画祭の国際批評家連盟賞というのを受賞されております。え〜東京だと渋谷シネ・アミューズにて公開中ですね?」
さ「ハイ。」
め「え〜そして、シンガポール、香港、各国の映画祭での上映が決まっているんですけれども…その他にも決まったということですよね監督?」
さ「シンガポール、香港はこの間行ってきたんですけど…後はこの…」
め「今度、シドニーとシカゴが決まったっていう風に?」
さ「あっもうずっとそうですね、全部オファーがあったので。」
め「監督、もう世界中に監督の作品が広がってるんですけども…日本でもね、これだけ世界に行ってるんですから日本でも観た〜いと…そういう方も日本各地の上映が決まっております!福岡、大阪、名古屋、京都、神戸、札幌、金沢、松本、和歌山、これは監督の地元でございますね、で、松山、福島、仙台、山形、盛岡と続きますんで、是非是非皆さん楽しみに待っていてください!上映スケジュールのお問い合わせを言っておきます。シネカノンまで電話をしてみてください。それからSABU監督のオフィシャルホームページへのアクセスも待っております。アドレスを言います。…です。え〜ということで監督は次の作品に取り掛かっているということなんですが…どんな作品なんですか?チラッと何か…」
さ「え〜とね、豪華客船が…冗談ですけど(笑)」
め「タイタニックじゃないんですから(笑)」
さ「え〜とまあ、あの今度はハッピーエンドにしようかと思ってるんですけど…巻き込まれ型っていうのはよく言われるんですね、今まで全部そうだったんですけど、それでハッピーエンドに持って行ってやるぞと。」
め「ほ〜監督、今度ちょっと僕にも声掛けてください?」
さ「そうですね…やられるんですか?」
め「お願いしますよ〜」
さ「お願いしますね…(笑)」
め「いや〜またうまいな〜必ずですよ、SABU監督ワールドにちょっと顔出すだけでも…」
さ「ハイ!」
め「楽しみにしております!監督どうもありがとうございました!」
さ「ありがとうございました!」
 
 果たして恵さんはSABU組の一人となられるのでしょうか?(笑)楽しみにしております。おしまい。
 
 
 
g-mark.gif「MONDAY」舞台挨拶&“王様のブランチ”(2000.4.29)
 
 今回は珍しく(笑)SABU監督とプロモーション活動を頻繁にされているので、いい傾向だなと思いつつ?予定でも舞台挨拶をやってくださるのならと公開日初日の渋谷シネ・アミューズへ。並ばれていた方々の中で男性が割と多かったのが印象的でした。決して松雪さん効果だけではないような?SABU監督の映画も今回で第4作目。『MONDAY』は第50回ベルリン国際映画祭の国際批評家連盟賞も受賞されて…以前から海外の映画祭での評判は有名でしたが、より箔が付いて走っているなという感じ、嬉しかったです。映画は公開前にFM局主催の試写会で一足先に拝見済。踊る高木光一の本当の意味の“Break Dance”に歓喜しながら、怒濤のフラッシュバック映像、効果的に使われたCAPTAIN FUNKのファンキーな音楽、酔っ払って忘れていた悪夢のような記憶が断片的に甦ってくる手法…監督の“面白い”という感覚の着眼点が面白くて?(以下、突然ネタバレモード突入)遺体のペースメーカーを外さないで火葬をすると爆発する危険性があるなんて、コレ実際にご親族の葬儀で体験された実話だとか、東京23区の暗唱ってソワレの堤さんの記事で読んだ記憶が…?ネタ帳(そんなんあるんかい?)見せてくださいって言いたくなるような、とにかく催眠術のようなSABUワールドに浸れればとても楽しめる映画だと思いました。
 
 初回上映終了後、自然と場内ざわざわ…暫くしてSABU監督、堤真一さん、松雪泰子さんが登場。座席数の少ないミニシアターなので、スクリーンの前に颯爽と立たれた三人がとても近くに感じられました。司会者の方に促されたSABU監督の第一声は拳を上げて「イエ〜イ!ボンジョルノ!?」(笑)横でまたかいなという呆れ顔で堤さんが「アホでしょう?」ですって(笑)熱気溢れる場内やフラッシュにもすっかり場馴れされている様子。終始、笑顔で楽しげにお話されていました。SABU監督は黒のスーツ姿、相変わらずのお洒落さんです。堤さんは濃紺のタイトなスーツ、インナーはグレー。こちらもかなりスタイリッシュ。ズッコの金髪がちょっと伸びた、サングラスのイカシタお兄ちゃんでした。松雪さん、背中が大胆に開いた白いブラウス。ほんの一瞬でしたが、クルっと客席に背を向けてセクシーなポーズをされて、歓声を浴びていました。じょっ女優だ〜。映画の中でも印象的なあのダンスシーンは1日練習した程度とか。SABU監督と堤さんの信頼関係はもう一目瞭然。いつも決まって監督がおっしゃる…つまらない映画は作らないのでついてきなさい!という完全なるポリシーと自信満々の表情には余裕すら。堤さんの「皆さんに宣伝してください!」というお言葉がやけに新鮮(笑)今回、積極的に取材等も受けられた心境の変化は何?『MONDAY』がそれだけいいお仕事だったという証なのかもしれません。この時期が舞台上演中でなかったのが本当にラッキーでした。私が拝見したのはこの1回目の舞台挨拶。シネ・アミューズは完全入替制で次の上映時間前の2回目の舞台挨拶が迫っている関係上、恐ろしく短い時間でしたが、もう大満足で映画館を後にしていました。QuickTime派には嬉しい、予告編CD-ROM付き変形パンフレットがかなり凝っております。映画のテイストそのまんまのサントラ盤も必聴です。主人公・高木光一の「遺言<完全版>」まで収録してしまうセンスが私は好き。亨さんの声もちょっと入ってたのが嬉しかったりして(笑)
 
 当日、舞台挨拶の前、SABU監督と堤さんはTBSの生放送情報番組『王様のブランチ』に映画の宣伝のためにゲスト出演されていました。問題の生放送(笑)同番組は2度目の御出演だし、今回はSABU監督と御一緒ということで、とても楽しみにしておりました。司会はお馴染みの寺脇康文さんとさとう珠緒さん。寺脇さんの「僕の大好きなお二人をお呼びしております!」で登場のお二人。前述のスタイル、何とも洗練された主演俳優と映画監督だこと。並んで座られたおっさん1号と2号(笑)素敵でした。SABU監督、名前の由来を質問されると真顔で「え〜男が好きなんです。」にスタジオ大爆笑!これで掴みはOK!?さり気ない絶妙の間の監督に堤さんも大ウケでした。すっかりリラックスしたムードで映画のランキングとアカデミー賞主要5部門を制した話題の映画『アメリカン・ビューティー』の紹介へと続きます。お話をフムフムと神妙に聞いているお二人の様子が時々画面に。そして、お待ちかねの『MONDAY』特集です。
 
 SABU監督の紹介VTR。過去の作品『弾丸ランナー』『ポストマン・ブルース』『アンラッキー・モンキー』について…そして最新作『MONDAY』のダイジェスト。噂の高木光一のダンスシーンの映像が流れると、それを見入って照れて笑っている堤さんのアップからスタート。寺脇「いいとこ見せちゃってますよ?いいですかこのくらい見せちゃって?」監督「ハイ!」いち早く映画をご覧になったという寺脇さん「大変、面白かったです。あの跳び方が漫画っぽい所も…でもその予想の上を行く跳び方をしてくれているので逆にそれがすごく真実味があったりとか、あと僕が一番好きなのはそういう展開なんだけども絵で遊んでないっていうか、ちゃんと役者の芝居を撮っている。そこで変に奇を衒っていない…」俳優でもある寺脇さんの真摯な感想に痛み入りますという感じのSABU監督と堤さん。レギュラーの女の子の中にもSABU監督のファンの方がいらして、その思いを熱く語っているの微笑ましかったです。
 
