タイトル
AIR
ハード
WIN(adult)
ジャンル
AVG
注目キャラ:晴子、観鈴、みちる


最初の印象期待の感動ゲーム「AIR」をついにプレイ。
 OP、いいですね〜。何か感動させるぞ〜!って感じの出だしです。本編は第1ヒロインと思われる観鈴シナリオをクリア?一応、歌付きED。でもCG達成率は12%・・・低すぎる。これはきっとまだ裏があるはずです。実際、不完全燃焼な終わり方でしたし。ここは別ヒロインでお茶を濁しながら、ゆっくりやっていきましょう。話の根幹は大体つかめましたしね。しかし観鈴の初期症状って「epilepsy」みたい。(あえて英語表記。)倫理に触れそうなシチュエーションですね。
 主人公・往人はこわおもてですけど、意外に抜けてて剽軽です。ただ巻き込まれタイプなので、「Kanon」のような悪ふざけ的なギャグが少ないです。あとお得意のヒロインごとに特徴的な口調も健在です。(「がお」と「にはは」は一度声つきで聞いてみたいですね。)

中間の印象第2ヒロイン、佳乃・美凪シナリオクリア。佳乃はビジュアル的に一番好み。シナリオは・・・、ふむふむ一度結ばれてから更に波乱というパターンですか。右手に巻いたハンカチの秘密は予想通りでしたが、やはり辛いですね。更にあの行動の意味は・・・、ふみゅ〜昔話に持っていきますか。ちょっと詰め込み過ぎって感じですね。繰り返しプレイで更に明らかになるのだとは思いますが、1回しかプレイしない人は評価を低くつけそうです。
 美凪はリアクションが楽しいです。真顔で「えっへん」とか「へっちゃらへ〜」とか言うし。きっと声も抑揚がないに違いありません。それにしてもこのシナリオはどちらかというと親友・みちるの方がヒロインっぽいですね。彼女の正体は初期の段階で分かりましたが、正体判明後の3人の苦悩がまた丁寧に描かれていて良いです。クライマックスの背中を向け合っての美凪とみちるの会話は・・・、泣けました。本作品の初泣きですね、こりゃ(笑)。ラストは少し蛇足かなと思う部分も。もちろんあれはハッピーエンドなので大歓迎なのですが、どうしてもあのクライマックスの悲劇性が薄らいじゃいますね。贅沢な意見とは分かっているのですが。
 ほほう、3人のEDを迎えると新たなモードが登場ですか。そのまま次へ進みたい気分に駆られますが、ここはぐっと我慢。二人のEDの余韻をじっくり味わってから先に進まないと、次なるシナリオで十分な感動が得られません。いくつかバッドエンドも見ておきたいですし。美凪バッドエンドはこれも一つの選択かなと感じさせます。男女の関係としては結ばれたわけですから。

最終の印象新モード「SUMMER」は悲劇の始まりを描いたもの。これ単体でしたら悲しい昔話という感じですね。神奈、裏葉、柳也の家族にこだわった心の触れ合いがよく描かれていました。
 この話で観鈴があのような顛末をたどった理由が分かりました。ただファンタジーの苦手な人には感情移入しにくい設定かも。法術や呪いとか言われてもピンときませんからね。
 ラストモード「AIR」。プレイを終えて、「やられた!」というのが正直な気持ち。晴子さん(観鈴の母)がこれほど活躍するとは思いませんでした。むしろ本作の主人公は晴子さんといっても過言ではありません。それだけ後半の彼女の心理行動が丁寧に描かれていました。愛から逃げていた彼女が、娘との時間を取り戻そうと無様なまでにあがく姿。前半の彼女からは想像も出来ない姿です。セリフでも述べられていましたが、すべての災厄は晴子さんの試練のために存在したのではないかと感じてしまいます。卑怯なまでに、観鈴を使って感動の試練を持ち出してきます。そしてそのたびに昔の自分を後悔する晴子さんの姿は泣ける以上に苦しくなってきます。なんでそこまで・・・と感じさせる程です。あげくのはてに「ゴール」ですか・・・、悲しすぎます。
 主人公と観鈴の扱いは意見が分かれそうです。運命の連鎖を断ち切るための道具にされただけとも言えますし。本人達が納得しているだけに余計につらいですね。