 興味深いSABU監督直筆の絵コンテの紹介。ファイルを開いて、細かく書き込まれた絵コンテを見ながら…寺脇「絵心は昔からおありなんですか?」監督「ハイ、好きでした。」寺脇「漫画家になりたかったとか?」監督「漫画家じゃないですね、絵描きになりたかったです。」寺脇「ちゃんと写実的な絵もお描きになれるんですね?」細かいですね〜と皆で絶賛。寺脇「堤さんはこれをご覧になってどうですか?やりやすいですか?」堤「そうですね…あと何カットというのは分かりやすいですね(笑)芝居でここやってちゃマズイな〜とか後でやろうとかっていうのはバランスが分かるから、スタッフも動きやすいし…」寺脇「そんなに現場で変わらない?」堤「変わらないです。ほとんど」恵俊影さんからの質問「野田さんとかお二人の絡みも?」堤「…結局、あ〜いう所は(横の監督を軽く指差して)すごくカットかけるのが遅いんですよ。なかなかカットかけないんですよ。だからやらなきゃしょうがなくて、何か適当にやって役者同士が遊んでれば(また指差して)一人で笑ってハイカットって。だからあまり使ってないんですけどね…引き目引き目で全部撮ってくれる」ふ〜ん。
 
 さとう珠緒さんが『MONDAY』の更なる魅力を探ってみました!と“SABU組集結多彩な出演者”というフリップを掲げました。画面には『MONDAY』御出演の方々のお名前と各シーンの映像。寺脇「堤さんはじめ、その他の脇役っていうか出ている出演者全て、あっこんだけっていう人まですごい顔ぶれなんですけど、ちょっと見逃してると分かんないようなネ」珠緒「安藤政信さんは電話で出たいと?」寺脇「出演依頼というのはどういう感じなんですか?SABU監督が直接電話したりすることもあるんですか?」監督「あっいや…ん〜あまり…最近は偉くなってきたんで(笑)」横で堤さん(笑)寺脇「偉いんだ〜(笑)」監督「いえあの…皆、出たいって人には極力出てもらうようにはしています。」寺脇「役者が惚れる監督が一番監督としてはいいと思うんですが、堤さんから見たSABU監督は?まっ普段仲がいいから言いにくいとは思いますが、どんな所が魅力なのか?」堤「アホやからネ(笑)」横で納得するように頷くSABU監督(笑)寺脇「アホなんだ…何やそれ!」堤「(真顔で)でもやっぱり台本がとにかく面白いから。つまんなくなったら一緒にはやらないけど、お互いにね…役者としてダメになったら…ていう。」寺脇「演出方法っていうのは役者がやりやすいんですか?」堤「やりやすいっていうか…やっぱり役者のこと分かってくれてるから。それこそさっき(寺脇さんが)おっしゃったみたいにあまりカメラワークでこうその役の感情とかを説明したりしなくて、役者やれよって、ポッと…その場で与えてくれる。それでよしっていう。ダメだったらもう1回やらしてくれるし…」寺脇「ガップリ四つにやっているという感じですね?」堤「楽しいですよ、現場は」寺脇「そして堤さんは全4作に出演されてる訳なんですが、今度は逆にSABU監督から見た堤さんの魅力を?」SABU監督、どう出るか待つ堤さんにお返し「あ〜非常識な人です!」(爆)珠緒「お互いけなし合い〜(笑)」寺脇「アホと非常識?(笑)」…もうお二人絶妙のコンビネーションにただ関心するのみでした。
 
 次に用意された“三枚目、堤真一”というタイトルのフリップに?と首を傾げる堤真一さん。画面には踊る高木光一。寺脇「今回も面白いこの踊りなんですけど、自分で振り付けを考えたんですか?」堤「いや、結局これもなかなかカットをかけてくれないんで、ある程度ちょっと決めてたりとか、色々ビデオを見たりとか、こんな感じとかやってたんですけど…カットをかけてくれないので、やることないじゃないですか…(笑)」寺脇「踊らにゃしゃあないという…(笑)」ここで初日舞台挨拶が行われることが紹介されて時間となりました。この番組の宣伝効果はかなり大きいと聞いております。事実、私の友人Sちゃん(B型いい人)は昨年、あの映画『39 刑法第三十九条』に行こうと誘っても難色を示していたにも関わらず、同番組で紹介されるや否や、一緒に行こう!と電話がかかってきたという…貴様〜!私の説得はいったい?プロモーションて大切なのだわとしみじみ思った『王様のブランチ』でした。
 
 
 
g-mark.gif「ロベルト・ズッコ」大阪公演楽日(2000.4.2)
 
 性懲りもなく(笑)行ってしまいました。『ロベルト・ズッコ』大阪公演楽日。桜も咲き始めた春の休日、朝から新幹線に乗り、ほぼ十年振り!?で訪れた“上本町”がとても懐かしかったです。近鉄劇場前にロッテリアがまだちゃんとあったのが嬉しかったりして…ものすごい個人的郷愁が入りまくっていました。それはよくあることなのかもしれませんが、友人と別々に取ったチケットにも関わらず、座席が偶然に隣同士だったり(ちょっと鳥肌もの)神様がわざわざそうしてくださったのだと思うことにしました。舞台の感想は…もう最後を見届ける以外の何者でもなく(笑)こんなにストロボみたいなライトを多様してたっけ?とか、ズッコちょっと台詞が早口じゃない?とか、舞台の高さが足りなくて、最後のダイブ、頭上高く突き抜ける空間にズッコが飛び降りるラストシーンなのに…ちょっとだけ残念でした。別段、文句を付けに行っている訳ではないのに(付けまくってるって)終演後に色々言い合っているのが自分でも可笑しかったです。世田谷パブリックシアターという劇場があってこそ作られたソフトだなとつくづく思いました。どうして雪を降らせてくれないの〜?なんてちょっと怒ってたりして(笑)“雪の降るアフリカへ行きたい”というフレーズがこの芝居の宣伝コピーにまでなった大切なイメージの“雪”なのに…雪が降らなかったのはラストを飾るあの秘密の演出を際立たせるため?…そう思うことにしました。
 
 カーテンコール。やはり最後なので何かがあるとは期待していたのですが…大量のキラキラ☆銀色?の紙吹雪が上から降ってきまして、それは尋常じゃない量だったので(笑)堤真一さんはじめキャストの皆さんが声に出す程、かなり驚かれていた様子でした。内緒だからこそ楽日なのネ。まだまだ諦めるものかと?さらなるカーテンコールを求める拍手が流れる音楽に合わせて次第に手拍子になっていたり、これが大阪だわ…なんて少なからず感動していました。犬山さん、舞台に一人飛び出してつんのめってコケてしまったのが可愛いかった。そして最後は、堤さん、中嶋さん、犬山さんの三人が登場してくださって…恐怖の問題作?『ロベルト・ズッコ』の幕が閉じました。本当にお疲れ様でした。早くもNHK-BS2で放送されるという舞台。放送に適さない表現の台詞も沢山あったり…この不思議な世界がどんな“映像”になっているのかとても楽しみです。
 
 
 
g-mark.gif「ロベルト・ズッコ」楽日(2000.3.23)
 
 あっという間の上演期間だったような気がします。野田地図やtptが長期公演だったりするので、更にそう感じるのでしょうか?『ロベルト・ズッコ』東京公演楽日に行って参りました。SePT倶楽部会員で“演劇企画集団THE・ガジラ”の公演を予約していた私。ついでに発券してこようと何の迷いもなく3階くりっくのカウンターへ行くと「あちらでどうぞ」と劇場の窓口を指定されました。?と思いながらもそう言われたので、狐につままれたような気持でズッコのポスターがドンと貼られている窓口へ。名前を告げても話が噛み合う訳もなく「ロベルト・ズッコのチケットじゃないですよ〜」なんて言ってのけてしまうと…後ろからタッタッタと駆け足でくりっくのカウンターの方が飛び出して来て「申し訳ありませ〜ん!」5階にチケットセンターがあるんだそうです。やっぱりネ(笑)騙されちゃいました。長い余談でした。
 
 立ち見も出ていて、流石に楽日だなという空気が穏やかなロビーにも流れていたように思いました。10分押しで始まった舞台。ちょっとずつ変化した演出部分に気付いたり、素人目にも感じた役者さんの実力の差が歴然としたり、断片的なエピソードを繋ぎ合わせて浮かび上がってきた“ロベルト・ズッコ”という青年の狂気が、いつまでも答えの出ないまま中和して、透明になって、ふわふわと浮かんでいるようなそんな曖昧な感覚が最後まで残りました。翻訳劇の持つ独特の雰囲気…小難しい言葉の羅列や、日常生活の異常な部分が誇張されている長台詞も多く、決して万人受けする芝居ではないと思いますが(笑)説明し難い曖昧な浮遊感を敢えて楽しめた舞台でした。ズッコの多重人格者ぶりも場面場面の変化で際立っていました。彼を一途に慕う少女、犬山犬子さんとのコミカルな絡みは傑作。全ての男性を汚れた“雄”として拒絶し、妹を溺愛する姉、中嶋朋子さんの異常性も淡々と。象徴的な鼠をムギュはちょっと…。うっそピョ〜ンと相手を煽る乱闘シーン。バックスクリーンに舞台の袖や上部に設置されたカメラの映像が効果的に使われる演出は斬新でした。私が特に好きだったのは地下鉄のベンチでの老紳士とのシーン。お尻を掻きながら自分の手配写真のポスターに見入ったり、夜の闇に怯える老人に思い付くまま朗々と我を語り、心を許した老人を優しく導きながら去って行く姿が印象的でした。味のある村松克己さんと二瓶鮫一さんの並ばれた姿に映画『12人の優しい日本人』が浮かんでしまった私はちょっとマニアックかな?(笑)かなり壊れ気味の御婦人、天衣織女さんを人質に取るおバカな公園の群衆シーンは最も不条理な笑いを誘っていました。息子を殺された果ての逃亡、ズッコに接する彼女の態度の異様さ。慈しむように語り合う二人の会話は正常と異常の領域を無意味なものにしてくれました。
 
 再び捕えられたロベルト・ズッコ。また脱獄をしようと刑務所の屋根を這う彼の最後の独壇場。しなやかで躍動感溢れる姿を目に焼き付けながらドスンという鈍い音と共に暗転、芝居の幕が下りました。虚無感に襲われるようにため息が出て、最後のご陽気な音楽が鳴り響くと同時に、堤真一さんが演じるロベルト・ズッコを観ることができて良かったと何故かしきりに思っていました。
 
 カーテンコールは3回。何もない舞台空間にキャストの皆さん全員が勢揃いする姿は壮観。最後には堤真一さん、また例のスリッパを今回はわざと履いてこられたみたい?そんな気がしました。何だかお茶目な東京公演ラストのカーテンコールでした。残るは名古屋、大阪公演。東京公演終了でちょっとブレイク。お疲れ様でした。
 
 
 
g-mark.gif「ロベルト・ズッコ」初日(2000.3.8)
 
zucco_p.gif 最新のPT(パブリックシアター)第9号に掲載されたベルナール=マリ・コルテスの戯曲を敢えて読まずに初日の舞台へ。魔人キャラとは何ぞや?「犯罪者顔なんでしょうかね、僕は」…いえいえ、そんなことはございません(笑)2、3階にやや空席があるなとか、色々な思いが交錯しながら最前列での観劇でした。目の前にあるのはただ何もない舞台の空間。贅沢な位置に少しだけ緊張していました。オープニング。刑務所の看守二人のクレイジーな会話の元、舞台上部に堤ズッコ現わる!ゲネプロを観たという友人から実は聞いていたのです。ズッコの髪型がどうなっているのか…短く刈込んだ見事な金髪です。長い手足に迷彩柄のパンツもやけに似合って、ロンブーがちょっとだけ入っているかも???(爆)
 
 エネルギーを持て余すかのように無邪気なその瞳は爛爛と輝き、難無く脱獄を決行して、あても無く彷徨います。様々な種類の人間と彼のルールで接触しながら。父母殺しの連続殺人犯とか、強姦魔とか、完全イメージ先行でtptも真っ青の行き場のない悲壮感極まる世界を想像していました。白目向かれちゃったらどうしようとか?柴田真樹ではありません。執拗に何かを求めながらも、ちっともギラギラしていない、生まれたての無垢な動物を目にしているような気がしてならなかった。それは世にも明るい狂気なのです。果たして彼は狂人なのか?ズッコと関わる人々もどこか病んでいるような、なんでやねん的な不条理な笑いも思いの他含まれていました。どこかとぼけた“意図して”間の悪い空気が全体に漂っていて、断片的な脈略のないエピソードが畳み掛けるように次々と展開されるのです。関わる相手によってくるくる変わるロベルト・ズッコ。それが魔人キャラの所以だとは思いますが、それも至極、自然のような…彼を一途に慕い続ける少女(犬山犬子さん)であったり、真夜中の地下鉄のベンチで孤独をつぶやく老紳士(村松克己さん)であったり、怪しすぎる!売春宿の女主人(金久美子さん)や、ズッコに息子を殺されながらやけに冷静な上流階級の御婦人(天衣織女さん)etc.…異質なズッコのキャラが突出しないくらい、強力脇キャラのオンパレード。ズッコとの絡みは無いものの、妹への変則的な愛情に歪んでしまう少女の姉(中嶋朋子さん)の存在もかなり印象に残りました。パンフで演出の佐藤信さんが語っておられる“コミックス”の世界がまさにこれだなと勝手に痛感。パラパラとページをめくる毎に飛び込んでくるあの感覚です。唐突に。それも原色で。アンバランスなバランスを楽しむように。上演時間1時間45分。ある結末によって幕を閉じた瞬間の奇妙な感じをどう説明すればいいのか?またズッコに会いに劇場に足を運んで、ぼちぼち考えたいと思います。
 
 カーテンコール。グレーの上下の囚人服(囚人番号734!)に裸足のまま、深々とお辞儀をする堤真一さん。2回めのカーテンコール。グレーの“スリッパ”を履いて再度登場の堤真一さん。あれれ?と中嶋さんと顔を見合わせて笑っていたのが可笑しかったです。犬山さんなんてまるで忘れていたように遅れて出てくるし(笑)キャストの皆さんの楽しい雰囲気が伝わってくるような笑顔がこぼれていました。 Review
 
 
 
g-mark.gif「パンドラの鐘」楽日 最後のお仕事(1999.12.26)
 
 長かった公演が幕を閉じる日がやってきました。私の深刻で簡単な悩みはただひとつ…楽日のチケットが取れていないということ(笑)致命的過ぎる深いダメージ。野田地図の今回の当日券のシステムは前日に電話で整理番号を予約すること。よりによって私が挑んだのは、最も競争率が激しいであろう楽日の当日券。それは12月25日のX'masAM10:00からの戦い。結果、惨敗でした。もう、へこんだへこんだ。ブルーな気持のまま、その日のソワレを観劇。でも、何回劇場に足を運ぼうがどうしてもこの壮大なお祭りの最後を見届けたくて…楽日当日、整理番号のないまま並びに行きました。結果、思いは成就しました。演劇の神様がここには本当にいると感じた瞬間でした。3階の立見を覚悟していたのに、思いがけず1階が取れて…立見ならぬ膝を抱えた体育座り?で体験する最後の『パンドラの鐘』でした。
 
 オープニング、見慣れたオズやカナクギ教授、イマイチ先輩、タマキたちのカラフルな衣装の色が目に飛び込んでくるのが嬉しかった。同じ舞台を同じコンディションで日々演じ続けることの大変さ。それも今日が最後…少々感傷的になりがちな気持を掻き消すようないつもと変わらぬハイテンション。それでもミズヲの最初の台詞、遠い日の赤い風景の記憶を語る彼を感慨深く見つめていました。お風邪を召されてちょっと喉が苦しそう…でも相変わらずいい感じのヒイバア。大好きでした。何故か?いつもあのヒイバアの衣装を着てみたい!という衝動にかられていた私(笑)足首をちょっと動かしただけで笑いが起きる恐るべしハンニバル。透き通るような白い肌の八頭骸骨美人のヒメ女様。ヒメ女とミズヲ、お二人の並んだ立ち姿は“一対の美”そのものでした。公演中、目立って進化していったのがオズの日替わりネタでしょうか?入江オズここにありの長いアドリブはリピーターの密かな楽しみになっていました。峠の地蔵シリーズとは?一体、腹筋の弱い人々の職業は何種類登場したのか?古田狂王の嫌なものネタもお気に入りで、個人的にハマっていたのは「豆ご飯は嫌〜っ」と「こんなに出てきてインカ帝国」…戯曲に載っていない遊びも沢山ありました。
 
 もうひとつの太陽が爆発するイメージ。巨大な紙の雲に赤い閃光が日の丸のように浮かび上がるのが哀しかった。立ちすくむミズヲに甦ったのは赤い風景の記憶。焼けただれた荒野で、死に絶えようとしている人々にその手で水を掬い与えている彼の最後の記憶。国を守る王として自らを土に葬ることを決意したヒメ女。ミズヲに託す形となった誇り高く毅然とした最後のお仕事。何の迷いも無い、優しい笑顔で鐘の中に消えていったヒメ女。日本にはヒメ女のような王は存在しなかったという戦争責任における痛烈な天皇批判も含まれている舞台でした。ミズヲがもう声の聞こえなくなった鐘の中のヒメ女と交した最後の賭け。ミズヲが未来に届くと信じたヒメ女の心がいつまでも永遠でありますように。胸を打つ心静かなラストでありました。
 