以下、ネタバレ感想。未プレイの方は読まないことをオススメします。


本作の登場人物を整理すると、

・呪われた体質のために誰からも受け入れられない少女・神尾観鈴といずれ来る別れの悲しさを避けるためわざと距離を置く育ての親・晴子

・母親を亡くして以来もう一人の自分に目覚めた少女・霧島佳乃とそれを見守る姉・

・2番目の娘を流産してから心の病気にかかってしまった母親とそれに気遣いながらも自分自身、夢の世界に逃げこんている娘・遠野美凪、彼女の一番の理解者・みちる

・母から託された「空にいる少女」を捜すため、旅を続ける主人公・往人。手を触れずに人形を動かす能力がある。

どれも複雑で一筋縄にいかないキャラクタばかりです。ここは一人ずつ丁寧に解きほぐしていきましょう。



神尾観鈴一文無しになった主人公・往人を家に招き入れた少女。いつでも元気に笑っている明るい子。往人と一緒に遊ぶことに異常な執着を見せますが・・・。
 彼女は「空の上にいる少女」の夢を見続けることによって、以下の症状を起こします。
 
 1.友達になろうとすると泣き出す発作、2.徐々に進む下半身麻痺、3.ありえない場所の疼痛、4.大事にしてくれる相手を衰弱させてしまう、5.大切な人を忘れてしまう記憶障害、6.そして最終的に行き着くのは完全なる無。
 
 よくもまあ、ここまで悲惨な症状を思いついたものです。これでは決して相手に好意を抱いてはならない、相手の好意も受け入れてはならないと行き着くしかありませんね。しかし観鈴はこの連鎖を断ち切るためにあえてこの試練に立ち向かいました。結果的に愛する人を失い、自分自身を追いつめる結果となったとしても・・・。
 この症状の原点は1000年前の最後の翼人・神奈に遡ります。翼人は星の最初の記憶を受け継ぐ種族。代々、方術を使って記憶だけを子供に引き継いできました。しかし1000年前の人間の覇権争いに巻き込まれて、翼人は滅んでしまいます。その最後の翼人が神奈。彼女は記憶を引き継ぐ相手を失い、更に呪いによって空の上に束縛されてしまいます。最後の翼人は幸せな記憶を星に差し出すのが使命。神奈が解放されるためには、誰かに記憶を引き継ぎ幸せな記憶を作ってもらわなければなりません。しかし翼人はもう存在しません。残された道は人間に「星の記憶」を引き継いでもらうしかありませんでした。しかし星の記憶は膨大で人間が耐えられる物ではありません。更に引き継がれるのは記憶だけでなく、前世で受けた呪いも引き継がれます。そのため「星の記憶」を引き継いだ人間は大人になるまでに耐えきれず死を迎えるしかありませんでした。そして現代において観鈴が神奈の記憶を受け継ぐこととなりました。
 ここで分かりにくいのが観鈴に降りかかる症状の数々。どこまでが呪いで、どこまでが記憶の引き継ぎによる影響なのかはっきりしません。ここでは自分なりに説を考えていきたいと思います。

1.友達になろうとすると泣き出す発作
 どれほど相手と仲良くなろうと考えても、いざ遊ぶ段階になると強制的に泣き出してしまう発作。観鈴はこの癇癪のために友人を一人も作ることが出来ませんでした。これは果たして呪いなのか?
 一番考えられるのは、神奈が最も親しい人間・柳也を失う夢を見ている影響のためという考えです。観鈴が誰かと接近すると、神奈の記憶が呼び覚まされ無意識に相手と深く関わろうとすることを拒絶してしまうのです。あるいは柳也に対する神奈の悲しみが伝播されたとも考えられます。
 もう一つの考えは上の説の派生になりますが、「4.大事にしてくれる相手を衰弱させてしまう」と関連しているものです。後に記憶を受け継いだ人間が、親しい相手を傷つけないように他人と関わりを持たないよう自分自身に呪いをかけたという考え方です。この呪いがあれば少なくとも周囲に害を与えずに、自分だけ苦しみを抱え込めば良いわけですから。しかしこれでは決して幸せな記憶を手にすることができず、呪いだけがそのまま引き継がれる皮肉となります。

2.徐々に進む下半身麻痺
 観鈴が空の夢を見ると、徐々に両足が麻痺していきます。最終的には立ち上がれなくなるほど進行してしまいます。これは神奈の母・八百比丘尼が長い間幽閉されていたため、もしくは人間が翼人を逃がさないよう呪いをかけたためと想像します。単純に考えるなら記憶の情報量に耐えきれないために起こる一症状ともとれます。じゃあなぜ手は大丈夫なのか?5感は影響を受けないのかと問われると困りますが・・・。より中枢側が障害されると、足に影響を及ぼす確率が高くなると言うしかありません。