 終幕。パンドラの鐘を背にして、明るくなった舞台に一列に並んだ出演者の方々に惜しみない拍手の嵐。体育座りでちょっとだけ感じていたお尻の痛さも忘れ、スクっと立ち上がって心から拍手をしていました。この場所に立ち合えた至福を感じていました。楽日でしか味わえない幸せな時間です。いつまでも鳴り止まない拍手。感動を途切れさせたくなくて、誰も止めようなんて思わなかった筈。やがてそれがスタンディングとなり、スタッフが仕掛けた趣向でしょうね?客席に向かってパ〜ン!という爆音と共に沢山の銀色のテープが飛び出して、最高のボルテージに達していました。私も涙が込み上げてくるくらい高揚していました。飛び切りの笑顔で何度も何度も繰り返されたカーテンコールは9回!!!最後に野田氏が一人で登場、キチンと正座をして深くお辞儀をしてくださった姿に…もう何年も前の夢の遊眠社時代の千秋楽の様子を思い出していました。遊眠社の楽日は決まって「長崎は今日も雨だった」を歌うのが恒例でした。あの時も同じ、いつまでもこうして帰りたくないそんな気持で一杯でした。出演者、スタッフの皆様、本当にお疲れ様でした。素晴しい舞台をありがとうございました。もうすぐ新しい千年紀が始まろうとしています。
 
 
 
g-mark.gif「パンドラの鐘」初日(1999.11.6)
 
 野田地図と言えば渋谷のシアターコクーンでの上演がお馴染み。世田谷パブリックシアターは何度か訪れているにも関わらず、何故か私の頭の中では野田芝居=シアターコクーンのイメージが染み付いていたというか?楽しみにしていた野田地図第7回公演『パンドラの鐘』初日。その劇場の大きさが驚く程小さく感じられて…まだ開演前の紙で覆われた舞台装置を眺めながら、立見の位置は?などと気にしつつ、想像以上に近い舞台との距離を喜んでいました。休憩なしノンストップの約2時間。世界の蜷川氏と勝負に出た天才・野田秀樹、話題の新作をじっくり拝見してきました。
 
 舞台は太平洋戦争前の長崎。大金持ちのピンカートン財団による古代遺跡の発掘現場。日比野克彦氏の衣装は、かなりPOPで現代的な印象でした。もっと泥臭いイメージを抱いていたのですが…ポスターからの影響を受け過ぎかな?テンション高いっすパンクな古田新太さんのカナクギ教授らによっていくつもの“釘”が発見されます。果たしてそれは何に使われていた“釘”なのか?みるみる時空を越えて、古代王国の葬式屋たちが登場。堤真一さんのミズヲは何処?(笑)注目すべきはその髪型でしょうね?どうなってんだろうなんて目を凝らしちゃいましたから。両サイド刈り上げでトップの自毛に茶髪のドレッドの付毛が編込んであるの。モコモコした質感の半ズボンと地下足袋な足元も可愛くって(笑)ちょっとHIP HOPな忍者みたいな葬式屋チームの面々。元JACな皆さんの運動量、必見です。その名の通り、狂っている兄の狂王を死んだことにして葬儀を行い、王位を継承する天海祐希さんのヒメ女。真っ赤なドレスの映える、凛としたそれはそれは美しい女王様。全ての証拠を隠す為、葬式屋もろとも埋葬してしまう計画だった。企みの参謀は女王側近の野田氏のヒイバアと松尾スズキさんのハンニバル。もう…このお二人の共演を観られただけでも幸せ(笑)いい感じの年寄りヒイバアの愛しいこと。お持ち帰りしたくなるくらいでした。松尾氏の得体の知れない不気味さも絶品。その怪演は大人計画派の方々にはどう映っているのでしょうか?ミズヲは純粋に死体を土に葬ることに喜びを感じている誇り高き葬式屋。ヒメ女にその命を助けられたミズヲはある時、彼女の元に巨大な鐘を運んできます。すると鐘の中から不思議な閃光が差し…またまた時代は長崎へ。財団によって発掘された古代の鐘の中には人間の“骨”が入っていた。巨大な鐘に秘められた王国の謎とは?封印されたヒメ女とミズヲの身分違いの恋は?歴史から葬られた女王の決意が切なくキラキラしているお話です。
 
 例によって縦横無尽に時代がシンクロして野田ワールドが炸裂しています。くだらねえ言葉遊びもたっぷり用意されておりました。名作『キル』は“布”を多様した世界というイメージでしたが、『パンドラの鐘』は“紙”です。冒頭からシャリシャリと紙に触れる音でこの物語は始まります。装置は至ってシンプル。巨大な鐘を除いて(笑)蜷川さんとこよりデカイという予備知識はあったものの…一目で鐘に非ずな物体を想像してしまって…どうして野田氏は故郷の長崎を具体的な場所として表現したのか?さだまさしチックな郷愁も少し感じてしまいました。7月に行われた蜷川組との合同制作発表の場で「アンサンブルをよく理解してくれるキャスティング」という野田氏のコメントがありまして…これでもかの贅沢な個性派の集合体なのに全体の流れの中で、そのお言葉が理解できたような気がしました。最強の野田組がまた誕生しました。大きな鐘に寄り添うようにもたれながら、心静かに瞳を閉じるミズヲ。…私も好きな人には化けて出てきてほしい。演劇の神様がくれた今年最後を飾る大イベント。暖かい拍手に包まれたカーテンコール(4回!)回を増すごとにこぼれる出演者の方々の笑顔が素敵でした。幕が開いたんですね。長丁場故に皆様、お体御自愛くださいませとお祈りをしました。 Review
 
 
 
g-mark.gif「39 刑法第三十九条」ビデオ化と待望の雑誌(1999.10.23)
 
 最新作の映画『黒い家』一般公開も真近の森田芳光監督。今年の5月に公開された映画『39 刑法第三十九条』がビデオ化されました。少し贅沢かもしれませんが、堤真一さん主演作品は必ずセルに走る私。ちょっとお高いんですけど…数々のタイトルを本棚に並べて悦に入る幸福感?は危ないものがあるかもしれない(笑)部屋で改めて鑑賞するのも新鮮。あのどうしようもない重さにまた浸りたいです。さて、野田地図第7回公演『パンドラの鐘』公演開始まであと二週間。こちらも発売を待ちかねていた角川書店の“feature”という月刊誌。雑誌のインタビュー等、露出の極めて少ない方なので、堤真一さん久しぶりのグラビア登場の嬉しいこと。思わず、ほよほよ日記を書きたくなりました。三軒茶屋の世田谷パブリックシアターは思い出がある場所。以前の職場が近かったこともあり、とても身近な街でした。石橋蓮司さんとの二人芝居『ライフ・イン・ザ・シアター』が同小劇場シアタートラムの柿落しと知った時は大喜び。お二人の軽妙さが記憶に新しい素敵な舞台でした。その後も様々な舞台公演や巨大なレンタルビデオショップもある関係で、度々足を運ぶ場所になっていますが…“feature”のグラビアの最初のページ、堤氏が佇むのはまさしくあのエスカレーターを上り詰めた見慣れた場所。…もう、私ってバカじゃん?当たり前ですよね?お稽古ガンガンされているんだから(笑)何の衒いもない自然体の静かなインタビュー。既に撮影を終えられた来春公開予定のサブ監督との映画『Room Four(仮題)』について。スケジュール的に難しかったこともあって当初、サブ監督とのお話で「誰かもっと有名な、金城君とかに出てもらった方がいいんじゃないの。そしたら客も入るし」って(笑)そんなコメントの堤さんがいいなと思いました。気が付くといつの間にか秋も深まって参りました。初日の幕が上がるのが楽しみです。
 
 
 
g-mark.gif「ザ・ドクター」“王様のブランチ”生ゲスト(1999.7.3)
 
 土曜日の午前中に放送されているTBSの情報バラエティ番組。堤真一さんと長嶋一茂さんが、新ドラマ『ザ・ドクター』の番宣の為にゲスト出演されました。しかも生放送。これはある種、事件だなと(笑)コーナー前のCMに入る直前、袖でスタンバっているお二人にカメラが切り替わった瞬間、カメラ目線でアピールしなくちゃという一茂さんのリアクションに堤さんが照れながらパッと横を向いてしまって…そんなのっけから嫌〜な予感がって(笑)嘘です。大傑作の楽しいトーク?素の堤真一さんがもう感動的ですらありました。堤さんはグレーのシンプルなシャツにちょっと濃いトーンの同じくグレーのパンツ。最近少し痩せられたけれど…流石の元JACも、天下の長嶋ジュニア一茂さんと並ぶととても華奢に見えました。だって敵は元巨人軍だもの。お二人が椅子に座ろうとしたタイミングと同時に司会の寺脇康文さんが一茂さんに声を掛けたので、堤さんビクンと慌てて座るのを躊躇したりしていました。寺脇さんに「キューカットで横向かれていましたね?」とふられて「(例によって穏やかな関西弁まじりの口調で)こういうのに慣れてないからすごい緊張するんです…」その表情から本当に緊張されている雰囲気が伝わってくるようなコメントでした。
 
 そして画面はTBSの“TV瞬間最高視聴率Best10”の発表へ…。その中にもランキングされていた一茂さんが1年ちょっとレギュラー出演中の「さんまのスーパーからくりTV」について。なんと堤さんも「見てますよ。ご長者クイズだっけ?」に一茂さん「見てるの本当に?ご長寿クイズですよ」だって。寺脇さんも「長者番付じゃないんだから」という軽いつっこみが入って「勉強になりますよね?あ〜ゆうのを見ていると」トークを広げようと気を遣っているんだなと感じられる寺脇さんの問いかけに堤真一さん「いや、勉強にはならないです。」とバッサリ(笑)もう最高!「でも…さんまさんや素人の方のボケは俺らには絶対に真似できないので面白いですよ」と一茂さんのフォローがありました。ふ〜っ。
 
 いよいよお待ちかね『ザ・ドクター』第1回のダイジェストが流れました。石垣島でのロケ映像や一真が父親の遺体と対面するシーン、新しい病院でかつてのアマチュアボクシングのライバルだった俊太郎と再会するシーンなどetc. それを見つめているスタジオのお二人の表情…時に照れ臭そうに笑ったり、真剣に見入っていたりが、画面の端に小さく映し出されているのが興味深かったです。ドラマの人物相関図の説明も司会の方々は堤さん、堤さんとしきりに彼に説明を促していましたが、どうぞどうぞと堤さんが一茂さんにおまかせしていました。改めて、寺脇さんからの質問「堤さんは連ドラも何年ぶりかで、あまりおやりにならないのですけれど、今回の作品を選んだ魅力は?」に「いや、単に暇だったんですけど…」(スタジオ騒然!え〜そんなそんな)このお言葉、堤真一さん絶対言うと思った(笑)『ピュア』の時も『アンラッキー・モンキー』の時も暇だったから星人でした。いったい誰が暇なのって?熱く思いを語ったりしないのが堤さんなのかな?ごく普通に「医者ものって時間かかるんですよね…なんかやたらに…失敗したと思いましたけどね」ワ〜オ再びスタジオ騒然!「そっそんなトーク…」と寺脇さん「番宣しに来たんだからそんな…」たまらず堤さんの肩に手をやる一茂さん「ドラマに出ないのはそういうことだったんですか?」に「スイマセン…堤さん生対応ちょっと危険なもので(爆)」誰にも止められない堤先輩をかばう(笑)とてもいいやつの一茂さんでありました。ちょっとまずかったかな?と照れて微笑んでいる堤さんが可愛いかったです。
 
 トークはまだまだ続く。今度は一茂さんに、前回出演のドラマの熱血体育会系男とはガラリと変わった今回の役(天才外科医)について?「急に怒鳴り合ったり、切れたり、笑ったり、ちょっとよく…全然分からないです。」という一茂さんに「面白いですよ」と堤さん。「全然似つかわしくない役を頂いたんですけどずっと戸惑っています。テンションが急に変わるんですよね。普通、私生活だったら布石があって怒ったりとか、笑ったりするじゃないですか?でもドラマの場合は1時間の中で怒ったりとか…」そこで堤さん横から「一応、布石はあるのよ。あるの」どんなドラマだって何もない訳ないじゃないのって。「あっあるの?俺が分かってないんだ(笑)」一茂さんのおとぼけキャラも含めてこのお二人いいコンビだなと思いました。
 
 話題は普段の現場の感じについて。「聞くところによると堤さんはタイガースファン?その辺の話をするんですか?」に堤さん「しょっ中…でも、なんか撮影で会う時とかは大体阪神が負けた次の日に会ったりするんで…」本当に阪神ファンなんですね?ちょっとうつむいてテーブルを触りながらのこの言い方が好き。「大体機嫌が悪いですよね」と一茂さん。恵俊影さんから「堤さんから見て、野村監督ってどうですか?」堤さん生き生きと「すごいですよね!監督一人が変わるだけでチームがあんだけ変わるってちょっとね…信じられないですよね」「びっくりですよね」と恵さん。寺脇さんから「そりゃあもうすごい感謝とかするんですか?ファンとしては?」堤さん「うん…そうすね…感謝っていうか…いや、野球って面白いなと思いましたね〜最近ちょっとサッカーに行きかけてたんで気持がググッと戻りましたけど」すかさず寺脇さん「堤さんとは草野球でも対戦したことあるんですけど、すごいうまいんですよ!1試合で2安打くらい打たれましたよね?」堤さん小さい声で「ハイ。打ちました…」寺脇さん「なんか淡々とポ〜ンと打つんですよ」堤さん「大体僕、二日酔いなんですよ。ポーッとしてる…」その後アナウンサーの方から“知って得する医療豆知識クイズ”として聴診器に関する問題がレギュラー陣に出題されていました。ちなみに撮影で一茂さんは聴診器を使ったことがなく、堤さんは「僕は内科なんで」撮影現場では常にお医者さんや看護婦さんがいらしてその場で医療指導をされているそうです。こんな感じの約20分。草野球談義まで聞けるとは(笑)もう大傑作の生放送でした。 
 
 
 
g-mark.gif「橋からの眺め」大阪公演、衝撃の投げKiss!(1999.6.8)
 
 西の地へ出向いてしまいました。大阪のシアター・ドラマシティでの上演が急遽決まった『橋からの眺め -a view from the bridge- 』(tpt Vol.27)これが本当に本当のラスト昼夜2回公演。あのベニサン・ピットで醸造酒のように作り上げられた世界観が900席を飲み込むという大劇場でどう変化するのか?とても興味がありました。「行っちゃおうよ」という楽天的なノリに即座に賛同してくれた堤さんファンの友人達に心から感謝したいと思います。想像以上に華やかな雰囲気のある大きな劇場でした。全く異質の劇場で同じ舞台を見比べられる贅沢に酔いしれながら…かなり前方のお席だったにも関わらず、ヒンシュクを覚悟で(笑)「(舞台から)遠いよね〜」という声を出さずいられないような衝動にかられてしまって…その奥行きもさる事ながら舞台の横幅もかなりあるので、自然と舞台装置も変化、増殖?している部分がありました。手摺に洗濯物が干してあった階段の踊り場が、メインのアパートの居間の装置のすぐ横にセッティングされていたり、メイン装置の上部にアパートの煉瓦の壁面がむき出しになった空間が作られていたり、あっ!上手にあった筈の街灯が下手に立っているとか(笑)もう間違い探し状態になっているのが可笑しかったです。街路のシーン等の立ち位置も微妙に変化していました。
 
 これが最後。これが最後。呪文のような言葉が頭を駆け巡りながらやってきてしまった終幕。どうしても最後を見届けたかったこだわり?初めて体験した大阪の地でのカーテンコール…それはそれは楽しい感動的なものでした。絶対に止めないぞという意識を持って拍手が鳴り止まない中、舞台の上に勢揃いした出演者の皆さんが揃って額に手をかざして、声を上げながら、広い客席の中のどこかにいらっしゃるであろう演出のボブ・アッカーマンさんの姿を探しているのです。これが憎い!なかなか登場してくれないボブさん(笑)総立ちにはならなかったものの、スタンディングしかないじゃんという思いにかられて立ち上がって拍手しましたとも。堤さんを最初に、ボブさんと抱擁しながら感動を確かめ合っている姿は胸がキュンとしてしまいました。観客に向かってお返しのように舞台の上の皆さんが満面の笑顔で逆に拍手をしてくれている光景が微笑ましくて暖かかったです。その次にやってきたリアクションが衝撃的(笑)あの堤真一さんが両手で投げKissをしたのです。もう悲鳴に近いような歓声が上がっていました。うわ〜キャラにない大胆な行動(笑)今回の舞台では高橋和也さんの十八番だったのにね?その後の堤さんがもう滅茶苦茶お茶目だったのです。うわ〜やっちゃったよ〜みたいに照れながら、横のビアトリス久世星佳さんにもたれ掛かるように肩に手を置きながらそそくさと袖に消えて行ったりして。私の記憶が確かならば『キル』再演の千秋楽以来の投げKiss?ごく自然にしちゃった割には大照れだったのが可笑しいやら。思い出しただけで込み上げてくるものがあります。大阪まで遠征した甲斐があったよねなんて(爆)最後の舞台、皆さん本当にお疲れ様でした。…きっと忘れられない舞台のひとつになりそうです。
 