3.ありえない場所の疼痛
 後半の観鈴はのたうち回るような痛みを自覚します。彼女の話では翼が生えていた場所が痛むそうです。これは幻肢痛で説明がつきます。手術で足を切断された人は存在しないはずの足の痛みを自覚するそうです。詳しい機序は不明ですが、足の感覚を司る脳が行き場を失い過剰反応を示しているためと言われています。観鈴も翼人の記憶を受け継いだせいで、ないはずの痛みを自覚するようになったのでしょう。人間の脳は恐ろしいものです。想像で病気をつくることができますし、死さえ導くことができます。記憶が体を蝕むというのはある意味現実に起こりうると言えます。

4.大事にしてくれる相手を衰弱させてしまう
 自分を大切に思ってくれる相手が自分のせいで衰弱してしまう。この症状も幸せの記憶を紡ぐ妨げとなります。これは翼人自体が持つ特殊能力とも考えられます。翼人は記憶を引き継ぐ必要性から、お互いの記憶を共有することができたのではないでしょうか。翼人同士なら問題ないのでしょうが、人間(往人)と半人間(観鈴)が近づくと無意識に記憶の断片が往人に流れ込んでしまいます。それが辛く悲しい記憶なら、人間を衰弱させるのは十分でしょう。記憶で自分自身を傷つけるぐらいですから、相手を傷つける可能性は十分考えられます。往人の場合は、柳也の死の夢が流れ込んだものだと考えられます。
 ここで疑問になるのが晴子さんの存在。後半の彼女は観鈴を大切に扱っていました。それにも関わらず、なぜ彼女は記憶の影響を受けなかったのでしょうか?一つは観鈴本人が言っていたように、夢の話をしなければ相手にその記憶が流れ込まないという考え、もう一つは往人が人形の力を使って、翼人の能力もしくは呪いを封じ込めたという考えがあげられます。

5.大切な人を忘れてしまう記憶障害
 これは星の記憶が人間の脳に入りきらなくなったことによるものでしょう。実際の記憶障害も突然起こります。まさにすこーんと数年分の記憶を失います。ほとんどの場合が昔の記憶は保たれて、最近の記憶が消失してしまいます(逆行性健忘)。人によっては今覚えたこともすぐに忘れるという症状が出現します(順行性健忘)。観鈴の場合は逆行性健忘だけだったようです。星の記憶をどんどん負荷していけば新しい記憶の保持は不可能になりますが、ラストで晴子さんのことを思いだしたのは過去に蓄積された観鈴の記憶が晴子さんの愛情を最優先事項として受け入れたためでしょう。

6.最終的に行き着くのは完全な無
 最終的に観鈴はすべての「星の記憶」を受け継ぎます。しかし受け継いだだけでは何の解決にもなりません。幸せな記憶を最後に付け加えて、星に返さなければならないのです。観鈴はそら(往人)と晴子との思い出を幸せな記憶として星に捧げました。人間にとって、自分の記憶を捧げることは自分の命を捧げることと変わりません。観鈴は自分自身を捧げることによって翼人の使命、1000年に渡る呪いを解放しました。星に還った観鈴を見届けたそらも後を追うように星へと還っていきました。
 ここで解放された神奈がどうなったかが気になるところです。一つは人間に転生して新しい時を歩み始めるというもの、もう一つは観鈴と一体化して星に還ったとするもの、もう一つは星の記憶の管理者として空に留まり続けるというもの。ラストの二人の子供を見る限り、2番目の説が有力そうです。観鈴と神奈を別々にすると、人数が合わないんですよね。観鈴・往人・神奈の記憶は星の記憶と融合し星へと還っていきますが、人間としてもう一度やり直したい想いが星の記憶から分離され、二人の子供に宿ったと考えたいです。あの二人の子供は観鈴・往人・神奈の記憶の断片を持つ者。呪いから解放され、3人の想いを実現してくれる存在と考えれば救われる気がします。別に裏葉さんと柳也を仲間に入れても構いませんが、彼らは子孫を残すという形で役目を果たしたと思います。彼らの子孫(=往人)が想いを受け継いだと考えるべきでしょう。神奈=観鈴=子供1、柳也=往人=子供2、裏葉=晴子という可能性も考えられますが、ここまでいくと不毛な想像になってしまいますね。

 この作品のおもしろいところは記憶(=脳)を命と捕らえている点です。魂(=心臓)が命じゃないんですよね。魂の転生は時間を遡ってはいけないという不文律がありますが、本作における記憶の転生は時間を超越しています。この辺りが話を複雑にしている原因の一つでしょうね。




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