 
 
g-mark.gif「橋からの眺め」楽日 standing ovation の嵐!(1999.5.30)
 
 とても長い1日を過ごしたような気がします。『橋からの眺め -a view from the bridge- 』(tpt Vol.27)東京公演でのエディ・カルボーネにお別れを言わなければならないその日、私はtpt旗揚げの年からベニサン・ピットに通っているくせに?今回初めてこの劇場の当日券に並びました。始発でという元気は無いものの…どうしてこんな時は驚くべき実行力で早起きが可能なのか?不思議なものです。楽日はどうしても特別な日として、また舞台を拝見できたことを幸せに思います。初夏を思わせる日差しの中、少々日焼けを気にしながら並んだ結果、無事に手にした大切なチケット。開演時間までの間、ベニサン・ピット2階にある喫茶店ピット・インでしばしお茶でもしましょうと寛いでいたら、堤さんが食事にいらしたんです。ごくごく自然にスリッパ履きでスタスタスタと(笑)常時セルフサービスでスタッフや出演者の方々の食事の用意がされているようです。堤さんやアッカーマンさんはじめ、皆さんが各自お皿にご飯を盛っている風景は?体育会系の合宿の食堂の雰囲気を醸し出していました。何だかアットホームな感じがしていいなと思いました。
 
 さて、楽日の舞台。観劇の回数を重ねても、その緊張感は薄れることなくエディのリアルな狂気は劇場を埋め尽くしていました。クライマックス、エディとマルコの対決に集まってくる群衆たちの怒濤のような足音。ナイフをかざす格闘シーンの迫力にはいつもドキドキさせられました。最後に妻の名を呼び絶命する哀れなエディ。その死を嘆く女たちの慟哭の中、悲劇の幕が下ろされる。カーテンコールは全部で5回もありました!…想像してみてください。もうその状況に震えるくらい感動してしまいました。(それにしても毎度の高橋さんの投げKissはお茶目でしたね)出演者全員が揃ったことを堤さんが目配せをしながら確認をして、深々とお辞儀をするあのカーテンコール。1回、2回、ええい3回…まだまだ拍手は鳴り止む気配を見せず、自然と拍手をしながら気持が高揚してきて、誰からともなく席を立ち上がって、いつの間にかそれがstanding ovationになっていました。何て表現したらいいのか?劇場中が感動を共有しているような感覚、あんな盛り上がりは初めてです。演出のアッカーマンさんも舞台に上がられて…皆さん最高の笑顔で迎えられていました。心が震えるような瞬間。お疲れ様でした。あと残すは名古屋・大阪公演となりました。
 
 
 
g-mark.gif「橋からの眺め」初日(1999.4.30)
 
 4月から“T.P.T.”の表記が“tpt”に一新、今シーズンから始まるアメリカ戯曲探究の第一弾『橋からの眺め -a view from the bridge- 』(tpt Vol.27)の初日を拝見してきました。キャストのお顔を思い浮かべながら「アーサー・ミラー全集˘」(倉橋健訳/早川書房刊)に収録されている戯曲を初めて読んだ時、とても激しい感情の葛藤にドキドキしながら頁をめくりました。その時の印象とほぼ変わらない、小気味いいほどに?想像した通りの舞台が目の前で展開しているのが嬉しかったです。
 
 tptでは『イサドラ』『娘に祈りを』でお馴染みのボブ・アッカーマンさんの演出がとてもストレートな印象で、決して裕福ではない日々の暮らしの中、共同体として懸命に生きてきたイタリア系移民社会のある一家の悲劇を直球で投げつけられたという感じ。堤真一さんが演じるのは港湾労働者エディ。幼い頃から自分の娘のように愛情を持って育ててきた妻の姪キャサリンの成長に彼は戸惑い、理屈や常識では抱えきれない感情に段々と支配されていきます。彼らを頼り、仕事を求めて祖国イタリアから密入国してきた妻の従兄弟二人をかくまううち、兄弟の弟ロドルフォとキャサリンの間に芽生えてしまった恋愛は完全にエディを打ちのめしてしまう。ロドルフォの何から何まで気に入らない。イライラとヒステリックなまでに熱の入った演技に異様な緊張が走ります。もう誰が見ても常軌を逸している行動であっても…エディにとってはそれが真実。秘めた感情が洪水のように溢れ出し、激しさを増していく過程が淡々と描かれていきます。そして、破滅は容赦なく訪れる。どうして自分を追い詰めてしまうの?エディ…怖いほど見応えがあります。最前列の中央なんて〜夢に見そうなものすごいお席だったのも手伝って息を殺しながら(笑)見つめていました。
 
 今回はブルックリンのアパートの舞台装置上だけでなく、舞台両脇に作られたスペースをも使った演出です。ギリシャ悲劇の“コロス”を思わせるような物語の語り手でもある真名古敬二さんの弁護士アルフィエーリの冷静な目。それがまるで神の声のように人間の業を嘆いているような気がしました。夫の姪への執着心を痛いほど感じながら、必死に家庭を守ろうとする久世星佳さんの妻ビアトリス。野性的な中にも繊細な純朴さを持った山本亨(あきら)さんの兄マルコ(堤さんエディとの元JAC対決がある?)ブロンド高橋和也さんの弟ロドルフォの歌声などなど…見所が沢山。
 
 主演舞台は数々あれど、カーテンコールの時にキャストの中の最後の一人として舞台に駆け上がり、深々とお辞儀をする堤さん…こういうパターンは初めてかな?なんてやけに感激していました。晴れ晴れしたその表情にあ〜また舞台が幕を開けたんだなと拍手をしながらしみじみ思っていました。堤さんが客席のボブさんを舞台に呼ばれて、無事に初日を迎えられた出演者の皆さんとボブさんの笑顔が素敵でした。 Review
 
 
 
g-mark.gif「愛の勝利」楽日の客席に…?(1999.3.14)
 
 吉田日出子さんT.P.T.初出演で話題を呼んだ『愛の勝利』(T.P.T. Vol.26)その楽日の客席に堤真一さんがいらしていました。こんな嬉しい偶然は何度味わってもいいものですね?席に座り何気なく入口をぼんやり眺めていると、やけに見覚えのある方が(笑)開演直前にス〜ッと入っていらっしゃるのに気付く。馬渕英里何さんと並んで観劇されていました。T.P.T.次回作『橋からの眺め』で堤さんのエディの義理の姪、キャサリン役は馬渕さんが演じられるとか。私は何を観に来たのでしょうか?(笑)気にするつもりはなくても見通しのいい広い庭園の舞台装置。舞台上の役者さんを目で追うと、上手脇最前列のお席の堤さんが嫌でも目に入ってしまいます。…決して嫌ではなかったのですが <(=^-^=)?牛乳瓶の底眼鏡のオーバーアクションな春海四方さんのアルルカンの登場など笑っていましたね〜楽しまれているようでした。
 
 こんな観察をする私は何者?『愛の勝利』は二度めの観劇。初見でしたらきっとどんな物語なのか頭に入っていなかったかも(@_@)?前回の観劇ではデコさんの台詞の言い間違いが冒頭から目立ち、生意気ながら少し心配になってしまったのが正直な感想でした。T.P.T.初のコメディーとは言えそこはデヴィッド・ルヴォー氏の演出。皮肉の効いたブラックな笑いがちりばめられた大人の残酷な寓話でもあるのです。二度めの観劇の効果は、翻訳劇独特の堅苦しい説教じみた愛の言葉の羅列がすんなり耳に入ってくるということ。後半、恐ろしく雨が降るのがわかっています。賢者たちの道化ぶりや嘆きがわかっています。この強みは初見とは全く異質の落ち着きと共に私を舞台に釘付けにしてくれました。嫌でも目に入る(笑)客席の堤さんという偶然も一緒に。楽日お疲れ様でした。帰りの寒さを心配した厚手のコートが邪魔で邪魔で。もうすっかり春になっていました。 Review
 
 
 
g-mark.gif「39 刑法第三十九条」特別完成披露試写会(1999.1.25)
 
 東京・有楽町マリオン新館5階にある丸の内松竹で行われた映画『39 刑法第三十九条』特別完成披露試写会に行って参りました。ネット上で募集された招待者枠に運良く当選。噂の森田芳光監督最新作の全貌が明かになる期待にやや緊張しながら会場へ。上映前に森田監督、鈴木京香さん、岸部一徳さん、山本未来さん、江守徹さんによる舞台挨拶も行われました。江守さん曰く、法廷シーンでは最初から誰も台本を手にしていない意欲的な緊張感のある撮影現場だったというお話が印象的でした。嫌でも高まる気持を抑えながら大きなスクリーンで2時間13分の映画を堪能しました。
 
 物語はある夫婦を襲った猟奇的な殺人事件から幕を開けます。夫は背中に刃物を突き立てられ、妊娠中だった妻は腹部を切り裂かれ無惨に殺されていた。凶器の指紋と現場に落ちていたチケットから、劇団員の柴田真樹(堤真一)が浮上、逮捕される。素直に犯行を認めたものの殺意を否定。接見した国選弁護人(樹木希林)が動機は何だったのかに触れるとそれまで穏やかだった柴田は豹変し、相手を威嚇するような別の人格が突然現われる。裁判が始まり法廷に立った彼の態度も異常だった。弁護人は至急柴田の精神鑑定を請求。裁判官が選任したのは司法精神鑑定の第一人者である藤代教授(杉浦直樹)だった。彼は教え子の小川香深(鈴木京香)にその助手を依頼、彼女と共に拘置所を訪れて、柴田の精神鑑定を開始する。鑑定を重ねるうち、香深が不意に彼が逮捕された時に舞台で演じていた一人芝居の台詞を朗読しはじめると、柴田の手が怯えるように震えだし、もう一人の狂暴な人格が眠りから覚め彼女に襲い掛かった。藤代教授は柴田を多重人格者の疑いがあるとし、犯行時には心神喪失状態だったと鑑定するが、冷静に彼の行動を観察していた香深は恩師とは正反対の詐病を確信。控訴を取り下げようとしていた草間検事(江守徹)に直訴し、被告の再鑑定の鑑定人として調査を始める。彼女自身、殺人を犯した父親が目の前で自殺するという暗い過去を持った女性であった。香深は名越刑事(岸部一徳)と共に柴田が殺害した被害者の夫が過去に犯したという幼女惨殺事件の存在を知り…。
 
 プレスに記載されているストーリーはこのちょい手前まで。ネタバレありとしたいところですが…ミステリアスなサイコサスペンス色の強い作品なので展開は混沌を極み…最後に明かになるメッセージの持つ意味に森田監督が挑んだ“社会派”の重さと同時に今日的な底知れぬ怖さを感じました。タイトルが示す刑法第三十九条とは「心神喪失者の行為はこれを罰しない、心神耗弱者の行為はその刑を減軽する」という条文です。法の矛盾を問うように、実際に起きた事件を連想させるかのような…癒されることのない被害者の遺族の意識をストレートに表現している部分が衝撃でした。人の心の闇を仕切ることができるルールなんてあるのでしょうか?胸にグサグサくるような辛い重たさでもありました。2時間13分の長さを感じさせない緊迫した不安定な空気が全編に流れています。細部の説明を省いた映像をあくまで淡々と重ね合わせていく手法。抑制された登場人物の演技も森田監督の演出の意図するところ。ありがちな声高の法廷劇のイメージは一瞬にして払拭させられました。問題作です。話題を呼ぶであろう衝撃のエンターテインメント作品です。
 
 スクリーンの中の堤真一さんを見つめる感情は複雑でした。無表情に一点を見据えてボソボソと答える柴田真樹。彼の真実と狂気に満ちた本当の意味での“演技”とは?…難解とも思える複雑な意識の構造を見事に表現しています。よりによってまたこんな精神的に重たい役を引き受けちゃって(T-T) こんなに胸がヒリヒリするように痛くて辛くて、でも言い知れない充実感がある映画も珍しいなと思いました。5月1日(土)から全国松竹系で公開されます。
 
 
 
g-mark.gif「ルル」楽日の余韻(1998.12.29)
 
 舞台なんて始まってしまえばあっという間…『ルル』(T.P.T. Vol.25)の楽日となってしまいました。ん〜何度となく足を運びましたが、ルルやアルヴァをはじめ個性的な各登場人物の台詞、印象的な様々な場面、ほんの小さな動作ひとつ取っても、もうこれで最後かと思うと感慨深かったです。そして最後のカーテンコール。毎回、比較的あっさりとした終り方で(特にソワレだと終演時間が遅いのもあってか?)うしろ髪を引かれつつ足早に出口を目指すというパターンだったのですが…楽日です。他のキャストの方々とルルの大竹さんお一人のカーテンコールの後、客席にいらした演出のデヴィッド・ルヴォー氏、音楽監督のcobaさんらが舞台に劇場中響き渡る拍手で迎えられて、皆で一列に並んで手を繋いでいる図はとても暖かいものを感じました。堤さんが舞台に上がってくださいという意味で、客席に向かって「cobaさん!cobaさん!」と叫んでcobaさんを呼んでいらしたのが可笑しかったです。楽日じゃなきゃあんなお顔は拝見できないかもしれない(@_@)?舞台上の皆さん満面の笑みで客席からの沢山の拍手を浴びていました。大竹しのぶさんたら〜勢いよく走って来たかと思うと、舞台上でぴょんぴょん跳ねながら笑顔で客席に向かって手を振っていらしたりして可愛かったです。本当にお疲れ様でした。T.P.T.の舞台を最後に今年が終るのが何となく嬉しいそんな夜でした。
 
 
 
g-mark.gif「ルル」波乱の初日?アルヴァは4番目の夫(1998.12.6)
 
 『ルル』(T.P.T. Vol.25)の幕が開きました。初日当日、開場時間はとうに過ぎているのにベニサン・ピット前に沢山の人・人・人…どうしたの?と驚いていると前日のゲネプロが行われなかったとかで…波乱の幕開けの予感が?結局、30分遅れで開演されました。T.P.T.初登場の大竹しのぶさん。その魔性のような磁力で男たちを惹きつけ破滅させる主人公の妖婦ルルを魅力的に熱演されています。演出のデヴィッド・ルヴォー氏が配役は彼女しかいないと熱望されたそうで、奔放な性に身を投じながらも無邪気な大竹ルルをお腹いっぱい堪能できるという感じ。オープニングからマイクを手に披露されるあの歌といい(あっ頭から離れな〜い)大胆な衣装といい、あの小さな空間で圧倒されることは間違いない でしょう。
 
 堤真一さんが演じているのはルルの4番目の夫となるアルヴァ。ユーモアたっぷりに楽しんで舞台に立たれているという印象でした。冒頭からアルヴァは舞台奥のソファーに座り、何やら恋人と思われる女性とキスなどしているのを一瞬ですが見逃さないように(笑)彼の見せ場はやはりルルとの食事のシーン。燭台を手にシルクハットの礼装でバ〜ンと登場。ハイテンションで生き生きしていて?誇張された大芝居が展開されます。性欲と食欲の葛藤?かなりおバカで性的な場面ですが(笑)アコーディオンの演奏でキリッと悩まし気なタンゴを踊ったり、踊る堤真一さんは必見かもしれない?故意にゲップをする技(@_@)あれだけ客席を沸かせると気持いいだろうなと思いました。父親シャーニング博士の小林勝也さんとの関係も言わば最強の恋敵。その死にも冷ややかな反応しか示さないのでありました。
 
 後半、ルルと共に没落して、毛布をまとったみすぼらしいホームレスな姿で登場します。ダークなスーツに身を包んだ最初の彼とのギャップが大きい。ルルの父親?シゴルクの村上冬樹さんとのシーンは味があります。寒さに小さなストーブを抱え込んで「アチッ!」そして、ルルの取ったお客(真名古さ〜ん)にあっけなく殺されてしまいます(T-T)/~哀れアルヴァの最後は「ママ…」というつぶやきでした。芝居が終るまで毛布をかけられた“死体”でずっと舞台上手に…動けずどんな気持であそこで死んでいるのでしょう?主な堤さん登場シーンを説明してしまいました。終ってみれば初日の上演時間は3時間半に及び、流石に「長かったね…」が終演後、口を衝いて出てしまったくらい。楽しみにしていた初日パーティーも行われませんでした。しっかりオチがあって…翌日の公演から上演時間が大幅カットされ、30分以上短縮されていた事実?…これだから芝居は何が起るかわからない(笑)映像やアコーディオンの生演奏。無言の映画監督(大森さ〜ん)を設定したり、あえてスタッフを無造作に舞台上に登場させたり、実験的な要素も多く含んだ異色の舞台です。 Review
 
 
 
g-mark.gif「アンラッキー・モンキー」ビデオ化前にスカパー登場(1998.11.28)
 
 SKY PerfecTV!のPPV(ペイ・パー・ビュー)方式で映画『アンラッキー・モンキー』を観る。思えばシアター・テレビジョンでNODA・MAPの『キル』が観たいが為に去年の秋からこのCS放送に加入した人間なので…ファンの執念とは我ながら恐ろしい(笑)ビデオ化前にまたあの映像が観られるというのは嬉しい限りです。期間中(11/28〜12/4)は連日9回も放映されるのに、よりによってまだ外も薄暗い初回のAM6:20〜を視聴してしまいました。
 
 サブ監督の映画は“不条理エンターテインメント”と称され海外の映画祭で絶賛を浴び、そのパワフルな疾走感とユニークな視点でデビュー作『弾丸ランナー』以来、映画ファンの注目を集めています。続く『ポストマン・ブルース』は沢木の赤い自転車も記憶に新しい快作でした。この『アンラッキー・モンキー』は前2作とはちょっと雰囲気の違う仕上がりというか?とぼけた独特の世界観を残しながら、詐欺師の山崎が精神的に追い詰められていく心理を描いていたように思います。とにかく観て単純に楽しめること。多少の矛盾や偏見はこっちに置いといて…が許される勢いがサブ監督の作品にはあると思います。だって冷静に考えてどうしてあのシチュエーションで埋められた大杉漣さんの立花が生還できたのか?それは無造作に一緒に埋められたパイプをくわえて呼吸をしていたからとか…もうそんなコミックのような展開でもサブ監督ならばありかな?なんて妙に納得させられてしまうところが、恐るべしサブワールドの真髄のような気がします。個性派揃いのサブ組の中でこれからも堤真一さんに異彩を放って頂きたいです。
 
 
 
g-mark.gif「近代能楽集 葵上/班女」甦った三島由紀夫の世界(1998.9.17)
 
 95年に上演された『近代能楽集 葵上/班女』(T.P.T. Vol.11)が 深夜のBS2「20世紀演劇アンコール」で再放送されると知り、楽しみにしていましたが、折からの台風接近。現実に放送前日の同番組は台風情報で中止されていました。こりゃやばいかな?という心配の中、予定通りの放送に胸を撫でおろしました。じっくりと長時間のインタビューという形でT.P.T.の芸術監督デヴィッド・ルヴォー氏のお話を伺える機会はそうないですから。そのお話はとても興味深かったです。T.P.T.におけるルヴォー氏の演出を鋭い視点で捉えた、演劇評論家長谷部浩氏の著書「傷ついた性」(紀伊國屋書店刊)を改めて読み直したくなりました。
 
 今回、紹介された“葵上”と“班女”は舞台を拝見しております。翌年のBSでの放送も見逃さなかった程で、あの暗い夜の闇の底のようなベニサン・ピットでの緊張を思い出していました。奇妙でよく覚えているのが…開場されて劇場の中に足を踏み入れると、傍らに病院のベッドが置かれていて、それには若い女性が横たわり眠っていました。…観客は眠る“若林葵さん”の横を通って座席に着くという、あの三島の不思議な世界は開演前から始まっていたのです。そして暗転すると、さっき私たちが入って来た入口が病室の扉となり、看護婦と若林光が登場する…ゾクゾクするような演出に息を呑んだことが鮮やかに甦りました。想像力だけで優にベッドは湖の上のヨットに成り得たのです…深い。私のお気に入りの舞台の一つです。
 
 
 
g-mark.gif「アンラッキー・モンキー」舞台挨拶(1998.7.18)
 
 あの堤真一さんが舞台挨拶?今までもサブ監督の作品において、堤さんが舞台挨拶に参加されることは皆無でした。(舞台中だったりとか…)問い合わせに対しても「あくまで予定ですが」というニュアンスが強いお答えだったので、疑い深い私は本当に来るの?と最後の最後まで、7月18日早朝から並び(笑)午前9時前に好意的に開場してくれた新宿シネマミラノさ〜ん…その映画館の中の座席に座ってもまだ、上映までの時間、リラックスしてチョコボールなどを食べながらでもまだ、本当に来るの?の思いは私の中にあったのです。しつこい?でもそれだけドキドキを伴った大イベントでした。ゆったりした座席は思いのほか心地良かったです。
 
 昨年から楽しみにしていた映画『アンラッキー・モンキー』初回上映終了後、その余韻に浸る間もなく、一瞬の緊張感が走ったかと思うと、本当にいらしていた堤真一さん、吉野公佳さん、そしてサブ監督が登場。凄まじいフラッシュの嵐の中で、舞台挨拶が和やかに行われました。堤さんの第一声は「眩しいっちゅう…」(笑)カメラのフラッシュ攻勢にいきなり関西弁でかましてくださいました。堤さんだな〜と…どうだな〜なのかはうまく説明できませんが?サブ監督、吉野さんと三人で並ばれている姿は…ちょっと照れ臭そうでもあり、非常に微笑ましいものでした。司会者の方から、皆さん早くから並ばれたんですよというお話を受けて、サブ監督が「朝、早くから観るような映画ではないんですが…」相変わらず飄々とした佇まいがカッコイイ個性的なサブ監督。明らかに吉野さん狙いのベストポジションを陣取っていた男性ファンも多数「(サブ作品なら)またどんな役でも!」とおっしゃっていた吉野公佳さんは大きな瞳が印象的な可愛らしい方でした。
 
 さて、問題の堤真一さんですが、終始笑顔でいくつかの質問にも淡々と答えられていましたが、お話を振られた瞬間、えっ?小さいあくびをしかけたような…(@_@)もう客席から総突っ込みを受けそうな態度がまた笑いを誘っていました。…あれは絶対照れ隠しのような気がしました。演技に対してサブ監督は、ここはダ〜ッとやってとか、ガ〜ッととか擬音で表現されるとか。長嶋監督みたい?大人が赤ちゃんの泣き声を聞いてその気持を理解しようとするように、そんな感性が飛び交う現場であったことが想像されました。サブ作品への連続出演に対して、またまた「暇だったから」発言が出ました〜あの『ピュア』に出演された際にもちょっとおとぼけでそう答えていらした堤さんを覚えています。もう彼、独特のさり気ない表現で、多くは語らず…でもサブ監督は天才です!とキッパリ。サブ監督も堤さんへの絶大なる信頼をお話されていました。「同い年ですから」なんていい感じでした。帰り際、舞台との段差に堤真一さんちょっとつまづいたりして…あ〜ほんのわずかな時間だったのですが、楽しい夢のような(笑)舞台挨拶でした。ちなみに堤真一さんは黒のTシャツにクリーム系の長袖シャツに黒のパンツ。そして愛用のオレンジ色のサングラスをされていました。ドキドキ故、表現に若干(いいえ、極端にかな?)私なりがあることをお許しください。でも素顔の堤真一さんを拝見できたそれはそれは貴重な時間でした。
 
 
 
g-mark.gif「娘に祈りを」楽日(1998.5.31)
 
 よく晴れた5月最後の日曜日。東京・森下のベニサン・ピットで上演されていた『娘に祈りを -A Prayer For My Daughter-』(T.P.T. Vol.22)の楽日でした。男優4人だけの舞台。二人の警官と二人の強盗殺人容疑者の尋問をめぐる息詰まる芝居は翻訳劇独特の難しさや深さを痛感しました。最後のカーテンコールで出演者の平田満さん、堤真一さん、高橋和也さん、山本亨さんと一緒に演出のロバート・アラン・アッカーマンさんの5人が舞台に笑顔で並び、固く抱き合って喜びを共有している姿は感動的でした。観客の暖かい拍手と長い公演をやり遂げた満足感で一杯の劇場は立ち去り難いようなとても幸せな空間でした。 Review

 

 

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